世の中広し。自分の考えだけが正解にあらず

議論でけんかをしないために

− 実りある話へのワンポイント −

 メーリングリストに参加している人は、生活環境や生い立ち、物事の考え方、価値観が多様です。しかし、私たちは日頃の生活において自分と似た境遇の人同士の集団にいるせいか、自分と考えの異なる人と話をする機会に恵まれていません。しかも、議論や意見を述べるといった体験も乏しく、自分と考えの違う意見を読んだり、人から反論されたりするとついその人を偏見視したり否定的なとらえかたをしがちです。そして、自分がイメージする一種のマニュアルのような模範と外れているものは間違っているといった、枠にはまった考えを無意識にもっていたりします。メーリングリストに参加していると、多かれ少なかれ人の意見や主張に感情的なものがこみ上げてしまうときがあります。議論になれば、つい相手の意見を尊重できず非礼な態度を見せてしまい、それがもとで議論から口論、エスカレートすれば罵声のけなし合いといった不毛な言い争いへと発展しては後味の悪い結末を迎えてしまいます。
 メーリングリストは人の集まる場であり、多様な意見の集まる場でもあります。そのような場では自分のささいな一言が人との関わりで大きなトラブルを引き起こす引き金ともなります。そこで、特定の話題で議論をMLで行う際の諸注意を挙げてみました。具体例を出して話を進めていきますが、内容は架空の作り話です。

● 議論を交わす際の注意
 人に自分の意見を伝えたい、あるいは主張を述べようとするときは以下のことを考慮してまとめるよう試みます。

  1. 単刀直入に主張だけを書くのではなく、理由やいきさつを必ず書くようにします。さもないと、説明不足で大きな誤解の始まりになります。
  2. 自分とは反対の考えを持っている人がいることを必ず念頭に置いてください。
  3. 一方的な主張を書きなぐれば、反対意見をもつ人に不快感を与えます。
  4. どんな意見であれ、人を偏見視したり、人格を否定するような言動は慎んでください。誤解だけではすまされなくなります。
  5. 相手の主張を尊重しながら、自分の意見を述べるよう心がけてください。議論のキャッチボールこそ、当事者や読み手にとって楽しいものです。
  6. 密な議論に発展したときは、反論をする前に自分の書いたメールを読み返し、相手の気分を損ねるような内容になっていないかを確認してください。特に感情的になると、自分でも予想していないような乱暴な書き方をしているときがあります。
  7. 一番大切なことです。「自らの言動には自ら責任を持つ」姿勢を忘れないでください。MLに出したメールは参加者全員に読まれます。無責任な言動が取り返しのつかない結末を招くことすらあります。不特定の人とネットワークでコミュニケーションするときの大事な心得ですので、頭の隅にとどめておくようにしておいてください。

<例>

 何か議論をもちかけたい、またはそうでなくとも自分の意見を聞いてほしいときってありますね。

 たとえば、たばこの話を持ち出したとします。そのとき

と書いたとします。たばこが好きな人で寛大な心の持ち主なら笑ってすまされるでしょうが、この一言だけでいやな気分になる人もいるはずです。

 そこで、

と、その理由を書けば、その人がなぜそう主張するのか読み手に伝えられます。ということは、今度はタバコ好きの人がそれとは別の意見をもちかけることもできますし、何より訳あっての嫌いがわかったのですから、誤解を防ぐことができます。

 ところが、

といきなり書いたらどうでしょう? タバコ好きの人にとって気分のよいものではありませんね。それだけ強く主張したいのであれば別の案や相手の言い分も受け入れるだけの余裕を作るよう心がけてください。

あまりよい例ではありませんが、反論をする余裕はありますので議論の展開ができます。

 最悪なのは

この一言だけでムッと来る人は少なくないはずです。そればかりか感情的にその意見に反論をしかねません。一歩間違えれば罵声の飛ばし合いとなり、本質とはかけ離れたけなしあいに変わってしまいます。そうなってしまえば読み手にとってこれほど不愉快なものはありません。
 軽率な一言が招くみにくい言い合いにだけはならないよう心がけてください。

 もう少し例を出しますと

などと書いて、ネットワーク上で不毛なけなし合いに発展したケースはよく見かけます。

 文章でののやり取りは、人と対面しての議論よりも誤解と精神的な不快感が大きくなります。場合によっては夜も眠れないというときもあります。(ちなみに経験したことがありますが、立腹感が日常生活での出来事で生じるときよりも数倍大きいです)
 いざ、自分の意見を議論としてもちかけるのはなかなか難しいものです。それがゆえに、反対意見をもつ人や読んでいる人への配慮も忘れないように話を進めていってください。


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