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にし・たかヲのサッカー日誌
1999-2000/vol.13



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投稿大募集!

 本誌『愛と幻想のフットボール(FLF)』では、読者の皆様からの投稿を募集しております。原則としてテーマは問いません。h_okada@kt.rim.or.jpまで、どしどしお送りください。このページに関するご意見やご感想など、投稿以外のメールもお待ちしています。なお投稿の際は、通常のメールと区別するため、文末にお名前かペンネームをカッコに入れて記入するよう、お願いします。いただいた投稿は、いったんこの日誌内で紹介し、その後、こちらの投稿欄にまとめて掲載いたします。
CL放送日程(WOWOW)

●10月19日(火)深3:35〜
アーセナル×バルセロナ

●10月21日(木)後8:00〜
ポルト×レアル・マドリッド

●10月21日(木)深2:00〜
マルセイユ×マンチェスターU

●10月22日(金)後3:50〜
アーセナル×バルセロナ

●10月24日(日)後10:20〜
ヘルタ・ベルリン×ミラン

●10月26日(火)深3:30〜
ミラン×チェルシー

●10月28日(木)後8:00〜
アーセナル×フィオレンティーナ

●10月28日(木)深1:35〜
PSV×バイエルン

●10月29日(金)後3:20〜
ミラン×チェルシー

●10月31日(日)後10:10〜
ラツィオ×レバークーゼン

10月12日(火)14:40 p.m.
 EURO2000のグループ予選が終了。開催国のオランダ、ベルギーのほか、イタリア、ノルウェー、ドイツ、フランス、スウェーデン、スペイン、ルーマニア、ポルトガル、ユーゴスラビア、チェコが出場を決めた。苦しんだフランスは終わってみれば1位通過。ポルトガルが2位グループの1位で突破したのが嬉しい。プレーオフに回るのは、デンマーク、スロベニア、トルコ、ウクライナ、イングランド、アイルランド、スコットランド、イスラエル。すでに1位通過を決めていたスウェーデンがポーランドに勝ってくれたお陰で、イングランドは命拾いである(ドローでもポーランドが2位だった)。FAからスウェーデンに「ニンジン」が提供されたりしたんだろうか。有利だったはずのポーランドに逆プレッシャーがかかったのかも。プレーオフの組み合わせは明日決まるらしいが、イングランド、アイルランド、ウクライナあたりには何とか残ってもらいたいものである。

 いずれにしても、本命オランダのもたつきもあって、どこが優勝するのか見当のつかない大会になりそうである。現時点で印をつけるなら、イタリア◎、チェコ○、オランダ×、ってとこかな。北欧勢が旋風を起こしそうな予感もある。しかしイタリアとチェコの決勝戦って、すんごくつまんないゲームになりそうだな。来月は、そのチェコとオランダが親善試合をするらしい。見物である。

※久々に読書日誌を更新しました。興味のある方は、そちらのほうもよろしく。

10月11日(月)
 天気がいいので、ドライブがてら立川の昭和記念公園へ。駐車場820円、入場料400円、園内バス300円と、たかが公園(しかも国営)のくせにいちいち高い。みんな5時の閉園と同時にドッと帰るんで、駐車場から出るまで1時間もかかった。

 そんなわけで出かけていたため、バッジョが2ゴール決めたJOMOカップを見逃す。すっかり忘れてた。CSの番組表ばかりチェックしていると、こういうことになるんである。気づいたのが夜中だったんで、スポーツ・ニュースすら見ていない。ご覧になった方がいらっしゃいましたら、観戦記なんか送っていただけると嬉しいです。バッジョ、ファンタスティックでしたか?

10月10日(日)
 土曜日開催のオランダ×ブラジル(国際因縁試合)をビデオ観戦。試合前に何かの表彰を受けたクライフとファン・バステンが、選手と一緒に並んで国歌を歌っている姿がめちゃ格好良かった。ダビッツもスタムもフランクもいないオランダはやや頼りなく見えたが、ロベカルのオウンゴール、ゼンデンのヘッドで前半は2-0。オウンゴールを誘ったベルカンプのボレーシュートはさすがだった。ロベカルが触らなくてもゴールインしたんじゃなかろうか。ところが後半は、クライファートがPKを外した上に、ロベカル、カフーの両SBに強烈なシュートを決められて2-2のドロー。ライカールト、いよいよやばいかも。去年の10月にペルーを下して以来、1年間勝ち星なしである。大丈夫なのかオランダ。間に合うのかライカールト。

 ラグビーW杯、アイルランド×オーストラリア(プールE)を観戦。双方なかなかトライの取れない試合だったが、終わってみれば3-23でワラビーズの勝ち。アイルランドに声援を送ったが、ノートライとは残念。俺が行ったときもそうだったのだが、ダブリンの雨ってのはとても侘びしく見える。なんちゅうか、諦念がしとしと降ってくる、という感じ。

10月9日(土)
 カザフスタン×日本(五輪アジア最終予選)は0-2で勝利。中田が「外人助っ人」に見えて仕方がなかった。彼がいなかったら、どうなっていたんだろうか。しかしまあ、終了間際にきっちり2点目を取って決着をつけたあたりが、旧代表とは違うところか。たった4年で、「28年ぶり」を目指していた頃のドキドキ感がまったく消えていることに、ちょっと驚く。何だかんだ言っても、日本サッカーは着実に強くなっている、と思いたい。

 一方のラグビーはというと、ウェールズ×日本(プールD)は64-15で負け。ま、しょうがない。前半は大善戦といってよかろう。大畑のトライは感動的だったし。だけど、もうノックオンは勘弁しておくれ。トライの取り方以前にボールの取り方(奪い方じゃなくてキャッチのしかた)を練習せんとあかんとは。ところで、ラグビーでマイボールを「奪われる」のって、どういうことなんだかよくわからない。密集の中で奪われるときって、いったい何が起きてるんだ?

 引き続き、1次リーグ最大の見物であるイングランド×ニュージーランド(プールB)を見る。ニュージーランドの「ウォー・クライ」を最初から最後まで見たのは初めてだった。あれって、わざわざ時間を割いて(しかも相手を呼びつけて)やるのか。敵地でなに勝手なことやってんだよ。面白いけど、何だか納得いかない。一方的に恫喝してるみたいで。終わった後、「はいはい、気が済みましたか?」という顔で拍手をしているイングランド選手たちの表情が印象的だった。

 試合のほうは、今大会で初めて見る「どっちが勝つか最後までわからない展開」になった。とはいえ、オールブラックスのディフェンスはまったく隙がない。イングランドは、ゴール付近にアバウトに蹴り込んで「よーいドン」の勝負をするぐらいしか、トライを取る方法がなかった。したがってPGで得点を重ねたいところだったが、頼みのウィルキンソンが不調。16-30でニュージーランドが「決勝戦のチケット」を手にしたのであった。関係ないが、いつもサッカーばかり見てると、ゴールに向かって左サイドから左足のキッカーが蹴るのって、すごく不自然に見える。あと、難しい角度のPGを「ミハイロビッチに蹴らせてみたい」と思うのは俺だけではあるまい。

10月8日(金)13:20 p.m.
 ミステリを読み耽りながら、セリエAを見る秋の夜長。まだ半分しか読んでいないが、東野圭吾『白夜行』(集英社)はかなり面白い。ラツィオ×ミランの再放送を後半だけ見て、悔しさが募った。サラスはあと3ゴール、ヴェーロンはあと2ゴール決めていても不思議ではなかった。アッビアーティめ。奴が「並み」の出来だったら、9-4ぐらいでラツィオが勝っていたはずなのに。シモーネ君にいま一歩の勝負強さがあればなぁ。さらに言えば、マルディーニを振り切ったコンセイソンがエリア内で折り返したボールをクリアしたアルベルティーニのプレイはハンドだった。PK寄越せ。ボローニャ×レッチェ(セリエA第5節)では、ラツィオから出戻りのアンデションがいきなりスタメン出場。ボクシッチとのツインタワーを見てみたかったが、ま、本人にとっても賢明な選択なんだろう。ローマからボローニャ入りしたウォメというカメルーン人が面白い。背中が地面につきそうになるぐらい反り返って投げるロングスローは驚異である。試合はシニョーリのファイン・ゴールもあって2-0でボローニャが勝った。バリ×ウディネーゼ(セリエA第5節)は例によって(?)1-1のドロー。金田さんのみならず、八塚アナも「バリ贔屓」であることが判明した。「八塚さんはバリ戦の担当、もう5試合目でしょ? 僕は今日が3試合目だから、まだまだですよ」とは金田さんの弁。何が「まだまだ」なんだか、よくわからない。

*

 昨日(10/7)のニッカンは、久米宏のNステ降板を1面でデカデカと報じていた。彼の去就がスポーツ紙や週刊誌で大ニュースとして扱われることが、昔から俺にはよく理解できない。たしかにテレビマンとしては天才だと思うけど、たかがキャスターじゃんか。長寿番組だから話題になるのは当然かもしれんが、俺が雑誌の世界にいた10年前、まだ番組が「長寿」では全然なかった時代から、すでに「久米降板!」は男性週刊誌記者がゲットしたがる最重要ネタの一つと目されていたフシがある。果てしなく続く女子アナいじりといい、この手のネタってそんなに「売り」になるんだろうか。人はどうしてそんなにニュース番組やアナウンサー(の裏事情)が好きなんだ?

 久米宏の「今」については、最近ほとんどNステを見ないのでよくわからないけれど、ま、中田が出演したときのインタビュー(雑談)なんかを見るかぎり、もうやめたほうがいいとは思う。News23のロナウド・インタビューもひどい代物だったが、あれに比べりゃまだマシって気がするね。でも世の人々は今でも「久米さん、やめないで!」なんて思っているのだろうか。天才テレビマンの巧妙な「演出」にすぎない発言に「本音」を感じたり、戦後民主主義的な「正義」を見出したりし続けていたのか? 悪ふざけとしか思えない政治的言動に投票行動を左右されたりしていたのか? ウソだろ?

 ところでNステに限らず、学校や会社では「ゆうべのドラマ見た?」に類するテレビ話が今でも共通の話題になっているのだろうか。集団生活とも地上波とも縁遠くなった俺には、そのへんのテレビ事情がよくわからない。したがってナンシー関のコラムなんかも、最近はすっかりピンとこなくなっている。そういえば以前、『朝ナマ』で宮崎哲弥(時論家?)が、「今の日本で人々が同じ日本人であることを実感できるのはテレビを見ているときだけだ」という主旨の発言をしていた。平たく言うと、「テレビが共通の話題や価値観や雰囲気を提供することでしか国民としての一体感を得られない(つまり<世間>がテレビの中にしか存在しない)」という意味だと俺は理解していたのだが、今後ますますCSやCATVが普及して多チャンネル化が進むと、テレビさえもそういう機能を果たせなくなるわけだ。サッカーしか見てない奴、映画しか見ない奴、昔のアニメにハマリ続ける奴、朝から晩までエッチ番組にうつつを抜かしてる奴……といった具合にテレビとのつきあい方が十人十色になるから(選択肢が増えるほど同ジャンルしか見なくなるのは何とも逆説的である)、「ゆうべ俺が見た番組」を他人が見ている確率はきわめて低くなる。いや、まず同じものを見ていないと考えたほうがよくなるに違いない。だから何だというわけではないし、この国をのっぺりと覆っている不気味なほど均質な「空気」が、「テレビ世論」の散逸によって少しでも薄まるのなら、悪いことでは全然ないと思う。国民としての一体感は……サッカーでは作れんか。

 ともあれ、テレビ屋さんたちはマジで危機感を持ったほうがいい。このあいだ、仕事場で昼飯を食いながら久しぶりに『笑っていいとも!』なんか見たのだが、腹立つぐらいつまらなかった。あんなもの、選択肢(チャンネル)がヒトケタしかないから数字が取れてるだけで、チャンネル数が3ケタになったら海の藻屑となるのは目に見えているぞ。今だって、CSのアンテナを立てただけで、「タモリもマチャミも中居クンも自分の暮らしには必要なかったんだ」と即座に気づくのだ(その中居クンが「スカパーはてってーてき」とか言ってるのも皮肉といえば皮肉である)。……というのは俺の個人的な体験に過ぎないけれど(中居クンが「必要」だったのか俺は)、とにかくテレビなんて1日に24時間分の番組を作ればいいんだから、もっと面白いものを本気で制作しろと言いたいね。そうじゃないと、ぜったい生き残れない。もちろん、ナンシー関もそろそろ考え直さんと。いつまでも「W浅野の重たさ」なんか論じてる場合じゃないと思います。

10月7日(木)13:30 p.m.
 武智幸徳『サッカーという至福』(日本経済新聞社)を読む。新聞記者にしては(偏見?)ユニークな視点と語り口を持っている点に好感。いつもそうなのだが、イタリアやオランダやブラジルのW杯における「昔話」を読むと、当時のビデオが欲しくて欲しくてたまらなくなる。CSで、過去のW杯をだらだら放送する「W杯チャンネル」みたいなもんを作ってくれんか。あと、「レフェリー」の語源が「refer(参照する)」であることを初めて知った。原始サッカー(んな言葉ないか)では、基本的には両チームのキャプテン同士が話し合いで判定を下し、それで決着がつかないときだけ観客席にいる審判の見解を「refer」したのだという。どういうわけか、俺はこういう「そもそも○○とは」的な話が好きだ。

 ゆうべは、柏×名古屋(ナビスコカップ準決勝第2戦)を観戦。第1戦3-1で柏が圧倒的に有利だったはずが、平野の大活躍もあって前半でトータル3-3になってしまった。なんでか知らないが、俺は平野がどんなにいいプレイをしてもサッカーをやっているように見えない。どうしてだろう。じゃあ何をやっているように見えるかと言うと……うーむ。よくわからん。ハンドボールなんか似合うんじゃないかとは思うのだが、別にハンドボールをやってるように見えるわけじゃないしな。とにかく、サッカー選手に見えないのだ。ま、そんなことはどうでもよろしい。試合は延長にもつれこみ、最後は渡辺(光)という選手のVゴールで柏が決勝進出。おもろいゲームだった。トーナメントの魅力は侮れない。

 サウサンプトン×ダービー(プレミア第10節)を見る。SKY sportsでは毎週水曜日に「マンデー・ナイト・フットボール」(月曜のゲームの生中継&週末のゲーム解説)という番組をやっていて、この試合もその枠内の放送である。この番組で解説をしているのが、アンディ・グレイという人物。何者だか知らないが、ビデオのストップモーションを駆使した解説は、まさに言いたい放題で面白い。画面に線や矢印を書き込みながら、「この失点場面、キーパーは前に出ずに待っているべきでした」「この位置のフリーキックで、壁がここに立っていないなんて信じられません」「レフェリーはレッドを出しましたが、この位置から選手の動きが見えるわけないじゃないですか」といった調子で選手やレフェリーをこきおろすのだが、これがもう、完全無欠の結果論。しかしアンディ・グレイは、プロ野球解説者のように「これは結果論ですが」などというエクスキューズを一切しない。悪びれることなく堂々と発言するその態度は、「キング・オブ・結果論」といった風情である。すがすがしい。選手やレフェリーは頭に来るだろうが、返す言葉がないことも事実なんじゃなかろうか。一見ムチャとも思える結果論が、その国のサッカーを鍛えるという部分もあるに違いない。

 試合のほうは、前節でユナイテッドと3-3のドローを演じたサウサンプトンが、また同じスコアでドロー。75分まで3-1でリードしていたのに、ラウルセンのFKで1点差に詰め寄られると、それまでの攻勢がウソのように攻められまくり。ついに力尽きて94分に同点ゴールを決められた(直後にタイムアップ)わけだが、あいつら、勝ってるときに「時間を使う」っちゅう発想がないのかね。ここでキープすれば勝てるってときに、なんで自陣で得たFKを敵ゴール前に放り込む? あそこで20秒でもキープしてりゃ、最後のクロスは上がらなかったかもしれないのに(結果論)。まあ、そのへんがプレミアのいいところでもあるんだが。サウサンプトンの1点目を決めたパハースというラトビア人FWが目を引いた。「おいおい、そこから撃つかね」と思ったら、パルマ戦のヴィエリとパルマ戦のアルメイダを足して2で割ったようなスーパーゴールである。プレミアを見ていると、ぜんぜん知らんチームでも、「これは」と印象に残る選手に出会えることが多い。相手の持ち味を消し合うセリエと違って、存分に持ち味を出し合うサッカーをやっているせいだろうか。

10月6日(水)14:10 p.m.
 秋である。ちゃりんこのパンクは修理したが、涼しいし気持ちがいいし運動不足でもあるので、今日からは徒歩通勤。およそ20分の道のりを、ぐだぐだと考え事をしながら歩く。電車や自転車やクルマに乗っているときよりも、歩いているときのほうが物をよく考えるのはどうしてなんだろう。とはいえ別に哲学していたわけではなく、「カネねーなー、こんどの入金いつだったかなー」という現実的苦悩が頭の大半を占めていたのだが。2月から5月までヒマぶっこいていたのが、今になってボディブローのように効いているのである。なんて切ない秋。

*

 平塚晶人『ウェールズへ』(文芸春秋)を読む。好著。「ラグビーを見て面白いとは思うけど、本当の面白さがわかっていないような気がする」という俺のような人間には、うってつけのテキストである。ルール依存度の強い競技の典型(だと俺は思うのだが)であるがゆえにラグビーが直面している現実、というものがよくわかる。戦術依存度の高いサッカーなどと違い、ルール上の制約が多い競技ほどプレイはパターン化し、攻防が膠着状態に陥って「見せるスポーツ」としての魅力を失ってしまうのかもしれない。本書も、イングランドと南アフリカのテストマッチを観戦した著者が「ラグビーがつまらなくなった」と嘆くところから始まっている。

 しかし、ある競技が面白いかどうかの責任は、競技自体だけにあるわけではない。イングランドの観客たちは、自国チームが勝ったという満足感だけでなく、ラグビーというスポーツの面白さを十分に味わっていたのではあるまいか。日本のジャーナリストには見えない面白さが、彼らには見えたとしても、少しも不思議ではない。たとえば野球もルール依存型競技で、高度にパターン化しているが、それでもわれわれが充分に楽しめるのは、たぶん「目が肥えている」からだ。おそらく欧州の野球記者(そんなものがいると仮定しての話だが)よりも、日本の一般野球オヤジのほうが、野球を「わかっている」と思う。つまり面白いかどうかは、競技自体の性質と観客の資質によって相対的に決まるのだ。

 競技の国際化&ビジネス化が進むと、「目の肥えていない」人々にも面白いと感じさせる必要が生じ、「より得点が入るように」「より激しい攻防になるように」といった方向でルールが変更される傾向があるが、いかがなものか。たとえば日本の高校ラグビーには「スクラムを1.5メートル以上押してはいけない」というルールがあるらしい。国際化やビジネス化とは関係のない、技術向上を目的とした特別ルールなのかもしれないが、常識的に考えてかなりヘンな話だ。それって、ラグビーそのものを否定してないか? それはともかく、どんなスポーツにとっても、浅薄かつ短絡的なルール改正は、自らの首を絞める行為のように思えて仕方がない。あんまり本書の趣旨とは関係ない感想になってしまったが、そういう点でラグビーは大きな曲がり角を迎えているのかもしれない、と思った次第。雑誌の場合も、安易なリニューアルが部数ダウンに拍車をかけることが多いが、それとこれとは関係ないか。ともあれ、100年の歴史を持つような文化は元来それなりの魅力を持っているはずなのだから、あまり目先の利益を追いかけてジタバタしないほうがいいと思う。ビジネス至上主義なんて、そう長続きするとは思えない。

 本書によれば、今回のジャパンは史上初めて「攻めの形を持たないチーム」であるらしい。基礎体力やボール奪取力の向上に時間を割いたために、「トライの取り方」まで手が回らなかったというのだ。ありゃまこりゃま。もう一つの「ジャパン」といっしょじゃんか。しかし著者は、「平尾監督が開き直ったときの強さ」に期待している。「ジャパン・オリジナル」は大会中に生まれるかもしれない、とも書いている。サモア戦にはがっかりさせられたが、開き直るには十分すぎる結果だった。著者の言葉を信じてウェールズ戦を楽しみにすることにしよう。

*

 というわけで、昨夜はラグビーの本を読みながら、ユベントス×ベネチア(セリエA第5節)を横目で観戦。まさにスポーツの秋、読書の秋なのである。ダビッツもオリセーも不在で情けないプレイに終始していたユーベが、後半ロスタイムに決まったコンテのゴールでようやく勝ち点3をモノにした。ありゃりゃ、またコンテで1-0かよ。例のゴール数当てコンテスト、ジダンかコンテか迷った挙げ句にジダンにしちゃったんだよなー。ちぇっ。それにしてもユーベは苦しい。デル・ピエーロもアカンかったようで、後半途中でコバチェビッチに代えられる始末。次節のローマ戦(オリンピコ)が大きな節目になるかも。でもローマもデルベッキオとトッティが故障したらしいしなぁ。頼むから、出てベッキオ。

 さらに読書を続けながら、パルマ×ベローナ(セリエA第5節)を前半だけ見る。開始7分までに、アモローゾ&オルテガの移籍組がそろって今季初ゴール。さらにクレスポも決めて、やっと暗いトンネルを抜け出したようである。だけど、次節はアウエーのフィオレンティーナ戦。ただしフィオのほうもローマにずたぼろにされた後だけに、パルマにも勝機はあると見た。

10月5日(火)13:05 p.m.
 どうやら世界一印象的なPKを蹴る大物ストライカー・パレルモは、12月からラツィオに来るらしい。でも3月から南米予選が始まるんだろ? もしかして代表に召集されないことを見越しての獲得なのか? そんな奴、獲ってどうすんだ。

 レアル・マドリー×バレンシア(リーガ第6節)は、なんと2-3でバレンシア。初勝利がマドリー戦とは、おそれいった。しかし、ロベカル退場で前半3-0にしたにもかかわらず、1点差まで詰め寄られるあたりが何とも危なっかしい。ショートコーナーからゴール前に侵入し、モリエンテスの2点目をアシストしたラウールのプレイが光った。ところでマドリー、アネルカとシードルフでジダンをゲットするってホント?

 ラツィオ×ミラン(セリエA第5節)の大一番をビデオ観戦。なんというゲームであろうか。17分、ヴェーロンの強烈なミドルシュートでラツィオ先制。こいつのキックは精度・威力ともに半端じゃない。35分、ウェアの当たり損ねのシュートがミハイロビッチの頭に当たって同点。しかしその1分後、汚名返上をすべくミハイロが気合いを込めてニアサイドに蹴ったCKがGKアッビアーティのパンチングミスを誘ってラツィオ勝ち越し(シメオネのゴールと発表されたが、彼が触ったようには見えなかった)。さらにその2分後、サラスのゴールで3-1。この時点で勝利を確信した俺はチェルシー×マンチェスター(5-0)の再現を期待しつつ「ぼこぼこにしろー」と喚いていたのだが、ここからが阿鼻叫喚であった。43分、シェフチェンコのゴールで1点差。そして57分、ドリブルで突破してきたウェアをマルケジャーニが倒してPK。シェフチェンコが決めて同点。さらに69分、緩慢なラツィオ守備陣の隙を突いたシェフチェンコがハットトリックとなるゴールを決めて、ついにミランが勝ち越してしまった。シェフチェンコめ。ザッケローニがベルルスコーニの指示に従ったせいかどうかミランは2トップだったのだが、この快足FWはビアホフがいないほうが伸び伸びプレイしているように見える。ともあれ、残り20分で3-4。この苦境を救ったのは、サラスであった。72分、右サイドからヴェーロンがグラウンダーで折り返したボールを左足インサイドで丁寧に蹴り込んで4-4。どっちも勝っていないのが不思議に思えて仕方がない壮絶なドローであった。チャンスは圧倒的にラツィオのほうが多かったんだけどねぇ。バーに弾かれたヴェーロンのシュート、いずれもアッビアーティの好セーブに阻まれたサラスのダイビング・ヘッドとタイムアップ直前のミハイロのCK(完全に枠を捉えていた)。その他、もろもろ。少ないチャンスを2トップがことごとくモノにしたミランのほうがしたたかだった、ということか。
 ラツィオのメンバーは、マルケジャーニ、ファバッリ、ミハイロビッチ、ネスタ、ネグロ(パンカロ)、ヴェーロン、アルメイダ、シメオネ(インザーギ)、コンセイソン、ボクシッチ(マンチーニ)、サラス。2戦連続スタメンのボクシッチは、もう一歩のところでゴールが決められない。そろそろ決めとかないと、乗り遅れちゃうぞ。

10月4日(月)15:30 p.m.
 嗚呼。自国代表の出場する世界大会ってのは、ツラいねぇ。日本×サモア(プールD)は43-9でノートライの惨敗。パンパシで勝ったというけど、たとえ相手がメンバーを落としていたとしても、どうやって勝ったのか想像できないぐらい力量差があるように見えた。しかしまあ、ラグビーってのは、ゲームプランがちょっと狂っただけで滅茶苦茶になってしまう競技なのかもしれんなぁ。でも、とりあえずボールを前に落とさないでくれ。頼むから。大畑ぁ。

 引き続き、チェルシー×マンチェスターU(プレミア第10節)の大一番を観戦。ラグビーの悔しさを晴らすべく、「ぼこぼこにしてしまへ!」とチェルシーに声援を送る。でも、まさか、ほんとにぼこぼこにできるとは思わなかった。なーんと5-0でチェルシーのノックアウト勝ちである。キックオフの瞬間から「おお、これは」と思わせる軽快なパス回しを見せたかと思うと、開始20秒ぐらいでペトレスクが右から上げたクロスをポジェがヘッドで叩き込んで先制。2点目も、ほぼ同じ位置からのクロスをサットンが頭で合わせたものだった。それ以外にも、同じパターンで3回以上は決定機があったと思う。ユナイテッド守備陣は、明らかにタイービとディフェンダーの連携が悪い。野球でいえば、「ヒットエンドランで1-3塁」を3イニング連続で決められたぐらいの格好悪さである。2-0の後は、ワイズに挑発されたバットがレフェリーの目の前(というか手の届く場所)で相手をぶん殴って一発レッド。この時点で勝負ありだったのだが、それにしても5点とは。ユナイテッドの連続無敗記録もこれでストップ。キーンとギグスのいないユナイテッド、プティとシーマンのいないアーセナルに比べて、チェルシーは目立った故障者がいないのが強みである。

10月3日(日)
 昨夜は、豪州在住の同級生(高校のブラバン仲間・女性)が来日したので、吉祥寺に集まって飲む。地元はW杯で盛り上がってるんじゃないのかと訊くと、シドニーはラグビーファンが多いが、彼女の住んでいるメルボルンではラグビーよりオージーボールのほうが人気があるのだという。オージーボール。レフェリーの動きが不審な謎の球技。そういえばクリケットも盛んで、好きな人はテレビでずーっと見てるんだとか。クリケット。なぜ1試合に何日もかかるのかわからない謎の競技。クリケットはW杯をやっていたと思うが、オージーボールはどうなんだろう。ニュージーランドとかトンガとかフィジーとかでは、多少は普及してるんだろうか。それとも相撲と同じで発祥の地から一歩も抜け出していないんだろうか。いや、でも相撲は「世界選手権」みたいなもんがあったような気がするな。日本でもオージーボールをやっている連中がいると友人から聞いたことがあるけれど、それってどういう動機なんだろう。人はどこでオージーボールと出会うのか。どうでもいいけど。

 帰宅後、アストン・ヴィラ×リヴァプール(プレミア第10節)を後半から観戦。前半は0-0だが、リヴァプールはまた1人退場になっていた。1人減るまではリヴァプールも攻めていたらしいのだが、俺が見始めてからは防戦一方。いつ取られてもおかしくない状態だった。しかしヴィラはヴィラで決定力がない。というより、リヴァプールの根性ディフェンスがすばらしい。球際に強いし、エリア内でも足元にフェアで鋭いタックルをかますのである。とくに19歳のMFジェラードと国籍不明のフィンランド人DFヒーピアがよく頑張ったね。ああいう展開で守りきるケースというのは滅多にないと思うのだが、リヴァプールはそれをやってのけた。勝利に等しいスコアレスドローである。

 その後、ラグビーW杯イングランド×イタリア(プールB)を観戦。ヴィラ・パークでリヴァプール戦を見ていた観客も、家に帰ってラグビーを見たんだろうか。それとも、サッカーファンとラグビーファンは別、なのだろうか。試合は67-7でイングランドの圧勝。試合展開なんか覚えちゃいないし、覚えていてもどう表現していいかわからんが、イングランドはいっぱいトライを取っていた。イタリアはとても弱かった。

10月2日(土)
 ラグビーW杯開幕。スカパーは全試合生中継するわけだが、その間サッカーがお休みになるわけでもなく、これから1ヶ月、どんな観戦スケジュールになるのかを考えると(日本シリーズもあるし)、ちょっと気持ち悪くなったりする。ラグビーはようわからんし、日本戦と決トナ以外はあんまり見ないだろーなーと思いつつ、とりあえず開幕戦のウェールズ×アルゼンチン(プールD)を見たのだが、これは、やはり、面白い。開幕前のテストマッチなんかはちらちら見ていて、そんなに興味が持てなかったんだけど、やっぱ本番になるとムードが違うのである。ラグビーもサッカーも、英国におけるホームチームへの声援というのはほんとうに気持ちがいい。試合は23-18でウェールズの勝ち。これはテストマッチでも見たことがあるのだが、アルゼンチンのプレイス・キッカー、蹴るのが遅すぎ。ラグビーには遅延行為を取り締まるルールはないのか。負けてるほうが遅延させちゃしょーがねーけど。

 バルセロナ×アーセナル(CL1次リーグB組・第3節)は、期待を裏切るかったるいゲームで、1-1のドロー。なんか最初から最後までお互いに様子を見てる感じ。バルサにとっては、地元ファンがブーイングでスーケルの闘志に火をつけてしまったことが誤算か。レアル時代の不遇を思い出したが故に、意地を見せたような感じだった。それにしても、ラグビーを見た直後にサッカーを見ると、よく言われるサッカーの「開放感」とか「自由」といった性質が実感を伴って理解できるような気がする。ボールがまっすぐ転がる、前の選手にパスを出すといった当たり前のことが、なんとすがすがしく感じられることか。でも、「自由」なサッカーが極端なロースコア、「不自由」なラグビーがハイスコアというのが、逆説的な面白さなのかも。あれだけストイックな競技で、しかも1試合に1〜2点しか入らなかったら、ラグビー選手はストレスで気が狂うかもしれない、などとよくわからない感想を抱いた俺であった。

10月1日(金)
 マンチェスターU×マルセイユ(CL1次リーグD組・第3節)は終盤にユナイテッドが逆転して2-1。昨季はあれほど感動した彼らの粘り強さだが、なんだか今では逆に胸焼けしてしまう。そんなに勝ちてぇのか、たまには諦めろこの野郎、みたいな感じ。いや、まあ、みんな勝ちたいし、諦めちゃいけないんだけどさ。昨季は「俺たちは負けない」という「信念」を支えにしていたように見えたのだが、今は「結局は俺たちが勝つんだもんね」という「慢心」に見えてしまうのである。慢心で勝てるなら、それに越したことはないような気もするが。何はともあれ、アンチ・ユナイテッド気分がふつふつと芽生える今日この頃なのであった。ファーガソンの立ち居振る舞いも、なんだか鼻につくし。今マンチェスターとバイエルンが試合したら、バイエルンを応援しちゃうかも。俺って場当たり的。

 セ・リーグはドラゴンズが優勝。一度だけ首位を奪ったのが横浜でも巨人でもなく阪神だった、という幸運はあったにせよ、あの戦力でチームを独走させた星野監督の手腕は見上げたものである。ちょうど優勝が決まった日に週刊文春に掲載された森の手記が面白かった。あそこまであからさまな長嶋批判をした以上、ジャイアンツに復帰するつもりは毛頭ないのだろうと思うと残念だけれど。「長嶋野球は次に何が起こるかわからないからスリリングで面白い」と長嶋信者は言う。しかし、「次に何が起こるかわからない」はスポーツの本質であって、長嶋野球特有の魅力でも何でもない。誰が監督をやっていようと、「次に何が起こるかわからない」から、われわれはスポーツを見るのである。むしろ監督の仕事とは、そのスポーツの本質に抵抗を試みながら「次」を予測し、先を読んで手を打っていくことなのではないか。そもそも野球というのは、数あるスポーツの中でも「次」に起こることが限定されており、予測しやすい競技なのである。たとえば「状況」(ボールや選手の位置、得点差、時間帯など)が無限にあるサッカーに対して、野球の場合はアウトカウントと走者の配置の組み合わせが、「無死無走者」から「二死満塁」まで24通りしかない。さらにボール・カウント(0-0から2-3までの12通り)を組み合わせても、たった288通り。そこに得点差(同点、1点差、2点差、3点差、4点差、5点差以上)の裏表(リードしているかされているか)を加えても3168通り、イニングによる違い(1回〜9回の裏表)を勘案しても5万7024通りしかないのである。しかもどんな状況だろうと、その「直後」に起きることはわかっている。投手がホームに向かって投げる、走者のいる塁に牽制球を投げる、投げる前にボークを犯して走者が進塁する、の3通りだ。投手がホームに投げた後に起こることは、空振りストライク、見逃しストライク、ボール、ファウル、単打、二塁打、三塁打、本塁打、内野ゴロ、内野フライ、外野フライ、稀に外野ゴロの12通り。たぶんコンピュータ・ゲームの制作者にとっては、あらゆるスポーツの中でも野球ゲームを作るのがいちばん簡単なのではないだろうか。それだけ「状況」が限定されているスポーツで、データや経験を生かして先を読もうとしない監督はただの阿呆だとしか俺には思えないのである。

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