H.Hiraizumi's Birding Page

野鳥観察の法律Q&A(Ver.2)

−とわの彼方へ翔び去ったセイタカシギに捧げる−
バード法律事務所
   トリ弁護士たち


この法律Q&AはNiftyserveのFBIRD(ネイチャー&バードフォーラム)で公開されているものです。これまで資料部分の一部を使用させてもらっていましたが、作者の糸魚さん(ハンドルネーム)から広く宣伝・広報してくれとのメールをいただき、本体部分をページ化することにしました。感想や疑問点、改善すべき点などは糸魚さん(HGC00053@niftyserve.or.jp)に直接メールしてください。

《野鳥密猟者に出会った場面の法律Q&A》

【かすみ網による密猟】
Q 第二次大戦後、かすみ網猟が禁止されたそうですが、どんな経過だったので
 すか。
A 戦後の昭和21(1946)年、GHQの野生生物科長であったオースチン
 博士が、日本中を視察し野生鳥獣が極めて少ないことに驚き、保護の徹底と狩
 猟の規制を強く日本政府に指示したそうです。昭和22(1947)年には日
 本鳥類保護連盟が結成されて、毎年4月10日を愛鳥日(バードデー)と定め
 られましたが、そのような背景のもとに、その22年の9月に、かすみ網猟の
 禁止を含む狩猟法施行規則の改正が行われました。
  この改正の主要な点は、
 ア 狩猟鳥の種類を46種から21種にしたこと。
 イ これを受けて、かすみ網との関連で問題となっていた、ツグミ・カシラダ
  カ・アトリの3種が、狩猟鳥から除かれたこと。
  ウ 狩猟期間を1か月短縮したこと。
 エ かすみ網を法定猟具から除き、野放しであった普通の空気銃を法定猟具に
  加えて規制し、狩猟鳥のわなによる捕獲、飛行機・自動車・モーターボート
  からの捕獲等を禁止したこと。
  オ 主な狩猟鳥について、1人1日当たりの捕獲数を制限したこと。
 などでした。
Q その改正時のかすみ網の禁止について、もうちょっと詳しく教えてください。
A ハイ、はい。「網」とか「わな」を使用して狩猟をする免許は甲種狩猟免許
 ですが、それまでの狩猟法施行規則は、甲種狩猟免許の猟具としての「網」に
 ついて、「無双網、『かすみ網』その他の張り網、突き網及び投げ網」と定め
 てあり、「かすみ網」の使用を許していたのですね。
  昭和22(1947)年9月の狩猟法施行規則の改正で、「かすみ網その他
 の張り網」が「カモ用張り網」と改められ、これにより「かすみ網」の使用が
 禁止されることになったわけです。
Q そうなると、まず占領軍の政策だったわけね。その後、市民の動きはどうな
 っていくのかなー・・・。
A 児童文学者遠藤公男氏の「ツグミたちの荒野」(講談社刊)には、かすみ網
 猟の禁止後も相変わらず「かすみ網」で密猟が続けられていた様子ばかりでな
 く、「カモ用張り網」でいろいろな鳥類を捕獲したり、有害鳥類の駆除だと偽
 ってツグミ猟をしていた実情が書かれておりますね。
  しかし、心ある人たちは、隠れ蓑となっている「張り網」を禁止せよと、運
 動を起こし、やがてこれも法定猟具から除かれるようになりました。そして、
 平成3(1991)年に、それまでの使用の禁止に加えて、かすみ網の「販売、
 頒布、捕獲目的の所持」が禁止され、同時に「輸出貿易管理令」も改正されて、
 かすみ網の輸出も原則的に禁止されるという画期的な鳥獣保護・狩猟法の改正
 に結実したのですね (^o^)。
Q かすみ網による密猟事件とその対策を教えてください。
A 現在では、かすみ網は、使用の禁止とともに、かすみ網の「販売、頒布、捕
 獲目的の所持」も禁止されます。
  かすみ網の禁止については、その条文が、法律に不慣れな人にとって必ずし
 も明快ではないので、条文を見ておきましょう。
  まず、その使用禁止についての狩猟鳥類不正捕獲罪(第1条の4第3項の違
 反・6箇月以下の懲役)です。
  第1条の4第3項は、「環境庁長官又は都道府県知事は狩猟鳥獣の保護蕃殖
 の為必要と認むるときは狩猟鳥獣の種類、区域、期間又は猟法を定め其の捕獲
 を禁止又は制限することを得」と規定しています。
  そして、これを受けて、昭和53年環境庁告示43号(鳥獣保護及狩猟ニ関
 スル法律1条の4第3項の規定に基づく狩猟鳥獣類の捕獲(殺傷を含む。)禁
 止又は制限)がありますが、その3号に「狩猟鳥獣は、次の猟法を用いて捕獲
 をしてはならない。『イ ノウサギ以外の狩猟鳥獣を捕獲するため、はり網を
 使用する方法(人が操作することによってはり網を動かして捕獲する方法を除
 く。)』と定めておりますから、野鳥については、かすみ網は全面的に使用禁
 止されていることが分かりますね。
  なお、念のためですが、非狩猟鳥をかすみ網で捕獲した場合は、そもそもそ
 の対象とした野鳥が非狩猟鳥ですから、重い処罰が予定されている、野鳥密猟
 罪(第1条の4第1項の違反・1年以下の懲役)に当たるわけですね。
    次は、かすみ網の販売、頒布、捕獲目的の所持の禁止に関する、かすみ網不
 正所持罪(第19条の3の違反・6箇月以下の懲役)です。
  その条文は次のとおりです。
 第19条の3 (1)第1条の4第3項の規定に依り猟法として環境庁長官の定む
  る所に依り使用することを禁止せられたる網又は罠にして構造、材質、使用
  方法等を勘案して鳥獣の保護蕃殖に重大なる支障ありとして環境庁長官の定
  むるもの(以下特定猟具と称す)は鳥獣の捕獲の用に供する目的を以て之を
  所持することを得ず但し第12条第1項の許可を受けたる者(同条第2項の
  従事者証の交付を受けたる者を含む)其の許可を受けたる所に従ひ鳥獣の捕
  獲の用に供する目的を以て所持する場合は此の限に在らず
   ○平成3年環境庁告示32号(鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律19条の3第
    1項の規定に基づく特定猟具)
    鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律(大正7年法律32号)19条の3第1項
   の規定に基づき、特定猟具を次のように定める。
    かすみ網(はり網のうち棚糸を有するものをいう。)
 (2)特定猟具は之を販売し又は頒布することを得ず但し第12条第1項の許可を
  受けたる者に其の許可に係る特定猟具を販売し又は頒布する場合及輸出せら
  れるべき特定猟具を総理府令の定むる所に依り予め環境庁長官に届出でて販
  売し又は頒布する場合は此の限に在らず
 ということで、かすみ網に関する事件は、もちろんすべて犯罪ですから、行政
 ・警察に届けて捜査をしてもらうことになります。そこで、野鳥犯罪に立ち向
 かう各ケースごとの通報先を踏まえて、野鳥観察者である私たち市民が、「個
 人レベル」で、このかすみ網問題にどう対応したらいいかについて、検討して
 みましょう。
〈通報の前に〉
 1 かすみ網と農業・水産業者が鳥類の被害から守るために使用している「防
  鳥網」とは違うこと、つまり「かすみ網」であることを十分に確認しましょ
  う。ただ、ここでいう「防鳥網」は、本物の「防鳥網」のことですから、念
  のため付け加えておきますネ。
 2 設置場所を確認し、証拠資料として、その状況の写真を撮る。
   なお、写真があれば、捜査の立ち上がりが素早いでしょうが、その写真が
  捜査開始のために、絶対提供しなければならないというわけのものではあり
  ませんので、これも念のためネ。
 3 仕掛けられているかすみ網は、犯罪の重要な証拠物ですし、不法な物でも
  他人が勝手に処分できないので、原則的には、そのままにしておかなければ
  ならないので、また念のためネ。
〈対応その1:行政ルート〉
  1 すぐに、都道府県の鳥獣保護担当課(「特別警察官」)に通報して捜査を
  開始してもらう。
  2 「鳥獣保護員」に連絡して、鳥獣保護担当者・特別警察官とともに適切に
  対処してもらうようにする。
 3 通報は、その場の状況に応じて、電話など適宜な方法によるわけですね。
〈対応その2:警察ルート〉 
 1 野鳥犯罪が発生した場合、行政サイドの担当者が第一次的に処理に当たる
  ことになっていますが、目の前に犯人がいるような場合には、実力行使に慣
  れている一般の警察官が、その際の通報先としてはベターですよね。
      そこで、そんなときは、110番通報をするなりして、警察官の出動を要
  請しましょう。
 2 私たちの経験では、警察の出動はスムースでないのですね。
   だけど、野鳥たちのために、根気よく誠意をもってやりましょう。
 3 捜査が開始されたら、是非、参考人として捜査協力してくださいね。
〈対応その3:告発ルート〉
 1 「対策その1」とか、「その2」を実行して、行政や警察に通報したのに、
  立ち上がってくれない場合もあります。
  2 その場合は、鳥獣保護・狩猟法に違反した犯罪があり、しかしその犯人の
  氏名が不明な場合なので、警察・行政の「尻叩き(^^;)」をする必要がありま
  す。
   そこで、氏名不詳者に対する鳥獣保護・狩猟法違反被疑事件を都道府県の
  「特別警察官」あるいは警察に対し、刑事訴訟法の規定に従って、「告発」
  という手続をとることもあるのですね。そうすると、その事件の捜査が、間
  違いなく、開始されることになります。
〈対応その4:市民運動ルート〉
 1 平成3(1991)年にかすみ網関係の画期的な鳥獣保護・狩猟法の改正
  ができましたが、これこそ市民運動の大きな成果でしたね。
  2 「全国野鳥密猟対策連絡会」のような活動が、今後とも広く国民に定着す
  るように頑張りたいものですね。
Q ホオジロなどが多いフィールドで、「スズメを捕るんだ」と言って、狩猟期
 に、「かすみ網」を仕掛けている人を見掛けました。スズメは狩猟鳥だから、
 捕ってもいいのかなと思い、「かすみ網」を取り上げるわけにもいかず、連日
 のように非狩猟鳥を捕っているのではないかと心配して、監視を続けています。
  本当に、狩猟鳥を捕るためなら、狩猟期に、「かすみ網」を仕掛けてもいい
 のでしょうか。私の本心は、「かすみ網」を2度と使用出来ないように、切っ
 てしまいたいのですが。
A 私たちは、「かすみ網の使用が絶対に禁止されている」と理解し、これは犯
 罪ですから、野鳥犯罪に対する「対応その1:行政ルート」や「対応その2:
 警察ルート」により、直ちに通報をしましょう。
  「かすみ網」それ自体が重要な証拠物で、その仕掛けられている状況もまた
 大事な証拠になるわけですから、写真を撮影しておく程度に止めて、みだりに
 手をつけないようにし、捜査の進行を見守りましょうね。
Q かすみ網は全面的に禁止されているのに、今でも密猟に使っているのを見か
 けることがあるんですが、真新しいものを発見したときはどうしたらよいのだ
 ろうか。また、一見してごく古いかすみ網を発見した場合は、その場で処分し
 ても構わないのですか。
A 仕掛けられているかすみ網は、犯罪の重要な証拠物です。そこで、真新しい
 ものを発見したときはもちろんですが、一見してごく古いかすみ網を発見した
 場合でも、他人が勝手に処分できないので、そのままにしておいて、早速、通
 報しましょうね。
  あなたの通報を受けたら、直ぐ立ち上がってくれるように、取締り機関と市
 民との連携の輪を拡げたいと願っております。

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Last updated on Apr.24.1996
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