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第73回
TIM BUCKLEY
推薦盤「goodbye and hello」

  日本で言えば山本精一、加橋かつみ。海外アーティストで言えば、ピーター・アイヴァース、ルイス・フューレィ、そしてこのティム・バックリィ。
 

  もしかしたら生来のものかもしれないが、この面々に共通する、彼らの「声」そのものの悲しさと美しさは、やはり格別である。だから彼らの歌は、その声以上に悲しいものになる。
 

  悲しさ。それは歌に欠かせないものであるし、つまりは人間に欠かせないものである。悲しさのない歌や、悲しさのない人間は、到底つまらない。
 

  なぜなら人間は、根元的に悲しい生きものではなかったか。生きていても、死ぬ時も、死んだ後も、ヘタすれば生まれた瞬間から、どいつもこいつも悲しいではないか。祝福や幸福は一瞬であるからこそ「幸」なのであり、言いかえれば、その他のおおかたの時間は、常に悲しいのである。
 

  だからかもしれないが、悲しい歌は、一様に信じられる。その中でも一番悲しい歌を探して、何枚も何枚もレコードやCDを買うのである。そして自分の人生よりも悲しい歌に出会った時、一瞬だけは救われるが、さらに自分自身がどうしようもなく悲しくなるのである。そしてまた、シシフォスの神話のごとく、レコード屋に足を運び、アルバムを探すのである。
 

  ティム・バックリィは60年代後半から70年代前半に活動し、1975年に28才で死去。息子のジェフ・バックリィも、31才で他界したことは記憶に新しい。作品傾向は年度によって変遷しており、アルバムによって好みや評価は異なる。ファーストの「ティム・バックリィ」、セカンド作となるこの「グッバイ・アンド・ハロー」、そして「ロルカ」の3枚なら、私も薦める。
 

JOJO広重 2004.10.14.



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