アジズさんを救う会声明 


アブドゥル・アジズさんを救う会 声明

(2002年5月)



  
  

 現在、広島拘置所に勾留されているアフガン人難民申請者、アブドゥル・アジズさんのケースについてお知らせ申し上げます。私たちはこの広島で彼を支援している者です。 
  彼は今年2月28日、出入国管理及び難民認定法違反の容疑により、廿日市警察署に逮捕・勾留され、3月20日に起訴され、その後現在の場所に移されました。彼は昨年11月に大阪入国管理局に難民申請をしていましたが、不認定の通知を受けたのは廿日市警察署の留置場でした。 
   彼はアフガニスタン国内の少数民族であるハザラ人の青年です。カブール郊外のパルワン県の出身ですが、幼少のころからカブールに居住していました。1992年からカブール市内で始まった内戦で、ハザラ人の彼は、防衛戦を強いられてきました。そのような過程で彼は、イスラム統一党に入ります。1995年3月、タジク人勢力とタリバンのカブールでの攻防の中で、ハザラ人は陣地を奪われ、彼は、以来アフガニスタンに長期に入国することはできなくなりました。その間、1998年8月にはタリバンがマザリシャリフでハザラ人の大虐殺を行ないました。また2000年から国連の制裁などによりタリバンは国際的に孤立していきます。2001年に入り、ハザラ人特に戦闘員ないし戦闘に適する若い男性に対する迫害は、いっそう度をましてきました。そのような中で、彼が同年4月にアフガニスタンに入国した際、タリバンが彼を逮捕しに来たという情報を聞き、もはや帰国できないことを彼は認識しました。 
 現在、日本国内において入国管理当局によって拘禁中のアフガン人庇護希望者の厳しい状況が伝えられています。その多くはハザラ人です。彼等の多くは精神的なダメージを受けており、一斉摘発があった昨年10月以降、自殺未遂を起こしたアフガン人は8人と報道されています。アジズさんも精神的に追い込まれた状況に置かれており、抗うつ剤と睡眠薬を服用せざるを得ない状態が続いています。5月10日に広島地裁において裁判が行なわれる予定ですが、それまで彼が持ちこたえることができるかどうかも危ぶまれています。弁護人による彼に対する保釈請求も却下されました。 
 今年2月21日に国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)日本・韓国地域事務所は、以下のような声明を出しています。(以下、抜粋)「庇護希望者と難民の拘禁は通常回避されるべきであるというのが国際基準の原則である。これはUNHCRの執行委員会によって承認された原則であり、同執行委員会を構成する57ヶ国の政府代表の中には日本も含まれている。残念ながら日本国内で、国際的保護を必要とするアフガン人その他の庇護希望者のうちかなりの割合が拘禁されていることが判明した。そのうちアフガン人約30人が日本で拘禁中である」「現在日本で拘禁されているアフガン人は、安全な帰還が可能となるまでは、一定の条件の下で放免されるべきである。長期拘禁は、彼等の苦しみを増すだけである」
 裁判所側はアジズさんが罪証を隠滅するおそれがあるとしていますが、現時点で書類上の証拠もあり、今後供述を翻すことは考えられません。また、UNHCRのガイドラインが指摘するように、彼は一般の犯罪被告人とは別に処遇されるべきだと考えます。
 現在のアジズさんの健康状況を鑑みて、直ちに保釈することを私たちは要求します。また庇護希望者に対する国際基準に沿った対応を、広島地方裁判所及び彼が収監されている広島拘置所に要求するものです。 現状では国際平和都市・広島の名前が泣くものと存じます。


 以上

 


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