2002年3月19日 参議院法務委員会
 


2002年3月19日 参議院法務委員会
 
  福島瑞穂議員が在日アフガニスタン難民問題を徹底追及
  

 3月19日の参議院法務委員会では、社民党の福島瑞穂議員(社民党幹事長)が在日アフガニスタン難民問題について鋭く切り込みました。
 強制送還に関する質問について、中尾局長は「パキスタンなら今でも送還できる」と豪語、周辺諸国の難民の送還などのスケジュールにあわせて強制送還の日程を立てることを明言し、収容→送還という方針を変えるつもりのないことを強調しました。また、福島議員は、アフガニスタン難民の認定率が欧米で80%以上にのぼっていることを挙げて森山法務大臣を追及しましたが、森山氏は「(一般の)認定率は他国に遜色がない」という木で鼻をくくったような答弁に終始。中尾局長からは、アフガン人収容者たちによる自殺未遂が「デモンストレーション」だという趣旨の発言すら聞かれました。



 
難民認定と退去強制の二つの手続の併存は大きな問題 
  
○福島瑞穂君 社民党の福島瑞穂です。 
 まず初めに、難民問題についてお聞きをいたします。 
 去年、九月十一日、同時多発テロ攻撃以後、日本の入管は、難民としての庇護を求める多くのアフガニスタン人の上陸を拒否していると言われていますが、これは事実でしょうか。 
○中尾法務省入国管理局長 お答え申し上げますが、そのような事実はないものと承知しております。 
○福島瑞穂君 十月三日の日にアフガニスタンの人、九人の身柄拘束を行いました。九人は来日し、難民申請中、十代から四十代の男性ですが、十月三日になぜ九人の身柄拘束をしたのでしょうか。 
○中尾法務省入国管理局長 お答え申し上げます。 
 委員御案内のとおり、この難民申請手続と退去強制手続というのは別個、独立の手続でございます。従来から、難民認定手続が行われている場合でありましても、不法滞在者等、事案によりましては退去強制手続がこれと並行して取られているところでございます。 
 この者らにつきましては、東京地方裁判所の二つの部におきまして、これらの者の収容に関して、収容の是非について判断が二つに分かれて、その後、私どもの収容を適法とする主張と、相手方の収容すべきでないという主張が相入れなかったわけでありますけれども、最終的には東京高等裁判所におきまして、私どもの収容が適法であるという主張が認められて、いったんは全員収容したと、こういう経緯でございます。 
○福島瑞穂君 現在はどういう状況でしょうか。 
○中尾法務省入国管理局長 この九名のうち一名につきましては、本年二月二十日に大阪府の生野警察署で逮捕され、その後起訴されているものと承知しているところであります。 
 残りの八名のうち六名につきましては、収容部分を含めた退去強制令書の執行停止の決定が裁判所によってなされましたので、その決定に従いまして身柄の収容を解いておるところでございますが、この決定に対しては、私どもの方から即時抗告して、現在、東京高等裁判所の判断を仰いでいるところでございます。 
○福島瑞穂君 確かに、その入管の手続と難民認定の手続は別なのですが、むしろそのことが問題ではないかというふうに思います。 
 難民認定中に身柄拘束され収容される、場合によっては強制退去される。極端に言えば、別の手続ですから、難民認定の結論が出ないまま本国に強制送還されると、入管法違反で、ということも起こり得るわけですが、この二段階について批判の強いところですが、大臣、例えばこのことについて今後法律上検討すべきかどうか、感想をお願いいたします。 
○森山法務大臣 今の具体的な事件ではなくて一般的に申し上げますと、今の御指摘のような問題は、現在の難民認定法に基づいて適正に処理をされ、裁判所の判断も仰ぎながら妥当な方向へ進んでいるというふうに私は思っておりますので、今直ちに法律改正その他のことは考えておりません。 
○福島瑞穂君 問題なのは、難民認定取消し訴訟をやっている最中であったとしても入管上強制退去が可能であるという、そこだと思います。入管局長、いかがでしょうか。 
○中尾法務省入国管理局長 お答え申し上げます。 
 従来から、これは並行して手続を進めているということは申し上げているとおりであります。もちろん、難民認定中の者について退去強制手続が先に進行して退去強制令書が発付されておりましても直ちにそれを送還という手続まで進めないのが実務上の取扱いでありまして、いわんや訴訟が係属中のケースが非常に多いわけでありますし、そういう関係で、直ちに委員の御指摘のような関係で送還される場合というのは現実の問題ではございません。また、実務上、裁判所の場合でも送還部分についてのみの執行停止というのが実務上行われておるんだと承知しておるところでございます。 
  
東京地裁の収容停止決定は「第一審の一つの判断」に過ぎない? 
  
○福島瑞穂君 三月一日、東京地裁は退去強制令書執行停止の決定を出しました。この決定は、憲法上の問題も生じかねない重大な人権侵害という判断を示したものですが、私は、この裁判所の決定を是非、入管は尊重していただきたいというふうに考えますが、いかがでしょうか。 
○中尾法務省入国管理局長 先ほど申し上げたように、この決定につきましては種々法的な問題点もございますし、東京高等裁判所に即時抗告しているところでございます。あくまでも第一審の一つの判断だというふうに認識しております。 
○福島瑞穂君 このアフガニスタンの人たちは、非常にある意味で翻弄されたという気はするんですね。九月十一日にテロが勃発した、その後、十月三日に身柄を拘束された、そして裁判所の判断も分かれる、あるいは釈放され、また拘束され、また決定が出てというように、この間に非常に目まぐるしく判断も変わったりしております。 
 私は、聞いたところによると、この身柄の拘束中にアフガニスタンのテロとの関係で取調べを受けたと。どうも身柄の拘束を受けたのはそういう取調べやあるいは情報収集が目的だったのではないかとも聞いているのですが、その点はいかがでしょうか。 
○中尾法務省入国管理局長 お答え申し上げます。 
 私どもの方としては、委員御指摘のようなそういう情報収集等の目的は一切なかったものと承知しております。 
○福島瑞穂君 現在、入管施設に十四名が収容中ということでよろしいでしょうか。あるいは今在宅中のもので合計何人いるでしょうか。──十四名が現在、入管施設に収容中というふうに聞いているのですが、それでよろしいでしょうか。 
○中尾法務省入国管理局長 委員御質問のは、多分アフガニスタン人についてどうかと、こういうお話だろうと思います。 
 現在収容中のアフガニスタン人、これは退去強制手続にのっとっておるわけでありますが、それで収容しているのが二十名でございます。これは東日本センターに十五名、西日本センターに五名と、こういうことでございます。 
○福島瑞穂君 UNHCRが二月二十一日付けで、現在、日本で拘禁されているアフガニスタン人の放免を求め、三月十一日には世界教会協議会、アジアキリスト教協議会が日本で拘禁されているアフガニスタン人庇護希望者の放免を求め、また三月十三日はアムネスティ・インターナショナルが日本で拘禁されているアフガニスタン人の放免と退去強制令書の取消しを求める緊急行動要請をしました。にもかかわらず拘禁を続けることは日本の人権尊重主義に反しないかという点についてはいかがでしょうか。 
○中尾法務省入国管理局長 委員御案内の決議とか勧告とか要請等が出されておることは私どもも承知しておるところでございます。 
 これは、あくまでも私どもの方の入管法の規定に従って適正にやっているところでございます。入管法そのものが、難民認定中の者であっても退去強制手続にのせられるということは手続上もそういうことが明記されているところでございます。したがいまして、それぞれの不法入国、不法滞在ということで、本来は我が国から退去強制されるべき者であることは間違いないわけでありますので、その限りで、難民として不認定された者については、あとに残るのはそういう不法入国、不法滞在、オーバーステイも含めた不法滞在者としての立場ということでございますので、したがいましてそれらの者については入管法上の退去強制事由に該当するわけでありますので、やはり法に従ってそれらの者はしかるべきところにしかるべき方法で送還するのが本則だろうというふうに考えておるところでございます。 
  
「アフガンへ送還」の方針は変えず? 
  
○福島瑞穂君 しかるべきところに送還するというのは、いつごろ、どのようにされるおつもりでしょうか。 
○中尾法務省入国管理局長 これは、それぞれの送還されるべき送還国というものにつきましては入管法五十三条に所定の定めがございます。原則として、当該外国人の国籍国又は市民権の属する国ということにされております。しかし、これはあくまでも原則でございまして、当人が希望した場合、あるいはそういうところに送還ができない場合には、本人の希望するところ、あるいは現に前回居住しているところに送還することができるわけであります。 
 一般論で申し上げれば、仮にアフガニスタンという国籍の者でも、その以前に住んでいたところはパキスタンということであって、本人がパキスタンに帰りたいということで送還を希望すれば、すぐにでもパキスタンに帰すための渡航関係の手続に入ることができると、こういうことでございます。 
○福島瑞穂君 入管法五十二条六項は、「送還することができないことが明らかになつたとき」という特別放免の制度はありますし、当然ですが、仮放免の制度などもあります。現在、空爆も続いており、この例えば特別放免、仮放免をもっと使うということは考えられないのでしょうか。 
○中尾法務省入国管理局長 特別放免という規定はございますけれども、これは明らかに送還不可能だというような、明らかなという文言があるものと承知しております。 
 現時点の国際情勢等々を見てみますと、当初はUNHCR等の国際機関の方としても、単に私どもの方にいるアフガニスタンの避難民を含めまして、全世界に点在して避難しておる避難民の帰還計画というものが今年の春をめどに進められるというふうな情勢にありましたけれども、これも夏ぐらいになるという話もございます。したがいまして、それらの情勢を見ながらそれに対して私どもの方で対応したいというふうに考えておるところでございます。 
  
アフガン人の自殺未遂は「デモンストレーション」? 
  
○福島瑞穂君 仮放免のことを申し上げたのは、先ほども出ましたが、自殺未遂が出ているということで、自殺未遂は何人、何回起きているんでしょうか。 
○中尾法務省入国管理局長 お答え申し上げます。 
 この自殺未遂という表現が必ずしも適切かどうかという問題はございまして、いろんな事情で、デモンストレーションというような形で、いわゆる自損行為をやる場合もございます。したがいまして、今のところで私どもの方で把握しているところで申し上げれば、昨年の十月以降、東日本センターに収容されておるアフガニスタン人について、いわゆる自損行為を行った者は現時点で八人あると承知しております。 
○福島瑞穂君 八人という数は本当に多いと思うのですが、自殺未遂と言うか自損行為と言うのかは別にして、例えば精神科医による診察は受けているのでしょうか。その結果はどうなんでしょうか。すぐ病院に運ばれたんでしょうか。 
○中尾法務省入国管理局長 この自損行為を行ったアフガニスタン人については、いずれも私どもの方で迅速に適切な対応をしているものと承知しております。 
 その東日本センターには医師、看護婦が常駐をしておりますし、不在のときには外部の医者に搬送いたしまして、所要の処置を講じているところでありますし、その症状に合わせて適切な処置を取られているものと承知しております。また、東日本センターについてはカウンセリングも併せて行うような形を取っておりまして、月に六回ぐらいの割合で必要な者は必要な状況に応じましてカウンセリングを行っているところであります。 
 これらの者についても本人の希望というものもございまして、そのカウンセリングを受ける、あるいはそういう精神の関係の治療を受ける者について、希望する者についてはその希望に従ってやっておりますし、人によっては嫌だという方もおられますので、その辺はそういうことを踏まえて適切に対応しているものと承知しております。 
○福島瑞穂君 常駐ということは二十四時間常駐でしょうか。私が聞いたところは、自殺行為が図られたときに医師がいなかったということを聞きました。あるいは、すぐ病院、外部の病院に運ばれたわけではないと聞いたのですが、そこはどうなんでしょうか。 
○中尾法務省入国管理局長 これは、事件がそれぞれ、私の記憶では三回ぐらいの日にわたっていると思いますので、若干正確ではありませんけれども、たまたま医師の不在、これは週四日の診察になっていますので、不在日はたしか水曜日が不在だというふうに聞いておりますので、それ以外はおりますので、たまたまそういう自損行為が行われたときが不在だったという場合があったやに聞いておりますし、そういうふうな場合でも外部の方に連絡を取ってしかるべく対応をしていると、こういうふうに聞いております。 
○福島瑞穂君 済みません。不在の日があるということは常駐ではないと思うので、極力、人数がたくさんですので、常駐体制を取ってくださるように、あるいは自損行為、自殺未遂、言葉の問題はどっちであれ、そういうことが起きることが問題で、是非対応をしっかりしていただきたいと思います。 
  
まともに答弁の出来ない森山大臣 
  
 今日二つのことを申し上げたいのですが、一つは、例えばアフガニスタンの問題に関して、オーストラリアは難民認定率九三%、カナダは八九%、デンマークは八一%と言われています。当然ですが、日本の難民認定率はアフガニスタン人に関しても低いですし、全体の数は極端に少ないと。最近ようやく、一人、一人だったのが二けた台にようやくなったかという段階で、一つは、日本が難民に対して支援をするということであれば、やはりこの難民を受け入れるという積極的な政策を法務省が取っていただきたいというふうに考えます。その点について、法務大臣、いかがでしょうか。 
○森山法務大臣 先ほどもそのような御質問がございまして、お答え申し上げたのでございますが、日本の場合は、難民の申請というのが非常にまず少ないわけでございます。ほかの諸国、特にヨーロッパ諸国などでは大変数はたくさんございまして、それに対して、それぞれの国の事情によるとは思いますけれども、絶対数は確かに日本よりもたくさん認定されることが多いわけでございますが、申請者に対する認定の数、すなわち認定率から申しますと、日本は決してほかの国に比べて少ないわけではございません。 
 日本はやっぱり難民の発生する国々から距離的にも非常に遠いし、社会的、文化的にも違いますし、まず言葉が違います。そのようなことで、申請をする人が非常に少ないというのは成り行きだと思いますけれども、日本で難民を申請した人に対する対応ぶりは決してよその国に比べて少ないとは思いませんが、これからも公平な適正な処置をしていきたいというふうに思います。 
○福島瑞穂君 日本でなぜ難民申請する人が少ないかといえば、難民の認定率が、なかなか認められない。あるいは難民をやはり受け入れる社会では残念ながら全くないということが分かられているということもあると思います。ですから、日本が難民を受け入れる政策を取ればそれはまた変わっていくわけで、それは日本が世界の中で生きていこうとするためには一つの責務の一つだというふうに考えますが、いかがでしょうか。 
○森山法務大臣 これから好むと好まざるとにかかわらず国際化は更に進んでいくと思いますし、そういう中で、人間同士の交流も多くなっていくのは当然だと思います。その中には難民として申請をしたいという方が今よりは増えていくだろうということも想像できますが、一方において法務省という立場は、国の中の安心して暮らせる治安の良い国というものをつくっていくということも重要な任務でございますので、日本の国の立場、日本の国民の生活ということを考えながら、一方において国際的にも理解いただけるような方策を取っていかなければいけない。当然、今までよりは国際的に開かれた、より多くの方々を受け入れ、またこちらからも出ていくというようなことは増えていくに違いないと思いますけれども、そういう中で、今申し上げたようなことを踏まえながら、適切に対処していかなければいけないと思います。 
○福島瑞穂君 是非、難民政策の転換をお願いいたします。 
 先ほどもありましたけれども、やはり難民の担当者の数も少ないし、専門官という育成も、難民調査官といったものも必要だと思います。現在、難民認定に当たっている職員は何人いらっしゃるんでしょうか。 
○中尾法務省入国管理局長 ちょっと手持ちに資料はございませんけれども、いわゆる難民調査官で、その専従業務をやっているのが七名だったと承知しております。 
 ただ、それの関係で、それを補助しながら難民認定の調査をしているのが七十から八十ぐらいにトータルでなるんじゃないかというふうに考えております。 
○福島瑞穂君 是非、スタッフの人員の増加や充実をよろしくお願いします。特に法務大臣には、難民政策、これから是非頑張ってくださるように要望したいと思います。 
 


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