2001年11月29日 参議院法務委員会
 


2001年11月29日 参議院法務委員会
 
公明党・浜四津代表代行がアフガニスタン難民問題について質問
森山大臣・中尾局長も遠慮がちな答弁?
  

 2001年11月29日の参議院法務委員会で、与党3党の一角、公明党の浜四津敏子・代表代行がアフガニスタン難民申請者の人権を擁護する立場から、森山法務大臣・中尾入国管理局長に鋭く迫りました。
 浜四津議員は、問題となっているアフガン人9名のうち、現在牛久に収容されている4名について、すみやかに仮放免を行うよう要求。さらに、法務省が11月28日に、9名の難民不認定の理由を明らかにすると称し、プライバシーを無視して9名の「資産」とされる金額などを暴露した事件についても、資産などは難民認定と関係がないと喝破、仮放免と在留特別許可などによる問題の早急な解決を求めました。
 与党からの質問ということもあり、中尾局長も慎重な答弁ではありましたが、4名については、仮放免を認める状況には至っていないとのこと。森山大臣も、個々人の事情を見て決めなければならないと言った程度の反論に終始しました。
 
 



 
アフガニスタンに迫る人道上の危機

○浜四津敏子君 公明党の浜四津でございます。
 本日は、裁判官の育児休業に関する法律の一部を改正する法律案についての質疑でございますが、その質疑に入ります前に一点だけ、緊急の件でございますので、質問させていただきます。
 アフガン情勢はタリバン後の新秩序構築に向けまして動きが進んでいるようでございますが、まだまだ混乱が続いておりまして、いわば無政府状態が続いております。この難民の数の多さ、またその置かれた状況の悲惨さについては他に比べようがないほどのものであると言われております。
 そうした中で、国連は本年九月二十四日、アフガニスタン情勢について、恐るべき規模の人道上の危機が高まっているという声明を発表いたしました。また、あわせて、人道上の大惨事を予防するため、あらゆる手段の国際的支援をと呼びかけました。アフガン難民、かつてない規模と言われております。かつてない規模の人道危機であると国連が声明を発表しているわけでございます。
 国連難民高等弁務官事務所、UNHCRによりますと、アフガンから流出した難民の数は本年九月十日現在で約三百七十万人に及んでいるということでございます。人道的支援こそが日本が中心的に取り組むべき分野でありまして、UNHCRの方々の日本に対する期待も非常に大きいと伺っております。
 これを受けまして、我が国もアフガニスタン難民支援のため救援に乗り出しておりますが、同様に、アフガニスタン国内における一連の政治・軍事的危機を逃れ、安全と援助を求めて日本に来た、いわば足元のアフガニスタン難民申請者の保護についても取り組みをする必要があると考えております。
 先日来、新聞で広く報道されております難民認定申請中のアフガニスタン九名に対する我が国の対応についても多くの人が関心を持って見守っております。
 これまでの経過を追ってみますと、十月三日に難民認定申請中の九名が拘束され、収容令書により収容されました。同月十九日、東京地裁において執行命令取り消し申し立てがなされて、十一月五日、うち四名につき申し立て却下、翌日、残りの五名につき執行停止を求める決定がなされまして、この五名は身柄を釈放されました。また、九名の難民認定申請については、十一月二十六日、九名とも不認定とされまして、現在、異議申し立てが準備されていると伺っております。さらに、現在も収容されている四名につき、十一月二十七日、退去強制令書が発付され、東日本入管センターに移された上、現在も収容されております。また、あとの五名についても、昨日、難民不認定の決定通知がなされたと報道されております。

4名に仮放免を、9名に在留特別許可を

 今なお東日本入管センターに収容されている四名については、強制送還までの間、収容され続けるわけでありますが、アフガニスタン国内は政権が崩壊状態、また次期政権及び国の復興のための多国間会議がスタートしたばかりで、政治的、社会的混乱が終息する見通しが全く立たない状況にありまして、早期の強制送還は事実上不可能と考えられます。このような状況の中で、精神的にも肉体的にも既に限界を超えているとされる四名を収容し続けることは、人道・人権上大きな問題であると思われます。まずは仮放免により四人の拘束を解くべきではないでしょうか。
 また、退去強制令書が出てしまいますと、送還されるか、もしくは延々と牢屋と同じ状況にある収容施設に拘束されたままになるということになります。政治的、社会的混乱の続く本国に送還することになれば、人々は現実に生命の危険にさらされることになるものと思われます。難民認定ができなかったとしても、せめて法務大臣の裁量である在留特別許可を出すことが人道上必要なのではないでしょうか。

日本で収入を得たことは難民認定の決定要因ではない

 また、昨日、法務省が、異例なことと言われましたが、記者会見をされて、なぜ難民認定がなされなかったかということについて発表されたようでございますが、難民認定そのものが全体的に日本は非常に厳しい、抑制的だということを常々言われております。これも人道上大変問題があるように思います。例えば、かつて来日したことがあるとか、日本で収入を得ているというようなことは、それが難民認定を不認定とする決定的な要因とは解しがたいと思うのですが、大臣、それらも含めまして、ぜひ仮放免あるいは特別在留許可という方向での解決が図れないものかどうか、御見解をお伺いいたします。

仮放免は「いまだその段階にあらず」中尾局長

○政府参考人(中尾巧君) 仮放免の関係について、私の方から先に御答弁させていただきたいと思います。
 収容令書等により収容されておる者につきましては、その者の情状等を考慮して、身柄の拘束を一たん解く必要が生じたときには仮放免することができるということにされておるわけでありますので、お尋ねの四人につきましても、その情状等を総合的に判断の上、個別に仮放免の可否を決定することになろうかと思いますが、現段階ではこれを許可すべきものと考える状況には至っていないというふうに考えておるところでございます。

情勢の変化に逃げる森山大臣

○国務大臣(森山眞弓君) 先生が非常に人道的な立場を尊重して、仮放免あるいは特別在留許可というようなことはできないかとおっしゃっていただきまして、その気持ちは私もよく理解できるつもりでございますけれども、ただ在留特別許可というのは、今、局長も申しましたように、一人一人ケースによって随分状況が違いますので、その状況に応じて一人一人について判断をするということになろうかと思います。アフガニスタンの人であるからというようなことだけで単純に決めるというわけにもまいりませんで、その人によってケースが違うということを御理解いただきたいと思います。
 アフガニスタンの情勢は大変流動的でございまして、これからはどうなっていきますか、この九人の人たちが難民申請をいたしましたのは八月ごろでございまして、八月の初めでしたでしょうか、それからわずかな間にも非常に事態が変化しております。これからもどうなっていくか、もう少し様子を見きわめないとわからないのではないかというふうに思いますし、個々の人によって事情が違うということもありますので、もう少し注意して検討していきたいというふうに思います。
○浜四津敏子君 森山法務大臣ですので、きっと人道的に深い配慮をされた御決断をされるものと期待しております。
 



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