アフガン難民たちからのメッセージ
 


 
アフガニスタン暫定政権に関する在日ハザラ人による声明
 


  
 これは、西日本在住の在日ハザラ人難民により2001年12月に執筆された、
アフガニスタン暫定政権の現状についての声明である。
 ターリバーン政権が崩壊し、平和と復興が演出されている一方、
真の民族和解は先送りされ、
内戦期やターリバーン政権期における非人道的行為の責任追及の
めども立っていない現状が厳しく指摘されている。
 
  
アフガニスタン暫定政権に関する在日ハザラ人による声明

 カーブルで計画され、ドイツのボンで初めて発表されたアフガニスタン復興のためのボン会議の結論は、アフガニスタンの人々を侮辱するものである。またそれは同時に国際連合による人道的努力をも侮辱している。私たち日本に滞在するハザラ人は、このような不公平な権力分配のための協定を厳しく拒絶する。 
 私たちは、アフガニスタンにおける和平プロセスに反対しているわけではない。この声明は、いかなる意味においても、我々が平和プロセスに反対しているという意味で理解されるべきではない。それどころか、私たちは、戦争によって荒廃してきた私たちのアフガニスタンに平和と安全をもたらそうとする国連の努力を真摯に支援する。しかしながら、私たちはボンで開催されたこの会議に重大な懸念を持っており、私たちはこの点について国際連合が強く注意を払うことを求める。もし国連がこの問題について緊急に注意を払わないのであれば、この会議に存在する欠陥と不正義によって、アフガニスタンに平和をもたらそうとする彼らの努力は失敗に終わることになるであろう。 
 この暫定行政機構 interim administration は主にラッバーニー Rabbani 政府(注1)と3つの亡命者の組織によって作られたものであり、いくつかの民族集団が過大評価される一方、過小評価された民族集団も存在する。 
 多くの統計によれば、ハザラ人たちはアフガニスタンで3番目に大きい民族集団を構成しているが、彼らはこの政府の構築において適切な代表性を持ち得ていない。ウズベク人たちも同様に、公正な評価を受けていない。 
 基本的に、国際連合は暫定政権の構成について交渉し、およびこの国の未来を決定するために、4つの民族集団全体がそれぞれの代表を送るように周知すべきであった。にもかかわらず、民族的にはタジク人で構成され、主にパンジシール出身者 Panjishiri によって支配されているラッバーニー政府は、この会議に向けた計画をカーブルで練り、ドイツのボンで初めて発表した。そしてこれらの勢力が自らの行政機構を構築した後で、ハザラ人の代表者たちはそのことを知らされたのである。この会議において、ラッバーニー政府の代表者たちは、彼ら自身の地位についてのみ交渉し、人口構成や地理的現実、そしてターリバーン政権を打倒するために闘った人々の重要な役割などは度外視して、主要な、鍵を握る省庁を自分たちに配分したのである。彼らは国防、内務、外務の閣僚職を確保したのである(注2) 
 実際に、ラッバーニー政府は、北部同盟がハザラ人やウズベク人も代表すると主張して、暫定政権の構築を独占的な形で行ったのである。 
 ラッバーニー政府の代表者たちは、アフガニスタンの人々が、民主主義、地方分権、社会正義の原則に従って自らの政府の未来を自由に決定する権利を無視してきた。彼らは、この国の独立、統合、国家的統一を守ってきた人々の役割を無視している。彼らは行政機構全体をほとんど自分たちだけで配分しており、長期間の戦争によって人々が大きく傷ついているこの国に、平和と安全をもたらすことを考えていない。私たちは、彼らが以前にアフガニスタンを統治していたときの苦痛の記憶を持っている。 
 今こそ、この国に平和と静けさとを打ち立てることを考えるべき時である。今こそ、全てを失った戦争の後で国家の再建を考えるべき時である。今こそ、学校、大学、その他の教育機関を復活させ、この国の子どもたちや若い世代がこれ以上教育の機会を奪われないようにすべき時である。今こそ、国を再建し、国の未来を決めるために兄弟として手と手を取りあうべき時である。今こそ、社会的な憎悪、差別、偏見を忘れるべき時である。今は、自分の地位や役職についてのみ考えていればよい時ではない。今は、再び政府を独り占めすべき時ではない。今は、憎悪を増大させるべき時ではない。今は、この国に流血と悲劇をもたらすべき時ではない。今は、平和と安全、国の再建を切望している人々を失望させ、抑圧するべき時ではない。 
 この会議において、ハザラ人を代表していた人々は、ハザラ人自身によって選ばれた人々ではない。実際に、ハザラ人の代表たちは、アフガニスタンにおいて、ハザラ人やシーア派を代表する人々ではなく、ラッバーニーの一握りの子分にすぎない。アフガニスタンにおいて、ハザラ人でないシーア派は人口の1%を構成するに過ぎないし、ラッバーニー政府はハザラ人の代表を選ぶべき立場にいるわけではない。ハザラ人たちは、自らの代表者を選ぶ能力を持っている。 
 ここで重要なことは、国連がこの問題について関心を払っていないことである。暫定政権は、アフガニスタンの人々や集団の大部分によって拒絶され、彼らに受け入れられるものとなっていない。 
 私たちは、アフガニスタンにおいて国際連合による和平手続の努力のすべてが正義に基づき、公正に行われることを真摯に望む。そうでなければ、それは世界にとって失望すべき結果となり、いままですでに大きく傷つけられてきたアフガニスタンの人々に、更なる災厄をもたらすことになりかねない。 
 統一された、自由で独立したアフガニスタンへの希望とともに。
 

日本のハザラ人たち The Hazaras in Japan
 
 

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