シェイダさんを救え!ニュースアップデイト No.1〜No.10


2000年8月10日〜2000年12月18日

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シェイダさんを救え!ニュース・アップデイト
Save Mr. Shayda! The News Update
第一号 2000年8月10日発行(不定期刊)
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発行元 チームS・シェイダさん救援グループ
編集担当 チームS電子オフィス shayda@da3.so-net.ne.jp
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<今号の目次>
(1)「ニュース・アップデイト」創刊のお知らせ
(2)7月30日「シェイダさんを救えっ!大作戦」レポート
(3)8月8日法務省難民認定室との交渉レポート
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「シェイダさんを救え!ニュース・アップデイト」創刊のお知らせ

 「チームS・シェイダさん救援グループ」は、オーバーステイで入管局に収監され、日本政府に難民申請を行っているイラン人のゲイ、シェイダさん(仮名)をサポートするために、シェイダさんの友人たちによって結成されたグループです。
 これまで、シェイダさんの難民申請をサポートするとともに、東京・十条の入管局にシェイダさんの面会に行ったり、シェイダさんの抱える問題を多くの人に知ってもらうために、2回の集会を開催したりしてきました。
 その間、出会った皆様方に、シェイダさんの現状について知ってもらうべく、このたび「シェイダさんを救え!ニュースアップデイト」(Save Mr. Shayda! The News Update)をメールマガジンとして創刊することといたしました。ご愛読のほどお願い申しあげます。
(お知らせ)
・本メールマガジンの新規講読申込については、編集担当までご連絡下さい。
・本メールマガジンの送信がご不要な場合には、編集担当までご連絡下さい。次回より発送を止めさせていただきます。
・本メールマガジンについては、シェイダさんのプライバシーの問題に配慮する必要がありますので、本メールマガジンの情報を引用して資料を作成したり、公に発表したりする場合は、必ず編集担当にご一報いただき、許諾を得た上で行うようにお願い申しあげます。

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(集会レポート)
 シェイダさんを救えっ!大作戦 
 イラン人同性愛者シェイダさんに難民認定を
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 七月三十日、高円寺社会教育会館において、「シェイダさんを救えっ!大作戦」集会が開催されました。酷暑の中にも関わらず、約三十名の人の参加があり、活発な討議が行われました。

(1)シェイダさんが難民申請に至ったわけ

 最初に、シェイダさんが難民認定申請にいたった経過の説明が行われました。  シェイダさんは昨年来より、日本のゲイ・コミュニティと積極的に関わるようになり交流を深めて行きました。彼は同性愛者であることを理由としたイランでの社会的迫害を恐れ、以前にも難民認定申請を行おうとしていたのですが、オーバースティという自分の立場もあり、そのことを断念していました。ところが、四月二十二日に仕事が終わって帰宅しようとする途中、警察官に職務質問され逮捕されてしまったのです(これは石原都知事による外国人排除発言のあとでした)。
 五月八日になると警察は彼のオーバースティ容疑を不起訴のまま入国管理局に移送し、退去強制のための手続きを開始しました。彼は入国管理局に収容された直後に、自らが同性愛者であることを明らかにし、難民認定申請を申し出ました。
 イランでは、これまでヨーロッパに亡命しているイラン人同性愛者が亡命先で殺害されたケースや、同性愛者として難民申請を行っていたイラン人が退去強制処分となり、イラン本国に着くなり逮捕されたケースがあります。また、イランでは超法越的な暴力装置である「革命防衛隊」や秘密スパイ機構などによる殺害事件が存在しています。そのことからも、今後、彼に対する脅迫や暴力から守るための取り組みを支援の輪を広げると同時に考えていかなければなりません。

(2)イランにおける同性愛者の迫害状況

 つづいてイラン本国における迫害状況が報告されました。シェイダさん支援グループでは、この間、証拠資料などを外国から取り寄せ、翻訳などあたってきました。その資料の作成の際に、イランでの同性間性行為を禁じている刑法「ソドミー条項」の存在を始め、イランで同性愛者が政府により処刑されているという事実やその他の迫害の事実、イラン人同性愛者が他国で難民として受け入れられている実績と判断理由などに沿って情報を収集してきました。
 イランでは80年代の同性愛者に対する迫害事情は、イラン・イスラム革命以降、「イスラム法学者による統治」(ベラーヤテ・ファギーフ)体制による国内の徹底した締め付け、法を超越した国家暴力機構である革命防衛隊や革命裁判所の創設によって加速されることになります。80年代には、およそ四千人の同性愛者が処刑されたといわれています。そのため、大量の同性愛者や左翼グループが迫害から逃れるため、ヨーロッパなどに亡命しました。九十年代になるとホメイニー師の死去に続くイラン・イラク戦争の敗北に伴い、宗教的強権政治の退潮や国際的孤立から立ち直るための政策がとられることになります。しかし、97年の「民主的」といわれるハターミー政権の成立以降においても、宗教的な強権主義勢力が、革命防衛隊や司法局などを依然として握っているのです。そして、同性愛者の迫害に対しても欧米などの批判をかわすために、同性愛者に対する処刑を情報統制でもみ消し、処刑理由も「同性愛」だけでは処刑せず「かん通」、「麻薬使用」などをくわえるという手の混んだ対応を行うようになっています。しかし、それにも関わらず、九十年には男性三名、女性二名の斬首による公開処刑が行われ、そのようすがイランの街々で放映されました。また、宗教的強権主義勢力と結託した同性愛者に対する民間暴力が横行し、見せしめとして行われているのです。
 国連では、「同性愛者が特定の社会的集団である」ことを認めており、シェイダさんが社会的集団の一員であり、「迫害の恐れが明白に存在するために、祖国に帰ることが出来ず、もしくは帰国することを望まない個人」という難民規定に対して法務省は対応すべきです。しかし、諸外国ではイラン人同性愛者が難民として受け入れられているというケースが多数存在するにも関わらず、法務省はシェイダさんのケースでは難民申請の一次棄却を行ったのです。

(3)難民認定・在留特別許可について

 また、難民認定と在留特別許可について、シェイダさんの代理人である大橋毅弁護士(池袋市民法律事務所)に報告していただきました。
 大橋弁護士はまず、難民認定法が改正されるきっかけとなった、インドシナ難民を受け入れるようになって以降の動きを紹介。そして、難民認定制度や入管法などについて説明し、シェイダさんのケースがどのような位置にあるのかを説明していきました。
 現在のところ、日本政府による難民を受け入れる門戸はあまりにも狭く、「六十日条項(日本に入国して六十日以内に難民として申請しなければならない)」を理由とし、具体的な棄却理由が公開されないと言う状況が続いています。既に彼は七月四日に、難民認定申請のが棄却され、それに対する異議申し立てをしていますが、同時に退去強制手続き令書が発付されています。アムネスティは、既に法務省のこのような対応に即時抗議し、退去強制をやめるよう訴えています。このような状況の中で、彼を何としても本国に帰してはなりません。
 集会では、友人によって語られるシェイダさんの生き様や有意義な討論を始め、集会アピール(アピールは書きに掲載)も採択され、今後の闘いの方向性や支援の輪を広げる上で有意義な交流となりました。なお、報告などが長引いて時間がおしてしまい、集会アピールの内容に関する討議の時間が十分にとれなかったことについては、参加者の皆様にお詫び申し上げます。(S)

2000/07/30 シェイダさんを救えっ!大作戦集会アピール

 本日、私たちは、イラン人同性愛者であるシェイダさんの難民認定を求めて集まりました。私たちは、シェイダさんとの出会いの中で、はからずも日本でのイラン国籍・その他の外国籍の同性愛者の権利が法的に脅かされていることを知ることとなりました。折しも、2月には東京・江東区の夢の島公園で同性愛者をターゲットにした襲撃・殺人事件が起こったこの日本で、イラン国籍の同性愛者であるシェイダさんがカミングアウト(同性愛者であることを公言すること)し、日本の同性愛者・性的少数者のコミュニティと豊かな関係を築くことができたことに、私たちは一筋の希望を見いだすことが出来ます。
 「同性愛者は黙っていれば周りからはわからない」と言う人がいます。しかし、同性愛者であることについて沈黙を強いられ、自らのアイデンティティを否定せざるを得ない状況に置かれることによって、全世界で幾万もの同性愛者が「死」を強いられてきました。改革が伝えられるハタミ政権以降のイランでも、同性間性行為を禁じた「反ソドミー条項」は今なお機能しており、処刑や謀殺、社会的な迫害はなお続いています。シェイダさんはこのような状況を変える一つの希望なのです。
 日本政府・法務省は、シェイダさんに対して国家的・社会的に迫害が加えられる恐れが明白にあるその土地、イラン・イスラム共和国に、彼を強制的に送還しようとしています。私たちはそのことに、強い怒りを憶えます。同性愛者を死刑に処する刑法があり、今でも処刑が行われているイラン。それでも、法務省・入管当局はそれらの点を不問に付し、「60日条項」をたてにシェイダさんを本国に退去させるつもりなのでしょうか。
その思いと共に、本日集った私たちは法務省に対し、次の要請を行うことを確認します。
一 法務大臣は、イラン本国での同性愛者への迫害状況を調査し、シェイダさんの難民認定申請を認めよ。
一 法務大臣は、ただちにシェイダさんの仮放免申請を認めよ。
一 難民として考えられる社会的迫害とは何なのか。法務省は、具体的にその根拠を明らかにせよ。
一 入国管理局は、シェイダさんの医療ケアを行え。
7.30〈 シェイダを救えっ!〉集会参加者一同

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(交渉レポート)
シェイダさん難民認定問題で
法務省難民認定室長らと話し合い
〜イラン国内での同性愛者の弾圧についての認識は平行線〜
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 8月8日午後1時30分から、法務省1階の会議室で「チームS・シェイダさん救援グループ」と法務省入国管理局との話し合いが行われました。法務省側として出席したのは、木島正芳(まさよし)・入国管理局難民認定室長、北村晃彦・難民認定室翻訳官、上原巻善・入管局警備課補佐官の3名。一方、救援グループ側はチームSのメンバー4名と、アムネスティ・インターナショナル日本支部から1名、紹介議員の福島瑞穂さん(参議院議員)も出席されました。

本人提出の証拠を無視する難民認定室

 話し合いはまず福島さんから本日の趣旨の説明があった後、救援グループ側の申入書の質問事項について、木島難民認定室長より答弁がありました。
 救援グループ側は前もって提出していた申入書で、 (1)法務省は、イラン本国に於ける同性愛者に対する社会的迫害の事実が存在しないと考えているのか (2)死刑制度が存在する国の中でも死刑に処せられる数が世界第二位とされるイランで、そのうち同性愛者が処刑されていないと言えるのか (3)法務省は、イラン人同性愛者が他国で難民として受け入れられているという事実をどのように考えるのか  の3点について質問を行っていました。これは、シェイダさんの件について問い合わせた福島さんに対して町田幸雄・入国管理局長が「イランでは同性愛者の処刑ケースはないものと聞いている」と言っていたことに対応して作成した質問事項です。もちろん、シェイダさんは救援グループの協力のもと、様々な国際的なグループから多くの文献を取り寄せ、イラン政府による同性愛者の処刑や、政府と結託した民間暴力の実態、欧米諸国がイラン人同性愛者を難民として受け入れていることなどを18点にわたる証拠資料として難民認定室に提出しています。
 ところが、木島室長はシェイダさんが提出した証拠については一切の言及を避けた上で、「様々な資料を調査した結果」として、 (1)について、「イランでは、同性愛者を同性愛者であるという理由だけで死刑としたケースは存在しない」、(2)については、「イラン刑法には確かに同性愛者を死刑とする刑法はあるが、4回の告白と4人の証言を必要とするなど、適用条件が極めて厳しく、実際に死刑にされているケースは存在しない」、(3)についても、ドイツ・イギリスなどで申請がなされたケースの存在は知っているが、行政当局により完全に認定されたケースが存在するとは聞いていない、という認識を示しました。

難民認定室の立場はイラン政府寄り?

 救援グループ側は、シェイダさんが提出した証拠資料一式を再度提出用に持参していましたので、それを木島室長に提出しようとしましたが、木島室長が受領を拒否したため、やむなく説明時に閲覧してもらうこととし、木島室長の答弁に対する反論を行いました。
 救援グループ側は、本来難民条約の規定は、政府による死刑執行の有無ではなく、社会的迫害の十分な恐れの有無によって難民認定を行うこととしており、その規定に従うべきだと前置きした上で、以下の各点について、具体的なケースをもとに反論しました。
(1)イランでは90年に同性愛者五名がソドミー容疑で斬首により公開処刑された事件を始め、90年代に入ってもソドミー容疑による処刑が数多く存在していること。 (2)同性愛者ではない少数派の宗教指導者を、拷問によってソドミーの自白を強制した上で処刑したケースなど、刑法の適用自体が極めて暴力的かつ恣意的に行われている実態があること。
(3)ソドミー容疑で処刑された人に、『姦通』やスパイ容疑など他の犯罪もなすり付けられているのは、西側諸国の批判の目をそらすためのイラン政府による隠蔽工作であること。
 これらについて、木島局長は「今日の場は個別のケースについて話す場ではない」としながら、イスラム社会について「『姦通』・スパイなども重要な犯罪と認識されており、同性愛だけが厳しく扱われているわけではない」とコメント。救援グループ側は、それに対して同性愛者を残虐に処刑する方法をテヘラン大学法学部の学生に向けて説いたアルデビーリー師(元イラン最高裁長官)の講義の文面などを引用して再反論しました。
 また、難民認定についても、米国で14人、カナダで8人のイラン人同性愛者が難民として認定されている事実を、個別資料を元に説明しました。
 木島室長は、これらの具体的なデータに関しては言及を避けつつ、97年に大統領に選出されたハターミー師の政権のもとでは民主的改革が進みつつあることを強調。グループ側は、ハターミー師がまだイランの全権を掌握できていないこと、保守派との抗争の中で同性愛者の謀殺疑惑事件などが多発していることを主張し、現政権のもとでも難民認定が必要な状況が続いていると反論しました。

60日条項についても「立法論の問題」として門前払い

 次に、シェイダさんの難民認定申請を退けた法務省の第一次決定(7月4日)について、救援グループからの説明が行われました。
 救援グループ側は、シェイダさんが難民となるべき事由は以前から継続していたものの、急迫な状態となったのはシェイダさんが「ロフト・プラスワン」で行われた性的少数者に関するイベントで同性愛者であることをカミングアウトし、イスラム圏に於ける同性愛者弾圧を批判した99年の6月16日以降であること、シェイダさんはこの日を起算点として60日以内に難民申請を行うことを検討し、実際に弁護士との調整や、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)などを訪問したものの、難民認定のためには入管に出頭しなければならず、場合によってはその場で収監された上、退去強制により本国に帰国させられる可能性があることなどを知り、その恐怖と失望感から難民認定の申請を断念せざるを得なかったことを主張しました。木島室長は、これに対して「現在難民認定の異議申し出に対する審査を行っているところであり、個別のケースについて配慮しなければならないところは配慮する」と述べました。
 また、アムネスティ・インターナショナル日本支部は、日本の難民認定について国際的に非難されるところとなっている「60日条項」(原則として、日本に入国し、または滞在中に難民となるべき事由が発生してから60日以内に難民申請を行わなければ、難民として認めないという入管法の悪名高い規定)について、この条項を理由として難民申請を却下するのはやめ、申請却下の場合には、より具体的な却下事由を示すべきであるとの主張を行いました。それに対して、木島室長は「60日条項は国会で議論の末決まった事柄であり、問題点は立法論としては分かるが、当方としては法律を尊重して認定を行っているのみである」とし、門前払い的な態度に終始しました。

全体としては大きな達成

 このように、話し合いは内容としては平行線に終わったわけですが、以前から難民問題について取り組んできた立場から考えれば、個別のケースについて、こうした話し合いが成立することだけでも一歩前進であるようです。
 これまでは、個別のケースについての話し合いは、実務担当者レベルの出席で、内容的にも「話を聞き置く」という程度にとどまるのが通例であり、室長自らが出席し、支援団体の質問に逐一答弁し、議論をするということ自体が、かなり珍しいことであるようです。
 また、難民認定室において、新聞や大使館情報以上のものは含まれないにせよ、かなりの情報がシェイダさんの件に関して収集されているようであり、難民認定室が本件についてそれなりの努力を行っていることも明らかになりました。
 全体として、こうした話し合いの場を持つことが出来たことは、シェイダさんの難民認定をかち取る上で大きな成果だと思います。しかし、難民認定室はあくまで「イランにはシェイダさんを難民として受け入れなければならないような状況はない」という立場に固執しており、今後はこのような認定室の考えを変えていくような働きかけをますます強めていかなければならないでしょう。(B)


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シェイダさんを救え!ニュース・アップデイト
Save Mr. Shayda! The News Update
第2号 2000年8月 日発行(不定期刊)
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発行元 チームS・シェイダさん救援グループ
編集 チームS・電子オフィス shayda@da3.so-net.ne.jp 
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(今号の目次)
1.シェイダさんからのメッセージ
2.「申立人は難民に該当しない」!法務省の意見書、法廷に提出
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1.シェイダさんからのメッセージ
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 「入管法」により収監されているシェイダさんから、以下のメッセージが届きました。
 7月30日、8月6日に開催した集会で、参加者の皆さんに寄せ書きを書いてもらい
、それをシェイダさんに手渡したのに対するメッセージです。
 このメッセージにさらに返事を返したいという方がいましたら、「チームS電子オ
フィス」か、または知り合いのチームSメンバーに託して下さい。必ず届けるように
します。
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 愛する友人たちへ
 こんにちは。
 あなたがたからの寄せ書き、受けとりました。
 この逆さまな世界で、
 人間の価値の痕跡はもう見えないほどかすれてきていますが、
 あなたがたの親切さ、やさしさは、
 私の励みになっています。
 それは私がこのつらい、厳しい日々を耐えられる頼りになっています。
 一生忘れません。皆様に心から感謝します。
 遠い所からあなたがたの手を、あたたかく握ります。
シェイダ
2000年8月11日
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「申立人は難民に該当しない」!法務省の意見書、法廷に提出
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 法務省が東京地方裁判所に、シェイダさんは難民に該当しないので退去強制令の執行停止をする必要はない、という趣旨の意見書を提出しました。この意見書は、シェイダさんの主張に真っ向から反論するものです。

(1)整理:シェイダさんの現在の法的状況

 法務省の意見書の内容について紹介する前に、シェイダさんの現在の法的な状況について簡単に整理することにします。
 4月22日、入管法違反の容疑で逮捕されたシェイダさんは、5月8日、東京入管(北区・十条)に送られ、退去強制手続きが始まります。これが第一の手続で、これは、シェイダさんが日本に在留する資格がないことを認定し、退去強制を執行するものです。しかし、この認定に異議を申し出続けると、その理由によっては最終的に「法務大臣の特別在留許可」を与えられることがあります。例えば、最近は在留資格のない外国人が日本人と婚姻した場合、この「特別在留許可」により在留を認められるようになっています。また、いろいろな事情があって難民認定はできないが、さりとて退去強制にするわけにも行かない、といった事実上の難民状態にある人も、この許可が下りることがあります。
 一方、シェイダさんは入管に送られた段階で難民申請を行いました。これが第二の手続で、申請が行われると、シェイダさんが難民としての資格を持っているかどうかが審査されることになります。これは法律上、上の退去強制の手続とは関係がありません。シェイダさんの身の上に、法律上二つの手続が進行しているわけです。
 さて、7月3日、臼井法務大臣(当時)はシェイダさんに難民認定をしないことを決定し、また4日には、退去強制に関する異議の申し出について「理由無し」とする裁決を行いました。難民認定については、異議を申し出ることができますので、シェイダさんは直ちに異議を申し出て、現在第二次の申請中ということになります。
 一方、退去強制については、次の手続は「行政訴訟」です。シェイダさんは、自分に「特別在留許可」を与えなかったのは違法であるとして訴訟を提起するとともに、「理由無し」裁決の通知とともに執行段階に入る「退去強制令」の執行をとめるため、「退去強制の執行停止の申立」を行いました。訴訟の現段階は、この「執行停止の申立」について、法務省とシェイダさんが争っているという状態になるわけです。今回法務省が提出した「意見書」は、シェイダさんが行ったこの「退去強制の執行停止の申立」に対して提出されたものです。

(2)法務省の主張

 法務省の意見書に於ける主張のうち、重要な部分の論理展開は以下のようになっています。
ア)シェイダさんは難民に該当しない。
イ)「難民」に該当するためには、他の人がシェイダさんの立場に置かれた場合にも迫害の恐怖を抱くような客観的事情の存在が必要である。
ウ)シェイダさんはゲイであるから迫害される恐れがあるというが、
・現実のイラン社会では同性愛は一般的な現象である。
・イスラム道徳に公然と逸脱しない限り容認されている。
・刑法の同性愛的性行為処罰規定も要件が厳格なため運用されていない。
・男性間の身体接触が文化的に容認されており、同性愛者を識別するのは困難。
 であるので、迫害の危険性はない。
エ)シェイダさんは、自分がゲイであることをイラン政府が知っているかも知れないと言うが、
・ゲイ雑誌「ホーマン」に執筆した原稿はペンネームを使っている。
・札幌のパレードは社会的知名度が低い。
 ゆえに、イラン政府がそのことを知ることは考えられない。
オ)シェイダさんはこの間、イラン大使館で旅券の延長手続きを受けるなど、自発的にイラン政府の保護を受ける行動をしているが、その一方で難民認定の申請も行っておらず、「漫然と」不法就労を行っていた。
 この意見書の作成に当たって、法務省が論拠としている文書があります。それは、国連高等弁務官事務所(UNHCR)が作成したUNHCR REFWORLDという文書集の中に収録されているものです。8日に行った法務省交渉における法務省の難民認定室長の主張も、すべてこの文書に依拠しています。当初は、法務省も実状を一定よく調べているものと分析していましたが、何のことはない、孫引きだったわけです。そもそも、この文書集はUNHCRがCR-ROM化して販売・頒布しているものであり、行政として入手するのは極めて容易なしろものです。
 この文書は、基本的に、イラン社会で一般的に見られる(という)男性同士の同盟関係(ホモソーシャリティ)やスキンシップを「同性愛」(ホモセクシュアリティ)に類推解釈した上で、イラン社会では「同性愛」は容認されているから問題はない、という内容のものですが、同性愛者の立場からみれば、セクシュアリティの歴史的な形成やアイデンティティ等の問題を度外視した、まったくずさんなしろものです。この文書については、ニュースアップデイト第三号でその詳細と問題点を分析したいと思います。

(3)同性愛者の尊厳を否定する法務省

 法務省の意見書には、大きな問題点があります。最も大きな問題点は、シェイダさんが退去強制にあたって実際に感じている恐怖・不安について、その根拠や背景となる事実を全く斟酌することなく、一片の公的文書に全面的に依拠して、完全に切り捨ててしまっていることです。
 シェイダさんは、これまでの難民申請や退去強制手続きの過程で、イランにおける同性愛者の数多くの処刑ケースや謀殺疑惑のケースなどを証拠資料として提出しています。シェイダさんの恐怖の背景には、殺害された数多くのレズビアン・ゲイが具体的なケースという形を取って存在しており、その重みはイラン社会で同性愛や「男性同士の身体接触」が「容認されている」などといった一般的・抽象的物言いとは比較にならないものがあります。
 もう一つの問題点として挙げられるのは、法務省の意見書が、シェイダさんがゲイとしてカミング・アウトしたという事実について、不当に軽視しているということです。
 意見書には、同性愛が「個人的な嗜好(原文ママ)に留まるものであってイスラム道徳に公然と逸脱するものとされない限り容認されている」という記述があります。これは、逮捕されるような同性愛者は「道徳に公然と逸脱」したのだから弾圧されても仕方がない、ということを暗示しています。実際には、シェイダさんの問題はそこに位置しているのであって、シェイダさんが99年にカミングアウトしたことの意味は、同性愛をイラン・イスラム共和国という他者の設定する「個人的な嗜好」「イスラム道徳」の範囲に留めるのでなく、同性愛者としての自分がなす自己決定に従って、自らの人生を歩んでいくということなのです。
 法務省が意見書の拠り所としているUNHCRの文書を作成したのは、実はカナダの移民・難民委員会(IRB)です。しかし、IRBは一方ではこうした文書を作りながら、他方では同性愛者のカミングアウトの意味を十分に理解しています。1998年、ヴァンクーヴァーのIRBはあるイラン人ゲイを難民として受け入れる決定をしましたが、その決定内容は、「キリスト者であることを隠していれば平穏無事に生活できる国があるとした場合、キリスト者をその国に強制退去させるだろうか。同性愛者を、同性愛であることを隠していれば平穏無事に生活できる国に強制退去させるというのは、それと同じことである」というものでした。この判断は、「同性愛者として生きる」ということの重要性について、IRBなりの仕方で最大限の尊重を与えたものということができます。
 オランダ政府も、イランの状況が一定の民主化過程にあることを認めつつも、知識人、同性愛者、バハイ教徒に関しては、安全が保障されていないとして難民認定を認める立場をとっています。法務省は、同性愛者の尊厳を否定する卑しい主張を直ちにやめ、シェイダさんを難民として認めるべきです。(2000年8月18日)


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シェイダさんを救え!ニュース・アップデイト
Save Mr. Shayda! The News Update
第3号 2000年9月2日発行(不定期刊)
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発行元 チームS・シェイダさん救援グループ
編集 チームS・電子オフィス shayda@da3.so-net.ne.jp 
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(今号の内容)
1.シェイダさんは今(牛久市・東日本入国管理センターをたずねて)
2.シェイダさん難民認定・仮放免のための嘆願にご協力を!
3.「シェイダ基金」設置のお知らせ〜ぜひともご協力・ご出資を!
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1.シェイダさんは今〜東日本入国管理センターをたずねて〜
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《シェイダさん面会記》
東京から、約2時間半、百キロ離れた山里に収容センターがぽつんと建っています。8月28日、10日ぶりに面会したシェイダさんは、髭も剃り、入浴後のため(少し待ちました)さっぱりしていました。長期収容者が多いため、みな独房に居り、外での運動や入浴は週2回、体操は毎日朝晩あり、耳の痛みも医者が診察しているそうです。ただ、物品購入などの申出書記入が大変だとのことです。
 面会して感じたことは、外での運動時他の収容者と話しができるようで、それは良い面もあるのですが、変な噂話が一人歩きしているようで、「イラン人が昨日退去強制に同意していないのに帰らされたようだ」とか「ある弁護士は裁判で負けたらしい」とか、変なうわさからシェイダさんが、大変神経質な心理状況になっているのではということです。彼の長期収容については、もちろん、日本の法務省や裁判所が根本的問題であるわけで、嘆願書を集めていることなど、きちんとした情報を面会時伝えることも必要ですが、月2回の面会では限りがあり、みんなでカタカナ手紙などを
 送って、シェイダさんを精神的にも支えていくことが大切だと思いました。
 面会は、一度に3人までですが、面会する人が変われば、一日2〜3回でも可能で、30分程度十分話せます。面会時間は午前9時〜12時、午後1時〜4時ですが、ジュースなどの自販機があるだけで、面会者用の売店・食堂などはありません。面会者は通常、非常に少なく、この日も5〜6人程度しかいませんでした。

《東日本入国管理センターの住所》
〒300-1147 茨城県牛久市久野町1766 東日本入国管理センター
電話:0298-75-1293
(「シェイダさん」は仮名のため、現状では、シェイダさん名義では手紙は届きません。手紙を出す場合、面会をしたい場合については、「チームS・シェイダさん救援グループ」まで事前にご一報下さい。shayda@da3.so-net.ne.jp まで)

《センターまでのアクセス》
 JR上野駅もしくは日暮里駅から常磐線で牛久駅まで(約50分)。
 牛久駅東口から、バス乗り場2番から牛久浄苑(牛久大仏)行、農芸学院前下車(約30分、600円)。降りると、農芸学院案内と入国管理センターの看板が出ています。そこから徒歩、約10分でセンター入り口に着きます。帰りはこの逆です。
牛久駅からタクシーだと、行き2000円、帰路は呼出した場合3000円。
《牛久駅発・牛久大仏行きバス時刻表(平日)》
8:59, 10:16, 11:30, 14:40
《平日農芸学院前発・牛久駅行き時刻表(平日)》
9:43, 11:00, 13:35, 15:24, 16:39

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2.シェイダさん難民認定・仮放免のための嘆願にご協力を!
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 前号でも書きましたとおり、シェイダさんは現在、入管当局によって「東日本入国管理センター」(茨城県牛久市)に収容されており、法的には以下のような状況にあります。
(1)難民申請:不認定
(2)退去強制処分:法務大臣が異議申出を「理由なし」と裁決
  「法務大臣による特別在留許可」も出ず
 (2)の裁決と同時にシェイダさんには退去強制令が発令され、退去強制が執行される状態となりました。そのため、シェイダさんは
(1)については、難民不認定に対する異議の申し出、
(2)については、退去強制に関する行政訴訟と、退去強制の執行停止の申立
を行い、現在、退去強制の執行停止の申立に関する裁判所の判断待ちの状況となっています。
 この執行停止の申立は認められるのが普通で、難民認定の異議申し出や、退去強制に関する行政訴訟の結論が出ないうちに、強制的に退去させられてしまうことはほとんどないようです。しかし、法的に宙ぶらりんな状況にあることは確かであり、シェイダさんが一日も早く難民認定をかちとり、収容を解かれて安定した日常生活に戻れるようにすることが、強く求められます。
 そのために、私たち「チームS」では、シェイダさんの難民認定と仮放免(注1)を求める嘆願書を作成しました。9月中を目処に、多くの方の賛同・署名を得て、早期に法務省に提出していきたいと考えています。ぜひとも、多くの方のご賛同をお願いいたします。
 なお、第三国出国ということも、重要な解決方法の一つと考えられますが、いまのところ、オーストラリア・カナダなど難民に寛容な国でも、日本での難民認定手続が完全に終了しないと、難民調査の手続を開始しないのが実状です。チームSでは、現在、オーストラリア、米国、カナダ等の同性愛者難民の支援組織に連絡を取っており、日本での難民認定の手続が不調に終わった場合に、第三国出国の方向性をすぐに追求できるように準備しています。<仮放免とは>
 仮放免とは、入国管理法上の規定で、入管当局が定期的な入管局への出頭と保証金の供託(300万円以下、通常20〜100万円)などの条件の下に、入管法違反の被収容者を仮に放免(釈放)することができるというものです。シェイダさんの場合、本来難民に該当すると思われること、逃亡の恐れがないこと、長期間にわたる訴訟中ずっと勾留しておくことは非人道的で経費もかかること、などから考えれば、仮放免を行うことは当局にとっても合理的なことです。

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嘆願書の作成について:以下のようにお願いします
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●以下、「難民認定」「仮放免」それぞれの嘆願書があります。所定の欄にお名前・ご連絡先等(ここには、差し支えない範囲で住所・電話番号・電子メール番号などの連絡先や、ご所属団体名などをお書き下さい)・法務省へのメッセージをご記入下さい。
●その上で、「チームS電子オフィス」shayda@da3.so-net.ne.jp までご返送頂ければ幸いです。9月中をメドに集約を行い、法務省に提出します。
●なお、嘆願書はそれだけを一つのメールで送っていただき、「チームS」宛のメッセージがある場合は、別のメールにて送っていただく様にして頂ければ幸いです。

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シェイダさんの難民認定に関する嘆願
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2000年  月  日
法務大臣 保岡 興治 様
 貴省におかれましては、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 さて、私は、日本国政府に対して難民認定を申請しているイラン人のゲイ、シェイ ダさん(仮名)について、難民としての認定をしていただくことを、強くお願いするものです。
 シェイダさんは、イスラム原理主義政権下で、同性愛者への激しい迫害が続いていたイランから、1991年に出国し、日本に来ました。その後、1999年に都内で開催されたイベントでゲイとしてカミングアウトし、イラン政府やその他のイスラム諸国の同性愛者への弾圧を批判しました。
 イラン刑法では、同性愛者を死刑に処することのできる条項があり、同性愛者が実際に処刑されたケースも数多く存在しています。改革派と伝えられるハタミ現政権下でも、同性愛者への死刑執行のケースが存在しており、非公然部隊によると思われる同性愛者への謀殺疑惑事件なども発生しています。
 こうした状況からみれば、ゲイとしてカミングアウトし、イラン政府の同性愛者政策にはっきりと反対しているシェイダさんがイランに退去強制させられた場合、ゲイという社会的集団に属することにより迫害されるおそれは十分にあり、シェイダさんははっきりと、難民条約・難民議定書に示されている難民の定義にあてはまります。
 貴省におかれましては、この事実を直視し、公正な判断の下にシェイダさんを難民として認定するよう、心よりお願い申しあげます。
氏名
連絡先等
メッセージ

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シェイダさんの仮放免に関する嘆願
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2000年 月 日
法務大臣 保岡 興治 様
法務省東日本入国管理センター 所長 様
 貴省におかれましては、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 さて、私は、現在日本国政府に難民認定を申請中のイラン人ゲイ、シェイダさん
(仮名)を仮放免していただくよう、強くお願いするものです。
 シェイダさんは本年4月22日、入国管理法違反により警視庁に逮捕されて以来、
現在まで4ヶ月以上にわたって、警察署の留置場や入管局の収容施設に勾留・収容さ
れ続けています。
 シェイダさんは、同性愛者を死刑をもって罰しているイラン・イスラム共和国に
おける迫害から逃れるために来日したものであり、在留資格なき滞在にもはっきりした理由が存在します。また、シェイダさんは現在、難民認定手続の異議の申し出、ならびに退去強制に関する行政訴訟の提起を行っており、中であり、逃亡の恐れはまったくありません。人道上の見地から、シェイダさんの仮放免を許可することが強く求められます。
 貴省におかれましては、この事実を直視し、公正な判断の下にシェイダさんに対し仮放免を許可されるよう心よりお願い申しあげます。
氏名
連絡先
メッセージ

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3.「シェイダ基金」設置のお知らせ
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 これまで、シェイダさんを救援するための「チームS」の活動は、メンバーによる持ち出しと、シェイダさんの許可をうけての本人の貯金の活用などによって行ってきました。
 しかし、シェイダさんの身柄が牛久市の「東日本入国管理センター」に移され、面会などにすら多くの金額(東京からの交通費だけで数千円)かかるようになるなど、基本的なサポート活動にも多くの経費がかかるようになっています。
 また、シェイダさんが現在行っている行政訴訟や、仮放免が許可された際の供託金の支払い(これは将来的には返ってくるお金ですが、一時的に用立てしなければなりません)などにも、高額の費用がかかることが予想されます。
 これらの諸活動を賄うには、シェイダさんの自己資金とチームSメンバーの持ち出しだけでは到底不十分です。そこでチームSでは、「シェイダ基金」を設け、これらの活動のための資金面でのご寄付・ご協力をお願いすることといたしました。
 以下の要領で、基金を設置いたしますので、ぜひともご協力・ご出資のほどお願い申しあげます。


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ご協力ご出資の方法
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●一口1000円(複数口でのご寄付、一口以下でのご寄付、いずれも歓迎いたします)
●以下の郵便振替口座まで、お振り込み頂ければ幸いです。
(口座名称)シェイダ基金
(口座番号)00100-2-554626
●郵便振替用紙等については、ご住所を「チームS電子オフィス」まで頂ければ、資料等とともに郵送いたします。もちろん、郵便局等に備え付けの郵便振替用紙にご記入の上振り込んでいただいても構いません。

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「シェイダ基金」要項
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●1.名称
 「シェイダ基金」とします。
●2.目的
 2000年5月よりオーバースティを理由に逮捕・勾留されているイラン人同性愛者、シェイダさんの難民申請を日本政府法務省に認めさせるために使います。
●3.主な出費など
 ・シェイダさんとの日常的な面会のための交通費・差し入れ品購入の経費
 ・シェイダさんの難民認定・行政訴訟などにかかる経費
 ・シェイダさんの仮放免が許可された場合の供託金としての出費
 ・シェイダさんの状況を伝えるための広報費・郵送費等
●4.目標金額
 100万円とします。(この金額は、当面のシェイダさんの訴訟費用・救援活動にあてる上で必要な額として算定しました)
●5.会計状況の還元
 お振り込みいただいた方には、定期的に会計状況の報告をいたします。郵便振替用紙に住所・ファクス番号・電子メールアドレスなどを記載して頂ければ幸いです。
●6.残金の処理
 本基金が目的を達成し解散する際に残金が生じた場合には、シェイダさんとも協議した上で、難民問題や、同性愛者の人権確立などに取り組むNGO活動に寄付するものとします。


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シェイダさんを救え!ニュース・アップデイト
Save Mr. Shayda! The News Update
第4号 2000年9月20日発行(不定期刊)
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発行元 チームS・シェイダさん救援グループ
編集担当 チームS電子オフィス shayda@da3.so-net.ne.jp
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<今号の目次>
(1)ニュース速報
(2)「レズビアン&ゲイパレード2000 in 東京」に参加しました
(3)シェイダさん嘆願書・「シェイダ基金」の集約状況
(4)「難民・移住者フォーラム」との対話
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(1)シェイダさんニュース速報
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<速報1>●シェイダさんに激励を!仮名でも手紙が着くようになりました●

 現在シェイダさんは茨城県牛久市にある「東日本入国管理センター」に収容されています。シェイダさんというのは仮名であり、別に本名がありますが、イランは革命政権だけあって駐日イラン大使館が活発に諜報活動を行っていること、日本のイラン人コミュニティの中でもホモフォビアが強いことなどの問題があり、「シェイダさん」という仮名を使っています。
 このたび、シェイダさんとチームSで、本名を書いていない「シェイダ」宛の手紙についてもシェイダさんに差し入れて欲しいと申し入れたところ、東日本入国管理センターの方も快諾してくれました。(「他にシェイダという名前の人が入ったら困る」とも言われたようですが)
 ということで、シェイダさん名義でも手紙が差し入れられることとなりましたので、彼に手紙を出したい人は激励の手紙を書いてみてはどうでしょうか。なお、手紙はカタカナにてお願いします(漢字混じりや英語は×)。東日本入国管理センターの住所は、茨城県牛久市久野町1766です。

<速報2>●東京地裁、シェイダさんの退去強制の執行停止を決定!●

 7月4日、法務省はシェイダさんの難民不認定と、退去強制に対する異議申し立てに関して「理由無し」とする裁決を行い、シェイダさんに退去強制令書を交付しました。シェイダさんはこの処分について、東京地方裁判所に行政訴訟の提起と退去強制の執行停止申立を行っていましたが、9月19日、東京地裁はシェイダさんの退去強制について、第一審判決までその執行を停止する決定を行いました。
 これにより、シェイダさんは少なくとも、第一審判決の言渡しまでは、退去強制を執行される危険性はなくなり、日本に在留できることとなりました。
 今後は、法務省を相手取った行政訴訟がどうなるか、また、難民不認定に対する異議申し出に対して、法務省がどういう決定を下すかが大きな焦点となってきそうです。

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(2)「レズビアン&ゲイパレード2000 in 東京」でTeam-Sもブースを出展
〜シェイダさんの難民認定、仮放免を求める嘆願書も着々と集約される〜
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 8月27日、レズビアン&ゲイパレード2000が開催されました。会場となった代々木公園B地区はパレードがはじまる前から色とりどりな着こなしで自分の存在をアピールする姿も見られ、華やかな雰囲気の中パレードが1850人の規模で開催されました。
 シェイダさん救援グループ(Team-S)もブースを出展し、現状を訴えるダイジェスト版とシェイダさんの難民認定および仮放免を求める嘆願書を作成しました。Team-Sのブースは、外から見ると机を出し、パラソルを立て、パラソルのフリルの部分にメッセージプラカードをレインボウカラーで施すという手の加えよう(!?)で、バランス感覚はともかくとしても、夏の感じさせるものがあり目立ってたと思います。チョットびっくりしたのは、開設当初からチラシを渡すまでもなく、次から次へとのぞいて行く人がいて、嘆願書にサインしていく人たちがいたことでした。これも、パレードが同性愛者の人権を守るという視点から関心を寄せる人たちが多いと感じさせるものでした。
 また、法務省が裁判所に提出した意見書の中で、退去強制処分の正当化の理由としてあげている、「(シェイダさんが参加した)札幌のパレードは社会的知名度がない」という主張をしていましたが、これを札幌のパレード関係者に伝えたところ憤慨していました。札幌の同性愛者グループとも法務省への怒りを突きつける一つのきっかけとなったと思います。
 シェイダさんの難民認定と仮放免をもとめる嘆願書は、あらゆるメッセージと共に60名近くが集約され、激励、カンパなども寄せられました。スタッフがパレードに参加している友人関係や通行する人たちに配りまくったのもありますが、当初印刷した800部がほぼなくなりました。また、シェイダさん救援グループのスタッフでない人たちも駆けつけてくれ、一日を通して、ブースの周りにスタッフが欠けるということもなく終わることが出来ました。
 パレードでは、プラカードを持ち、イラン人同性愛者シェイダさんを難民として認めろと沿道で歩いている人にも訴え切りました。とにかく、一日も早いシェイダさんの入管からの一時釈放、そして難民として認定を求める大きな意味を持つものでした。来年の札幌パレードは、シェイダさんが何としても参加できるように!、と決意を新たにしました。(S)

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(3)シェイダさん嘆願書・「シェイダ基金」の集約状況
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 「ニュース・アップデイト」第三号でお知らせしたとおり、現在、チームSではシェイダさんの難民認定と仮放免を求める嘆願書を集めています。また、シェイダさん救援のための資金として、「シェイダ基金」を設置し、寄付を募っています。現在、集まっている嘆願書数および寄付金は以下の通りです。
(嘆願書数)現在までに125通
(寄付金)呼びかけてからの入金 45000円
 嘆願書も、現状では、まだまだ必要とする数に足りない状況です。
 シェイダさんの難民認定の異議申し出についての決定は、もしかしたら10月中にも出るかも知れません。チームSとしては、9月中に嘆願書200通を目標に収集し、10月初旬に法務省への提出を行うことを予定しています。
 ぜひとも、ご協力をお願いいたします。集約先は以下の通りです。
(郵送)175-0083 東京都板橋区徳丸2-18-32-204清水方
(ファクス)03-3550-6024(同上)
(電子メール)shayda@da3.so-net.ne.jp(チームS電子オフィス)
 また、基金については、以下の要領でご協力・ご出資をお願いいたします。
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(「シェイダ基金」ご協力ご出資の方法)
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●一口1000円(複数口でのご寄付、一口以下でのご寄付、いずれも歓迎いたします)
●以下の郵便振替口座まで、お振り込み頂ければ幸いです。
(口座名称)シェイダ基金
(口座番号)00100-2-554626
●郵便振替用紙等については、ご住所を「チームS電子オフィス」まで頂ければ、資料等とともに郵送いたします。もちろん、郵便局等に備え付けの郵便振替用紙にご記入の上振り込んでいただいても構いません。

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(4)「難民・移住者フォーラム」との対話
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 9月15日と16日の2日間、東京四谷にある麹町イグナチオ教会(カトリック)にて、「日本カトリック司教協議会国際協力委員会」の主催で「難民・移住者フォーラム」が開催されます。東ティモールからノーベル賞受賞者のベロ司教が来日講演することもあり、難民問題について多くの人が集います。チームSとしても、この機会に難民問題に関心を寄せる多くの人に「シェイダさん問題」を共有してもらおうと、集会担当者宛に、シェイダさんについてのパンフレット、嘆願書を同封したうえ、経緯の説明とパンフ頒布の依頼についての手紙を送りました。
 そうしたところ、9月8日に主催団体の担当者より、以下のような電話が入りました。
(担当者)今回のフォーラムは教会関係の主催であって社会的問題についての統一した見解がないのでお断りします。また別の機会にどうぞ。こういう問題には個人的に理解の差がありますので。
(チームS)こういう問題とは『難民』問題に関してのということでしょうか?
(担当者)こういう問題というのは同性愛問題。それに関しての統一した見解がない状態なので。
 担当者の見解はすなわち、シェイダさんの問題を「同性愛問題」としてとらえたうえで、「同性愛問題」については統一した見解がないから、パンフの頒布を断るというものでした。
 シェイダさんは、同性愛を理由にイラン国家から迫害を受ける十分な理由があるために日本政府に保護を申請している難民であり、その問題は「難民問題」です。チームSとしては、主催者の考え方には納得できなかったため、以下のような文書を作成し、難民・移民問題に関するメーリングリストに投稿しました。
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「同性愛者難民」は難民じゃない?
〜日本カトリック司教協議会国際協力委員会の奇妙な論理〜
チームS・シェイダさん救援グループ

 私たち「チームS・シェイダさん救援グループ」は、現在、茨城県にある東日本入国管理センターに収容され、日本政府に難民認定を申請しているイラン人同性愛者、シェイダさん(仮名)を支える活動をしているグループです。
 イスラム原理主義政権下のイランでは、「同性間性行為は死刑」という刑法の下、同性愛者への処刑・殺害が行われています。シェイダさんは、祖国での迫害から逃れるため、1991年に来日。昨年の6月、あるイベントで自分がゲイであることをカミングアウトし、イランの同性愛者政策を批判しました。そして、日本のゲイ・コミュニティと積極的に交流してきましたが、本年4月、オーバーステイで逮捕され、難民認定を申請。7月4日、法務省はシェイダさんを難民不認定とし、特別在留許可も認めませんでした。シェイダさんは現在、難民不認定に対する異議申立てと、特別在留許可に関する行政訴訟、退去強制の執行停止申立てを行っています。
 このような状況のもと、私たちは、9月15日、16日の「難民・移住者国際フォーラム」の開催を知り、難民の問題に深くご関心を持ち行動なさっている方々に当件をお知らせするうえで、またとない機会と考え、シェイダさんの難民認定と仮放免を求める嘆願書を会場内に置いてもらうことを、フォーラムの主催者である「日本カトリック司教協議会国際協力委員会」にお願いいたしました。
 ところが、お願いの手紙を送らさせて頂いた翌日の9月8日13時50分頃、主催団体の方より、チームSのメンバーにあてて以下のような内容のお電話がありました。
「今回のフォーラムは、教会関係の主催であって、同性愛問題に関しての統一した見解がない状態で、個人的に理解の差があるので、(ゲイ難民である)シェイダさんについてのちらし・嘆願書等を難民移住者国際フォーラムの会場に置くのはお断りします」
 私たちは、この連絡を聞いて、失望感を禁じ得ませんでした。
 主催団体は、「同性愛問題」について統一した見解がない、と言っていますが、「難民問題」という文脈の中で、「同性愛問題」はどのような問題として位置づくのでしょうか。
 難民条約・難民議定書では、難民とは、特定の人種・宗教・国籍・社会的集団の一員であること、もしくは政治的な理由によって、迫害を受けるおそれが十分に存在するために、祖国に帰国できず、または帰国することを望まない人のことをいいます。「難民」と、それを保護しようという考え方は、「いかなる根拠があろうとも、それを理由に迫害を行うことは許されない」という前提の上に成立しています。難民問題の文脈の中では、同性愛者も、迫害を受けて保護を求める一人の人間に過ぎないのです。
 こうした難民条約の規定を前提とした上で、先の見解を見てみましょう。主催団体は、同性愛者難民の救済を求める嘆願書を置くことすら断る理由として、「フォーラム」が「教会関係の主催」であること、「同性愛問題」が存在し、それに対する「個人的な理解の差がある」ことをを挙げています。これは、「難民の擁護」を主張する団体としては、極めて奇妙な見解です。なぜなら、これは機械的に解釈すれば、主催団体の中に、同性愛を理由とする迫害から逃れようとする人を「難民」として認めたくないという意見を主張する人が存在しており、さらに、主催団体自身が、そういった考え方を容認しているということを意味するからです。
 もし、こうした考え方を容認するなら、次には、「××教の信者の迫害は構わない」「○○集団は難民として保護しなくてもよい」という主張を認めることにつながり、結果として、近代が産み落とした崇高な思想の一つである「難民の保護」は、「同性愛」というアリの一穴を起点として、とめどない堕落に陥ることでしょう。
 また、この考え方は同性愛を「罪」とする近代キリスト教の倫理観すらも逸脱しています。キリスト教は、「罪人」ならば野放図な迫害にさらされても構わないと教えているのでしょうか?そんなことはないはずです。
 国連の機関である「国連難民高等弁務官事務所」(UNHCR)は、「同性愛者」が「特定の社会的集団」の一つであるという見解を、以前から確立しています。「日本カトリック司教協議会」は、同性愛についてことさらに嫌悪的な態度をとるのではなく、UNHCRなどが示している見解、そして、どんな理由であれ、「迫害」は許されないという、難民問題の原点に立ち返るべきです。
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 これを投稿した日、「難民・移住者フォーラム」の主催団体より再び連絡がありました。その内容は以下のようなことでした。
>今回のことについて、本当に申し訳ない対応をしてしまいました。
>カトリックとして立場というか教義の捉え方できちんとしていない
>ことはあるのですが、頂いた手紙にあるように難民を護る立場
>からは間違った対応でした。申し訳ありませんでした。
>ひとつ、M-netに出される前に事前に直接抗議を頂ければという声があった
>ことをお伝えしておきます。
 このような形で、主催団体の当初の見解は撤回され、チームSとしてシェイダさんのパンフを配布することができるようになったわけです。当日は、パンフレット、嘆願書を配布することができました。
 チームSとしては、主催団体との討論というプロセスを抜いて、批判文をただちにメーリングリストという言論の場に流したことについては、配慮が足りなかったことを認めます。また、私たちの問題提起に対して、直ちに適切な対応をとった主催団体に敬意を表します。
 これを契機として、より多くの、実りある議論と協働を作り上げていきたいと思っています。
***第四号 以上***(第5号は近日中に発行予定です)


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シェイダさんを救え!ニュース・アップデイト
Save Mr. Shayda! The News Update
第5号 2000年10月13日発行(不定期刊)
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発行元 チームS・シェイダさん救援グループ
編集担当 チームS電子オフィス shayda@da3.so-net.ne.jp
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<今号の目次>
(1)ニュース速報・シェイダさん第一回口頭弁論の日程決まる!
(2)シェイダさん嘆願書を法務省に提出
(3)「国際協力フェスティバル」参加体験記
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●バックナンバーが必要な方は電子オフィスまでお知らせ下さい。
●その他講読・講読中止などの手続も電子オフィスまでお知らせ下さい。

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(1)シェイダさんニュース速報
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●●●シェイダさん行政訴訟 第一回口頭弁論の日程決まる!●●●

 さる7月4日、法務省はシェイダさんの難民申請に対して、これを不認定とし、特別在留許可も与えないという決定を下しました。さらに、退去強制令書の交付を行い、シェイダさんの退去強制の執行を開始したのです。
 これに対して、シェイダさんは難民不認定に対する異議の申し出を行うと同時に、退去強制手続きについて、東京地方裁判所に行政訴訟を提起しました。この行政訴訟は、名目としては「退去強制令書交付等取消訴訟」といいます。
 法律的にいうと、難民性があり、特別在留許可を受けて日本に在留するのが適切であるシェイダさんに特別在留許可を与えず、退去強制令書を交付して退去強制の執行手続に入ったのは違法であるとして、退去強制令書の交付を取り消し、在留権を認めさせることを要求する訴訟です。これに勝訴すれば、シェイダさんの在留権は晴れて認められることになります。
 その第一回口頭弁論の日程が、ついに決まりました。
(日時)11月20日(月)午前10時30分〜
(場所)東京地方裁判所 第606号法廷
 チームSでは、法廷後に報告集会を開催することを計画しております。具体的なスケジュールは、決まり次第お知らせします。ウィークデーの昼間ということで、時間的に厳しい方も多いかとは思いますが、ぜひとも法廷に足を運んで下さい。法廷を満員にして、裁判官・法務省に対して、多くの人がこの裁判に注目しているのだというメッセージをともに送っていきましょう。

●●●イラン大統領・ハターミー師の来日が決定●●●

 10月6日、外務省はイラン大統領セイエッド・モハンマド・ハターミー師が10月31日から11月3日までの4日間、公賓として来日することを発表しました。
 ハターミー師は1992年までイスラーム指導相を務めた後、1997年に改革派の「闘う聖職者協会」系の候補として大統領選挙に出馬、「法の支配」と既成の宗教権力による停滞の打破を訴えて保守派の候補に圧勝、大統領に就任しました。
 その後、イランではハターミー師ら改革派と、司法部や治安部門、革命防衛隊などを握る保守派の対立が激しくなり、1999年7月には、保守派による新聞「サラーム」の強制閉鎖に対する学生を中心とした大規模な抵抗運動が起こりました。
 ハターミー政権自体は開明的であり、保守派との対決も実際に行っているところから、欧米諸国からは高い評価を得ています。しかし、実際のところ、1999年に死刑が執行された人の数はアムネスティの推計で165名以上にのぼっており、90年代中盤より多くなっている現実があります。また、改革派・保守派の対立の中で、保守派の秘密部隊や保守派に近い民間暴力組織によると思われる謀殺事件なども頻発しており、ハターミー政権がイランの全権を掌握しているとはいえない状況にあります。そもそも、イランの現体制はホメイニー師以来の「イスラム法学者による統治」(ヴェラーヤテ・ファギーフ体制)で、現在の最高指導者(イスラム法学者)は保守派に近い立場をとるハーメネイ師であり、軍が大統領ではなく最高指導者に直属しているなど、大日本帝国憲法下の日本のような統治システムになっています。このようなことから、欧米諸国に拠点をおくイラン人亡命者の組織の中は、ハターミー政権の性質に関わらず、イランの現体制を国際会議などから排除するようによびかけているグループもあります。
 同性愛者に対する処遇については、ハターミー大統領が就任した1997年以後も、同性間性行為を行った容疑による死刑や、むち打ち刑などの残虐刑が相当数行われていることが報告されており、同性愛者政策が変化する兆候は今のところ、見られないといってよいでしょう。
 ハターミー師の来日で、イランでは改革や民主化が進んでいるといった報道がなされることと思われます。しかし、それは一面の事実ではあるにしても、未だに死刑や残虐刑、秘密部隊によるテロなどが横行し、さらに、同性愛者や女性、また政治的・宗教的少数派に対する抑圧が当然のこととしてまかり通っている現実があることに目を背けてはならないと思います。シェイダさんが祖国に帰れない現実が、イランには未だに厳然として存在しているのです。
 「チームS」では、ハターミー師の来日にあわせて、集会の開催やマスコミに向けた声明の発表などを行っていくことを検討しています。詳細はまたお知らせしますので、ぜひともご注目のほどお願い申しあげます。

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(2)シェイダさん嘆願書を法務省に提出
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 「チームS」では、本年8月より、シェイダさんの難民認定と仮放免(強制収容を解くこと)を求める嘆願書を集めてきました。9月末までの1ヶ月半の間に、難民認定については224通、仮放免についてもほぼ同数の嘆願書が集まったことから、これを第一次集約として、法務省に嘆願書を提出してきました。ご協力を頂いた皆様、本当にどうもありがとうございました。
 仮放免に関する嘆願書は、シェイダさんの主任弁護士を通じて、仮放免を直接管轄している法務省東日本入国管理センター(茨城県牛久市)のセンター長に提出しました。
 難民認定に関する嘆願書については、10月10日(火)に、福島瑞穂・参議院議員の紹介により、「チームS」のメンバーおよび支援者5名で、法務省入国管理局に直接提出を行いました。
 当初は、法務省ロビーで担当者に直接提出して終了という形になるのではないかと考えていましたが、予想に反し、法務省側は一階の陳情室で、私たちと意見交換を行う時間を設定していました。しかし、「難民認定」に関する嘆願書の提出であるにも関わらず、出てきたのは上原・入国管理局警備課長はじめ、「仮放免」を担当する警備課の面々。私たちは、多少めんくらったものの、頭を切り替えて、仮放免のあり方についての質問や、シェイダさんの仮放免の必要性や、現状の収容状況の改善についての要請を行いました。
 シェイダさんは、逮捕された4月22日以降、約半年にわたって入管局の収容施設に収容され続けています。イランでの同性愛者への迫害から逃れて日本に入国したという事情から考えて、そもそも収容は不適当です(実際、自ら難民申請を行った人に対しては、オーバーステイであっても、その場で仮放免手続を行い、強制収容はしないのが最近の慣例となっているようです)。また、長期間の収容で、シェイダさんの体調も万全の状態とはいえないのが現状です。
 このようなことから、私たちは、シェイダさんの一日も早い仮放免と、収容中の待遇改善を担当者に強く申し入れました。法務省側からは、積極的な答弁はありませんでしたが、これまで仮放免された人の人数などの基礎的なデータについては調査・開示することを表明しました。
 「チームS」では、現在も難民認定・仮放免に関する嘆願書を集めていますので、ぜひともご協力のほどよろしくお願い申しあげます。

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(3)「国際協力フェスティバル」参加体験記
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 10月7日(土)、8(日)の2日間、チームSでは東京・日比谷公園で行われた「国際協力フェスティバル2000」に参加して、シェイダさんのゲイ難民問題をアピールし、難民認定・仮放免を求める嘆願書への署名を訴えてきました。
 「国際協力フェスティバル」(URL: http://www.jca.apc.org/icf/index.html )というのは、10月6日の「国際協力の日」(というのがあるそうです)に合わせて、主として南側諸国での様々な援助活動をしているNGOや青年海外協力隊OBグループ等が活動紹介や物品販売のブースを出しているイベントです。
 確かにシェイダさんは外国人だし、この問題はもちろん「国際的」な問題でもあります。でちょっと、毛色というか、方向性が違うのでは?難民関係のイベントならともかく、なぜ「国際協力フェスティバル」でシェイダさんのことを?と考える方もいるかもしれません。
 これには訳があります。実はシェイダさん本人とチームSのメンバーが、昨年の同じ会場で行われたこのフェスティバルに参加していた、という経緯があるのです。東京の、ある同性愛者が呼びかけた人権問題を訴えるNGOが昨年このフェスティバルにブースを出展し(今年は不参加)、シェイダさんとチームSメンバーはそこのブースで同性愛者の人権、PHA(People living with HIV/AIDS)の人権を訴えていたそうです。
 さて、今回のフェスティバルへの参加は、ほかの市民団体の方々の暖かいご協力があって実現できたものでした。チームSでは上述の経緯を踏まえ、このフェスティバルでシェイダさんの現状を訴えることを考えました。しかし、今年のフェスティバル開催を私たちが知った段階で、すでに出場は締め切られていたため、独自でブースを出したり、きちんと会場でアピールすることは難しい状態でした。
 それでも、何ていうか、昨年本人が実際に来ていた場所でもあり、もしかしたら昨年のことを覚えている人がいてシェイダさんのことに関心を持ってくれる可能性があるのではと思い、何とかこのイベントに「食い込め」ないかと、開催ぎりぎりになってフェスティバルへの各参加団体に、「昨年このフェスティバルに出たイラン人同性愛者が現在オーバーステイで収容され、母国での同性愛者への迫害をまぬがれようと法務省に難民認定申請をしています。そのための嘆願書やちらしを置かせてもらえませんか?」 と連絡してみました。
 そうしたところ、参加団体の一つである市民活動を支援するWEB活動をしているNGOのJCA-NET(URL:http://www.jca.apc.org/ )の方からご協力いただける旨のご返事をいただき、急遽JcaーNetのブースに間借りして、嘆願書署名を訴えること等ができた次第です。
 ところで、肝心のフェスティバルの様子を一言で伝えようとすると―”楽しい”(+おいしい+ためになる)−イベント、それに尽きるでしょうか?
 100以上のグループなどのブースがそれぞれの地域ーアフリカあり、南アジアあり、東南アジアあり・・・ーやテーマー保健、金融、医療、教育、開発、技術、人権、子ども、女性、他ーのことを紹介し、現地の人々が作ってフェアトレード(搾取なき公正な取り引きを目指す貿易活動)で流通させている衣類・雑貨・葉書き・お茶・飾り物・そして活動紹介の書籍・パンフetc...を扱って実に多彩でした。が、何といっても人気を一番に集めていたのは、カレーやナン、点心といったおなじみのものを始め、ピーナツベースのベジタブルスープ、カバブ(羊肉の串焼き)等々の「エスニック」フード&ドリンクのコーナーでした。(いったい何人くらいの人が来ていたのでしょうか?代々木公園での8月27日のゲイ・レズビアン・パレードが2000人以上ということでしたが、このフェスティバルは2日間ともに午前中から夕方まで人の流れが尽きないのです。)
 そんな雰囲気ののなかだったので、「日本国内」で起こっている「外国人」「同性愛者」の人権の問題をアピールしているチームSのブースは、異色といえば異色だったのかもしれません。しかしふたを開けてみると、30人以上の人が嘆願書にその場で署名をし、ちらしも用意した分は、はけてしまいました。特に若い人たちの反応がポジティブだったのが印象に残っています。
 会場内では、先述のJca-Netブース内以外に、「アムネスティ・インターナショナル日本」(URL:http://www.amnesty.or.jp/)のブースに、シェイダさんの嘆願書ちらしを置いていただいていました。こちらでちらしを手に取っていく人は、若い女性の人が多かったとのことでした。
 中には、チームSの「ゲイ難民シェイダさんを救え」の表示を見て、「ゲイだってっ」と、捨て台詞のように言いながらいく人もいましたが・・・。
 ブースにいて、「はっ」と不思議に感じたことがあります。それは昨年のこのフェスティバルのブースで、当のシェイダさんは一体どんな心持ちでいたのかな?ということです。
 一日目、一人の黒人男性がチームSのところに立ち寄って、ちらしを少し読んでから持っていったときにそんなことを感じたのです。私はこの黒人男性が「どこの人なのか」「宗教は何なのか」「アンチゲイの人ではないのだろうか」という怖れを感じました。(まさにその怖れゆえに、会話を交わそうとはしなかったので、本当のことはわかりません。)なぜなら、私は彼がフェスティバル会場にいる黒人であることから「アフリカ」という地域〜フェスティバルでは地域的としてアフリカとネパール系のブースが目立っていました〜を連想し、そこからアフリカ諸国での同性愛者が置かれている厳しい状況〜TV番組の「ここが変だよ日本人」でのゾマホン氏の発言に表われているような〜を思い浮かべ、この人は一体どういう立場でこのちらしを見ているのか?がひどく気になったのです。
 シェイダさんが昨年ブースに立っていたとき、そこを通りかかった人たちは、彼の風貌から彼が外国人であることはわかったと思います。そして一方そこでは同性愛者の人権が訴えられていました。その状況でそこを通る人々は、シェイダさんのことをどう見ていたのでしょうか?そしてシェイダさんはその時に、そこを通る人が彼のことをどう見ているのか?について、どう感じていたのでしょうか?後者については今度機会があったら本人から聞いてみようかと思います。
 もう一つ、印象に残っていることがあります。会場で若い男性が、「『日本国内』のことで活動しているグループを探しているのですが、どこか知りませんか?」と声をかけてきたのです。国内での国際協力。「遠いと思われていたこと」を時には「自分のこと」のように想像し関わっていくことは、人々が「共に生きていく」ために不可欠のことですが、「自分の足もと」で起こっている「ひとのこと」を問い直していくのも、やはりそうなのではないか?と改めて思いましした。
〜ジョン・レノンの誕生日の翌日に〜 (T)
●●●「シェイダさんを救え!ニュースアップデイト」第六号は近日中発行の予定です●●●


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シェイダさんを救え!ニュース・アップデイト
Save Mr. Shayda! The News Update
第6号 2000年10月26日発行(不定期刊)
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発行元 チームS・シェイダさん救援グループ
編集担当 チームS電子オフィス shayda@da3.so-net.ne.jp
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<今号の目次>
(1)ニュース速報・法務省シェイダさんの難民異議申し出を却下
(2)ハターミー大統領来日に関する声明
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●バックナンバーが必要な方は電子オフィスまでお知らせ下さい。
●その他講読・講読中止などの手続も電子オフィスまでお知らせ下さい。

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(1)シェイダさんニュース速報
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●●●法務省、シェイダさんの難民申請異議申し出を棄却●●●
 法務省(安岡興治法務大臣)は10月23日までに、7月にシェイダさんの難民申請を却下したことについてのシェイダさんからの異議申し出をふたたび却下する決定を行いました。
 出入国管理・難民認定法では、難民申請についての法務省の決定に異議がある場合は、異議の申し出ができることになっています。5月8日に難民申請を行ったシェイダさんは、7月4日に難民不認定の決定を受け、即時に異議の申し出を行いました。また、私たち「チームS・シェイダさん救援グループ」は、シェイダさんの難民認定および仮放免を求める嘆願を呼びかけ、協力していただいた皆様から、224名にも及ぶ嘆願書を頂き、10月11日、これを法務省に提出しました。法務省の今回の決定は、日本に在留し続けたいというシェイダさんの願いや、それを支えようとする多くの人々の願いを踏みにじるものです。
 この異議申し出の却下によって、シェイダさんの今回の難民認定手続は「シェイダさんを難民として認めない」という法務省の悲しい決定のうちに終了した、ということになります。
 シェイダさんは現在、難民申請のほかに、特別在留許可を求める行政訴訟を行ってています。シェイダさんの退去強制手続きは、この訴訟の第一審判決が出るまでは停止されることが決定されており、今回の法務省の決定にかかわらず、シェイダさんの在留権は、第一審判決までは事実上確保されています。シェイダさんは、今回の難民申請に関する決定についても、行政訴訟に組み入れ、その違法性を司法の場で争う意向を表明しています。
 しかし、4月に逮捕されたシェイダさんはすでに半年にわたって勾留されており、精神的・肉体的に過酷な状況にあることも事実です。日本、イラン以外の第三国への出国は、以前から一つの方法として上がっており、「チームS」としても、オーストラリアやカナダの同性愛者の移民・難民支援組織などにも接触を試みていましたが、第三国への仲介などを行う国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、日本政府の難民申請の検討が終わるまでは第三国政府への仲介はしないという態度をとっており、これまでは第三国出国を本格的に試みることは物理的に困難でした。しかし、日本政府が異議申し出を却下したことによって、日本政府による難民受け入れのプロセスは終了したわけであり、第三国出国にむけて最大限の追求を行うことのできる時期が来たとも言えます。
 「第三国出国の追求」と「行政訴訟」、難しい選択ですが、あきらめず、たゆまず、ベストの結果を追求していきたいと思います。 

●●●イランで2名が「性的逸脱」により処刑される・夕刊紙が報道●●●
<テヘラン発10月17日=AFP> 10月16日にイランの夕刊紙ケイハン Kayhan 新聞が伝えたところによると、テヘランの南にあるイスラム教シーア派の学究都市コム Qom で、15日・16日の両日、二人の男性が「性的逸脱」sexual perversion の罪で死刑に処されたとのことです。
 イランでは、「性的逸脱」というのは、同性間性行為のほかに、「姦通」(結婚相手以外の人との性行為)、強姦をも指すことができるとされており、実際にこの処刑が同性間性行為によるものであるかどうかはまだわかりません。
 現在、イランの同性愛者の人権擁護団体「ホーマン」がこの処刑事件に関する調査を行っています。
 イランで同性愛者を処刑していることについては、90年代前半に欧米を中心に厳しい非難が行われ、1991年には国連事務総長のイランの人権に関する特別代表がイラン政府に対し、同性愛者に対する処刑をやめるように警告しました。イラン政府はこれに対して「イランでは同性間性行為は禁止されており、我々はイスラム法の施行の必要性に即して同性愛者を罰しているのである。それゆえ、同性愛者の処刑は正当化される」と述べました(*1)が、その後イラン政府は、刑法のソドミー規定に基づく処刑については、必ず強姦や麻薬所持などの罪名もつけ、「同性愛」だけで処刑したという批判を受けないように「配慮」しています。
 近年は、欧米に亡命したイラン人女性の組織などが、「姦通」(男性は絞首刑などの方法での死刑、女性は石打ち刑に処せられる)による処刑に反対する大規模な抗議行動を行っており、おそらくハターミー政権は「姦通」を行った人に対する石打ち刑での処刑が残虐刑として国際的に非難されることについても、警戒しているだろうと思われます。
 ここで「sexual perversion」という耳慣れない罪名を使ったのは、おそらく上記の二つの「配慮」に即してのことと思われますが、いずれにせよ、イランにおいては未だに同性愛者や女性に対する性的自己決定権が一切認められておらず、法的・社会的規範からの「逸脱」は死刑をもって処罰されるという状況が続いていることはたしかです。ハターミー政権が民主化・改革をすすめ、一定の成果を上げていることは事実でしょうが、同性愛者、女性、少数民族、宗教的少数派に対しては、以前とかわらぬ迫害が行われているという事実に目をつぶるべきではありません。
*1:「イランの同性愛者の状況」(闘う文化協会編、ハーグ、1999年10月)

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(2)イラン大統領・ハターミー師来日に関する緊急ニュースリリース
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イラン・イスラム共和国大統領ハターミー師来日にあたっての緊急声明
<イランでは、いまだに同性愛者が弾圧され続けています>
<日本政府は、イラン人ゲイ、シェイダさんの在留権を認めるべきです>
チームS・シェイダさん救援グループ
_________________
<Summary>
 イスラム革命以後のイランでは、同性愛者に対する死刑を含む弾圧が続いており、改革派のハターミー政権も弾圧政策を変えていない。97年以降、少なくとも4名の同性愛者に死刑が執行されている。ところが、日本政府はこの7月、難民認定を求めるイラン人ゲイ・シェイダさん(仮名)の申請を拒否、特別在留許可も与えない決定をした。私たち「チームS・シェイダさん救援グループ」は、イラン政府が同性愛者弾圧政策を放棄すること、日本政府がイランの現実を直視し、シェイダさんを難民として認めることを強く要請する。
_________________
 私たち「チームS・シェイダさん救援グループ」は、日本政府に難民申請を求めているイラン人ゲイ・シェイダさん(仮名)の救援活動を行っているグループです。
 外務省は10月6日、イラン・イスラム共和国大統領ハターミー師が10月31日から11月3日にかけて公賓として来日することを発表しました。私たちは、1979年のイスラム革命後多くの同性愛者の命が弾圧によって奪われたイランで、未だに多くの同性愛者が弾圧の危機にさらされていることを告発するとともに、日本政府がシェイダさんの在留権を一刻も早く認めるよう、ここに声明します。

●ハターミー政権下のイランの同性愛者弾圧●
 
 イランでは1979年の革命後、宗教主義勢力が権力を掌握し、ホメイニー師を頂点とする「イスラム法学者による統治」(ヴェラーヤテ・ファギーフ体制)が成立しました。この体制下で、イランでは現在に至るまで同性愛者や女性、少数民族や宗教的少数派に対する厳しい弾圧が行われています。
 イランの刑法は同性間性行為を死刑によって罰する(刑法110条)ことを決めており、欧米を拠点に活動するイラン人同性愛者の人権団体「ホーマン」によれば、革命以降殺害された同性愛者の数はおよそ4000人にのぼると言われています。また、1991年、イラン政府は国連人権委員会に対し、「イスラム法は同性愛を認めていないので、同性愛者への処刑は正当化される」と述べています。
 ハターミー師は、「法の支配」をもたらすことを掲げて大統領に当選し、その民主改革は一定の成果を収めています。しかし、その恩恵は同性愛者や女性、少数民族、宗教的少数派には及んでいません。ハターミー大統領が就任した1997年以降、判明しているだけで4名が同性間性行為を行ったかどで処刑され、それ以外にも同性愛者・性的少数者がむち打ち刑などの拷問・残虐刑を受けていることが報告されています。また、改革派と司法部門や軍・民間の暴力装置を握る保守派の対立が先鋭化しており、99年にテヘランで発生した、共同生活を営む二人の女優のガス殺事件をはじめ、同性愛者に対する保守派のテロ疑惑事件が起こっています。ハターミー大統領の人格や政策がどうであろうと、イランで同性愛者など社会的少数派に対して、相変わらず国家による弾圧や公然たる暴力がまかり通っている事実から目を背けることはできません。

●日本政府は同性愛者弾圧の状況を直視し、シェイダさんに難民認定を認めよ!●

 ところが日本政府は、イランでの同性愛者弾圧に十分な理由のある恐怖を感じて日本に難民申請を行ったイラン人ゲイ、シェイダさん(仮名)を難民不認定とし、特別在留許可も与えていません。
 シェイダさんは1991年、イランでの同性愛者弾圧を恐れて出国、来日しました。しかし、日本語、英語の能力とも不十分なシェイダさんは、難民認定を申請したり他国に移動することもできず、結果的に超過滞在者となってしまいました。昨年6月、シェイダさんはあるイベントで同性愛者であることをカミングアウトし、イランの弾圧を厳しく批判。その後レズビアン・ゲイ映画祭や札幌での性的少数者のパレード等に参加し、日本のゲイ・コミュニティとの関係を深めました。そのころ培った交友関係が、私たち「チームS」の母胎となっています。
 本年4月、シェイダさんは超過滞在で逮捕され、すぐさま難民申請を行うと共に、自分の難民性を入管当局に主張し、私たち支援グループとともにイランでの人権弾圧の実態について数多くの証拠を提出しました。しかし7月4日、法務大臣はシェイダさんを難民不認定と決定し、特別在留許可も与えませんでした。シェイダさんは難民不認定の決定に異議を申し立て、難民申請については再審査中であるとともに、特別在留許可を与えなかったことを不当として行政訴訟を起こしています。シェイダさんは現在、法務省東日本入国管理センター(茨城県牛久市)に強制収容されています。
 法務省は「イランでは同性愛は一般に容認されている」などと、全く事実と違うことを平然と主張しています。法務省は一日も早くイランの現実を認識し、シェイダさんを難民として認定すべきです。
 私たち「チームS・シェイダさん救援グループ」は、ハターミー大統領の来日に際して、イランでの同性愛者に対する人権弾圧を厳しく糾弾し、国連人権規約違反である刑法の同性愛者弾圧条項の撤廃を求めます。また、日本政府に対しては、イランで同性愛者が死刑を含む弾圧を被っていることを直視し、シェイダさんに対して難民認定を行うよう、強く要求します。(了)
〜「シェイダさんを救え!ニュースアップデイト」第7号は近日中に発行します。〜


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シェイダさんを救え!ニュース・アップデイト
Save Mr. Shayda! The News Update
第7号 2000年11月17日発行(不定期刊)
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発行元 チームS・シェイダさん救援グループ
編集担当 チームS電子オフィス shayda@da3.so-net.ne.jp
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<今号の目次>
(1)シェイダさん在留権裁判 第一回口頭弁論せまる!
(2)シェイダさん、多くのメディアに紹介される
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(1)シェイダさん在留権裁判 第一回口頭弁論せまる!
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 シェイダさんの在留権裁判の法廷が、11月20日(月)ついに開かれます。
 7月4日、臼井日出男法務大臣がシェイダさんの在留権を認めない(特別在留許可を出さない)決定を行い、退去強制令書(シェイダさんを日本から退去させる命令を記した公文書)を発付しました。これに対して、シェイダさんは東京地裁に、退去強制令書発付処分の取消訴訟(シェイダさん在留権訴訟)を起こしたわけです。
 今回の法廷は、この訴訟の最初の口頭弁論であり、法務省はこの場で、シェイダさん側の主張に対する答弁書(法務省の見解を書いた書類)を提出して、両者の主張が出そろい、本格的に裁判が開始されるわけです。
 「チームS」では、法廷終了後、報告集会を予定しております。お忙しいところとは存じますが、裁判ともどもご参加をお願いいたします。
<第一回口頭弁論>
○日時:11月20日 午前10時30分〜11時前
○場所:東京地方裁判所 第606号法廷
 (営団地下鉄「霞ヶ関」駅下車 徒歩3分)
○傍聴は無料、予約等も不要です。直接、606号法廷に来て頂ければ幸いです。
<シェイダさん在留権裁判報告集会>
○日時:同日午前11時〜12時
○場所:弁護士会館5階 507号室
○内容:事件の経過報告、弁護士による解説、
 トーク「私とシェイダさん」 第一回:洪 久夫さん(サークルホン主宰)
 会場費・資料代200円
○弁護士会館は東京地方裁判所に隣接しており、最寄り駅は同じく「霞ヶ関」です。
○場所が分からない場合は、1階ロビー受付にてお尋ね下さい。

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(2)シェイダさん、メディアに紹介される
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 「チームS」では、8月以降、シェイダさんの仮放免と難民認定を求める嘆願書を多くの人に書いてもらうキャンペーンを行ってきました。8月27日に開催された東京レズビアン&ゲイ・パレードを始め、10月に「国際協力フェスティヴァル」に参加したり、これまで集会を2回開催するなど、キャンペーンを進めた結果、これまでに合計225通の嘆願書を集め、法務省に提出することができました。ご協力ありがとうございました。(もちろん、現在も嘆願書を集めています。協力していただける方、よろしくお願いします。)
 このようなキャンペーンは、シェイダさんの事件を多くの人に知ってもらうきっかけとなりました。また、それに留まらず、シェイダさんのことは、現在までにいくつかのメディアに紹介され、より多くの人の関心を集めるようになっています。
 これまでにシェイダさんの事件を取り上げたメディアをいくつか紹介しましょう。

(1)「G−メン」第57号

 まず、ゲイマガジン「G−メン」の記事から。2ページの見開きで、シェイダさんの事件が紹介されています。シェイダさんの事件の発端から、現在の状況に至るまでが年表形式で整理され、この問題の解説記事がコンパクトに並ぶと同時に、「東日本入国管理センター」の面会室で行われたシェイダさんの肉声インタビューも紹介されています。「G−メン」の記者の方が、チームSの面会に同行し、インタビューを行ったのです。
 一目見ただけでシェイダさんの問題が理解できる、最適の教材といえるでしょう。

(2)「週刊金曜日」11月3日

 次は、硬派の週刊誌「週刊金曜日」の11月3日号「アンテナ」欄です。「アンテナ」欄の最初の記事が、シェイダさんに関するものです。
 シェイダさんの事件の紹介から入って、10月に難民認定が最終的に棄却されたこと、ハターミー大統領来日にともない、親善ムードがかもしだされる「日本−イラン」関係の裏で、イランでは多くの同性愛者が今でも弾圧されていること、などがコンパクトにまとめられています。11月20日に行われる裁判のニュースも、簡単に伝えられています。シェイダさんの現在を理解するにはちょうどよい記事になっています。

(3)アムネスティ・インターナショナル・ニュースレター11月号

 アムネスティ・インターナショナルは世界的に有名な国際人権組織で、シェイダさんのことについてもいろいろとご協力いただいています。このアムネスティ・インターナショナルのニュースレター11月号に、シェイダさんの問題が取り上げられています。
 この記事は、「性的指向によって本国で迫害を受ける難民申請者に公正な判断を」と題するもので、性的指向によって迫害を受ける人々が世界に数多くいることを示した上で、シェイダさんの問題について、具体的に触れています。また、シェイダさんに対する法務省の態度の問題点についても、手際よくまとめた上で、シェイダさんを難民として認めるべきであることを主張しています。この事件に関する、法務省の対応を知る上で、大変よい記事だと言えるでしょう。

(4)ピースネットニュース第152号(11月10日発行)

 最後に紹介するのが、「ピースネットニュース」です。様々な市民運動を網羅するミニコミ誌として以前から定評のある「ピースネットニュース」は、「シェイダさんを救え!ニュースアップデイト」の第六号に掲載した、「イラン大統領ハターミー師来日に関する緊急ニュースリリース」を「電脳情報コーナー」にそのまま掲載してくれました。イランやイスラム社会の人権問題を考える人々にアピールすることができたと思います。
 「チームS」では、これらの記事を取り寄せたい、読みたい方は、とりあえず「チームS電子オフィス」までご連絡下さい。また、また、各社・団体連絡先は以下の通りです。
○「G−メン」:有限会社ジープロジェクト 03-5269-1880
○週刊金曜日:株式会社金曜日 03-3221-8527
○ニュースレター:アムネスティ・インターナショナル日本 03-3203-1050
○ピースネットニュース:ピースネット企画 03-3813-6490
●●●第八号は近日中に発行の予定です●●●


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シェイダさんを救え!ニュース・アップデイト
Save Mr. Shayda! The News Update
第8号 2000年11月30日発行(不定期刊)
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発行元 チームS・シェイダさん救援グループ
編集担当 チームS電子オフィス shayda@da3.so-net.ne.jp
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<今号の目次>
(1)シェイダさん在留権裁判 第一回口頭弁論報告
(2)参考第一回口頭弁論 シェイダさんのメッセージ
(3)各国駐日大使館での難民受け入れ体制は?
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(1)シェイダさん在留権裁判 第一回口頭弁論報告
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 11月20日(月)の朝10時半より、霞ヶ関にある東京地方裁判所第606号法廷で、シェイダさん在留権裁判の第一回口頭弁論が開かれました。前夜から続く雨で、とても寒い一日でした。
 東京地方裁判所は、東京高等裁判所などとの合同庁舎で、ばかでっかい建物です。玄関は、弁護士などの関係者用と一般傍聴人用とに別れています。空港のようなX線の荷物検査機があり、金属探知ゲートをくぐらされ、けっこうものものしい感じ。制服姿の警備の兄ちゃん達がいましたが、かっこいいかどうかなど観察する精神的余裕はありませんでした…。今度行ったときには、ちゃんとcheckしてくるつもりです。
 ほんの少し遅刻して6階の第606号法廷につきました。が、まだ前の裁判が終わっていない様子。傍聴席は60人ほどが座れるようになっており、法廷とは腰ぐらいの高さの柵で仕切られています。傍聴席は3分の1ぐらいが埋まっている感じでした。一部屋がばかでかい! 天井が異様に高い。裁判官席なんか、そんなに高くなくてもいいだろうってくらいです。
 前の裁判の原告、被告が退席する間も裁判官は休みをとりませんでした。前の裁判と次の裁判の内容がごっちゃになったりしないのか、ちょっと心配。大橋弁護士によれば、担当の裁判官は、難民関連の問題についてはエキスパートだそうで。ちょっと頼もしいかな?
 こっちの弁護団は2人。被告である法務省側は4人も! たった一人の外人を追い返すだけなのに、国は人件費だけはかけてますよ! だったらもっとましな答弁書※を提出してほしいものですね。
(※ちょっと解説。難しいので僕自身もよく理解できてないんですけどね。へへ。
今回の裁判で法務省側から提出された答弁書が、以前「退去強制令書の執行停止申立」をしたときに反論として提出された「意見書」と一言一句違わないものだったんです。こちら側の「退去強制令書の執行停止申立」は認められて「第一審の判決」まで停止されることになりました。つまり、法務省側の「意見書」はシェイダさんを退去強制するに十分な意見ではない、という裁判所の判断を既に受けているものなんです。その文章をそっくりそのまま、また使おうってんで、法務省はナメてやがんのか!?ということなんです。)
 前の裁判がなかなか終わらないように感じていましたが、いざ、シェイダの裁判が始まると、あっと言う間に終わってしまいました。二三書類のやりとりをして、裁判官が、あらかじめ提出されていた書類について、双方に次回までに反論をまとめてくるように言って、次回の日取りを決めて、それでおしまい。その間、5分もかからなかったかもしれません。何の裁判なのか知らずに聞いていた人には、なーーーんにもわからなかったと思います。裁判の一回目というのは、だいたいこんなものなのだそうですが、それにしても拍子抜けしてしまいました。本人が出廷しておらず(入管が許可しない為)、大橋弁護士が、シェイダ本人による支援者への伝言を詩に託したものを朗読したぐらいしか、内容らしいものはありませんでした。
 ところで、裁判に原告本人がいないのは変だと思いませんか? 法律上は本人がいなくても裁判は進められることになっている。ならば、入管が本人に出廷のための外出許可を出す必要は無い。という理由なのだそうです。でも、そんなのって変だと思うんですけど。
 裁判が終わって、雨の寒空の下、隣接の弁護士会館へ移動。室内が暖かかったせいもあるでしょうが、裁判所の重ーい雰囲気に飲まれて、なんだか余計に寒く感じました。最終的に弁護士会館での報告集会まで来て下さったのは10人ちょっとだったでしょうか。チームSのメンバーによる経緯の説明や、弁護士による質疑応答などがありました。
 ある市民団体の方が発言してらした内容にちょっとびっくりさせられました。シェイダの収容されている牛久入管では「被収容者は外の医療施設に行く場合などに皮手錠をされている」とのこと。まるで刑務所じゃないですか。シェイダ本人からの報告で「医者になかなか行かせてくれない」だの「入管で出される食べ物は腹が痛くなる」だのという待遇の悪さは話に聞いていたんですが。
 今回は傍聴に来て下さった方が少なかったわけですが、平日の真っ昼間だったということを考えれば、それも仕方がなかったかも知れません。マスコミ関係の方が全くいなかったのはすごく残念でした。とは言っても、今回の裁判では何も話し合われなかったので、もうちょっと裁判が進んでから来てもらった方が良かったでしょうが。
 今後は、裁判をどうやって宣伝するかということは考えた方が良いかも知れませんね。例えば、一般向けには裁判所内見学ツアーとか? こういう機会でもないとなかなか行くところじゃないし。裁判所の意匠とかも、けっこう面白いですよ。何でこういうデザインなの???とか思う所がいっぱいあって。誰か解説してくれないかなあ。…あ、すいません、話が脱線しましたね。
 いろんな立場のいろんな人が、この支援活動に携わっているけれど、みんなはそれぞれ、どんな思いを胸に抱いているのだろう? シェイダのこの一連の裁判は、本当にいろんな意味で意義のあることだと思うんだけど。だけど、わかっちゃいるけど、僕としては「政府の対応は間違っているから」という正義感や、「同性愛で死刑にされるのはたまらん」という同情だけでは、なんだか保たないです。「原告と友達だから」っていうだけで続けていくのもなんだかつらいし。そういう信念や情熱のようなものとは別の部分で、支援活動をどうやったら「根負け」せずに続けていけるか、って考える必要があるのかもなあ、とちょっと思いました。信念や情熱だけで押し通せるものじゃあないと思うんですよ。(鎌田のぶあき)

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(2)参考:第一回口頭弁論 シェイダさんのメッセージ
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 シェイダさんは現在施設収容中で、法務省の方針により出廷できません。その代わりに、第一回口頭弁論に以下のメッセージを寄せてくれました。
 このメッセージは法廷で主任弁護人の大橋毅弁護士により朗読され、この裁判の趣旨が法廷全体に伝わりました。今後も、同じ様な形でシェイダさんのメッセージを裁判官や法務省、そして傍聴にいらした皆さんに伝えていきたいと思います。
*****(以下・メッセージ)
 私が逮捕されてからの7ヵ月の間、私にとても親切にしてくれたすべての友人たち、忙しい中を一生懸命私を支援して下さった、すべての友人たちにご挨拶を申し上げます。
 私のメッセージが裁判の日に皆さんに届くように願っています。
 裁判は良い方向に向かうことを期待します。
 裁判の判決において、同性愛者に対する差別、迫害や専制が非難され、性的指向に関する自己決定権の尊重がうたわれることを期待します。
 私は一日も早く友人たちのところに戻り、共に同性愛者の人権を守り、無知や偏見を無くす活動を続けたい、と希望しています。 

〜 贈り物 〜
私は夜の果てから話す
暗闇の果てから、そして夜の果てから話す
もし私の家に来るとしたら、親切な人よ、明かりを持って来て。
そうしたら、それを使って、一つの潜り戸から
人でこみあって幸せそうな道をのぞいてみたい

皆さんに心から感謝します。皆さんのご成功を願っております。
シェイダ
2000年10月30日

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(3)各国駐日大使館での難民受け入れ体制は?
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 「チームS」では、シェイダさんの在留権を確保するために「シェイダさん在留権訴訟」の支援を行っています。また、その一方でシェイダさんのイランへの送還という最悪の事態を回避するために、シェイダさんを受け入れてくれる第三国を探すという活動も行っています。
 こちらについては、法務省が10月19日、シェイダさんの難民不認定処分への異議申し出を最終的に棄却したことによって、本格的に追求できる状況になりました。
 第三国出国については、ほぼ、次の手続が必要になってきます。
(1)国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の難民認定・紹介状の確保
(2)受け入れ国の確保(亡命、難民認定等)
 このうち、UNHCRについてはすでに手続を進めており、現状でインタビュー等も終わって判断待ちの状況になっています。
 「チームS」では、(2)の受け入れ国の確保について、裁判と並行して本格的に追求していこうと考えていますが、なかなか具体的な情報がなく、背に腹はかえられぬということで、有望な国の大使館回りを行っています。
 こうした情報は貴重なものだと思いますので、進行とともに、各大使館の対応などを公開していきたいと思います。今回は、カナダ、オーストラリア、米国を紹介します。

(1)カナダ大使館:東京都港区赤坂7-3-38●申請書の入手:可能

 カナダは、イラン人同性愛者の多くを難民として受け入れている国であり、第三国出国の有望国といえます。
 カナダ大使館は非常に大きな建物で、4階に入り口があります。そこから下っていくと2階に査証部があり、そこで難民申請に関する説明を聞くことができます。
 受付窓口はガラスで隔てられていて、まるで入管局の面会室のようです。担当の職員(日本人)は、難民認定についての質問にあまり慣れていないようでしたが、難民申請書は常備してあり、さほど時間もかからずに書類を入手することができました。
 入手した書類は海外からの難民申請に関する説明書とカナダへの永住申請書 Application for Permanent Residence in Canada、および家系図用紙の3点です。提出必要品目の中には、日本政府に難民申請を行った証拠資料およびUNHCRの難民認定に関する書類が含まれており、これらがない場合は、その理由を書面で説明しなければなりません。
 申請は、必要書類をそろえてカナダ大使館に提出します。

(2)オーストラリア大使館:東京都港区三田2-1-14●申請書の入手:可能

 オーストラリアもイラン人同性愛者を複数、難民として受け入れています。
 オーストラリア大使館もカナダ大使館に負けず劣らずの大きさで、こちらは1階の手前部分に査証部があり、そこで難民申請に関する説明を聞くことができます。しかし、受付担当職員(日本人)はあまり難民事情などに明るくないようで、「日本で無理だったのならオーストラリアでも難しいのではないでしょうか」などと余計なことを言っていました。書類の入手もちょっと時間がかかりました。
 書類は説明書と「難民並びに人道的根拠に基づく永住ビザ申請書」Application for a Permanent Visa on Refugee or Humanitarian Grounds ですが、この申請書は非常に分厚く、記入事項の多いものです。
 オーストラリアは、外国人の人道的保護のために、難民も含め合計5種類の制度を用意していますが、その制度のうち難民、「危機に直面した女性」、「緊急避難」の3つについては、審査の段階でUNHCRの難民認定と紹介状を必ず必要とするようです。申請は、カナダと同じく、必要書類を揃えて大使館に提出します。

(3)アメリカ合州国大使館:東京都港区赤坂1-10-5●申請書の入手:不可能

 今回取り上げた中で、一番対応が悪いのが米国大使館です。ただ査証部に入るだけのために、金属探知器をくぐり、身体チェックを受けなければならず、それだけで嫌になります。待っている人の数も多く、時間もかかります。
 日本の米国大使館は、移民・難民の申請を受け付けておらず、申請書なども常備していません。日本から米国への難民申請手続きは、本人が大使館を通じて行うことはできず、以下の手続で行われるようです。
・UNHCRが本人を難民として認定する。
・本人がUNHCRに対して米国への難民申請を希望する。
・UNHCRが本人の紹介状をソウル(韓国)にある米国の移民局に送る。
・移民局が審査をして、難民として受け入れるかどうかを決定する。
 ということで、日本から米国への難民申請は大使館に行っても無駄で、UNHCRを通じて間接的に行うしかありません。 
 各大使館の難民申請受け入れ体制についての情報は、これからも随時掲載していきます。
●●●第9号は近日中に発行します●●●


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シェイダさんを救え!ニュース・アップデイト
Save Mr. Shayda! The News Update
第9号 2000年12月23日発行(不定期刊)
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発行元 チームS・シェイダさん救援グループ
編集担当 チームS電子オフィス shayda@da3.so-net.ne.jp
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<今号の目次>
(1)シェイダさん在留権裁判 次回は1月30日10時30分から
(3)国際イラン人難民連合がサポートレター、イランのHIVの現状など
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●バックナンバーが必要な方は電子オフィスまでお知らせ下さい。
●講読申込・講読中止などの手続は電子オフィスまでお知らせ下さい。

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(1)シェイダさん在留権裁判 次回は1月30日(火)10時30分〜
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 年の暮れもおしせまってまいりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
 さて、日本に在留権を求めているイラン人同性愛者・シェイダさんの在留権裁判は、すでに口頭弁論が始まっています。
 11月20日に行われた第一回口頭弁論では、シェイダさん側の訴状に応えて、法務省側の答弁書が提出されました。答弁書の内容は、ざっと以下の通りです。
(1)入管法の規定によれば、法務大臣の在留特別許可を出すも出さないも法務大臣の裁量次第である。個別のケースについて法務大臣が在留権を出さなかったからといって、その判断の中身が正当かどうかをいちいち司法審査することは適切でない。司法審査の対象となるのは、法務大臣が制度の趣旨に背いて在留特別許可の運用を行ったなどの特別な事情のある場合のみである。
(2)たとえシェイダさんに難民性があったとしても、法務大臣が在留特別許可を出さなければならないと決まっているわけではない。法務大臣は、それを考慮の対象にすることができるというだけの話である。
(3)そもそも、シェイダさんは難民ではない。イランでは、同性愛者を死刑にする刑法はあるが、実際には同性愛は一般的な現象であり、退去強制されても迫害される恐れはない。
 法務省の主張のうち(1)および(2)は、法務省が難民認定や在留特別許可に関する訴訟でいつも持ち出してくる論点です。以前、在日朝鮮人の法的地位問題に関連して、池上努という入国管理局参事官が「外国人は煮て食おうと焼いて食おうと自由」だと言ったことがあります(池上努著「法的地位200の質問」京文社 1965)が、こうした考え方が未だに脈々と受け継がれていることには、まことに寒々とした思いを禁じ得ません。実際、法務省のこの主張は、難民条約や拷問等禁止条約に規定されている「ノン・ルフールマン原則」(迫害の恐れのある地域に強制送還することを禁止する原則)にも逸脱していることは明白です。
 (3)については、以前この「ニュースアップデイト」第2号で、法務省がシェイダさんの「退去強制令書の執行停止申立」に対して提出してきた意見書の内容を紹介しましたが、文面上、それとほとんど違わない内容となっています(必要な人にはお送りいたします)。ただ、一ヶ所だけ変えたところがあります。以下のポイントです。
(執行停止申立に対する意見書)イラン社会において同性愛は一般的な現象であり、それが個人の嗜好にとどまるものであってイスラム道徳に公然と逸脱するものとされない限り、事実上容認されている
(在留権訴訟の答弁書)イラン社会において同性愛は一般的な現象であり、それが指向にとどまるものであってイスラム道徳に公然と逸脱するものとされない限り、事実上容認されている
 法務省としては、用語を正確に使うつもりで「個人の嗜好」を「指向」に改めたのでしょうが、法務省の思慮の浅さが伺われます。同性愛を「指向」にとどめて性行動も政治的権利主張もしないのならば、迫害されないのは当たり前です。
 現在、シェイダさんの弁護団および「チームS」では、訴状に続いて法務省の「答弁書」に反論し、シェイダさんの主張をまとめる「準備書面」づくりを急いでいます。まだ1ヶ月以上ありますので、じっくり考えて、シェイダさんの主張をまとめていく予定です。
 次回の法廷は以下の日程で行われます。
(日時)2001年1月30日(火)10時30分〜
(場所)東京地方裁判所 第606 号法廷
 終了後の報告集会で、法務省の主張とシェイダさん側の反論について詳しく紹介する機会を持ちたいと思います。ぜひとも、傍聴のほどよろしくお願い申しあげます。

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(2)シェイダさん関連ニュース短信
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1.「国際イラン人難民協会」がシェイダさんの件でUNHCRにサポートレター

 欧米を拠点に活動する「国際イラン人難民協会」(International Federation of Iranian Refugees: IFIR=ペルシア語Hambastegi)が12月14日、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のジュネーブ本部に、シェイダさんを難民認定することを求めてサポートレターを送付しました。サポートレターでは、イラン政府が同性愛を法律で禁止し、厳しい拷問や処刑を行っていること、シェイダさんは同性愛者で、イランに帰国すれば迫害をまぬがれないと思われることについて説明し、シェイダさんは国際法上の難民にあたるので、UNHCRがシェイダさんを難民として認定し、適切なサポートを提供すべきであると述べています。
 また、サンフランシスコに拠点をおく「国際ゲイ・レズビアン人権委員会」(IGLHRC)の難民支援部門も、UNHCRの米国支部にシェイダさんの件に関して問い合わせを行っています。UNHCRの難民認定を受けることができれば、シェイダさんの第三国出国の可能性も大きく開けることでしょう。

2.イランにおけるHIV/AIDSの現状

 12月10日にイランの南西ケルマーン地方で発行されている日刊紙「ケルマーネ・エムローズ・デイリー」Kerman-e Emrouz Daily によると、12月初旬、ケルマーン州のある町で、麻薬の静脈注射によりHIVに感染した息子が、HIV感染の事実に激怒した父親によって斧で残忍に殺害されるという事件が起こった。
 イラン保健省の当局者によると、イランでは約1万人がHIVに感染していると推定され、公式な統計による感染例は2207例を数える。他のイスラム諸国と同様に、主要な感染原因は麻薬の静脈注射であり、全体の65%を数えるという。ムハマド・ファルハディ保健相 Muhammad Farhadi は世界エイズデーの12月1日、「イランではエイズの時限爆弾が仕掛けられており、注意深く扱わなければならない」と述べている。(AFP通信より)

3.「同性愛者の人権」をかかげるイランの反体制組織ふえる

 最近、イラン国内で弾圧され海外で活動する多くのイラン人の反体制組織が、その綱領に「同性愛者の人権」を掲げる動きを見せている。
 「イラン緑の党」 Iran's Green Party は、同党のホームページに「ゲイ・ニュース」というコーナーをもうけ、イランの同性愛者の現状についてニュースを掲載している。また、イランの社会主義者の亡命組織であるラヘ・カルガール Rahe Kargar は、同性愛者の人権擁護を盛り込んだ綱領を採択し、機関誌にも「性的指向を擁護し、ホモフォビア(同性愛嫌悪)を打ち倒そう」という論文が掲載された。さらに、イラン労働者共産党 Iranian Workers Communist Party は、近年同性愛者の人権に関して積極的な態度をとっており、イラン人同性愛者の人権擁護組織である「ホーマン」を党大会に招聘した。一方、イスラム革命の原動力の一つとなりながら、ホメイニー師の権力確立の過程で徹底的に弾圧された社会主義者の組織「フェダーヤーネ・ハルク」Etahade fedaiane Khalgh も、4回目の党大会で同性愛者と異性愛者の平等権を含む提案を可決している。(「ホーマン」より)


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シェイダさんを救え!ニュース・アップデイト
Save Mr. Shayda! The News Update
第10号 2000年12月28日発行(不定期刊)
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発行元 チームS・シェイダさん救援グループ
編集担当 チームS電子オフィス shayda@da3.so-net.ne.jp
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<今号の目次>
(1)「シェイダさんに会おう!牛久入管体験ツアー」へのお誘い
(2)シェイダさんは今〜12月牛久入管訪問記
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(1) シェイダさんに会おう!1.16牛久入管体験ツアー
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 シェイダさんは現在、茨城県牛久市にある東日本入国管理センターにいます。シェイダさんが十条・入管第一庁舎から牛久の入管センターに移されたのは、もう4ヶ月近くになるでしょうか。読書が十分すぎるほどでき、詩なども書いて過ごしているとのこと。大変、ヒマをもてあましているといえましょう。
 そんなヒマなシェイダさんを少しでも退屈させないためにも、面会はとても重要なのです。面会では、シェイダさんの体調、最近のできごとの交流、友人であればプライベートなど約15分くらいは話が出来ると思います。初めての方も遠慮せず、まず自己紹介をし、シェイダさんに質問や話を振ってあげて下さい。たいがい、ゆっくりはっきりと日本語をしゃべればシェイダさんに通じます。ありのままのシェイダさんを知っていくことで、彼のためにできることも見つかるはずです。
 「チームS」では、2001年1月より、シェイダさんの問題に関心のある皆さんに、シェイダさんに会い、牛久入管を体験してもらおうと、定期的に「シェイダさんに会おう!牛久入管体験ツアー」を設けることとしました。その第一回目を、1月16日(火)に行います。ぜひ、一緒にシェイダさんに会いに行きましょう。なお、当日は、リクエストに応じて、ドライブもかねて夕方までの時間を、存分に楽しみましょう!
【集合時間】 1月16日(火) 午前9時30分
【集合場所】 JR埼京線・十条駅(東京都北区)西口改札口前
【予定スケジュール】 
 ・9時30分〜10時:出発
 ・12時ごろ:現地(牛久市)到着(昼食等)
 ・13時ごろ:東日本入国管理センター到着:面会・見学等(14〜15時ごろまで)
 ・その後観光・学習・交流会等・応相談。(最短17時〜18時頃東京着・解散)
【参加問い合わせ先】
 ・電  話:070-6183-5165(田中)
 ・Eメール:cbo51340@pop12.odn.ne.jp(庄子)、
       shayda@da3.so-net.ne.jp(チームS電子オフィス)
※参加される方は、事前にお問い合わせ・お申し込みお願い申しあげます。
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<牛久「東日本入国管理センター」案内>
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 「法務省入国者収容所・東日本入国管理センター」は、東京本願寺の「牛久大仏」近く、常磐線牛久駅から十数キロ離れた田園地帯にあります。センターに公共交通機関でいく場合、常磐線牛久駅で下車し、茨城観光「牛久浄苑・牛久大仏」行きバスに乗って20分、「農芸学院前」下車して徒歩5分です。バスの時間が少ないので注意して下さい。
《牛久駅発・牛久大仏行きバス時刻表(平日)》
8:59, 10:16, 11:30, 14:40
《平日農芸学院前発・牛久駅行き時刻表(平日)》
9:43, 11:00, 13:35, 15:24, 16:39
 帰りのバスの時間が合わない場合は、農芸学院前バス停から若干足を伸ばして国道408号線まで歩き(徒歩10分)、「公民館前」(小坂産業会館)から牛久駅行きバスに乗る方法もあります。こちらの方が少し便数が多いです。

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(2)シェイダさんは今……12月「東日本入国管理センター」訪問記
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 チームSでは、現在茨城県牛久市の「東日本入国管理センター」に収容されているシェイダさんの面会を月に2〜3回行っています。訪問記の筆者は、12月初旬に面会に行った桜井さんです。

<サクライ牛久へ行くの巻>

12月のとある日、サクライは一人の方と一緒に牛久へ面会に行きました。その日はとっても快晴(日本語変)で、雲一つないっていう表現がぴったり。これから何か良いことがありそうな予感さえさせるモノでした。まぁ、あくまで予感だったけど…。
日暮里駅で待ち合わせした二人。眠い目を擦りながら電車に乗りました。サクライは家で朝御飯食べてこなかったため、車中で飯をむさぼり食う。朝御飯を食べてこなかったのは自分だけではなかったのに。車中ではオペラなど音楽の趣味から「ハッテン銭湯」(注)にいたるまで、よもやま話に花が咲く。あまり朝の話題にはふさわしくないかもしれません。
と、かく言う間に牛久駅着。都合の良いことに?駅前のミスド(ミスタードーナッツ)で、仲良く朝食♪
えっ?お前食い過ぎって?いいんです、太りたいから。(否、イヤミ)
メニューは二人仲良く『汁ソバセット』。なにげに汁ソバ初体験の二人。ドキドキして食ってもみましたその感想は、「うぅん、まさに汁ソバ。」つか、それ以外の呼びようがない代物でした…。サクライ、ちょっと好きかも。
飯を食い終わりそうな頃にちょうどバスが来たので、それに飛び乗りいざ入管へ。
相変わらず、車中からの景色は寒々しかったです。何かないものでしょうか、面白いモノ。(御存知の方、情報提供下さい。粗品差し上げます。)
あっ、でも、牛久大仏はいつ見ても壮観でしたよ。あんなにでっかい大仏の中には極楽浄土が再現されている、と思うだけで興奮してしまうのは自分だけではないでしょう。
さて、目的停留所に着き歩くこと数分。着きました、無意味にキレイででっかい入管に。来るたびに、何でこんなにキレイなのに飯は不味いんだろう、と首を傾げても傾げたりない気分にさせてくれる場所です、この入管は。まぁ、逆に十条みたいに汚すぎても問題だけど。
この日はなにやら入国管理局の「キャンペーン」(体のいい「外国人狩り」風味※注2)期間中だったため面会者が多く、午前中の面会が危ぶまれましたが日頃の行いのせいか(大嘘)無事に面会を済ますことができました。
肝心のシェイダでしたが、飯がまずすぎて最近まともに食べていないとのことで以前来たときよりさらにやせていたのには驚きました。非常に心配です。歯の治療も以前行われていないとのことでしたし、入管内部の制度の見直しが必要だと改めて思いました。
例えば、差し入れに健康を考えてプラスになるもの可能にするとか、無尽蔵に広い敷地を売ってもっと美味いもの食わせる工夫をするとか、とにかく最悪なのでどうにかすべきっ!というか、したいと思いました。
ここで、皆さんにも牛久入管に、どうして欲しいとかのご意見をお聞きしたいと思います。何か意見をお持ちの方はメールにてお知らせ下さいませ。
話がそれましたが、シェイダについて。
二人に気をつかってか、気持ちの方はそれ程落ち込んでいる様子はなく、いつものトークが炸裂していました。聞いてて気持ち良い毒の吐きっぷりにはいつも感心してしまいます。と同時に、彼の知識の多さに感服。中で色々勉強しているのが如実に分かりました。大変な努力家です、彼。
面会済ませて、早くまた飲み歩きたいねぃ、と思ったサクライ。またまたがんばらないと、と発憤させられまして、気合い十分な今でございます…。サンキュ、シェイダ。(本当は自分の方から元気をわけてもおかしくないシチュエーションなのに…)
そんなこんなで入管を出て、『公民館前』という停留所に向かいました。着いて、見て、びつくりさくらい。公民館とはかくあるものか…。ハッキリ言って『無惨』一言でした。興味を持った方、一緒に見に行きましょう。
(笑)
帰りのバスは不思議なことに、道幅が狭いせいなのか、会社が採算をとるためかは定かではないが、同じ道を行って戻ってとするのには驚いた。不思議発見気分。
無事に駅に着き少々電車を待ったものの、意外とすんなり面会が終わったのは一緒に行って下すった御方の日頃の行いの良さであろうと、自虐的になりつつ感謝致しましたのは語るに及ばないことでしょう…。(櫻井)
(注:ハッテン銭湯=都会の銭湯の中には、同性愛者の出会いの場になっているところがあります。出会う場の少ないゲイの生活文化の一つとも言えるでしょう。)

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<シェイダさんに手紙を書こう!>
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 シェイダさんに手紙を書きたい場合は、全文ひらかなまたはカタカナで、以下の住所にお送り下さい。名義は「シェイダさん」宛で本人にわたるようになっています。
(住所)茨城県牛久市久野町1766 法務省入国者収容所東日本入国管理センター内 シェイダ宛
●●●第11号は来年1月中旬に発行予定です●●●



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