シェイダさんを救え!ニュースアップデイト No.11〜No.20


2001年1月25日〜2001年6月29日

=========================================================
シェイダさんを救え!ニュース・アップデイト
Save Mr. Shayda! The News Update
第11号 2001年1月25日発行(不定期刊)
---------------------------------------------------------
発行元 チームS・シェイダさん救援グループ
編集担当 チームS電子オフィス shayda@da3.so-net.ne.jp
---------------------------------------------------------
<今号の目次>
(1)シェイダさん在留権裁判 第二回口頭弁論は1月30日
(2)第一回 牛久入管見学・シェイダさん面会ツアーに参加して
(3)牛久においしい食堂あり!レストラン「うまっこ」
(4)各国駐日大使館の難民受け入れ事情 第二回
=========================================================
●バックナンバーが必要な方は電子オフィスまでお知らせ下さい。
●講読申込・講読中止などの手続は電子オフィスまでお知らせ下さい。

**************************************************
(1)シェイダさん在留権裁判 第二回口頭弁論せまる!
 −1月30日10時30分〜 東京地方裁判所第606号法廷−
**************************************************

 7月に始まったシェイダさんの在留権裁判ですが、いよいよ第二回口頭弁論の日時がせまっています。第二回口頭弁論では、前回の口頭弁論(11月20日)で提出された国(法務大臣)側の「答弁書」(シェイダさん側が裁判を起こすときに出した「訴状」に対して、国側が反論と見解を示す書類)に対して、シェイダさん側が再反論をする書類として「準備書面」を提出することになっています。
 日時・場所は、以下の通りです。

<シェイダさん在留権裁判 第二回口頭弁論>
○時間 1月30日(火) 10時30分〜
○場所 東京地方裁判所第606号法廷(営団地下鉄霞ヶ関駅下車徒歩3分)
 また、裁判終了後に報告集会を行います。

<第二回口頭弁論 報告集会>
○時間 1月30日(火) 11時〜12時30分
○場所 ルノアール四谷店マイスペース3階B会議室(電話:03-3351-1052)
・住所:新宿区四谷1-3-22(最寄り駅:JR・営団四谷駅)
・会場への行き方:JR四谷駅四谷口を出て外堀通りを渡り、「しんみち通り」に入り、第一勧銀向かい。丸の内線改札からは、四谷見附交差点を渡ってJR四谷駅四谷口に出て、さらに外堀通りを渡って「しんみち通り」に入る。
・参加費:300円+ドリンク代(予定)
 今回は裁判所裏手の「弁護士会館」会議室が弁護士会の選挙のため使用できず、上記会場での開催となりました。裁判傍聴に来られる方、ご一緒しましょう。また、報告集会だけ来られるという方は、場所が分からない場合は事前に「チームS」までご連絡下さい。
 傍聴は、裁判官にまともな判決を出させる上でもとても大事です。ぜひとも、よろしくお願い申しあげます。

**************************************************
(2)第一回 牛久入管見学・シェイダさん面会ツアーに参加して
**************************************************

 チームSでは、多くの方にシェイダさんとじかに知り合ってもらい、シェイダさんを励ましてもらうために、本年1月より「牛久入管見学・シェイダさん面会ツアー」を実施することにしました。
 1月16日、その第一回目が行われました。参加者はチームSのスタッフも含め7名。シェイダさんと初めて会った参加者の方に文章を寄せてもらいました。次回の「牛久ツアー」は、日程が決まり次第お知らせします。
____________
 去る1月16日に、車に七人乗り込んで、はるばる牛久に行って来ました。
 僕はそれまでシェイダさんと会ったことがなかったので、道中、チームSのOさんやHさんたちが、シェイダさんは料理が上手だとか、マルクスに詳しいとか、お兄さんが文化人だとか、いろいろ講義してくれたのですが、Oさんのシェイダさんの物まねがまるで高見山みたいだったり、ここには書けない爆弾発言(?)なども飛び出したりして、遂に対面するまで、「シェイダさんとはなんぞ哉」についてくっきりとした像が浮かぶことはありませんでした。
 牛久の入管は思ったよりきれいな建物で、職員の人も恐ろしいほど丁寧な対応をしてくれたのですが、面会所があまり広くないので、3人、4人に分かれての面会になりました。
 僕は、チームSのTさん・Hさんとともに最初の3人のグループに入れてもらったのですが、Tさんからシェイダさんへの重要な連絡事項が沢山あったため、まじめな話題が中心になり(たとえば絵はがきの話とかイランで同性愛者が処罰されたことを報道する新聞)、また、シェイダさんから、入管の中で親しくなった人にお金を貸してあげたいという話がでたので、「シェイダさんて、思いやりがあって、まじめなひとなんだなあ。」なんて印象を受けたのですが、あとの4人のグループでは、話題の転換があったようです。
X氏 「部屋は一人なの?」
シェイダさん 「うーん。二人。」
X氏 「同室の人ってどんな人?」
シェイダさん 「17歳の男の子(なぜかうれしそう)。」
帰りの車の中では、以上のシェイダ発言を巡って、いろいろな憶測が飛び交いました。
「17歳の男の子って、どんな子なんだろう。」
「美形でしょ。やっぱり。」
「なにー。ゆるせん。」
「俺、シェイダさんの代わりにその部屋に入りたい。」
「17歳の男の子の代わりにシェイダさんと一緒な部屋になったらどうするの?」
「うーん。」
 こんな会話が飛び交う中、僕の一度明確な像を結んだ「シェイダさんとはなんぞ哉」というイメージはまたはっきりしないものになってしまいましたが、シェイダさんのことで、これだけいろいろ話が盛り上がるということからすると、シェイダさんが「人にすかれるタイプ」の人であることは間違いないように思いました。また、僕が面会したときのシェイダさんの表情や、これらの会話から想像するに、シェイダさんは入管の施設の中でも元気にやっているようですが、早く、施設の外でその元気な姿を見たいものだと願う次第です。

**************************************************
(3)牛久においしい食堂あり!定食や「うまっこ」
**************************************************
 牛久ツアーに参加したキャシーさんより、牛久入管の近所にある、とてもおいしい定食屋の紹介です。場所は牛久入管から南方向に歩いて国道408号線に出たところにあるバス停「公民館前」(小坂産業会館)近く。牛久入管に行かれる皆さん、一度立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
_____________
 シェイダさんを訪ねて牛久入管まで行ってきました。車を借りて七人のメンバーで行きとても楽しい時間を過ごすことが出来たのですが、残念なのは入管周辺には何もない(!)のです。バス停の周辺にはどこまでも続いているような畑とぽつりぽつりとある民家、朽ち果てた公民館だけ。そんな中で、思わぬ真心のこもった食事を出してくれる店を発見!皆さんが牛久入管でバスを待っている間にでも行ってもらいたいと思いさっそくそのことを牛久ツアーに参加した私、キャシーがレポートします。
 ランチ(11:00〜14:00)が食べられるお店の紹介で〜す。その名は「うまっこ」。街道沿いのバス停:公民館前から200メートルほど歩いたところにある白を基調にしたメルヘンチックなお店です。10人も入れば一杯になるけど、待つだけのかいあること間違いなし。その日の日替わり定食は、カキフライ。大きいカキフライが5個ならび、みそ汁、煮物、漬け物。そして最後にコーヒーがついてくるのは嬉しい。
 おばさんがひとりで手際よく働く姿も、手際よい。
 おばさん曰く、「メニューはなるべく街道を通るトラック運転手にバランスのとれた栄養あるものを食べてもらいたいと思いながら作っています。時間は11時から2時までが営業時間なんですよ。一日に20人も入ってくれればいいんです。」
 何か、こんなセリフ聞いただけでも入ってみたくなるお店でしょ。ここでしか味わえない心のこもった味、ボリューム、低料金(日替わり定食750円)。ぜひ、行ってみて下さい。シェイダさんに会うときにもきっとお腹が一杯になって幸せな姿で励ませること間違いなしです。
 日本語のわからないお客さんも来るとかで、丁寧に入管センターの地図を書いて説明してあげるそうです。(キャシー)

**************************************************
(4)各国駐日大使館での難民受け入れ事情 第二回
**************************************************
 シェイダさんは、日本政府に対して在留権を求める行政訴訟を起こす一方、第三国への出国の道も模索しています。
 シェイダさんが逮捕されてから今月22日で9ヶ月、収容期間は非常に長くなっています。シェイダさんは歯を悪くしていますが、牛久入管には十分な歯科治療施設がなく、まともな治療が受けられません。「仮放免」(仮の釈放)もなかなか認められません。このようななかで、「第三国出国」は、「早く自由の身になりたい」というシェイダさんの願いをかなえる上で、一つの大きな選択肢です。
 シェイダさんは、第三国出国に向けてUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の難民認定を申請しています。第三国政府が外国人を難民として受け入れる上で、UNHCRの難民認定は大きな力を果たします。「チームS」としては、シェイダさんにUNHCRの難民認定が降りた場合、なるべくスムーズに第三国出国が可能になるように、各国の駐日大使館を訪問し、当該国への難民申請書類の入手と、申請の方法を聞いています。前回は第八号で、カナダ、オーストラリア、米国の大使館を紹介しました。今回は、ニュージーランドとオランダの大使館です。

(1)ニュージーランド大使館 東京都渋谷区神山町20-40 
 難民申請書類の入手:不可能

 ニュージーランド大使館は、東大駒場キャンパスの北側、高級住宅街のまん中にあります。これまで訪問した3つの大使館より小さいですが、なかなかよい雰囲気のところです。
 難民申請書類があるかどうかを査証部の受付スタッフに聞くと、少し待たされた上で、別の担当者が出てきて説明してくれました。
 まず、駐日ニュージーランド大使館では、難民申請書類などの配布は行っておらず、申請も受け付けていません。ニュージーランド国外にいる人のニュージーランドへの難民受け入れは、UNHCRとニュージーランド政府のやりとりによって決まります。ニュージーランド政府は、毎年何人の難民を受け入れるかの定員枠をUNHCRに示しており、UNHCRは、ある人を難民として認定した場合、ニュージーランド政府によって示された定員枠にしたがって、ニュージーランド政府に受け入れを打診します。ニュージーランド政府は、大使館とは別に移民局のスタッフを派遣して、難民と接触した上、難民認定を行って入国を許可し、難民として受け入れます。ですから、大使館はそのプロセスとは関係がないということです。
 もう一つ、希望者の学歴や能力によって、難民ではなく移民として永住権を確保するという方法もあるということで、これについては、大使館で申請書類を配布しています。ニュージーランドは東アジアに関しては香港に移民審査の事務所を置いているということで、移民申請書類は香港に送られ、学歴・能力によって点数制で審査され、一定の点数を満たす人は自動的に移民として受けいれられるということでした。
 ほぼ米国と同じようなシステムで、結果としては収穫はなかったのですが、対応が非常に懇切丁寧であったことに感銘を受けました。

(2)オランダ大使館 東京都港区芝公園3-6-3
 難民申請書類の入手:不可能

 オランダ大使館は地下鉄日比谷線の神谷町駅を降りて裏手の丘の上にあります。極端に広い敷地をもち、大使公邸は庭園・プール付きのしゃれた洋館、大使館もかなり凝った現代建築です。アメリカ大使館にも劣らない規模に驚きます。
 ところが、大使館に入ってみると、調度品などは洗練されていますが、スタッフが一人しかおらず、ひっきりなしにかかる電話や、訪れるお客の応対にてんやわんや。難民認定について聞いたところ、「本人の出頭が必要ですが、来てもらっても受け入れは難しいと思います」ときびしいお言葉。難民申請書類も、大使館では配布していないそうです。こちらは、本人は収容中で出頭は不可能なこと、UNHCRへの申請はすでに行っていることなどを説明しましたが、「領事部宛てに英語でファックスを送ってくれれば検討します」とにべもない返事。
 オランダは、国レベルとしては唯一、同性同士の正式な婚姻を認めている国で、イラン人同性愛者の難民申請を受け入れた実績もあるので、ヨーロッパの国の中では期待していたのですが、難民申請に関しては、アメリカ大使館に勝るとも劣らない不親切な対応にがっかりです。
***ニュースアップデイト第12号は近日中に発行の予定です***


=========================================================
シェイダさんを救え!ニュース・アップデイト
Save Mr. Shayda! The News Update
第12号 2001年2月3日発行(不定期刊)
---------------------------------------------------------
発行元 チームS・シェイダさん救援グループ
編集担当 チームS電子オフィス shayda@da3.so-net.ne.jp
---------------------------------------------------------
<今号の目次>
(1)シェイダさん在留権裁判 第二回口頭弁論おこなわれる!
(2)第二回口頭弁論によせて シェイダさんのメッセージ
(3)法務省の主張にまず一撃、「準備書面(1)」
=========================================================
●バックナンバーが必要な方は電子オフィスまでお知らせ下さい。
●講読申込・講読中止などの手続は電子オフィスまでお知らせ下さい。

**************************************************
(1)シェイダさん在留権裁判 第二回口頭弁論おこなわれる!
**************************************************

 さる1月30日(火)午前10時30分より、東京地方裁判所第606号法廷においてシェイダさん在留権裁判の第二回口頭弁論が開かれました。
 昨年7月、法務大臣がシェイダさんの在留特別許可を認めず、退去強制令書を発付したのをうけて始まったこの裁判、これまでの流れは大体以下の通りです。
1)7月6日、東京地方裁判所に提訴。訴えの趣旨を書いた「訴状」を提出。
 被告は法務大臣。訴えの趣旨としては、シェイダさんを迫害の恐れのある祖国に帰国させるのは違法であるから、「退去強制令書」の発付を取り消すべきであるという内容(「退去強制令書発付」という行政処分の取消訴訟にあたる)。
2)11月20日、第一回口頭弁論。法務大臣側が「答弁書」を提出。
 「答弁書」というのは、被告が原告の訴えに反論し、裁判所にどのような判決を求めるかを示す文書。法務大臣側は、「在留特別許可を認めるか認めないかは法務大臣の裁量次第」「そもそもシェイダさんは帰国しても迫害の恐れはない」と主張、裁判所に原告の訴えを棄却するように求めた。
 ということで、1月30日に開かれた「第二回口頭弁論」は、シェイダさん側は法務大臣の「答弁書」に対する反論を書いた「準備書面(1)」と関連証拠資料を提出するために開かれたというわけです。もちろん、次の法廷(第三回口頭弁論)では法務大臣側がシェイダさん側の「準備書面(1)」に反論する準備書面を提出するということになります。このように、しばらく書面による主張のやりとりが交わされ、主張が出尽くした段階で、原告や証人の尋問など、次のステップにはいるわけです。
 そんなわけで、今回の法廷でやることは、書類のやりとりと次回日程の確認が中心でした。同じような段階にある裁判が、同じ時間枠にたくさん入っており、関係者も入れ替わり立ち替わりという状況で、シェイダさんが用意したメッセージも「時間がない」ということで朗読されず、次回送りになってしまいました。そんな中で、シェイダさん側が提出した準備書面に関して、法務大臣側が2点ほど細かい質問をして、裁判は終わりました。
 「チームS」では裁判の終了後、四谷に会場を借りて報告会を開催し、先日1月16日に、シェイダさんの激励と施設見学をかねて行った第一回「シェイダさん激励・牛久入管見学ツアー」の報告や、今回提出した準備書面の解説などを行いました。今回シェイダさんの裁判を傍聴したのは十数名でした。傍聴して下さった方、どうもありがとうございました。また、裁判官を裁判に真面目に取り組ませるためには、より多くの方の傍聴が必要です。しばらくは「書面のやりとり」中心の法廷になると思いますが、「チームS」としてはなるべく報告集会などの充実に取り組みますので、多くの方の傍聴をお待ちしております!次回の口頭弁論は以下の通りです。
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
 シェイダさん在留権裁判 第三回口頭弁論
(日時)3月13日 午前11時〜(11時30分までには終了)
(場所)東京地方裁判所6階 第606号法廷(営団地下鉄霞ヶ関駅下車徒歩三分)
(内容)法務大臣側の準備書面提出、質疑応答、シェイダさんメッセージの朗読等
 法廷終了後、報告集会を予定しております(予定:裁判所裏手 弁護士会館5F)
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||

**************************************************
(2)第二回口頭弁論にあてたシェイダさんのメッセージ
**************************************************
 第一回口頭弁論に続き、今回の弁論にも、シェイダさんはメッセージを送ってきてくれました。残念ながら、今回の法廷では時間の都合上朗読することができませんでしたが、ここにシェイダさんのメッセージを掲載したいと思います。
++++++++++
裁判官や傍聴者の皆さんにご挨拶申し上げます。
 イランでは、同性愛者は死刑に処されていないと言う人がいます。イランでは、イスラム法の復讐的な意味合いを持つ部分は執行されていないという人がいます。しかし実際には、イランでは、イスラム共和国が成立してから、「文明間の対話」を提唱するハタミ大統領が指導する現政権にいたるまで、男女を問わず多くの同性愛者が、刑法の同性愛の罪に問われ、残虐な処罰を受けてきました。ハタミ大統領の下でも石打ち刑が行われており、この模様はスウェーデン、オランダ、ドイツなどのテレビ番組で何度も放映されています。2000年の11月1ヶ月間だけを見ても、このことはよく理解できます。
1 ドイツのベルリンで4月に開催されたイランに関する会議に参加したイラン人たちに、「異端者」であるという理由で死刑判決が下される可能性が高まっています。
2 イランのクルディスターン Kurdistan 州 マーク Maku 市で、少数民族であるクルド人3名が治安部隊によって焼き殺されました。
3 イスラム法によって、手の指を切断する刑罰が執行されました。
 これでも、イランではイスラム法は実行されていないと言えるでしょうか。
 これが意味することは、イスラム共和国において国際人権法は全く何の効力も持っていないということです。尊重されているのは、イスラム法です。イラン社会では、同性愛者は特別な立場に立たされています。過去も現在も迫害を受け続けているにもかかわらず、同性愛者に対する死刑や石打ち刑に対して、何の動きも起こされませんでした。国外のイラン反体制組織は沈黙し、多くのイラン国民も、同性愛者に対するこの仕打ちに反対の声を上げなかったのです。

○○ 難民かそれとも動物か 〜性的指向による差別待遇〜 ○○

 私は、101日間、十条の入国管理局に収容されていました。一度も新鮮な空気を吸うことがなく独房に収容され続けました。そのことを訴えたら「あなたはゲイなので、他の皆とは別にいなければならない」と入管職員に言われました。さらに入管の職員は、「ここに収容されている人の中には、ゲイと同じ部屋にいるのを嫌がる人がたくさんいます」と言いました。私は他の収容者が同性愛に反対しているという理由によって、性的指向による差別待遇を受けてきたのです。こんな決定をしたのは、どんな法律、どんな裁判、そしてどんな裁判官なのでしょう?
 ある日は体調が良くなかったので治療を受けるために医師の診察を受けましたが、医師は診察をし、処方箋を出すかわりに、入管の職員の前で私に、「私はあなたを治療することができない。治療費は日本の予算から出さなければならないから。治療のためには、母国に帰るべきです」と言いました。裁判官の皆さん、入国管理局がなぜ私に差別待遇を行うのか、ぜひ聞いて下さい。そして、私が激しい痛みのせいで横たわっていたときに、なぜ薬が出されなかったのか、その理由も。
 自分の生きる場所を自由に選ぶこと、自由に生きることは、私を含め、全人類の権利です。自由を愛する人間は、この権利を擁護するはずです。
 裁判官、傍聴者の皆さんに、感謝申し上げます。
シェイダ
「ホーマン」(イランの同性愛者の人権確立のための組織)会員

++++++ 
 今後、「チームS」では、シェイダさんの在留権付与および仮放免(仮の釈放)、施設内での待遇改善を求めて、ふたたび嘆願書キャンペーンを行おうと考えています。詳細は、次号の「ニュースアップデイト」でお知らせします。ご協力よろしくお願いします。

**************************************************
(3)法務省の主張にまず一撃!「準備書面(1)」
**************************************************

 「第二回口頭弁論」で、シェイダさん側は法務省の主張に反論する「準備書面(1)」および一連の証拠資料を提出しました。
 この「準備書面」は、法務省側が提出した「答弁書」に対して反論するとともに、最初に提出した「訴状」では不十分にしか触れられていなかったシェイダさん側の主張を、ある程度体系的に述べたものとなりました。
 準備書面では、まず「原告の主張」として、同性愛にかかわる基本的な概念(性的指向、カミングアウトなど)および同性愛者に対する差別・偏見と同性愛者の運動の歴史などについてふれ、つぎにイランの政治情勢および同性愛者に対する迫害などについて概説を行いました。ここにおいて、90年代のイランにおける同性愛者に対する拷問や処刑の実態について詳細に示し、イランで同性愛者が厳しく迫害されているというシェイダさんの主張を立証しました。
 書面の後半部分では、法務大臣の「答弁書」に対する反論を行いました。法務大臣は「在留特別許可」を与えるかどうかは法務大臣の裁量権の範囲内であると主張していますが、シェイダさん側は、入管法の在留特別許可の条項は難民条約のノン・ルフールマン原則(迫害の恐れのある国には強制送還してはならないという原則)を実施するためのものであるから、法務大臣の自由裁量は認められないと主張しました。 また、「イランでは同性愛は容認されているからシェイダさんは帰国しても迫害を受ける恐れはない」という主張に関しては、法的にも、社会的・文化的にもイランでは同性愛は容認されていないことを立証しました。
 実際、イラン社会では、単に同性間性行為を行うということにとどまらず、同性愛者として、「同性愛」という性的指向を自己の重要な構成要素と認め、それに立脚して生活を営もうとする場合、死刑や拷問を含む厳しい弾圧にあう蓋然性が非常に高いことが、さまざまな資料から明らかになっています。1990年にイランでゲイ3名、レズビアン2名を公開の斬首刑に処した事件に関して、国連人権委員会特別代表ガリンド=ポール氏(エルサルバドル大学教授)が問い合わせを行ったのに対して、イラン政府当局は「イスラム法によれば、同性愛者が自らの行為を告白した上、その行為に固執する場合は、死刑が宣告される」と答弁しているところからも、それは明らかです。また、法務大臣側が自己に有利な資料として提出している国連難民高等弁務官事務所の資料にも、「同性愛を認めることは自殺行為で、そのような自認をするとは信じがたい」、「同性愛は公言、明言されるときにのみ抑圧される」などといった記述が数多く発見されるところからも、イランの国家・社会はカミングアウトした同性愛者の存在を容認しないことははっきりしています。
 準備書面ではこの部分を強調して、カミングアウトし、「ホーマン」というイラン人の同性愛者の人権確立のための組織にも参加しているシェイダさんが強制的にイランに送還された場合に、死刑、拷問を含む国家的迫害にさらされる可能性は極めて高いことを主張しています。
 シェイダさん側が提出している証拠は数多くあり、本準備書面でも網羅しきれていないところがあります。また、シェイダさん側の主張についても、もっと補強しなければならないところがあります。この辺については、今後、法務省側の反論を見ながら新しい準備書面や証拠資料を出していくことで補強していきたいと考えています。

●●●第13号は近日中に発行予定です●●●


=========================================================
シェイダさんを救え!ニュース・アップデイト
Save Mr. Shayda! The News Update
第13号 2001年3月1日発行(不定期刊)
---------------------------------------------------------
発行元 チームS・シェイダさん救援グループ
編集担当 チームS電子オフィス shayda@da3.so-net.ne.jp
---------------------------------------------------------
<今号の目次>
(1)シェイダさん在留権裁判 第三回口頭弁論は3月13日です! 
(2)「流れ作業」のような法廷〜第二回口頭弁論の感想〜
(3)第二回「シェイダさん激励・牛久入管体験ツアー」は3月15日です!
(4)あるイラン人青年の自死〜欧州とイランの関係改善は何をもたらしているか〜
=========================================================
●バックナンバーが必要な方は電子オフィスまでお知らせ下さい。
●講読申込・講読中止などの手続は電子オフィスまでお知らせ下さい。

*****************************************************
(1)シェイダさん在留権裁判 第三回口頭弁論は3月13日です!
*****************************************************
 昨年の7月に開始されたシェイダさんの在留権裁判。もうすぐ8ヶ月目に突入、口頭弁論もこれで3回目です。シェイダさんの在留権裁判で問題となっている論点は以下の2つです。

1.シェイダさんは難民かどうか。

(1)シェイダさん側:イランでは、同性間性行為を行った人を死刑や身体刑に処す刑法があり、90年代以降も執行例が数多く存在する。シェイダさんは同性愛者であることをカミングアウトしており、亡命イラン人同性愛者団体「ホーマン」の活動家でもある。イラン当局も、シェイダさんのことを把握している可能性がある。
(2)法務大臣側:イランに同性愛者を処罰する刑法はあるが執行例は見いだせない。イランでは同性愛は容認されており、同性同士の身体接触を容認する文化的背景もあって、同性愛が「指向」にとどまり、イスラム道徳に反しない限り、迫害を受けることはない。イラン当局はシェイダさんのことを把握していない。

2.退去強制令書を出したことは法律にかなっているか。

(1)シェイダさん側:迫害を受ける恐れのある国に帰国を強制する命令は、国際法上の「ノン・ルフールマン原則」(迫害を受ける恐れの国に帰国させてはならないという原則)に違反する。法務大臣には、国際法に違反する形で「在留資格」に関する裁量権を行使する自由はない。
(2)法務大臣側:在留資格については法務大臣の裁量次第であり、法令上明白な誤りや逸脱がない限り、一つ一つの件について裁判所がもう一度審査することはなじまない。たとえシェイダさんに難民性があっても同じである。
 次回の第三回口頭弁論では、法務大臣側がシェイダさん側の主張に反論する「準備書面」を提出する予定となっています。
 現在のところ、裁判はほぼ書面のやりとりと次回日程の設定だけで終わっており、しかも他の裁判が同じ法廷で、同じ時間に行われる状況となっています。いつの間にか始まって、いつの間にか終わって次の裁判になってしまう、というのが現実です。しかし、だからといって傍聴をやめるわけにはいきません。裁判官を本気にさせるためにも、多くの方が傍聴する必要があるのです。
 「チームS」では、毎回法廷の後に「報告集会」を開催しています。今回は東京地裁裏手の「弁護士会館」5階の会議室で開催します。法廷がわかりにくい分、報告集会でじっくり解説を聞くことができます。平日のお忙しいところではありますが、皆様ぜひともご参集お願い申しあげます。
 
●○●シェイダさん在留権裁判 第三回口頭弁論●○●
(日時)3月13日 午前11時〜(11時30分までには終了)
(場所)東京地方裁判所6階 第606号法廷
 営団地下鉄霞ヶ関駅下車、徒歩三分
(内容)法務大臣側の準備書面提出、質疑応答など
○●○シェイダさん在留権裁判 第三回口頭弁論報告集会○●○
(日時)第三回口頭弁論終了後(11時30分〜)
(場所)弁護士会館5階 509会議室(東京弁護士会)
 霞ヶ関駅下車徒歩三分、東京地方裁判所裏手(法務省並び)弁護士会館5階
(内容)本日の法廷の報告、法務大臣側の準備書面の解説など

*****************************************************
(2)「流れ作業」のような法廷〜第二回口頭弁論の感想〜
*****************************************************
 1月30日に行われたシェイダさん在留権裁判の第二回口頭弁論。同じ時間に十件程度の難民事件がぶち込まれており、流れ作業のように終わってしまいました。傍聴をし、報告集会にも参加したキャシーさんに、裁判の感想を書いてもらいました。

●○●シェイダさんの裁判に行ったこと●○●

 めったに行くこともない東京地裁606号法廷に行くと、法廷に入りきれないほどの大勢の人々が集まっていました。
 「えっ?こんなにたくさんの人たちがシェイダさんを応援しているの」と思って、中にはいると座席がなく、ようやく一ヶ所だけみつけることができました。中にはいろいろな国の人たちもいて、いろいろな言葉がとびこんできました。突然裁判長が入室すると全員起立、学校の時のことが思い出されます。
 法廷が始まって、何を言っているのか聞いていると、テレビドラマの法廷劇をみるのとは大違いで、はっきりわかったのは、次の日程を打ち合わせているところだけ。それは2・3分ぐらいで、次から次へと流れ作業のようにいくつかの事件が終わっていきました。友人に言われて初めて、シェイダさんのことだと知りました。被告側や原告側が同性愛のことを話し始め、検事や弁護士さんからの発言がありました。今思い出しても、何を言っていたかもよく分からないほどあっけなくすみました。しかし、こんなに簡単に終わらせていいのかと見守りたい気持ちでした。傍聴することが大切なんだということですね。他にも外国の人たちが来ていたこともあり、シェイダさんだけでなく、多くの外国人が同じ様なことで裁判しているのかと思うと、日本が外国人を閉め出そうとしているのが良く分かりました。

●○●その後の交流会・ルノアールにて●○●

 裁判終了後、コーヒーを飲みながら交流会がありました。自己紹介から始まり、チームSに限らず、いろいろな立場の人々が力を合わせてきているのがよく分かりました。牛久ツアーの様子やシェイダさんの様子が話され、大橋弁護士からも今回の裁判についての話がされました。
 私には何の肩書きもなく活動もしていないのですが、牛久ツアーに参加し、シェイダさんの友人・知人という幅の広い人々の集まりに支えられ、その場所に行ってみていろいろな熱気を感じとることができました。
 これからもシェイダさんが安全に自由に、人間らしく暮らせるようになることを応援していきたいです。

*****************************************************
(3)第二回「シェイダさん激励・牛久入管体験ツアー」は3月15日です!
*****************************************************

 「チームS」では、牛久市にある「東日本入国管理センター」を訪問し、収容されているシェイダさんを激励する「シェイダさん激励・牛久入管体験ツアー」を1月から2ヶ月に一回程度の割合で開催することにしました。
 1月16日の第一回目は、合計8名の参加を得て、集合場所の北区・十条から車ではるばる2時間、田園が広がる牛久へ行ってきました。お日がらも良く、まずまずのすべり出しでした。
 そこで、現在チームSでは、ツアー第二回目を企画しています。日程は以下の通りです。
●○●第二回「シェイダさん激励・牛久入管体験ツアー」●○●
(日時)3月15日(金曜日)午前9時30分集合
(集合場所)JR埼京線十条駅北口改札口集合、車で牛久へ
 午前中に牛久について面会、夕方までに東京着を予定。
(連絡先)電話 070-6183-5165(田中)
 Eメール shayda@da3.so-net.ne.jp(チームS電子オフィス)
 参加したい方は、必ず上記連絡先に事前にご一報頂ければ幸いです。

**********************************************************
(4)あるイラン人青年の自死〜欧州とイランの関係改善は何をもたらしているか〜
**********************************************************

 近年イランでは、行政権・立法権を握る改革派に対して、司法府を握る保守派が厳しい巻き返しに出て、政治的緊張がどんどん高まっています。
 ところが、大統領が哲人政治家としても名高い改革派のハターミー師であるところから、日本や欧州諸国はこれ幸いとイランとの関係改善に乗り出しており、国内での人権抑圧や、イラン人難民の人権には無頓着になってきています。
 その中で、イギリスで一つの悲しい事件が起こりました。ここでは、この事件について紹介したいと思います。
 
●○●一人のイラン人青年の自死●○●

 2001年1月18日、イギリス・東部ミッドランドの中心都市レスター Leicester 市の中心部に位置する、いわゆる「国際ホテル」 International Hotel といわれる施設の中で、一人のイラン人青年の死体が発見されました。彼の名はラミーン・カレーギー Ramin Khaleghi、27歳でした。
 ラミーン氏はイラン出身で、イギリスに逃亡するまでの数年間、政治犯としてイランの監獄に拘留されていました。彼はイランの警察による拷問を受けたことがあり、その傷跡は医学的にも検証されていました。しかし、内務省はこれらの事実にもかかわらず「彼が難民である証拠は見いだせなかった」としてラミーンさんの難民不認定を決定。ラミーン氏は絶望の末、決定から1週間後に自分の命を絶ったのです。
 近年、イギリス政府はイラン人の難民認定について消極的になりつつあります。最新の統計によれば、2000年11月に全部で970件のイラン人の難民申請ケースについて決定がなされましたが、そのうち895件(92%)が難民不認定でした。「国際イラン人難民連合」 International Federation of Iranian Refugees は、イランとの関係改善に動くイギリス当局が、イラン人難民を切り捨てているとし、ラミーン氏の自死について「凶暴なイラン・イスラム共和国体制とイギリス政府の難民排除政策の最も新しい犠牲者である」と述べ、イギリス政府の姿勢を非難しています。

●○●ラミーン氏の追悼●○●

 ラミーン氏が住んでいたレスター市の「国際ホテル」は、以前ホテルだった古い建築物を難民住居用にあてたもので、およそ400名の難民申請者が居住していました。これらの難民申請者は、もともとロンドンなど各地の移民コミュニティに居住していたのを、イギリス政府が「分散政策」dispersal policy の名の下に強制的に移住させたもので、ラミーン氏もロンドン在住の家族と切り離されて、一人で施設に居住していました。施設は衛生的でなく、入所者から多くの不満が出されていました。
 ラミーン氏の死後、「国際ホテル」に居住している難民申請者たちは、ラミーン氏を追悼するため、ホテルのロビー部分での集団宿泊を開始しました。また、2月3日には、地元レスター市の人権運動組織「レスター市民権運動」 Leicester Civil Rights Movement と「国際イラン人難民連合」が、全国組織である「全国市民権運動」National Civil Rights Movement や「人種主義とファシズムに反対するキャンペーン」Campaign against Racism and Fascism と共同でラミーン氏の追悼式を行いました。追悼式にはラミーン氏の家族をはじめ、200名の難民申請者が出席しました。ラミーン氏と同じホテルに住むあるイラン人難民はラミーン氏を思い出してこう言います。「君はときどき、君の命が他人の手の中にあるという状況に、とてもいらいらしていたね。君はイランに帰ることを恐れていたけど、ここに居続けることも同じように危険なことだったね。内務省の答えは、君にとって拒絶を意味したんだね。絶望は、容易に自殺への引き金を引く。私たちはラミーンに共感する。私たちは、皆同じ状況だ」。
 国際イラン人難民連合の執行責任者マリアム・ナマジー Maryam Namazie 氏は、欧州の難民申請者の置かれた状況について、「抑圧的な社会の中であらゆる不当な取扱い、投獄、拷問を堪え忍んだ後、ラミーン氏のような難民申請者は他に選択肢のない状態でヨーロッパに来る。ところが、到着したとたんに彼・彼女らは虐待され、拘留され、不潔な住宅に住まわされ、時には追放される」と説明します。
 難民の状況改善や反人種主義をかかげる運動団体は、今後、ラミーン氏の自死に象徴されるイギリスの難民政策の改善に向けて、大きな政治的・法的な運動を巻き起こすことを計画しています。「ラミーン氏のための真の正義は、彼に死をもたらした政策が撤廃されることによって初めて実現する」と、これらの団体は主張しています。

●○●ふりかえって私たちの国では●○●

 一人のイラン人青年の自死という事件から、イギリスの難民政策の問題点について振り返ってきました。これを見ると、イギリスの難民政策も日本とあまり変わらないのではないかという錯覚に陥ります。
 しかし実際には、イギリスの難民認定者数は、例えば1996年には2765人にのぼっており、日本(1996年は1人、2000年は22人)と比較するとけた違いに多いのです。同じ難民排外政策とは言っても、そもそも出発点としての難民受け入れの規模が違っており、日本の方がより劣悪な状況であるのは明らかです。
 また、欧州諸国はイランと関係改善を進めているとは言っても、日本とはかなりの温度差があります。昨年6月、ハターミー大統領が訪問したドイツでは、その後改革派の複数の活動家に重刑判決が出るにおよび、ドイツの駐イラン大使を召還。シュレーダー首相がイラン訪問を延期するとの報道もあります。一方、日本政府はイラン国内の人権問題に何の配慮もせず、昨年11月に来日したハターミー師に対して、新油田開拓のための大規模な投資を約束し、大盤振る舞いを行っています。
 ラミーン氏の自死とイギリスの難民排除政策は、日本で難民について考える私たちにとっていわば鏡のようなものです。私たちがこの国で同様の事件を防げるか、万一犠牲者が出てしまったとき、私たちは立ち上がれるのか。そのことが問われていると思います。

***ニュースアップデイト第14号は近日中に発行します***


=========================================================
シェイダさんを救え!ニュース・アップデイト
Save Mr. Shayda! The News Update
第14号 2001年3月15日発行(不定期刊)
---------------------------------------------------------
発行元 チームS・シェイダさん救援グループ
編集担当 チームS電子オフィス shayda@da3.so-net.ne.jp
---------------------------------------------------------
<今号の目次>
(1)シェイダさんと会ってきました!2月「牛久入管」訪問記
(2)速報!第三回口頭弁論(3月13日)
(3)法務省の珍妙な主張〜法務大臣提出 準備書面(1)〜
=========================================================
●バックナンバーが必要な方は電子オフィスまでお知らせ下さい。
●講読申込・講読中止などの手続は電子オフィスまでお知らせ下さい。

**************************************************
(1)シェイダさんと会ってきました!2月「牛久入管」訪問記
**************************************************

 シェイダさんが逮捕されたのは昨年の4月でした。それからというもの、シェイダさんと私たちは1年の間、入管体制の壁で隔てられてきましたが、逆にシェイダさんを支える人の輪が広がりつつあります。牛久の入国管理センターでシェイダさんと初めて会うという人も増えています。
 これもシェイダさんの仁徳、というよりは彼の持つ強い磁力の産物かもしれません。
 さて、この2月、「ニュースアップデイト」第10号にシェイダさん面会記を寄せてくれた桜井さんのお友達の方が、2月に一緒に牛久を訪問して、シェイダさんと初めて面会しました。彼に面会の感想を寄せてもらいました。「チームS」の取り組みについてもいろいろと考えさせる内容となっています。
++++++++
 2月16日、晴天だが強風の中、2時間ほどかけて茨城の牛久の入国管理センターにいってまいりました。ほんとうはそういうのは都心につくったほうがいいと思うのだけど、いかがなんでしょうか。
 目的はシェイダさんの面会。私自身、友人の櫻井君の活動内容を大まかにきいていただけで、ほとんどどういう状況かもわからずに、完全ピクニック気分で行ったのですが、果たしてシェイダさんの印象はどうだったのでしょう。
 それにしてもまず気付いたのが管理センターの職員の手際の悪さ。役所の職員全般にいえることですが、労働意欲がない、というか、のろのろ、のんびりしているんです。確かにゆとりを持った職場環境ってのもありますけど、どう考えてもあれは度を越えています。どのくらいののろさかというと、実家のほうの町役場(区役所、市役所ではない)の職員もあんなかんじでした。戸籍謄本一つとるのに最低40〜50分は待たされるんです。待ってる人が一人もいないのに。わかりやすい比喩になったでしょうか。
 そしてやっとのことシェイダさんに面会できたのは10時ころついたのにもかかわらず12時。これでも早くなったほうだそうです。いつもは午後にまで長引くとか。シェイダさんの前までの様子を知らないため、今回の印象に限っていえば、わりあい明るい感じでした。私が人見知りせず、図々しいせいもあったせいか、楽しく会話を楽しむことができました。ちょっとゲイの外国人の人とお話したってかんじです。というより、私にできることはほんの束の間でも楽しくお話して、少しでもシェイダさんを元気づけることくらいしかなかったんじゃないでしょうか。それがどんなふうに作用したかは次回の面接でのシェイダさんの感想如何によります。
 実際にシェイダさんに会うことでチームSについてどんな活動なのか、というのを実感できた気がします。紙に書いて嘆願書に協力するのは簡単なことです。でも、その活動がどんなものかわからなければ、チームSで真剣に活動しているみなさんに失礼
だし、本人、シェイダさんにも失礼にあたるんじゃないでしょうか。
 この件に限らず、単に同じゲイの人が困っている、というのは、人が「動く理由」にならないと思います。大切なのは、その実情について知り、自分でどのように感じるか、ということではないでしょうか。そうすることで、よりこの活動についての理解が増し、チームSの活動自体も活発になっていくのではないかと、私は考えます。

**************************************************
(2)速報!第三回口頭弁論(3月13日)
**************************************************

 3月13日11時より、東京地方裁判所第606号法廷において、「シェイダさん在留権裁判」第三回口頭弁論が行われました。シェイダさんは茨城県牛久市の入管強制収容所に収容中でまたもや出廷できませんでしたが、傍聴席の方は、初めて傍聴に参加して下さった方も多く、今後の展開に希望を持たせるものとなりました。傍聴していただいた方、どうもありがとうございました。
 さて、今回の法廷は、前回シェイダさん側が提出した準備書面に対して、法務省が反論の準備書面を提出することを主目的に開かれたものでした。法廷はいつものように、別の事件が3〜4件入っていましたが、シェイダさんの事件に一番多くの時間が割かれました。
 法廷の中で、シェイダさん側の大橋毅弁護士が、退去強制令書(強制送還命令)発付処分をうけた人が、裁判等で難民条約上の難民であると認められた場合、退去強制令書発付の処分は取り消されるのかということを聞いたところ、法務省側は「そういうことは書面で聞いてほしい」と答弁。そのやりとりを聞いていた市村陽典裁判長は、「本件に関しては、一番のテーマはシェイダさんが難民であるかどうかということにつきる」と発言、イランにおける同性愛者の迫害の状況、シェイダさんへの迫害の状況が本件裁判の中心的なテーマであるということが確認されました。
 今回の法廷は、これまでと同じく、他の事件と一緒に行われ、いつ始まったのかもわからないというものではありましたが、シェイダさん側と法務省側の間でやりとりが交わされ、裁判長からも重要な指摘があるなど、ようやく裁判も本格化してきたな、と思わせるものでした。
 裁判は11時40分ごろ終了し、その後弁護士会館5階会議室で1時間ほど、報告集会がもたれました。傍聴に来た方の多くが参加し、シェイダさんの事件やイランの情勢についての認識を深めました。
 シェイダさん在留権裁判、次回口頭弁論(第四回)の日程は以下の通りです。皆様万障お繰り合わせの上ご参集下さい。
_________________________________________
●○●「シェイダさん在留権裁判」第四回口頭弁論●○●
○5月8日(火)午前11時〜 東京地方裁判所606号法廷
(営団地下鉄霞ヶ関駅下車徒歩3分)
○内容:法務省準備書面に対する当方からの反論準備書面等の提出、その他
○終了後、報告集会を予定
_________________________________________

**************************************************
(3)法務省の珍妙な主張〜法務大臣提出「準備書面(1)」〜
**************************************************

 今回の第三回口頭弁論は、前回の法廷でシェイダさん側が提出した「準備書面(1)」に対して、法務省側が反論の準備書面を提出する期日として開かれました。法務省側は裁判の2〜3日前には書面を作り、事前に裁判所と相手側に送ってくるのが普通なのですが、今回はめずらしいことに書面の提出が当日にずれ込みました。しかもその内容は実に珍妙、脱力感あふれるものでした。
 法務省の書面内容を紹介する前に、とりあえず、シェイダさん在留権裁判で論点となっている項目に関して簡単におさらいしておきたいと思います。

○●シェイダさん裁判の3つの論点●○

 シェイダさんの裁判の論点は、現在のところ、ほぼ以下の3つにしぼられつつあります。

(1)シェイダさんは難民か。
 シェイダさん側が「イランでは同性間性行為を行った者を死刑とする刑法があり、実際に執行された例も多い。また、社会的な迫害も強い」と主張するのに対し、法務省側は「イランでは同性愛は事実上容認されている」と反論しています。

(2)難民となるべき要件は何か。
 難民として認定されるためには、「人種、宗教、国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であること、または政治的意見」を理由として迫害を受けたり、受ける恐れがあるという十分に理由のある恐怖があるために、現在本国の外にいることが必要です。法務省は「十分に理由のある恐怖」を極めて狭く解釈して、シェイダさんは難民にあたらないと反論しています。

(3)在留特別許可に関する法務大臣の裁量権はどこまでか。
 シェイダさん側は、シェイダさんをイランに強制送還するのは国際法上の「ノン・ルフールマン原則」(迫害の恐れのある国に送還することを禁止する原則)に違反するとしていますが、法務省側は、在留特別許可を与えるかどうかは法務大臣に広範な裁量権があり、本人の難民性は、法務大臣が判断において考慮すべき一要素に過ぎない、と反論しています。

●○「カップルで捕まっていない」から「同性間性行為」の事例ではない!?●○

 さて、今回の準備書面で法務省は上記(1)〜(3)についてどのようなことを言っているでしょうか。
 まず(1)について。シェイダさん側は前回、イランで90年代以降に行われたソドミー(同性間性行為)罪での処刑の実例を証拠として十数件あげ、イラン刑法の反ソドミー条項が実際に適用されているという事実を示しました。
 それに対し、法務省は今回の準備書面で、まず「原告の上記反論は何ら客観的根拠に基づくものではな」い、と一気に切り捨ててきました。なぜそんなことが言えるのかな、と読んでみると、具体的なことは書いておらず、かわりに……
 「同性愛的性行為は、本来一人で行い得るものではないにもかかわらず、(略)ゲイの訴追または処罰に関して、当該人物が同性愛的性行為をしたことにより、パートナーと共に訴追または処罰された旨記載するものはない。」
 つまり、カップルで処罰されていないから、これらの処刑はソドミー行為に対するものとは言えない、などと言っているのです。あまりのばかばかしさに失笑を禁じ得ません。
 同性間性行為に対して厳しいタブーがあるイラン社会では、同性間性行為は秘匿された状況で行われ、パートナー同士など、二人の人物が同性間性行為を行っているところを当局が現行犯逮捕するなどといったことはほとんど考えられません。むしろ、同性愛者の検挙は密告などによって行われるケースが多く、警察や革命防衛隊は、密告された人を一人一人逮捕していくのです。カップルで処罰されていないから、それが同性間性行為による処罰でないなどというのは、論理の飛躍もほとんど冗談の域に達しています。
 法務省はさらに、こうした事例は「処刑されたのが一人だけだったことは、もう一人の方が攻撃者を弾劾した強姦の犠牲者であったことを意味する」とまで述べているのですが、実際には、イラン刑法ではソドミー行為の認定条件として「自由意思で行われたこと」を挙げており、強姦はソドミーとは言わないのです。
 このように、法務省側はシェイダさん側の主張に対し、具体的な証拠に基づくまともな反論を全く行っていません。自分の提出した証拠のうち都合のいい部分だけを並べ立て、シェイダさん側の主張は何の根拠もなく切り捨てるだけなのです。

●○「逮捕・訴追」がなければ「十分に理由のある迫害の恐怖」とは言えない?●○

 むしろ(2)の点は深刻です。法務省は今回の書面で、過去の判例を引いて、日本において難民認定を受けるためには、すでに判決や逮捕状が出ているなど、国家がその個人を特定して具体的に迫害を行っていることを示す客観的な事情が必要であると主張しているのです。
 これは、難民条約の解釈や難民認定に関する国際的な流れに全く逆行しています。そもそも、難民条約が難民認定の条件として「迫害の十分に理由のある恐怖」と定めているのは、定義を緩やかにすることで、より多くの難民の保護を可能にするためです。実際、欧米諸国の中には、「迫害の恐怖」の中に、国家権力などによる訴追だけでなく、女性性器切除(FGM)など、社会的慣習による迫害も含めて難民認定や亡命を認めている国々もあるのです。
 同性愛者などの特定の社会的集団や、宗教的・民族的少数派などに対する迫害は、具体的個人に対してというよりも、集団を構成する不特定多数に対してのべつまくなしに行われる場合がほとんどで、現在訴追されていなくても、生命・身体の危機に見舞われることはいくらでもあります。民族紛争、民族浄化、少数派への弾圧や迫害が吹き荒れ、先進国はおろか、最貧国すらも難民の受け入れに応分の負担を行っている現代世界において、ひとり日本だけが「わが国は、すでに訴追されている人間しか難民として受け入れない」などと主張することは、国際的に通用する論理ではありません。
 法務省の「準備書面(1)」。はっきり言って、もう少し手応えのあるものが来ると思っていました。しかし、こちらの水準を相手側に合わせる必要はありません。たとえば(2)の論点については、シェイダさんだけでなく、多くの難民の裁判で先駆的な取り組みが行われています。日本を同性愛者に対して開かれた国にしていくために、相手の主張に眩惑されずにがんばっていきたいと思います。
******第15号は近日中に発行します******


=========================================================
シェイダさんを救え!ニュース・アップデイト
Save Mr. Shayda! The News Update
第15号 2001年4月6日発行(不定期刊)
---------------------------------------------------------
発行元 チームS・シェイダさん救援グループ
編集担当 チームS電子オフィス shayda@da3.so-net.ne.jp
---------------------------------------------------------
<今号の目次>
(1)牛久入管が外部の歯科医による診察を拒否!
 〜牛久入管に抗議のメッセージを送ろう!〜
(2)速報!次回口頭弁論は5月8日
 〜今回はシェイダさん側が準備書面を提出!〜
(3)風かおるアジールのために
 〜第三回口頭弁論傍聴者の方の感想より〜
=========================================================
●バックナンバーが必要な方は電子オフィスまでお知らせ下さい。
●講読申込・講読中止などの手続は電子オフィスまでお知らせ下さい。

**************************************************
(1)牛久入管が外部の歯科医による診察を拒否!
    〜牛久入管に抗議のメッセージを送ろう!〜
**************************************************

 2月下旬、シェイダさんからペルシア語の手紙が届きました。さっそくペルシア語のできる友人に手紙を訳してもらいました。手紙の内容は、シェイダさんの歯科治療に関することです。

○●○入管のその場しのぎの歯科治療●○●

 「2週間前、歯の神経を取る処置をされ、昨日の午後、ふたたびその歯医者に診てもらう予定でした。ところが順番が回ってくる気配は全くなく、入管職員を呼ぶと『今日、あなたの予定は入っていない』という答えがかえってきました。そんなはずはないと私が言うと、『自分には関係ない』と、とりつく島もありません。私は怒って、机をたたいて抗議しました。すったもんだの挙げ句、やっと司会の居る部屋に連れて行かれ、治療を受けることになりましたが、歯の詰め物をかえただけでした。
 あとで、机をたたいたことについて、上の方の人間から問いただされ、注意を受けました。懲罰はなかったものの、今後ますます処遇が悪くなるのではと心配しています。いずれにしても、ここではまともな治療は受けられません。先日、弁護士は、外から歯科医の派遣を検討すると行っていました。もし可能ならば、早く実行して下さい。2月21日 シェイダ」

○●○外部の医師の診察も拒否!?●○●

 牛久の収容所にうつされてまもなくの昨年夏頃から、シェイダさんはさかんに歯痛を訴えるようになりました。しばらくして、収容所に隔週で来る歯医者に診てもらいだしたのですが、その場しのぎの処置が施されるだけで、きちんとした治療は望むべくもなく、意志の都合で診療日の間隔が開いてしまうこともめずらしくありませんでした。
 シェイダさんからのこの手紙のあと、弁護士が面会に訪れ、知人の歯医者が快く治療をOKしてくれたと伝えました。弁護士が入管側と相談すると、外部の医者の診療を受ける旨の申請書を書いてほしいということでした。もちろん、シェイダさんに異存はありません。渡された申請書に必要事項を書き込み、翌朝提出しました。ところがです。再びシェイダさんの怒りが爆発します。今回は手紙ではなく、電話での涙の訴えです。
「申請書を出そうとしたら、2週間に1回、歯医者に見せているから、認められないというんだ。だいたい、2週間に1回も歯医者は来ていないし、なにより、申請書を出せといったのはあっち(入管)なのに、なんで、こんなことになるの」
 受話器の向こう側で声をふるわせるシェイダさんに、こちらはかえす言葉もありません。入管は医療を受ける当然の権利すら奪おうと言うのでしょうか。シェイダさんの左上の奥歯は、「どんどん崩れてきて、形もなくなった」と言います。シェイダさんが早急に適切な治療を受けられるように、皆様からもぜひ、入管に対して要望と抗議のメッセージを送って下さい。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
<<抗議の手紙の送り先>>
〒300-1147 茨城県牛久市久野町1766
法務省入国者収容所東日本入国管理センター
酒井 明 様宛
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
<<電子メールで抗議を送る場合>>
法務省が各種事業に関する一般の意見を募集するために、以下の電子メール窓口を設けています。上記宛先を明記した上、こちらのアドレスに送ることも可能です。
○法務省電子メールアドレス:hyouka@moj.go.jp
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
<<必ず「チームS」までコピーを送って下さい>>
手紙、メールなどを送っていただく場合は、必ず「チームS」まで手紙、ファックス、電子メールの形でコピーを送って頂ければ幸いです。
○手紙の場合:164-0012中野区本町6-17-12-201 サークルホン気付
○ファックスの場合:03-3550-6024(清水方)
○電子メールの場合:shayda@da3.so-net.ne.jp
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

<<抗議の手紙のサンプル>>

 抗議の手紙を送る場合は、以下のサンプルを参考にしながら創意工夫してもらえれば幸いです。シェイダさんとの知人・友人関係のある人は、その点について冒頭につけ加えるのもよいでしょう。シェイダさんが広い友人関係に支えられており、多くの人の注目を集めていることを印象づけて下さい。(なお、東日本入国管理センターでは、「シェイダさん」の名前で通用するようになっています)

2001年 月 日

法務省入国者収容所
東日本入国管理センター
所長 酒井 明 様

 桜の季節となりましたが、貴所におかれましては適正な入管行政の実施に余念のないものと存じます。
 さて、私は先日、私の知人であるイラン人男性、シェイダさん(仮名)が貴所に強制収容された後、適切な歯科治療を提供されておらず、外部の医師による診察も拒否されたという報告を聞き及びました。私の知り得たのは以下の事実です。
(1)シェイダさんは東日本入国管理センター入所後、一貫して適切な歯科治療を求めているが、施設には治療に十分な設備がなく、巡回の歯科医も診察と応急措置以上のことができない状態である。
(2)本年2月、シェイダさんは施設巡回の歯科医の診察を希望したにもかかわらず無視され、抗議したところ、診察自体は行われたものの、抗議したことについて職員から叱責され、今後処遇が悪化するのではないかとの不安を強く感じている。
(3)その後、シェイダさんは弁護士のすすめにより、外部の歯科医の診察を求める申請書を貴所に提出したが認められず、申請書の受理すら拒否された。
 貴所は、シェイダさんが同性愛者としてイラン政府の迫害を逃れて来日し、現在難民認定と在留権を求めて東京地方裁判所に行政訴訟を起こしていることをご存じのことと思います。本来、難民として日本の在留権を認められてしかるべき存在であるシェイダさんが、長期にわたって収容され、適切な医療を受けることもできないというのは、人道上極めて大きな問題です。国連人権規約は、国はすべての者に対して医療・看護を確保する条件を創出しなければならない(社会権規約第12条)、自由を奪われた全ての者は人道的にかつ人間の固有の尊厳を尊重して取り扱われる(自由権規約第10条)と決めています。貴所がシェイダさんに十分な歯科治療を提供しないことは、これら国際法に照らしても不適切なことであり、国際的な批判を浴びても仕方ありません。
 私は、貴所がシェイダさんに十分な歯科治療を提供していないことに抗議するとともに、シェイダさんの強制収容を今後も続けるのであれば、ただちにシェイダさんに十分な歯科治療の提供を行うことを要求します。また、シェイダさんはほぼ1年にわたって強制収容されています。彼の仮放免につきましても、ぜひともご英断下さるよう、よろしくお願い申しあげます。

**************************************************
(2)速報!次回口頭弁論は5月8日
    〜今回はシェイダさん側が準備書面を提出!〜
**************************************************

 3月13日に行われたシェイダさん在留権裁判「第三回口頭弁論」。法務大臣側は、カップルで処罰されたケースがない以上、イランで行われているソドミー容疑の処罰は同性愛者への処罰ではないとか、日本は実際に逮捕状の執行、訴追、有罪判決などを受けている者でなければ難民とは認めない、などと、屁理屈と暴論で固めた「準備書面」を提出してきました。
 次回の口頭弁論は、ゴールデンウィーク明けの5月8日。前回と同じく午前11時より、東京地方裁判所6階第606号法廷で開催されます。次回は、法務省の準備書面に対してシェイダさん側が反論の準備書面を提出する番です。現在「チームS」では、こうした法務大臣の立論を根底からくつがえす反論の準備書面を、こつこつと準備しているところです。準備書面の内容は、当日法廷終了後の「報告集会」で報告するとともに、「ニュースアップデイト」でもその概要をお知らせします。乞うご期待。
 さて、5月8日は、ちょうどシェイダさんが逮捕後「オーバーステイ」に関しては不起訴処分となり、身柄を東京都北区十条にある「東京入管第二庁舎」(十条入管)に移されてから1年となります。本来、難民であるシェイダさんが入管法に基づく強制収容を受けて、これで1年になるということなのです。
 「チームS」では、これを受けて、当日報告集会ののち、これまで集めたシェイダさんの難民認定・在留権確保に関する嘆願書、およびシェイダさんの仮放免(仮釈放)を求める嘆願書を法務省に提出する行動を予定しています。また、5月20日には、シェイダさんの逮捕・拘留1周年を記念し、ともに考える集会を予定しています。詳しいことは、「ニュースアップデイト」次号にてお伝えします。ぜひとも、ご参加の程お願い申しあげます。

●○●シェイダさん在留権裁判 第四回口頭弁論●○●
(日時)5月8日 午前11時〜(11時30分までには終了)
(場所)東京地方裁判所6階 第606号法廷
 営団地下鉄霞ヶ関駅下車、徒歩三分
(内容)シェイダさん側の準備書面提出、質疑応答など
○●○シェイダさん在留権裁判 第四回口頭弁論報告集会○●○
(日時)第三回口頭弁論終了後(11時30分〜)
(場所)弁護士会館5階会議室(予定)
 霞ヶ関駅下車徒歩三分、東京地方裁判所裏手(法務省並び)弁護士会館5階
(内容)本日の法廷の報告、シェイダさん側の準備書面の解説など
○●○対法務省 嘆願書提出行動○●○
(日時)5月8日 午後1時〜(予定)
(場所)弁護士会館ロビー集合、法務省本庁舎へ
(内容)代表団が嘆願書受け渡し、交渉等も予定。

**************************************************
(3)風そよぐアジールのために
〜第三回口頭弁論傍聴者の方の感想より〜
**************************************************

 さて、3月13日の第三回口頭弁論を傍聴していただいた方から、すてきな文章を頂きました。ぜひご一読下さい。

●○●風そよぐアジールのために○●○

 日本には黄砂が吹いてくる、韓国やロシアから投壜(びん)が流れてくる、大陸からハンバーガーが押し寄せてくる。わたしたちの国土は、ときに困惑の種に悩まされつつも、およそ豊かさに結びつくあらゆる異物を受けいれてきた。そもそも、自然の流れを制する術などありうべくもない。異国の産物は、元来、物心両面にわたってわたしたちを潤すものである。(これはあくまで一面における話だが。)人もまた然り。僧侶・宣教師・軍人捕虜・最高司令官からビートルズ・『三銃士』(これはヒトじゃないか)・三重苦の偉人に至るまで、主義主張も目的も色とりどりで、実に多くの人たちが、この国に渡り、結果的にわたしたちの島を郁々(いくいく)たる暖風で包んでくれた。(しつこいようだが、これはあくまで一面においての話である。)
 一方、風の便りによると、この国は、禁忌渦まく国から逃れてきたわたしたちの友人に対しては、逆風を浴びせつけるらしい。芥子粒は黙ってさっさとお国に帰れと命じるらしい。黄色い砂以外は、一粒ずつつまんでは梱包し、丁寧に記録した上で、もと来た道へと送りかえすのだそうだ。怠慢なわたしには到底まねのできない労作業である。お役人の方々、誠に御苦労様で御座います。なんとも笑える話じゃないですか、ねえ、皆さん。
 わたしがシェイダさんのことを知ったのは、緑風薫る昨年の夏、「すこたん企画」のサイトを通じてだった。イランでは同性愛者に対する極刑が今もまかり通っている。わたしを戦慄させたこの現実と背中あわせで生きているゲイの人が、この国にもいる。ゲイであるわたしの自己肯定に、少なからず影を落としてきた悪夢が、リアルな色彩を帯びて胸に迫ってくる。生ぬるい気候風土と体温にすっかり慣れきっていたわたしは、同じ空気を吸い、同じように人を愛する一人のゲイのことが、頭から離れなくなった。熱帯夜である。
 エイヤッと気合いを入れて、霞ヶ関の東京地方裁判所に向かったのは、3月13日、第3回口頭弁論当日のこと。シェイダさんが日本で豊かに生きていくためのこの裁判。重い命を天秤にかけるこの裁判。事は淡々と法廷の言語で進んでいく。シェイダさんの起こした訴訟とそれ以外が合同で扱われたこともあって、具体的に何がやり取りされたのかはぼんやりとしか掴めなかった。しかし、それを承知でここに来たのだ。霞ヶ関は、かつて「府中青年の家」裁判の判決を聞くために訪れた、語り尽くせぬ思い出の場所。ここに来れば、わたしの炎が赤々と燃えるかもしれない。誤解を恐れずに言えば、わたしはわたしのためにも、シェイダさんの裁判を身体に刻もうと考えていた。もちろん、事の重大さを思えばそんなことを言っている余裕はない。法廷にすら姿を現すことのできないシェイダさんの苦しみを思う。歯痛に身をよじらせながら、医者にも掛かれない理不尽さを想像する。不安な成り行きを自らの手ではどうすることもできない、ただじっとしていなければならない心中を忖度(そんたく)する。わたしの痛みや苦しみなど、今はもうどうでもいい。
 報告集会で弁護士会館の一室に集うシェイダさんを取り巻く面々は、それぞれが個性的で人柄のよさが滲みでてくるようだった。これもシェイダさんの人徳だろう、わたしはみえない笑顔に暖をとる。彼が描いたという幾葉かの絵をながめると、素直な筆致や人を楽しませる雰囲気に、しばしのあいだ気を取られる。裁判というと、生真面目で堅苦しい人たちが、鋭く尖りながら運動一直線にひた走っている、そんなイメージがないわけではない。必ずしも、わたしがそういう先入観を持っていたということではないが、一般のイメージとチームSの方々との間にあるギャップは、正直わたしをほっとさせた。この方たちが「シェイダさんを応援しよう!」と訴えれば、多くの人の心が動くだろうと確信する。同時に、わたしにできることを精一杯させてもらおうと強く思う。
 わたしはシェイダさんご本人の思想信条には無知である。文中に失礼がないか心配するが、シェイダさんの生き様に最大の敬意を払いつつ饒舌を乞いたい。
 その昔、奴婢(ぬひ)や犯罪人を追っ手から保護する目的で、寺院に平和領域を張ったという。後にこの安全域は、信長・秀吉の方針で廃止され、駆込寺が地位の低い女性を助けたものの、江戸幕府自体も廃止の政策を踏襲している。「アジール」と呼ばれるこれらの聖域は、ギリシャ語で「不可侵」を意味し、ヨーロッパでも広く認められるものだった。しかし、いずれも18世紀までにはすっかり姿を消してしまう。盗っ人を保護する神さえ存在した時代が遠く過ぎさり、駆込訴えの善人を軽々と処刑台へと吹きとばす、お役人の牛耳る黄昏時。罪のない人に極刑を宣告し、貶められた者に血で報いるこの世界で、わたしたちはアジールをどこに求めようか。なにより一番の問題として、ここはアジールになれるだろうか。溢れてあふれて止まらない無垢の涙を拭うそのアジールを、わたしたちは今、緊急につくらなければならない。
 春嵐青嵐木枯らしよ、もうこれ以上吹くな。清風涼風そよ風よ、旅の疲れを癒しておくれ。あなたが喜ぶためになら、わたしは桜の花びらを両手いっぱいに用意しよう。
******第16号は近日中に発行の予定です******


=========================================================
シェイダさんを救え!ニュース・アップデイト
Save Mr. Shayda! The News Update
第16号 2001年4月 日発行(不定期刊)
---------------------------------------------------------
発行元 チームS・シェイダさん救援グループ
編集担当 チームS電子オフィス shayda@da3.so-net.ne.jp
---------------------------------------------------------
<今号の目次>
(1)間近にせまった第四回口頭弁論(5月8日)
            〜法務省交渉もあわせて実施〜
(2)入管施設収容1周年:「シェイダさん救援の集い」を開催します
(3)亡命イラン人同性愛者団体「ホーマン」が
     シェイダさん救援のための世界的キャンペーンを開始
(3)「チームS」ホームページ ただいま作成中
(4)セクシュアル・マイノリティ・レイバーズ・マーチ今年も開催
=========================================================
●バックナンバーが必要な方は電子オフィスまでお知らせ下さい。
●講読申込・講読中止などの手続は電子オフィスまでお知らせ下さい。

***************************************
(1)間近にせまった第四回口頭弁論(5月8日)
           〜法務省交渉もあわせて実施〜
***************************************

 「ニュースアップデイト」第15号でもお知らせしたとおり、シェイダさんの難民認定と在留資格について争われている「シェイダさん在留権裁判」の第四回口頭弁論が来る5月8日、ゴールデンウィーク明けに開かれます。
 前回(3月13日)の第三回口頭弁論では、これまでシェイダさん側が行ってきた主張に対し、法務省が「準備書面(1)」を出して反論。第14号で法務省側「準備書面(1)」の内容を詳しく紹介してありますが、基本は次の二つです。
@シェイダさん側が出している、イランでの同性愛者の処刑の事例は客観的証拠に基づいたものではない。
A難民認定のためには、本人が迫害の恐怖を抱いているというだけでなく、逮捕状や有罪判決が出ているなど、個別具体的な事情がなければならない。
 今回の法廷では、法務省の二つの主張に対し、シェイダさん側が再反論の「準備書面(2)」を提出します。
 「チームS」では、弁護団の主任弁護士である大橋毅弁護士(池袋市民法律事務所)とともに、議論しながら「準備書面(2)」を作ってきました。現在までに、準備書面の骨格はほぼできあがっています。
 当日の法廷は午前11時から。法廷自体は、シェイダさん側、法務省側、裁判所側の三者の簡単なコミュニケーションで、15〜20分くらいで終わります。その後、裁判所裏手の弁護士会館5F会議室で報告集会を行い、、今回の法廷の意味やシェイダさん側提出の準備書面の解説、最近のシェイダさんのようすや、シェイダさんからのメッセージの披露などを行います。
 今回の目玉は、その後昼食をはさんで14時から行われる「法務省交渉」です。昨年の5月8日にシェイダさんの身柄が法務省の収容所に移されてからちょうど1年。シェイダさんは歯痛に悩まされているのに、十分な治療をうけることができない状況におかれています。今回の法務省交渉では、これまでに集まった「シェイダさんの難民認定と仮放免を求める嘆願書」約150通を提出するとともに、とくに仮放免と歯科治療をめぐって、法務省側と交渉します。
 季節は5月、日比谷公園の新緑も美しい季節です。平日ではありますが、ぜひともお誘い合わせの上、霞ヶ関に足を運んで頂ければ幸いです。

●○●シェイダさん在留権裁判 第四回口頭弁論○●○
(日時)5月8日 午前11時〜(11時30分までには終了)
(場所)東京地方裁判所6階 第606号法廷(集合11時まで、606号法廷控室)
 営団地下鉄霞ヶ関駅下車、徒歩三分
(内容)シェイダさん側の準備書面提出、質疑応答など
●○●シェイダさん在留権裁判 第四回口頭弁論報告集会○●○
(日時)第三回口頭弁論終了後(11時30分〜)
(場所)弁護士会館5階 第509会議室
 霞ヶ関駅下車徒歩三分、東京地方裁判所裏手(法務省並び)弁護士会館5階
(内容)本日の法廷の報告、シェイダさん側の準備書面の解説、
    シェイダさんの近況、シェイダさんからのメッセージ披露など
●○●対法務省交渉・嘆願書提出行動○●○
(日時)5月8日 午後2時〜3時
(場所)午後1時50分 日比谷公園霞門集合〜法務省本庁舎へ
(内容)代表団が嘆願書受け渡し、交渉等も予定。

************************************************
(2)入管施設収容1周年:「シェイダさん救援の集い」を開催します
           〜5月20日 「中野ゼロ」にて〜
************************************************

 すでに桜も散った4月下旬のとある夜。夜間勤務についた巡査は気負っていた。東京のはずれの何の変哲もない住宅街。交番勤務は、ときたま上司の新人いびりにさらされるとはいえ、せいぜい自転車の無灯火運転の摘発くらい、ふだんは弛緩しきっていた。たるい時間潰しはもうたくさんだ……。
 最近はとくに疲れがたまっている。ふだんは警戒して通らない交番の前の道も、家までの近道としては魅力がある。どうせ、交番には誰もいないだろう。足早に通り過ぎれば、それでいい。日本にきて9年にもなるが、これまで、きわどいことはあってもくぐり抜けてきた。まあ、いいだろう。早く帰って寝よう……。
 交番の前を歩いていく「三国人」。弛緩しきった巡査の頭に、ピッキング事件で眠いところを起こされた記憶がよみがえる。石原知事によれば、違法な三国人が都民の生活に脅威を与えている。誰何してみるか?とりあえず、まずは丁重に。
 「ちょっとすみません。外国人登録証を見せていただけますか?」
 こんな感じでシェイダさんが逮捕されたのが昨年の4月22日。その後シェイダさんは5月に北区十条にある収容場、8月に茨城県牛久市にある入国者収容所に身柄を移されました。本来、難民として遇されるべきシェイダさんへの強制収容は、これで一年以上続いていることになります。 
 「チームS」では、シェイダさんにとっての、また私たちにとっての、この1年を振り返り、またシェイダさんのことについて多くの人に知ってもらうために、5月20日(日)に「シェイダさんの1年・私たちの一年〜イラン人ゲイ難民・シェイダさん救援の集い」を開催します。
 集会は二部構成で、まず第一部では、この一年のシェイダさんの取り組みや、イランの状況などについて簡潔に解説。第二部は、同性愛者難民・シェイダさんについての理解を深めるために、ゲームやディスカッションなどをまじえた交流イベントとしたいと考えています。
 5月20日といえば、そろそろ初夏の風も吹くころです。ふだんとはちょっと違う日曜日を過ごしてみるのはいかがでしょうか。
●○●シェイダさんの1年・私たちの一年○●○

〜イラン人ゲイ難民・シェイダさん救援の集い〜
(日時)5月20日 午後2時〜5時
(場所)中野ゼロ西館 第二学習室(JR中野駅南口下車、線路沿い東に徒歩5分)
(備考)終了後、交流会を予定

*****************************************
(3)亡命イラン人同性愛者団体「ホーマン」が
     シェイダさん救援の世界的キャンペーンを開始
*****************************************

 イラン国内では、弾圧により同性愛者はいっさい活動が出来ない状況になっています。80年代以降、イラン人の同性愛者たちは活動と生活の場を奪われ、欧米に亡命していきました。そして1992年、亡命先でイラン人同性愛者の人権を確立するための団体として「ホーマン」を創設しました。現在、「ホーマン」はイギリス、スウェーデン、アメリカに支部を置き、イランの同性愛者の人権をはじめ、エイズ啓発や同性愛研究などについても深く取り上げる機関誌「ホーマン」(現在、16号まで発行)を出版しています。シェイダさんの裁判にも、数多くの証拠を提供してくれています。
 その「ホーマン」が、長期化するシェイダさんの裁判と法務省の度外れた主張に業を煮やし、シェイダさん救援のための世界的キャンペーンを4月19日から開始しています。
 キャンペーンは、世界中に散らばる「ホーマン」の関係者・支援者約1900人に、シェイダさんの事件について知らせ、法務省に対してシェイダさんに在留権を与えるよう要求する手紙を書いてくれるよう呼びかけるもので、「ホーマン」の呼びかけに答えて、多くの人が法務省にメールやFAXを送っています。
 この行動は、現状で法務省に一定のインパクトを与えているようです。外圧には敏感に反応する法務省は、ホーマンの呼びかけに応じてメールを送信した人に、以下の返事を出しているようです。
Please note that Japan is a signatory to the 1951 Convention on the Status of Refugees and the Japanese government is the competent authority for recognition of refugee status as well as for deportation.
(対訳:日本は1951年の難民条約を批准しており、日本政府は難民資格の認定と国外追放の両方について能力を有しているものであることに留意して下さい)
 「ホーマン」のキャンペーンが、日本政府にとって大きな圧力となることを期待したいと思います。なお、「ホーマン」のキャンペーン呼びかけの英文および訳文を入手希望の方は、「チームS電子オフィス」shayda@da3.so-net.ne.jp までお問い合わせ下さい。

***************************************************
(4)「チームS」ホームページ ただいま作成中
 〜「すこたん企画」ホームページにはシェイダさんコーナーがオープン〜
***************************************************

 「チームS」では、以前からホームページを懸案としていましたが、ここに至ってほぼ開設の運びとなってきました。アドレスは以下の通りです。
ikebukuro.cool.ne.jp/shayda/ (頭にhttp://とかwww.とかはつきません)
 まだ試験運用中のため、見にくいところがあるかと思いますが、改善していきますのでよろしくお願いします。以下、ホームページ作成を手がけている櫻井さんのメッセージです。
__________________
●HP作成にあたって
 チームSのHPであるため、自分色を出しすぎないことに留意しました。まだ開設したばかりであることから、試用運転の感は否めませんが、掲示板を通して意見・感想・批判などを寄せていただけると嬉しいです。また、交流掲示板の方では、難民問題やイラン情勢に興味のある方と知り合い、関心を持っていただけるようになればよいと思っています。ぜひ書き込みをよろしくお願いします。
●HPの簡単な説明
 「チームSについて」「これまでの流れ」など、主に今までやってきたことの解説と、そのときに使用した資料の閲覧ができます。インフォメーションでは、これからのイベント、裁判のお知らせが載っているのでぜひご覧下さい。また、2種類の掲示板を用意しました。一つはHPの感想やチームSへの意見を寄せる場、もうひとつはこの問題に関心を持ってくれている人どうしの意見交換などの場として使って頂けたらと思います。
_________________
 また、以前からシェイダさんの問題で協力を頂いている「すこたん企画」のホームページに、シェイダさんの問題についての特別なコーナーがオープンしました。トップページや全体のデザインなど仕上がりも非常に美しく仕上がっています。ぜひともお立ち寄りいただくとともに、ご関心をお持ちの方などに紹介して頂ければ幸いです(すこたん企画の皆様には、この場を借りて「チームS」一同より心からのお礼を申し上げます)。
 こちらのURLは以下の通りです。
(すこたん企画)http://www.sukotan.com/
(シェイダさんコーナー)http://www.sukotan.com/shayda/shayda_top.html

***************************************************
(5)セクシュアルマイノリティ・レイバーズ・マーチ改めメーデー2001
  今年も開催 (5月1日18時〜新宿公園)
***************************************************

 4年前から行われてきたセクシュアル・マイノリティ・レイバーズ・マーチが今年も開催される。今年は、「セクシュアル・マイノリティ・レイバーズ・マーチ改めメーデー2001(以下メーデー2001とする)」ということで、セクシュアルマイノリティだけではなく、ドメスティック・バイオレンス(夫、パートナーからの暴力)の被害を受けた人、摂食障がいのある人、セックスワーカーの人たちが労働者としての権利だけではなく、「労働」というワクの周辺で生きざるを得ない人々も参加するメーデーにしたいと準備が進められている。
 2年前にシェイダさんが「イランでのゲイに対する迫害をやめて!」とスピーチし、カミングアウトしたのも、このグループ主催による「ともにボチボチ生きていこう」というトークイベントでのことだ。シェイダさんは、長年勤続していた職場で、ゲイをネタとした同僚の笑い話が許せなくて喧嘩した。それがきっかけで職場をクビになりそうにもなった経験もある。そんな理由で、今回のメーデー2001は、チームSもメーデー2001の協賛団体に参加している。
 準備を進めている大田さんに、メーデー2001の意味などを聞くことにした。
 
 <主催者:大田リョウさんに聞く>
Q:まず、今回メーデー2001で中心的に準備や会議を進めてきた「ヤジウマ会議」について説明してください。
A:「ヤジウマ会議」ってのは、何て言うのかな、俺自身の心がハートブレイクで、だけど世の中そこでも生き抜くぞという意思を見せたいという思いから作りました。
 俺のような人がもっとどこかにいるんじゃないか、と思いついたんです。難しい話をすると心のお薬を飲まなくちゃいけないようになっちゃうんで、飲まなくてもいいような雰囲気を重視しています。決めなきゃいけないことは、1時間でパッと決めて、あとは交流会!これからやれることは、交流会の話の勢いでポッと出てくるモノだと思っています。要するに、交流とアイデア、思いつき重視の場です。
Q:「ヤジウマ会議」をやっていて新しい発見などがありましたか?
A:とりあえず、今回パレードが4回目になります。
 一回目は、セクシュアル・マイノリティ・レイバーズ・マーチってことでゲイ、レズビアンの人たちが対象だったんですが、フタを開けたらもっと色々な人たちが職場で大変な思いをしているんですね。パレードで本当に辛いと訴えて、力を入れてきたのは、トランスジェンダーやトランスセクシュアルの人たちでした。
 「マジ職場がキツイ」と。
 そんな人たちがパレードに参加してくれて、結局嬉しい誤算でしたね。
 第二回目は、そんな誤算があったので、パレードはやめて「ともにボチボチ生きていこう」というフリートークイベントを企画したんですよ。そこで、今回協賛団体になっているチームSの主人公、イラン人シェイダさんがカミングアウトしたりして(あ〜、画期的!)、ワクがさらに広がったんですよ。
 セクシュアル・マイノリティ!?いや!日常生活の中の性的抑圧ってなんだろうとどんどん広がっていった。大ぶろしき広げ放題(笑)!
 前回は、DV被害者や摂食障がいの人たちも参加してました。あっ、家の中にまで性的抑圧が!って思ったんですね。家事労働やパートナーとは何か?家族って何か?って思ったんです。
Q:労働問題そのものが権力関係を作り出しているって事なんでしょうかね?
A:難しいことをおっしゃいますが、その通りなんですよ!
 職場で嬉しかったり、悲しかったり、怒ったりすることがヘタしたらわからなくなってんじゃないか、そんなことにもやっているウチに気づいたりしました。
Q:自分と他人との距離をもう一度再確認できる場、それが「ヤジウマ会議」、そしてメーデー2001ってことですね。わかりました。今日は、有意義なお話ありがとう、ございました。
○●○セクシュアル・マイノリティ・レイバーズ・マーチ改めメーデー2001●○●
(場 所)新宿公園(都営新宿線「新宿三丁目」駅下車徒歩3分)
(日 時)5月1日18:00〜開会、18:30〜パレード出発
(連絡先)070-6654-0277(大田:占い師)
******第17号は近日中に発行します******


=========================================================
シェイダさんを救え!ニュース・アップデイト
Save Mr. Shayda! The News Update
第17号 2001年5月 日発行(不定期刊)
---------------------------------------------------------
発行元 チームS・シェイダさん救援グループ
編集担当 チームS電子オフィス shayda@da3.so-net.ne.jp
---------------------------------------------------------
<今号の目次>
(1)イベント「シェイダさんの1年、私たちの1年」(5月20日)
   ワークショップ形式でシェイダさんについて理解を深めよう!
(2)ニュージーランド難民地位控訴局議長 アラン・マッキーさんの
  証人尋問にご参加を(5月28・30日10時〜16時、東京地裁103号法廷)
(3)速報!「シェイダさん在留権裁判」第四回口頭弁論
(4)5月8日、法務省交渉やりました!賛同頂いた団体に感謝!!
=========================================================
●バックナンバーが必要な方は電子オフィスまでお知らせ下さい。
●講読申込・講読中止などの手続は電子オフィスまでお知らせ下さい。

**************************************************
(1)イベント「シェイダさんの1年、私たちの1年」(5月20日)
   〜ワークショップ形式でシェイダさんについて理解を深めよう!〜
**************************************************

 2000年4月22日、仕事からの帰宅途中に通った交番の前で逮捕されたシェイダさん。警察は彼をすぐに不起訴処分とし、5月8日、シェイダさんの身柄は東京都北区にある東京入国管理局の収容場に送られました。
 それから1年。さまざまなできごとがあり、今、彼は自分の在留権を求めて、法廷の場で国(法務省)とたたかっています。
 私たち「チームS」では、シェイダさん収容1年を振り返り、イラン人ゲイ難民であるシェイダさんと、その直面する問題について理解を深めるために、5月20日(日)午後2時〜5時に「中野ゼロ」(JR中野駅南口下車徒歩10分)で、イベント「シェイダさんの1年、私たちの1年〜イラン人ゲイ難民・シェイダさん救援の集い〜」を開催します。
 イラン人、難民、ゲイ……どれも一筋縄では行かない問題です。この「集い」では、これまでの「チームS」の集会でありがちだった「スピーチをする/スピーチを聞く」というスタイルはやめ、クイズやワークショップなどを通じて、楽しみながらシェイダさんの問題や自分とのつながりに自ら「気づく」ということを目指したいと思います。
 皆様のご参加、心からお待ちしております。

○●○イベント「シェイダさんの一年 私たちの一年」●○●
       〜シェイダさん救援の集い〜
<日時>5月20日(日)午後2時〜5時
<場所>中野ゼロ西館 学習室B
     (JR中野駅南口下車、線路沿い新宿方向に徒歩10分)
<こんなこと、やります!>
※以下は予定であり、本番は変わるかも知れません……悪しからず。
○ウォーミングアップ・クイズ
 〜シェイダさんとはどんな人?イランとは・日本とはどんな国?〜
○シェイダさんの問題、ほんとに「ひとごと」?
 〜あなたが「難民」になったら:シミュレーション〜
○体験・日本の難民認定制度
 〜すごろくゲームで「難民認定」を疑似体験〜
○みんなでディスカッション

*****************************************************
(2)ニュージーランド難民地位控訴局議長 アラン・マッキーさんの
  証人尋問にご参加を(5月28・30日10時〜16時、東京地裁103号法廷)
*****************************************************

 本題に入る前に、まず「難民条約」の規定を確認してみましょう。
 シェイダさんが難民条約において「難民」と認められるためには、簡単に言って 
(あ)同性愛者であることを理由に
(い)迫害を受ける恐れがあるという恐怖を持っており、
(う)その恐怖が「十分な理由」に基づいている
 という条件を満たさなければなりません。
 シェイダさんの裁判で法務省は、(う)の「十分な理由」について、「逮捕、訴追、有罪判決などの『個別的具体的事情』を有している」ことを条件とする、と主張しています。つまり、個人が具体的に逮捕、訴追、有罪判決などの対象となっていなければ、難民として認定しない、と言っているのです。
 「難民条約」解釈の国際的な基準に照らして「異端」ともいえる、こうした厳しい解釈により、日本の難民認定を受けるのは「「針の穴にラクダを通すより難しい」という状況が生じています。
 しかし、難民の側も手をこまねいているわけではありません。現在、東京地方裁判所に提訴されている難民認定をめぐる行政訴訟は二百件以上にのぼっています。その中で、日本の厳しい難民認定基準に風穴を開けてくれるのでは、と期待されている訴訟が、「ビルマ人難民申請弁護団」が取り組んでいる一連の難民不認定処分取消訴訟です。
 この訴訟では、難民条約に関する国際的な解釈基準、諸外国の難民認定の基準や方法などを、数多くの文献の翻訳などによって紹介し、日本の難民認定基準や方法がいかに異常で、ずさんなものであるかということを明らかにしてきました。その成果は、シェイダさんの在留権裁判にも活用させていただいています。
 さらに「ビルマ人難民申請弁護団」では、難民認定の先進国であるニュージーランドの難民地位控訴局議長であり、また「難民法裁判官国際協会」の副議長でもある難民認定の権威、アラン・マッキー氏を証人として招請、5月28日と30日の2日間にわたって証人尋問を行うこととなりました。
 両日とも午前10時から午後4時までという長丁場ですが、そのぶん、難民認定の国際的基準のあり方が明確になり、日本の難民認定制度の問題点も明らかになってくることと思います。大法廷での実施のため、傍聴券確保の必要もなく、中途出席・退出も自由ということで、弁護団事務局では多くの方の傍聴を呼びかけているということです。「チームS」としても、法廷の傍聴を呼びかけます。

●○●ニュージーランド難民地位控訴局議長 アラン・マッキー氏証人尋問●○●
<日時>5月28日(月)、30日(水)午前10時〜午後4時
<場所>東京地方裁判所103号法廷
※本件裁判についてのご質問は、「いずみ橋法律事務所」(〒101-0032千代田区岩本町3-10-13幸ビル2F Tel:03-5825-1500 Fax:03-5825-1501 電子メール izumibashi@md.neweb.ne.jp)まで。また、傍聴に行かれる方はとりあえず「チームS電子オフィス」までご連絡下さい。

*****************************************************
(3)速報!「シェイダさん在留権裁判」第四回口頭弁論
*****************************************************

 5月8日午前11時、「シェイダさん在留権裁判」第四回口頭弁論が開かれました。当日は雨模様のおちつかない天気でしたが、それでも15名の人が傍聴にかけつけてくれました。
 前回3月13日の裁判では、法務省側が「イランで同性愛者が処刑されているという主張は根拠がない、なぜなら、『同性愛的性行為』は複数でやるものなのに、一人しか処刑されていないケースばかりだからだ」「シェイダさんは難民ではない、なぜならば、日本で難民認定されるためには、逮捕、訴追、有罪判決などの個別的具体的事情がなければならないのに、シェイダさんにはその事情がないからだ」などといった乱暴な主張を展開した「準備書面(1)」を提出していました。今回の法廷では、シェイダさん側が、法務省のこの準備書面に反論する「準備書面(2)」を提出しました。この準備書面は、主任弁護士の大橋先生と「チームS」のメンバーが協力してつくりあげた、非常にボリュームのあるものです。シェイダさんの事件については、書面提出と証拠の確認が粛々と進み、平穏に終わりました。法廷のあとは、弁護士会館で報告集会を行い、今回提出した書面の内容や、今後のスケジュールなどについて傍聴してくれた皆さんと共有しました(シェイダさん側「準備書面(2)」の内容は、次号の「ニュースアップデイト」で紹介します)。
 今回の法廷は、他に2件の難民関連の裁判とドッキングしたものでしたが、そのうちの一つの事件では、次回の法廷で原告(難民申請者)本人の尋問が予定されていました。本人が牛久の入国者収容所に収容されているため、本人尋問は牛久で行わざるを得ず、裁判所も「通訳の手配、書記官の手配など、いろいろ考えれば、裁判所でやるのが一番いいのだが……」と法務省側に苦情を呈していました。
 実際、負ければ強制送還、本人の生命・身体がかかっている裁判であるにもかかわらず、本人が収容されているから出られない、というのは、大きな問題です。ちなみに法務省側は、本人を収容所から裁判所につれてくることを「連行」といっていましたが、この言葉、戦前戦中に行われた朝鮮人・中国人の「強制連行」を思わせる、とても象徴的なことばだと思いませんか?こんな言葉を使うところにも、入管局の「外国人は煮て食おうと焼いて食おうと自由」(1960年、池上努参事官)という意識が見えかくれしているように思いました。
 次回の法廷は、「大部の書面を読みこなすのが大変」という法務省側の意向を反映して、ほぼ2ヶ月後の7月3日(火)、午前11時からとなりました。

●○●シェイダさん在留権裁判 第5回口頭弁論●○●
<日時>7月3日(火)午前11時〜
<場所>東京地方裁判所 第606号法廷
<内容>法務省側準備書面提出など
 ※終了後、報告集会を予定しています(予定:弁護士会館5F会議室)

*****************************************************
(4)5月8日、法務省交渉やりました!賛同頂いた団体に感謝!!
*****************************************************

 第四回口頭弁論が行われた5月8日の午後には、法務省交渉も行われました。この交渉は、シェイダさんの収容がこの日で一年を迎えるのに際し、シェイダさんの仮放免の実現、歯科治療、難民認定を要求して行われたものです。
 交渉には、法務省の難民認定室および警備課(収容施設の管理を行う部署)から6名の担当者が出席。シェイダさん側からの参加者は、チームSのメンバー5名に加え、「ゲイポリティカルフォーラム・アクエリアス」および「すこたん企画」の方の参加を頂き、総勢7名となりました。社民党の参議院議員・福島瑞穂さんに、交渉を取り持っていただきました。
 最初に、シェイダさん側から、「シェイダさんの難民認定を求める嘆願書」144通と「シェイダさんの仮放免を求める嘆願書」103通が手渡されました。また、賛同団体15団体の名前を連ねた「東日本入国管理センター収容中のイラン人ゲイ男性シェイダさん(仮名)に関する仮放免および医療の提供に関する意見書」も提出されました。

<「仮放免に基準はない」>
 まず、シェイダさん側が仮放免についていくつかの質問をしました。法務省側はシェイダさんが仮放免を申請していることは認知していたものの、仮放免をする基準について話が及ぶと、「本人の情状、性格、事情などを総合的に勘案して所長や主任審査官が検討する。条件を満たせば仮放免する、といった一律の基準はない」とし、仮放免が行政の恣意的な裁量で行われていることが明らかになりました。また、仮放免までに要する平均的な収容期間はどのくらいか、という質問については、統計的データはない、という答弁にとどまりました。

<「歯科治療については、巡回の医師の判断が中心」>
 次に、以前から問題となっていたシェイダさんの歯科治療について聞きました。この件については、様々な働きかけの成果か、4月末になって収容所側がきゅうきょ、シェイダさんの外部の病院への受診を認めるという前進がありました。この判断について聞いたところ、「本人が医療を要求する書式を提出したら、それを拒否するようなことはしない」「実際に認めるかどうかは、巡回する医師の判断を参考にして決定している」という答弁でした。

<「60日条項は絶対」>
 最後に難民認定について聞きました。先日来日したUNHCRの国際保護局長が、NGOとの交流会で「イランにおける同性愛者の迫害は、難民となる事由に該当する」旨述べたことや、UNHCR米国事務所の法務参事官が問い合わせに対して「イランの同性愛者は難民認定するに十分な理由を有している」と回答したことについて、法務省側は一定の関心を示しました。しかし、シェイダさんを難民認定するかどうかについては、「個別的なことについては答えないが、『60日条件』(入国または難民となる事由が発生してから60日以内に難民申請しなければならないという条件)を満たさない場合難民認定できない」と回答。シェイダさん側からの「60日を超えて認定した事案もあるのではないか」との質問に関しても「そんな事例はない」と、「60日条件」に頑強に固執する態度を強く示しました。
 このように、内容的に進展が見られる交渉ではありませんでしたが、百通を越える嘆願書や、ジャンルを越えて15のNGO/NPOが賛同団体として集まった意見書などを提出することができ、シェイダさんの問題に多くの関心が寄せられていることを法務省に示すことが出来たという点で、本交渉は成功だったと思います。
 嘆願書を書いていただいた皆様、賛同を寄せていただいた団体の皆様、そして、交渉を取り持っていただいた福島瑞穂さん、本当にありがとうございました。
<「意見書」に賛同を頂いた団体・個人一覧>

アジア女性センター/移住労働者と連帯する全国ネットワーク/特定非営利活動法人HIVと人権・情報センター/NGO外国人救援ネットワーク/カラバオの会(寿・外国人労働者と連帯する会)/ゲイポリティカルフォーラム アクエリアス/人権フォーラム21/すこたん企画/東京エイリアンアイズ/日本キリスト教団なか伝道所牧師 渡辺英俊さん/反差別国際運動日本委員会(IMADR-JC)/特定非営利活動法人ぷれいす東京/平和と生活を結ぶ会/北海道セクシュアル・マイノリティ協会札幌ミーティング/RINK:すべての外国人労働者とその家族の人権を守る関西ネットワーク
***第18号は近日中発行の予定です***


=========================================================
シェイダさんを救え!ニュース・アップデイト
Save Mr. Shayda! The News Update
第18号 2001年5月25日発行(不定期刊)
---------------------------------------------------------
発行元 チームS・シェイダさん救援グループ
編集担当 チームS電子オフィス shayda@da3.so-net.ne.jp
---------------------------------------------------------
<<<今号の目次>>>
 <シェイダさん在留権裁判 第四回口頭弁論特集>
(1)裁判を傍聴して1:裁判を通して見えてきた自分の偏見
(2)法務省への反論1:まぎれもなく、シェイダさんは難民だ!
(3)法務省への反論2:法務省の「難民条約」解釈は異端だ!
(4)裁判を傍聴して2:ヒトの存在感(すこたん企画・高橋タイガさん)
(5)今後の裁判の流れ・第5回口頭弁論のお知らせ
=========================================================
●バックナンバーが必要な方は電子オフィスまでお知らせ下さい。
●講読申込・講読中止などの手続は電子オフィスまでお知らせ下さい。

**************************************************
      シェイダさん在留権裁判 第四回口頭弁論特集
**************************************************
 去る5月8日、「シェイダさん在留権裁判」第四回口頭弁論が行われました。
 シェイダさんの裁判は、現在、原告のシェイダさん側と被告の法務大臣(法務省)側がお互いの主張を書面で出し合うという段階です。
 今回の口頭弁論は、これまでに開かれた口頭弁論の中でも非常に重要なものとなりました。前回の弁論で法務省側が提出してきた「準備書面(1)」に対して、シェイダさん側が大部の反論書面「準備書面(2)」を提出し、裁判の論点がほとんどでそろったからです。
 今号の「ニュースアップデイト」では、「準備書面(2)」の内容をご紹介します。そして、今回の裁判を傍聴してくれた二人の方から感想を寄せてもらいました。その感想もあわせて紹介したいと思います。

**************************************************
(1)裁判を傍聴して1:裁判を通して見えてきた自分の偏見
                    創価大学一年 小栗栄行さん
**************************************************

 5月8日、東京地裁で開かれた第四回口頭弁論を傍聴してきました。雨が降っていたのにも関わらず、たくさんの人が傍聴をしていました。裁判自体は書面の提出と日程の調整がほとんどで、内容を理解する事はほとんどできず、少し退屈でした。
 シェイダさんの裁判を通して考えた事、それは、自分の中の差別意識の問題です。
 ゲイとしての活動を行ってきたシェイダさんですから、イランに強制送還される事によって殺される危険は決して小さいものではないはずです。それにも関わらず、法務省は多くの同性愛者たちが殺されてきた事実さえ否定し、シェイダさんの身を危険にさらしています。恐らく、オーバーステイのイラン人に対する様々な偏見と固定観念凝り固まり、生命の危険さえ無視してしまっているのでしょう。
 そのような法務省の対応に憤りを感じながら、退屈な裁判を見ていました。しかし、その中で、誰でもなく僕自身が「イラン人」という言葉を聞いた時、同時に「偽造テレカ」「麻薬」という言葉を連想している自分に気付かされました。差別というのは、正面を切って「お前はおかしい!」といって迫害することだけではなく、一人一人が無意識に持っている偏見による圧迫から生まれるはずです。偏見をなくすには、まずその偏見に意識的になる事から始めなければなりません。その意味でもシェイダさんの件は、僕自身にとても大切な事を気付かせてくれたと思います。同性愛者が自分らしく生きる事のできるようにするためにも、まず自分自身が自分の中にある様々な偏見を自覚し、その解消のために努力して行く事だけは忘れないで行きたいと思います。
 同性愛者である僕にとって、イラン・ソドミー法の存在は、あまりにも衝撃的でした。日本でさえ、同性愛者に対する重圧のため、僕は18年間自分がゲイである事を明かす事はできませんでした。下手をしたら殺される場所で、自分は同性愛者である事を明かせるか?自分らしく生きていこうと思えるか?それを考えた時、シェイダさんの行動から、大きな勇気を与えられます。
 シェイダさんの命が守られ、一刻も早く釈放されるように祈りたいと思います。

**************************************************
(2)法務省への反論1:まぎれもなく、シェイダさんは難民だ!
**************************************************

 法務省は前回の法廷で、「イランでは同性愛は事実上容認されているので、シェイダさんは帰国しても迫害を受ける恐れはなく、難民に該当しない」、という立場から、シェイダさん側に反論する「準備書面(1)」を提出してきました。これは全面的に、法務省側が提出している唯一の具体的な証拠である、カナダのオタワ移民難民意員会調査部が作成した資料(乙17号証)に基づいたものです。
 シェイダさん側は、法務省側「準備書面(1)」と「乙17号証」を綿密に検討した上で、これを徹底的に論破する「準備書面(2)」を作成、今回の法廷で提出しました。法務省側の主張と、シェイダさん側の主張を、以下、論争の形で示していきたいと思います。

<<イランのソドミー容疑による処刑の証拠には「客観的根拠」がない?>>

●法務省:「イランでは同性愛者が処刑されている」という君らの主張には、客観的根拠がないじゃないか。
◆シェイダ:なぜそういえるんだ。
●法務省:我々の出した乙17号証は、カナダのオタワ移民難民委員会調査部が作ったものだが、そこには、アムネスティ・インターナショナルのスウェーデンの代表の発言や出版物が引用されている。そこには、A「イランでの同性愛者の処刑は少なく、同性愛を唯一の理由としたものについては誰も知らない」、B「イランの同性愛者の処刑は確認が難しく、せいぜいその実行を推測するにとどまる」と書いてあるぞ。アムネスティは人権擁護団体だろう。それでも、こう書かざるを得ないんだ。
◆シェイダ:自分の出した証拠だけじゃなくて、我々の出した証拠をきちんと見てほしいね。すでに我々が出している処刑ケースのうち、1990年1月に行われた処刑は同性愛だけを理由とするものだし、80年代には同性愛を唯一の理由とする処刑が山ほど行われていることが、ロイター通信の報道によって明らかになっている。重要なのは、ソドミー罪による処刑が実際に行われているということであって、他の罪がついているかどうかは二次的な問題に過ぎないよ。あと、君は乙17号証をきちんと読んだのかね?君が引用したBの方の文章は、アムネスティの出版物の直接の引用ではなくて、乙17号証の編集者がその内容を強引にまとめたものにすぎないじゃないか。

<<同性間性行為による処刑が一人だけに対して行われているのはおかしい?>>

●法務省:まあ、それはおいておこう。ところで、君らが出してきた証拠は、どれも一人で処刑されているが、同性間性行為は複数でやるんだろう。おかしいじゃないか。
◆シェイダ:やはり、君は我々が出した証拠にきちんと目を通していないようだね。さっきも言った1990年1月の処刑例は複数が処刑されているし、この処刑の時には司法長官が「同性愛は両者とも処罰する」という声明を出している。80年代にも、カップルが処刑されたケースがある。だいいち、イランでのソドミーによる処刑は密告によるものがほとんどで、治安部隊は後で一人ずつ捕まえて行くんだよ。イランのソドミー法にも「被告人が証人による証言の前に告悔を行えば無罪」と書いてあるし、90年1月の処刑への国連の問い合わせに対してイラン政府は「同性愛者が同性愛に固執する場合、死刑にする」と答えている。これをみれば、ソドミー罪で一人だけ処刑されることも十分ありうるじゃないか。

<<ソドミー罪で一人で処刑されるのは、実際には「強姦」の事例?>>

●法務省:でも、乙17号証には、「ソドミー罪で一人で処刑されるのは、これらの事例が『強姦』であることを意味するものだ」という社会学者の証言が書いてあるぞ。
◆シェイダ:よく読んでくれ。社会学者は、95年11月に行われた処刑ケースについて言ってるんであって、そういうケース全部について一般的に論評したわけじゃない。この社会学者の証言もあやしいものだ。95年11月の処刑ケースについての各種報道を読んでも、「強姦」をにおわせるところは何一つない。そもそも、反ソドミー法というのは、健康な精神状態にある人々が、自由意思によって同性間性行為や、生殖を目的としない性行為を行うことを罰するものであって、ソドミーはソドミー、強姦は強姦、まったく別の罪なんだよ。この社会学者は、どうやら反ソドミー法について基本的な知識もないらしいな。

<<在テヘラン・スウェーデン大使館の報告書は正当なもの?>>

●法務省:じゃあ、乙17号証にある在テヘラン・スウェーデン大使館の報告書やスウェーデン外国人不服委員会のイラン担当室長の手紙については、どうするんだ。「イランのソドミー条項は四名の目撃者による証言が必要で、立証要件がきびしいのでほとんど運用されていない」とか「難民申請をしているイラン人を本国に送還しても、何ら嫌がらせを受けずに本国に到着できる」と書いてあるぞ。
◆シェイダ:この報告書がどんなものか知っているのかね?スウェーデン政府は批判を恐れ、報告書の存在すら隠していたんだよ。スウェーデンの運動団体がその存在を突き止め、公開を再三にわたって要求したから、スウェーデン政府はしぶしぶそれを公開したんだよ。そもそも、イランではソドミー罪による処刑例がたくさんあるのに、この報告書には「それらは実際には同性愛者への処刑ではない」という反論を全然していないじゃないか。
 イラン担当室長の手紙については、その後日談を調べてごらん。スウェーデン政府は98年、99年に、カミングアウトしたイラン人ゲイの強制送還をとりやめ、かわりに永住権を交付している。スウェーデン政府は、カミングアウトしたイラン人がイラン本国で迫害を受ける可能性を認めているんだよ。

<<「同性愛者同士が出会う公園」を治安部隊が放置している?>>

●法務省:じゃあ、乙17号証にある「テヘラン中心部の公園」についてはどうだ。この公園は、男性を求める男性が会う場所として使われているそうじゃないか。社会学者の証言によると、治安部隊もそのことを知っているのに、放置しているというぞ。
◆シェイダ:我々はテヘランの地図やガイドブックでこの公園について調べたが、300メートル四方ぐらいしかない小さな公園で、その中には市立劇場があって毎日イベントが行われているんだ。そんなところで、当局の弾圧を受けるような同性間性行為が頻繁に行われているとは思えないね。実際、乙17号証の社会学者の証言を読んでみても、結局「会う場所」だとしか書いてないじゃないか。単に「会う」だけなら違法行為ではないし、治安部隊としても弾圧のしようがないね。君らの言うことには、客観性がないよ。

<<「カミングアウトした同性愛者」の迫害の可能性を否定できない乙17号証>>

◆シェイダ:君らは口を開けば乙17号証というが、そもそも、乙17号証なんてそんなに信用できるのかね。実際探せば、イランでのソドミー罪による処刑についてのデータはたくさん転がっているのに、この文書には何も書いてない。この文書は、「イランでは同性愛は容認されている」という極めて特殊な立場から、いいかげんな社会学者のインタビューを切り貼りして、編集者が適当にコメントをつけただけの文書にすぎない。この文書で重要なのは、ただの一点、「それでも、カミングアウトした同性愛者がイランで死刑に処される可能性を否定できなかった」ということだけだよ。シェイダさんは、日本でカミングアウトして、今後もイラン人同性愛者の人権のために働くと言っている。乙17号証も、そんな彼が弾圧される可能性を否定していない。君らには残念かもしれないが、乙17号証によって、シェイダさんが難民でないということを証明することは無理なんだよ。

**************************************************
(3)法務省への反論2:法務省の「難民条約」解釈は異端だ!
**************************************************

 法務省が前回の法廷で提出した「準備書面(1)」のもうひとつの大きな論点は、「イラン当局は、同性愛を理由としてシェイダさんに逮捕状の発付、訴追、有罪判決を出しているわけではないので、シェイダさんが感じている迫害の恐怖は『十分に理由のある』ものとは言えない」というものです。
 法務省がこのような主張を行うのは、以前、別の難民事件の裁判で、裁判所が法務省の意見を全面的に取り入れて「迫害を受けるおそれがあるという『十分に理由のある恐怖を有する者』と認められるためには、『難民申請者の行為が犯罪行為に該当する』として、現に訴追されているか、または逮捕状が発付されているなどの事情により将来訴追されるおそれがあるというような事情が存在することが必要である。」という判決を出したからです。

<<<被告の主張への反論>>>

 しかし、このような被告の主張には次のようなまちがいがあります。今回の準備書面では、そのような被告の主張のまちがいをするどく追求しました。

<第一のまちがい:シェイダさんのおかれた事情は、前の裁判と全然ちがう>
 まず、シェイダさんの事件の場合には、上記の判決とちがい、「逮捕・訴追されているかどうか」を判断基準とすることはできないということです。なぜなら、(1)であげた「逮捕・訴追されているかどうか」を判断基準とするという判決をよく読んでみると、「どのような場合に逮捕・訴追の有無が判断基準となるのか」について条件をつけているのです。つまり「いついかなる場合も『逮捕・訴追されているかどうか』が基準になる」わけではなく、それが基準にならない場合もある、というわけです。そして、シェイダさんの事件は、「逮捕・訴追の有無」を判断基準とする条件にあてはまらないのです。
 被告は、逮捕・訴追の有無を判断基準とするための条件がどのようなものか、その条件がシェイダさんの事件でも満たされているかということを全く検討しないで、さも、どんな場合でも逮捕・訴追の有無を判断基準とすることができるかのような主張を行っています。このような被告の主張が、逮捕・訴追の有無を判断基準とするとした判決をまちがって解釈していることは明白です。

<第二のまちがい:難民条約をまちがって解釈している>
 次に、被告は「逮捕・訴追の有無」を、「迫害を受けるおそれがある」という恐怖が「十分に理由のある」ものかどうかの一般的な判断基準として使っていますが、これは、難民条約1条の「迫害」ならびに「迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有する」という要件をどう解釈するかについての、国際的な流れと逆行しているということです。被告は、これらの要件についてきわめて厳格な解釈をしているのですが、国際的には、これらの要件を緩和して、ゆるやかに解釈するというのが主流であり、厳格な解釈は正当性を持たないとされています。
 このような国際的な流れに逆行する被告の主張がおかしいのは明らかです。

<<<原告の主張>>>

 原告は、被告の主張への反論のほか、難民条約についての国際的な動向をもふまえて、国際的に正しいとされている難民条約の解釈とはどのようなものかについても、今回、くわしく主張を行いました。
 国際的な動向をふまえて難民条約の正しい解釈とは何かについてくわしく主張したのは、「難民に該当するかどうか」は「難民条約」という国際的な合意にもとづいて判断される事項であるということの他、日本では、難民条約についての研究があまり積み重ねられておらず、難民条約の解釈が、じつにでたらめに行われているという現状を打開するためでもあります。
 この点については、最近、日本における難民条約の運用状況に危機感を持った学者・弁護士の間で活発に議論がなされ、その成果が様々な形でまとめられつつあります。今回の、シェイダさんの準備書面も、このような議論の成果に多くを負っています。

**************************************************
(4)裁判を傍聴して2:ヒトの存在感
                すこたん企画 高橋タイガさん
**************************************************

 先日、友人と食事をしたあと終電を気にしながら歩いていると、池袋駅西口で奇妙な光景にでくわした。若い警察官が1人で自転車に乗っている青年に“職質”をしている。「自転車、カギかかってますか〜」というあれだ。職務質問は通常2人1組で行うことになっている。職務質問中、相手から暴行を受けるなど、危険を伴う可能性があるからだ。
 しかし、目の前の警官は1人で職質をしている。「不思議だなぁー」と思いながら
眺めていると、2人の間で言い争いがはじまった。
「なんでオレが名前言わなきゃいけないんだよ!」
 と青年が言う。
 警察官は高圧的な態度で自転車の前に立ちはだかりボソボソ言っている。
 『警察官職務執行法(=警職法)』第2条は「異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、もしくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者………を停止させて質問することができる」としている。つまり、この場合、犯罪を犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由がなければ、職務質問は出来ないのだ。
 これだけでも、その職質を疑う余地はあるのだが、次の瞬間、その若い警官は青年の手をねじあげ、自転車ごと30メートルほど離れた池袋西口交番まで引きずっていってしまったのだ。
 警職法2条3項によれば、質問を受けた者が、「その意に反して警察署、派出所若しくは駐在所に連行され、若しくは答弁を強要されることはない」。つまり、何らかの(この場合公務執行妨害が多いだろうが)現行犯でもない限り、腕をねじあげられて連行されることはないのだ。もちろん、穏やかに「署でお話を」と言われても当然断わることが出来る。
 「おかしい」と直感したボクらは2人の後を追い掛けた。 多くの人が見ていたらしく、交番の前はすでに人垣ができていた。
 数人のサラリーマンが「今のおかしかったぞ」と声を荒げて抗議している。
 一部始終を見ていたボクもこの行為が「警職法」違反である、と抗議した。
 対応した巡査部長(階級章でわかる)は青年に「帰っていい」と言い、サラリーマンとボクらの抗議に「あなたたちは関係ない」と言い放った。こういった場合、通行人が抗議するというのは滅多にないことだろう。しかし、ボクの周りには20人ほどの人垣ができ、多くの人が口々に抗議をした。それほど、この若い警官のとった行動はおかしかったのだ。
 なんとかうやむやに済ませようとする巡査部長と腹の虫が収まらない自転車青年とボクらの対立は続いた。青年は「とにかく謝罪してほしい」と言う。
 青年の腕が痛いという訴えにヒントを得たボクが「被害届を出したら?ボクは一部始終を見ていたから証言するよ。あと、民事で国家賠償も請求したら?」と助言した。裁判となれば時間とお金と労力がかかる。自転車青年がそんなことをするとは思えない。謝罪してほしいという青年の願いをかなえるため、交換条件に出来ないかと考えたのだ。
 「被害届を提出する」と言うと巡査部長の顔色が変わった。所轄の警察署(池袋署)に連絡をとり、しばらくして上司である警部(おそらく地域課課長)が現れ、さきほどの警官と共に謝罪した。青年は完全には納得しない様子だったが、ボクらに「ありがとう」と言って立ち去った。
 実質的に「市民の勝利」だったと思う。「おかしい」と思うことにねばり強く、そして毅然と抗議をしたことで、所轄の課長クラスを呼び謝罪させた。「ルパン三世」ならば銭形警部、西部警察なら渡哲也扮する大門課長に謝罪させたことになる。
 おそらく自転車青年1人だったら、うやむやにされていただろう。重要だったのは、20人以上の通行人が立ち止まり声をあげたことだ。長時間の交渉にもかかわらず、弁護士志望の大学生をはじめ、多くの通行人がその場に残り自転車青年を応援した。積極的に発言しなくても、そこに人がいるという「ヒトの存在感」が警察という強大な権力を動かしたのだ。
 シェイダさん収容から1年が経った。たとえ積極的に声をあげなくても、裁判の傍聴へ行く、牛久へ面会に行く、集会に参加する、といった「ヒトの存在感」は大きな力になる。裁判所でも傍聴人のいないガランとした法廷と傍聴席が満席の熱気ある法廷では裁判官の態度が違う。「見ているぞ。おかしなことするなよ」というプレッシャーが伝わるのだろう。
 5月20日にはイベントが、そして次回法廷は7月3日に開かれる。“ヒト1人がここにいる”という誰しもが持っている力、「ヒトの存在感」をフルに活用しよう。
(たかはし たいが)
すこたん企画(http://www.sukotan.com)スタッフ
個人ページ: 「Can we hold hands??」http://www.ne.jp/asahi/taiga/14/

**************************************************
(5)次回裁判の流れ・次回口頭弁論のお知らせ
**************************************************

 「シェイダさん在留権裁判」も提訴から10ヶ月、論点も出そろってきました。
 書面のやりとりの段階は、あと1〜2回の口頭弁論で終わり、その後は「証人尋問」が行われることになります。「証人尋問」とは、原告や、イランの同性愛者の人権状況などにくわしい人などが証人として出廷し、原告側・被告側弁護士や裁判官が質問をする、という場であり、書類提出と日程調整だけの現在の法廷よりも中味はずっと面白いことは間違いありません。「証人尋問」が終わったのちは、1〜2回の口頭弁論を経て「判決」となります。判決までには、あと1年程度はかかると思われます。長丁場ですが、ぜひともご支援頂ければ幸いです。
 次回口頭弁論では、法務省側の反論書面の提出、シェイダさん側の追加書面の提出が予定されています。日時は以下の通りです。
●○●シェイダさん在留権裁判 第5回口頭弁論●○●
・場所:東京地方裁判所 第606号法廷(営団地下鉄霞ヶ関駅下車)
・日時:2001年7月3日 午前11時〜(集合10時30分。11時30分には終了)
※終了後、報告集会を予定(会場:弁護士会館会議室=予定)
***第19号は近日中発行の予定です***


=========================================================
シェイダさんを救え!ニュース・アップデイト
Save Mr. Shayda! The News Update
第19号 2001年6月12日発行(不定期刊)
---------------------------------------------------------
発行元 チームS・シェイダさん救援グループ
編集担当 チームS電子オフィス shayda@da3.so-net.ne.jp
---------------------------------------------------------
<今号の目次>
(1)イベント「シェイダさんの1年、私たちの1年」やりました
    〜参加型イベントで共感を開く〜
(2)シェイダさん在留権裁判 第5回口頭弁論にご参加を!
    〜次回は7月3日(火)午前11時から東京地方裁判所です〜
(3)シェイダさんニュース速報
    〜ハータミー再選、ビルマ人難民訴訟など〜
=========================================================
●バックナンバーが必要な方は電子オフィスまでお知らせ下さい。
●講読申込・講読中止などの手続は電子オフィスまでお知らせ下さい。

**************************************************
(1)イベント「シェイダさんの1年、私たちの1年」やりました
     〜参加型イベントで共感を開く〜
**************************************************

 2000年5月にシェイダさんが入国管理局に収容されてから1年がたちました。このことを記念して、シェイダさんが過ごしてきたこの1年を思い起こし、シェイダさんの難民認定・在留権をかち取るために、「チームS」では5月20日(日)、「シェイダさんの一年、私たちの一年〜シェイダさん救援のために〜」と題するイベントを行いました。
 このイベントで、私たちは一つの挑戦をしました。いわゆる「集会」イメージ、参加者が一方的に話を聞く講演スタイルをやめ、参加者が企画に自ら参加して、シェイダさんの直面している問題を自分の内側から感じとれるようなイベントをめざしたのです。
 当日は、最近シェイダさんの裁判の傍聴に参加してくれた方々を始め、シェイダさんのことを友だちから聞いて初めて知った、という方々も参加してくれました。企画プログラムは、以下のようなものでした。

(1)ウォーミングアップ・クイズ
 〜シェイダさんとはどんな人?イランとは・日本とはどんな国?〜

 ウォーミングアップ・クイズでは、シェイダさんの歩みや、イランという国について「Yes-No」形式でクイズを行い、Yesの人はこっち、Noの人はこっち、という感じで動いてもらいました。ちょっとこなれない問題もありましたが、日本の入管制度などの問題も含めてやっているうちに、「日本」という国の外国人政策の問題点なども見えてきます。

(2)すごろくゲーム「シェイダさんの道」
 〜「難民すごろく」でシェイダさんのたどった道を疑似体験〜
 「難民すごろく」は、兵庫県の高校の先生が開発した「難民」をテーマとする教育ツールです(注1)。この「難民すごろく」を、イランから日本へ、そして日本で逮捕・入管収容……というシェイダさんの歩みにあわせて再構成しました。「なかなかあがれない」……すごろくを囲んで楽しみながらも、シェイダさんはじめ、同じ境遇に置かれた同性愛者難民の苦悩が伝わってきます。

(3)セッション:あなたが「難民」になったら
 最後は、6〜7人のグループに分かれてセッションです。このセッションでは、各グループが、同性愛を法律で禁止している国にある同性愛者の親睦サークルに、警察の弾圧が迫っている……という設定で、どこの国に逃げるか、たどりついたらどうするか、などを話し合ってもらうというものです。最近アフリカのナミビア共和国で起こったゲイ弾圧の事例なども紹介し、臨場感を持ってセッションしました。
 初めての試みでしたが、シェイダさんが直面してきたことを、ちょっぴりではありますが追体験でき、共感もひろがったようです。
※注1:詳しくは『新しい開発教育の進め方2 難民』(開発教育研究会編・古今書院刊、\1800-)をごらん下さい。

●○●「シェイダさんの一年・私たちの一年」企画スタッフから●○●

 5月20日、とっても暑かったので人出を心配しながらの準備。暑いと面倒になって人が来なそう、なんて。
 しかし始まってみると、予想人数より少なかったものの、初めての方が何人か参加してくださったのでとてもうれしかった。
 内容はみんなでシェイダの置かれている状況を知ってもらう、といったものだったのだが、僕らも難民すごろくやらクイズやらディスカッションは初めての試みであったため、かなりドキドキだった。
 結果としては会後の交流会などで、良かったよ、という声が聞けたので、これからも何度かやっていけば、という手応えを感じられた。

<以下は、そんな意見・感想を寄せてくれた私の友人である参加者より。>
> 参加型だったので、何より楽しく遊びながら学べた。
> ディスカッションやすごろくでシェイダさんの立場に少しは実感を伴って触れるこ
>とができ、いかに大変か、と言うのが伝わり易いやり方だと思った。
> 主催者側はよく準備してくださっていたので、私自身もう少し基礎知識を事前に仕
>入れておいた方が、もっと具体的につっこんだ内容の話し合いができたと思うので、
>そのへんは残念。どうせ他人事、知らないからわからないと言うのは簡単だが、少し
>でも「考える」きっかけに成り得れば、それだけで意義がある会だったと思う。
 楽しくイベントをやってシェイダを臨場体験してもらうことも大切だが、原点はシェイダに自由を戻すこと、という気持ちを忘れずにいきたい。
 参加の皆様、ありがとうございました。

************************************************
(2)シェイダさん在留権裁判 第5回口頭弁論にご参加を!
    〜次回は7月3日(火)午前11時から東京地方裁判所です〜
************************************************

 2000年7月3日、臼井日出男法務大臣は、難民申請を行っていたイラン人ゲイ、シェイダさんを難民不認定とし、在留特別許可も与えない決定を行いました。それからちょうど一年。シェイダさんは、アジア東端の弧状列島の中に、しっかりと生き
ぬいています。1年後のこの日、彼の裁判は、第5回口頭弁論を迎えます。

<法務省に王手をかけたシェイダさん側書面>

 法務省はこれまで、(1)イランでは同性愛者は迫害されておらず、シェイダさんは難民とはいえない、(2)難民認定をするためには、本人が(この場合)同性愛を理由に本国で逮捕状を出されたり、訴追、有罪判決を受けている必要があるが、シェイダさんにはそれがない、と主張してきました。
 しかし、シェイダさん側は前回5月8日の第四回口頭弁論で、50ページ以上におよび準備書面を提出、法務省が「イランで同性愛者は迫害されていない」と主張する唯一の根拠となっていた「乙17号証」(カナダ移民・難民委員会調査部作成の資料)に完全に反論。また、難民認定には本人が本国で逮捕・訴追・有罪判決などを受けている必要がある、という法務省の主張についても、国際的な「難民条約」の解釈基準に照らしてまったく誤った、異常な主張であることを立証しました(詳しくは、シェイダさんを救え!ニュースアップデイト第18号をごらん下さい)。
 法務省は、シェイダさん側の提出した分厚い準備書面に、「少し時間を下さい」とコメント。第5回口頭弁論は2ヶ月先の7月3日に設定されました。

<さあ、どうでる法務省>

 今回の法廷の一番の見どころは、シェイダさん側の準備書面に、法務省がどんな反論の書面を準備してくるかということです。入国管理局には十分な人員がいないといわれていますが、それでもいろいろと調べてきびしく反論してくるか、それとも「原告の主張には根拠がない」などときめつけるだけなのか……まだわかりません。この辺は、法廷の後の報告集会(弁護士会館502F号室)でしっかり解説したいと思っています。
 次回以降の裁判の流れについてですが、書面のやりとりはあと1〜2回。シェイダさん側は、ドイツやニュージーランド、米国などでイラン人同性愛者が難民認定された判例を紹介し、シェイダさんが難民認定されて当然であることを訴えます。その次はいよいよ証人尋問です。シェイダさん側はシェイダさん本人の尋問とともに、海外から証人を招請することを検討しています。
 7月3日、午前11時。ぜひとも東京地裁606号法廷にお越し下さい!!
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
■ <シェイダさん在留権裁判 第5回口頭弁論>           ■
■ 日時 2001年7月3日(火)11時〜11時30分           ■
■ 場所 東京地方裁判所 第606号法廷(営団地下鉄霞ヶ関駅下車3分)■
■ <第5回口頭弁論報告集会>                   ■
■ 日時:2001年7月3日(火)11時30分〜13時           ■
■ 場所 弁護士会館5F502F号室(東京地方裁判所裏)       ■
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

**************************************************
(3)シェイダさんニュース速報
**************************************************

<ニュース速報1>イラン大統領選 ハータミー師が大統領に再選
 6月8日に行われたイラン・イスラム共和国大統領選で、改革派のイスラム法学者で現大統領であるホジャトレスラーム・セイエッド・アリー・ムハンマド・ハータミー師が、予想通り80%近い得票率を得て他の9候補に大勝した。
 今回の大統領選は、事前の世論調査でも、テヘランなど大都市部では87%がハータミー師支持、ゴムなど保守色の強い宗教都市でもハータミー師が保守派の他候補を押さえて支持率が一位であったところから、ハータミー師の勝利は確実視されていた。
 ハータミー師を始めとする改革派に対して、裁判所など司法府や革命防衛隊などを握る保守派は、改革派系の新聞を次々に発行停止にしたり、大統領選の候補者の審査において改革派系の多くの候補を不適格処分とするなど、強権措置で対抗してきたが、ハータミー師の高い支持率は、保守派の強権的な体質に対する国民のアレルギー反応と見ることもできる。
 しかし、ホメイニー師が打ち立てたヴェラーヤテ・ファギーフ(イスラム法学者による統治)体制においては、司法府が行政府に対して優位であり、かつ、大統領は行政府の代表者に過ぎない。ハータミー師は大統領選に向けた司法府などによる強権措置や嫌がらせに対してこれまでも抗議してきたが、全くのれんに腕押しであり、国民の支持を受けていない保守派が国家の実権を握るシステムは変わっていない。実際、昨年ドイツのベルリンで行われたイランの民主化に関する国際会議に参加した民主化運動の活動家たちが、帰国後つぎつぎに逮捕されたが、その際「背教」の罪に問われ死刑判決が危惧されている改革派聖職者エシュケヴァリ師が4月30日、テヘランのエーヴィン刑務所から、より条件の悪い地方の刑務所に移されたとの報道が入ってきている。
 最近では、保守派が、欧米に受けがよいハータミー師を大統領におしたて、国内の人権抑圧に対する国際的な批判をかわすのに都合よく活用するという傾向すらでてきている。欧米を拠点とするイラン人難民グループなどは、ハータミー師は保守派の隠れみのにすぎないとの見解を崩していない。
 ハータミー師は高い支持率で再選されたが、失業率20%に達するという経済をいかにたてなおすのか、改革派と保守派に大きく分裂したイランの政治情勢をどのように再統合していくのか、など、難しい問題が山積している。
(※「シェイダさんを救え!ニュースアップデイト」ではこれまで、「ハターミー」と記述していましたが、「ハータミー」が正しいとのことですので訂正します)

<ニュース速報2>ニュージーランド難民地位控訴局のアラン・マッキー氏、ビルマ人難民の裁判で証言台に立つ

 「ニュースアップデイト」第17号でも紹介しましたが、日本で争われているビルマ人の難民認定に関する裁判で、ニュージーランド難民地位控訴局議長であり、「難民法裁判官国際協会」の副議長でもあるアラン・マッキー氏が5月28日と30日の2日間、東京地方裁判所で証言台に立ちました。
 この裁判は、ビルマの少数民族ロヒンギャ人で、民主化運動に参加してきびしい弾圧を受けたZさんが、迫害を逃れて日本に入国したところ、到着段階で退去命令を受け、難民申請したものの不認定処分とされたのを不服として争っている事件、および、「入国後60日以内に難民申請しない者は難民認定しない」としている法務省の施策について争う事件についてのものです。
 5月28日はマッキー氏を招請した原告側による主尋問、30日は入国管理局による反対尋問、および裁判所による補充尋問が行われました。とくに裁判所の補充尋問は30分にも及ぶもので、裁判所側の関心の高さを印象づけましたが、一方で裁判所が国の主張を代弁して質問するなど、勇み足とも思われる場面も見受けられました。
 30日の尋問終了後、東京地方裁判所で報告集会がもたれました。マッキー氏は、80年代には難民受け入れ体制や法体系が整備されていなかったニュージーランドでも、90年代を通じて難民条約に即した難民受け入れ体制ができたことを指摘、日本でもこのような変化をもたらすことは可能であるとの認識を示しました。また、ニュージーランドの難民認定のユニークな点として、イラン人同性愛者を難民として受け入れたり、インドやアラブなどの男性優位社会における女性への迫害などについても難民認定の幅を広げるなど、セクシュアリティの問題に大きな注意を払ってきたことを挙げました。この点は、シェイダさんの裁判にとっても、とても重要なポイントだと思います。
 「チームS・シェイダさん救援グループ」では、今後も、シェイダさんの裁判にも大きな影響を与える可能性のある、これら類似のケースについての裁判に注目し、各弁護団との協力関係を深めていきたいと思っています。
******第20号は近日中に発行の予定です******


=========================================================
シェイダさんを救え!ニュース・アップデイト
Save Mr. Shayda! The News Update
第20号 2001年6月29日発行(不定期刊)
---------------------------------------------------------
発行元 チームS・シェイダさん救援グループ
編集担当 チームS電子オフィス shayda@da3.so-net.ne.jp
---------------------------------------------------------
<今号の目次>
(1)シェイダさん在留権裁判 第5回口頭弁論期日せまる!
  〜7月3日(火)11時 東京地裁で会いましょう〜
(2)シェイダさん仮放免申請 再び不許可に
  〜予想外の決定に抗議の声を上げよう!〜
(3)6月25日・牛久にて〜シェイダさん面会記〜
=========================================================
●バックナンバーが必要な方は電子オフィスまでお知らせ下さい。
●講読申込・講読中止などの手続は電子オフィスまでお知らせ下さい。

************************************************
(1)シェイダさん在留権裁判 第5回口頭弁論期日せまる!
    〜7月3日(火)11時 東京地裁で会いましょう〜
************************************************

 1年前の7月4日、曇り空にときおり日がさす蒸し暑い日だったと記憶しています。私は東京都北区・十条の古びて黒ずんだ東京入国管理局第2庁舎のこみあった待合室でしばしの待ち時間をすごした後、狭い面会室でシェイダさんと会いました。シェイダさんが見せてくれたのは、一枚の通知書でした。その通知書には、シェイダさんさんを難民と認めない決定をしたという事実と、法務大臣の名前が書かれていました。
 一年後。彼は元気で、茨城県牛久市の入国者収容所に日々をすごしています。彼のために開かれた法廷は、すでに5回。すでに3人の法務大臣を相手にしていることになります。彼は収容中のため法廷には出席できませんが、いつも十数名以上の人が、シェイダさんのかわりに法廷に足を運んでいます。

<見どころは法務省の反論>

 欧米諸国などでは、イランにおける同性愛者の状況はどうなのか真摯に調査したうえ、イラン人同性愛者を難民として認めてきました。しかし日本の法務省は、イラン人ゲイの本国における状況をまともに調べようともせず、諸外国の調査で出てきたシェイダさんに不利な部分だけを取り出して、適当に書面を作っています。
 シェイダさん側は、法務省の主張一つ一つについて事実関係を調べ、きっちりと反論を加えた「準備書面2」を提出しました。
 今度は、法務省側がシェイダさん側の「準備書面2」に反論する書面を提出する番です。今度こそ、シェイダさん側にとっても検討のしがいのある書面が提出されることを、シェイダさん側は願っています。

<シェイダさんの出廷の機会を奪った「仮放免不許可」>

 さて、次の記事でくわしく触れますが、シェイダさんを収容している牛久入国者収容所(東日本入国管理センター)は6月20日、シェイダさんが4月に申請していた牛久収容所からの仮放免申請を不許可とする決定を下しました。
 ここで仮放免が許可とされていれば、シェイダさんは晴れて牛久収容所から出所し、自分の法廷に出席して裁判を受けることができたはずです。今回の仮放免不許可決定は、シェイダさんが法廷に出廷できる機会を奪ったのです。
 ということで、残念ながら本人は法廷に出席できませんが、皆様におかれましては、ぜひとも法廷に足を運んでいただき、多数の傍聴のもとで、シェイダさん難民不認定からちょうど一年を迎える第5回口頭弁論をおすごしいただければ幸いです。
 時間は11時(10時30分からスタッフが待機しております)、第606号法廷です。宜しくお願いします。
 
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
■ <シェイダさん在留権裁判 第5回口頭弁論>           ■
■ 日時 2001年7月3日(火)11時〜11時30分           ■
■ 場所 東京地方裁判所 第606号法廷(営団地下鉄霞ヶ関駅下車3分)■
■ <第5回口頭弁論報告集会>                   ■
■ 日時:2001年7月3日(火)11時30分〜13時           ■
■ 場所 弁護士会館5F502F号室(東京地方裁判所裏)       ■
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

************************************************
(2)シェイダさん仮放免申請 再び不許可に
  〜予想外の決定に抗議の声を上げよう!〜
************************************************

 シェイダさんが昨年の5月に東京入国管理局の収容場に収容されてから1年と2か月。近年では、外国人の長期収容者のうち、一年を越えた人については通常、仮放免がなされる慣例ができつつありました。シェイダさんも当然、仮放免されるものと考えられていたのですが……4月27日の仮放免申請に対して、法務省(牛久入国者収容所=東日本入国管理センター)が6月20日に下した答えは「ノー」でした。

<血も涙もない法務省の通知書>
 
 ここで、法務省の不許可通知書の全文をお目にかけましょう。
┌─────────────────────────────┐
│                    平成13年6月20日 │
│           不許可通知書            │
│大橋 毅様                         │
│あなたから申請のあった、下記の者の仮放免許可申請(平成13 │
│年4月27日付)については、申請の理由等を総合的に判断した │
│結果、これを認めるに足りる理由がなく、不許可と決定したの │
│で、通知します。                     │
│                             │
│            記                │
│                             │
│1 氏名・性別 シェイダ(本名略) 男          │
│2 生年月日 (略)                   │
│3 国籍 イラン                     │
│   入国者収容所東日本入国管理センター 所長 酒井 明 │
└─────────────────────────────┘
 国の都合で身体拘束されている人の、収容を解いてくれ、という申請に対して、この返事です。血も涙もない入国管理局の体質を、また、この通知書一枚で人間を強制的に閉じ込めることを可能にしている「入管法」の存在を、この際徹底的にかみしめることにしましょう。

<不許可決定に抗議し、シェイダさんの仮放免を求める嘆願書を集めます>

 チームSでは、この度の仮放免不許可決定に対して、すぐに仮放免を再申請するとともに、不許可決定に抗議し、シェイダさんの仮放免を求める嘆願書を集め、8月中旬に「東日本入国管理センター」と交渉をもって直接、所長にシェイダさんの仮放免を求めることを計画しています。8月中旬までに少なくとも100枚以上の嘆願書を準備したいと思っております。
 この嘆願書は、収容所側の不許可決定に対するもので、これまでの嘆願書とは別のものですから、一度嘆願書をお書きいただいた方も、再度署名の上ご送信いただければ幸いです。ぜひとも宜しくお願いします。 嘆願書に、ぜひともご協力のほどお願い申し上げます。また、お知り合いの方にも、嘆願書を書いてもらうよう、お願いしてください。

<嘆願書の送り方について>

 嘆願書については、以下のフォーマットに日付/氏名など所定事項をご記入の上、コピー&ペーストして「チームS電子オフィス」shayda@da3.so-net.ne.jp 宛送信してください。(日付を忘れないでください!)
----------------------------------
                   2001年 月 日
法務省入国者収容所
東日本入国管理センター所長
酒井 明 殿
   6月20日の仮放免不許可決定に抗議し、
   シェイダさんの仮放免を求める嘆願書
 暑い季節となりましたが、貴所におかれましては適正な入管行政の実施に余念のないものと存じます。
 さて、私は先日、私の知人であるイラン人男性、シェイダさんが4月27日に貴収容所からの仮放免を申請したとところ、6月20日に貴収容所が仮放免を不許可とする決定を下したとの事実を確認いたしました。この決定につきまして、以下に意見を申し述べさせていただきます。

(1)シェイダさんは難民である

 第一に、シェイダさんは同性愛者を死刑に処す刑法をもつイラ
ンから迫害を逃れて来た難民であり、本来、ただちに難民認定もしくは特別在留許可が与えられるべきであって、収容所への強制収容という処遇は適切ではありません。

(2)1年を越える収容は非人道的である

 第二に、シェイダさんは昨年5月に東京入国管理局の収容場に強制収容されてから一年以上を経過しております。一年を越える強制収容は、被収容者の心身を蝕む非人道的なものであり、貴収容所におかれましても、収容一年を越えた被収容者については通常、仮放免を行っているところと認識しております。

(3)シェイダさんに逃亡の恐れはない

 シェイダさんは現在、日本において難民認定と在留権を確保し、同性愛者として合法的かつ平穏に生活することを求めています。このようなシェイダさんが逃亡することは、自らを不利益にさらすことであり、その様な行為を進んですることはとうていありえません。
 上記(1)〜(3)に照らして、貴収容所がこの度行った仮放免の不許可決定はまったく人道に反する上、貴収容所が行っている被収容者の仮放免申請についての通常の扱いにも反するものであり、私は、上記決定について強く抗議を行うとともに、貴収容所がシェイダさんを速やかに仮放免するよう、ここに強く嘆願いたします。
氏名 _____________________
住所 _____________________
メッセージ 
----------------------------------

***************************************
(3)6月25日・牛久にて〜シェイダさん面会記〜
***************************************

 6月25日、蒸し暑い中を4名で、牛久収容所にシェイダさんの面会にいってきました。仮放免が認められなかったとあって、シェイダさんはいささか気落ちした様子。でも、全然元気がなかったわけではなく、いろいろとぼやいているといった感じでした。以下は、中村彩さんからの面会記です。

----------------------------------
シェイダさん面会
 茨城県牛久市。駅からバスで30分弱。進めば進むほどに、緑の色が多くなる。
 バスを降りて徒歩10分。草木の中に「入国者収容所 東日本入国管理センター」はある。
 まわりには他に何もない。うぐいすの鳴き声が、ただただ聞こえる、静かな場所。
 収容所の中は、さらに静かだ。
職員の足音と、面会を待っているのであろう中近東風の衣装を身にまとった男性ふたりの話声が響く。
 面会申込み後、暫くして、我々はシェイダさんに会う。
初めてお会いしたシェイダさんは、ひとりひとりに笑顔をくれる。
しかし、それは、なんとも悲しげな、寂しさの中の笑顔だった。
 「仮放免不許可」
5日前に、この報告がシェイダさんのもとに届いた。理由ははっきりしない。
「外に出られない」
この事実だけがシェイダさんに突き刺さる。
収容されて約一年と二ヶ月。外の歯医者へ行くときにも、手錠をかけられるという。
 「不法滞在」の容疑がかかっているからといって、その理由は「同性愛」。
根本はそこだ。そのような理由で、ヒトがヒトに手錠をかけ、収容する。
 今年5月。日本では、「新人権機関が救済対象とする主な人権侵害」として、
被差別部落・外国人・HIV感染者などへの差別的扱いと並べて、「同性愛」を積極的救済への対象に加えた。
 このような事実があるにも関わらず、シェイダさんに対する日本の対応。
 なんとも悲しい事実であり、情けない現実がここにはある。
 いったい何のための法律なのか。理解を示したふりをして、今回のこの「仮放免不許可」の連絡。
 「同性愛」を死刑にするイランという国。
 「同性愛」に認知を示したはずであったにもかかわらず、「難民」として認めない日本。
 矛盾ばかりが目に付いて仕方がない。
 
 シェイダさんに、「がんばってください!!」としか言えなかった私だが、
「ありがとう」
 と言う、彼の声が忘れられない。
 「何もすることないんだよ・・・」
 と言う、シェイダさんの目の下には、
 透明な壁で遮られたこちら側からもはっきりとわかるくらいに黒い、大きな「クマ」がみえる。
 「ここまで来るのに、遠いんでしょ?お金かかるんでしょ?」
 私たちの心配までしてくれる彼の手に、何故、錠がかけられなければならないのか。
 がっくりと肩を落としたシェイダさん。一刻も早く、心からの笑顔にふれたい。
 私たちができることは沢山あるはず。実際私も、
友人の小栗くん(前回ここで感想を寄せていた小栗栄行君)からシェイダさんの話を聞き、
 収容所に同行。裁判にも傍聴に行く今がある。そして、ホームページからシェイダさんの詳しい情報を得る。(チームS/すこたん企画)
 今度は私自身が、友人たちにこの事実を伝える。
 こうやって、ひとりひとりの思い、行動が「シェイダさん」に向かっていく。
 私たちも、動かなければならないのだ。
 今回の、裁判。法務省はどうくるか。見届けましょう!!
----------------------------------

 シェイダさんの収容されている牛久入国者収容所(東日本入国管理センター)は茨城県牛久市のはずれにあります。東京から行くには、JR上野駅か日暮里駅から常磐線で約55分、牛久駅で下車、東口から出ている「牛久浄苑(牛久大仏)循環」の関東鉄道バスに乗って約30分、「茨城農芸学院前」で下車します。帰りは、バス時刻を勘案しながら(収容所にバス時刻表があります)、「農芸学院前」からもどるか、もう少し歩いて国道に出て「公民館前」から乗車するかして戻ります。
 以前、このバス路線を運行していた「茨城観光」が倒産し、バス路線は「関東鉄道」に引き継がれましたが、赤字路線のため合理化され、バスの運行本数が半減しました。バスの時間は以下のとおりですので、公共交通機関を利用される方は事前に計画を立ててご利用ください。
<牛久駅発牛久浄苑行き>8:35、10:15、11:40、14:25、15:55
<公民館前発牛久駅行き>7:42、11:42、14:42、19:02
******第21号は近日中発行の予定です******



目次に戻る