シェイダさんを救え!ニュースアップデイト No.21〜No.30 |
2001年7月21日〜2001年12月16日
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シェイダさんを救え!ニュース・アップデイト Save Mr. Shayda! The News Update 第21号 2001年7月11日発行(不定期刊) --------------------------------------------------------- 発行元 チームS・シェイダさん救援グループ 編集担当 チームS電子オフィス shayda@da3.so-net.ne.jp --------------------------------------------------------- <今号の目次> (1)サンフランシスコ訪問記 〜シェイダさんサポートの輪を広げて〜 (2)論点はでそろいつつある 〜シェイダさん裁判「第5回口頭弁論」おわる〜 (3)難民認定手続は「われわれ式」で? 〜あきれはてた法務省の主張「準備書面(2)」〜 ========================================================= ●バックナンバーが必要な方は電子オフィスまでお知らせ下さい。 ●講読申込・講読中止などの手続は電子オフィスまでお知らせ下さい。 ************************************************ (1)サンフランシスコ訪問記 〜シェイダさんサポートの輪を広げて〜 ************************************************ 1.国際的な支援の輪 みなさん、シェイダさんの支援活動は海外からも寄せられているのをご存じでしょうか。シェイダさん自身が会員であるイラン人レズビアン・ゲイのための団体ホーマンや、アムネスティーインターナショナルからも、多大な支援をいただいていますが、国際レズビアン・ゲイ人権委員会(以下、「IGLHRC」といいます。)からは、シェイダさんの在留権裁判の証拠資料の提供を中心に積極的な支援をいただいています。 私、沢崎は、5月下旬から一ヶ月間、語学研修として、IGLHRCの本部のあるサンフランシスコに行って来たのですが、その際に、日頃からお世話になっているIGLHRCの本部に表敬訪問してきました。 2.IGLHRCアサイラム・プログラムの活動 IGLHRCは、レズビアン・ゲイに関する様々な活動を行っている国際的な組織ですが、その中に、「アサイラム・プログラム」(アサイラム=「亡命」)といって、シェイダさんのようなゲイ・レズビアンの難民の支援を中心的に行っている部門があります。 悲しいことではありますが、世界的に見て、レズビアン・ゲイに対し迫害を加える国はまだまだ沢山あるため、そのような国から逃れて米国に亡命してくるレズビアン・ゲイの数は多く、しかもレズビアン・ゲイの亡命者は、自分の性的指向について、受け入れ国の政府担当者に告げるのが難しいという特有の事情があるため、IGLHRCのアサイラム・プログラムのように組織的にレズビアン・ゲイの亡命者を支援していく体制が不可欠なのです。 IGLHRCのアサイラム・プログラムは、長年、レズビアン・ゲイの亡命者を組織的に支援してきた実績があるため、各国のレズビアン・ゲイの亡命受け入れ状況、行政・裁判所の決定や各国のレズビアン・ゲイに対する迫害の情報といった膨大な情報を資料として持っているほか、世界のレズビアン・ゲイの亡命申請に携わった弁護士などとのネットワークを持っています。 私たちは、IGLHRCのアサイラム・プログラムの持っているイラン人のレズビアン・ゲイに関する情報(イラン・パケット Iran Packet と呼ばれています)から、資料を提供してもらっています。 ところで、IGLHRCのアサイラム・プログラムはこのように世界各国の膨大な情報を持っているのですが、日本におけるレズビアン・ゲイの難民に関する情報は、全く持っていませんでした。これは、日本政府がこれまで、全くレズビアン・ゲイ難民の問題を認識してこれに取り組んでこなかったことに原因があります。そういう意味で、シェイダさんの在留権裁判は、日本初のゲイ難民の事例として、IGLHRCのアサイラム・プログラムも大いに注目しているのです。 3.ダスティー・アラウーホさん 私が、IGLHRCの事務所を訪ねてお会いしたのは、アサイラム・プログラムのコーディーネーターを努めていらっしゃるダスティー・アラウーホさんです。 ダスティーさんとお会いしたのは、これが初めてだったのですが、「チームS」の方から、私の訪問についてダスティーさんに話をとおしてあったので、お忙しいのにも関わらず、時間を割いてくださった上、私の訪問を大変歓迎してくださいました。 ダスティーさんは、日に焼けた柔和な顔に、口ひげのにあうナイスミドルという感じの方です。ダスティーさんはパートナーの方と、お子さんを2人、養子として育てられています(サンフランシスコでは、同性のカップルが子供を養子として育てることができるのです)。私はあわせて3回、ダスティーさんを訪問したのですが、精力的にコーディネーターとしての仕事をこなされる一方で、お子さんの写真と、お子さんの世話の話になると途端に顔がほころんばせるダスティーさんに、自分の母親の顔を見たという感じを受けました。 もちろん、ダスティーさんとはシェイダさんの件についてもいろいろ話をしました。今、シェイダさんの裁判がどこまで行っているのか、どのような結論がでそうか、IGLHRCがどのような形でシェイダさんに協力できるかというようなことです。その中で、ここにご報告しておくべきことは、ダスティーさんが、もし日本の裁判所で証人として証言台にたつことが必要であれば、協力したいと申し出てくださったことです。ダスティーさんが実際にシェイダさんの裁判で証人として証言台にたつことになるかどうかは、裁判所との協議によって決めなければならない事項なので、今のところ、実現するかどうか分からないのですが、このような申し出を受けることができたことは大変喜ばしいことです。 4.AL-FATIHA(アル・ファーティハ)の難民ワークショップ ダスティーさんのご協力により、IGLHRCアサイラム・プログラムがAl-Fatiha(アル・ファーティハ:原語はイスラム教徒が祈りの際に唱える章句のこと)というムスリム(イスラム教徒)のレズビアン・ゲイの団体(フェイゼルさんという方が呼びかけ人となって設立されました)と共催することになっていた難民ワークショップで、シェイダさんのことを報告する機会を私に与えてくださったことについても、ここで報告しておかねばならないでしょう。 シェイダさんの事件には、シェイダさんがゲイであるということのほかに、シェイダさんの出身国であるイランがイスラム教の国であるという特徴があります(ちなみに、シェイダさんはムスリムではありません)。イランはイスラム教の中でもシーア派という異端派が多数派をしめており、現在の体制はシーア派の法学によって国を治めようという原理主義の立場をとっています。そのため、イスラム教の地域にある他の国と比べても、特殊な立場にある国なのですが、一般的にイスラム教国でレズビアン・ゲイがどのような状況に置かれているのか、イスラム教徒のレズビアン・ゲイがどのように問題に対処しようとしているのかを知ることは、シェイダさんの事件をより深く理解することにつながりますし、イスラム教徒のレズビアン・ゲイとの連携は、シェイダさんの裁判を進める大いなる力にもなります。 私がシェイダさんの件について報告することができたのは、ほんの10分程度で、私の英語もつたなかったため、どの程度、伝えることができたのかおぼつかない点もありますが、ワークショップが終わった後、カナダに帰ったらこの話を皆に伝えるとか、是非頑張ってくれなどいろいろ励ましの言葉をもらいました。 5.日本に帰ってきて 強力な国際的な援助を得て帰ってきたという気持ちに浸りながら、7月3日のシェイダさんの裁判傍聴へ足を運びました。ところが、そこに待ち受けていたのは、国際的な動向は全く無視するという法務大臣のかたくなな態度でした。私は、あんなに海外でもシェイダさんの事件を気にかけて、支援をしてくださる方々がいるのに、法務大臣がこうかたくなでは、その支援を生かすのもなかなか大変だ、どうしたものかと頭を抱えたくなりました。しかし、ただ、法務大臣のかたくな態度の前に立ちすくんでいては事態は改善しません。一歩一歩、歩いていくしかないな。そのために頭をひねらねばと気を取りなおして、今原稿を書いています。(澤崎 敦一) ************************************************ (2)論点はでそろいつつある 〜シェイダさん裁判「第5回口頭弁論」おわる〜 ************************************************ 7月3日(火)11時より、東京地方裁判所第606号法廷で、シェイダさん在留権裁判第5回口頭弁論が行われました。 2000年7月にシェイダさんの難民認定が却下されてから1周年を迎える今回の法廷ですが、前回のニュース・アップデイト第20号で報じたとおり、シェイダさんは4月に提出した仮放免申請が不許可となり、今回も残念ながら原告であるシェイダさんという「主役」不在の法廷となりました。酷暑にもかかわらず、約20名の方が傍聴に参加してくれました。 今回の法廷では、(1)前回(5月8日)提出のシェイダさん側書面に対する反論を法務省側が提出する、(2)前回の法廷でシェイダさん側が裁判所から「宿題」として出されていた件(強制送還の命令についての細かい法律的な議論です)についてシェイダさん側が書面を提出する、の二つのことが行われました。 今回の法廷は、これまでと違って他の裁判と抱き合わせでなく、シェイダさんの事件のみについて行われました。ですから、これまでの法廷と違い、シェイダさんの事件がいつ始まり、いつ終わったのかもわかりにくい、という状況ではありませんでした。しかし、具体的に何が行われたのかについては、初めて傍聴する方にはわかりにくかったことは事実です。 裁判長からは、「そろそろ論点も出そろいつつありますね。次回の法廷では、人証(原告や証人が法廷で証言する)なども含めて、今後どのようにやっていくか考えましょう」という言葉があり、シェイダさん在留権裁判も、書面のやりとりの段階を終え、証人による証言などの段階にさしかかっていることがわかりました。 法廷は全体で10分程度。次回期日を8月28日(火)10時〜と決め、終了しました。法廷終了後、弁護士会館502号室にて報告集会を開催。参加者の皆さんからは活発な質問が交わされました。 次回法廷では、今後のシェイダさん側・法務省側の立証計画が示され、いよいよ証人尋問の段階にさしかかることになります。ぜひとも傍聴のほどお願い申しあげます。 ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ ■ <シェイダさん在留権裁判 第6回口頭弁論> ■ ■ 日時 2001年8月28日(火)10時〜10時30分 ■ ■ 場所 東京地方裁判所 第606号法廷(営団地下鉄霞ヶ関駅下車3分)■ ■ <第6回口頭弁論報告集会> ■ ■ 日時:2001年8月28日(火)10時30分〜12時 ■ ■ 場所 弁護士会館5Fを予定 ■ ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ************************************************ (3)難民認定手続は「われわれ式」で? 〜あきれはてた法務省の主張「準備書面(2)」〜 ************************************************ 法務省側は第5回口頭弁論において、前回シェイダさん側が提出した準備書面(2)に反論する法務省側準備書面(2)を提出しました。 法務省の立場を全面的・包括的に反論したシェイダさん側準備書面(2)は、全体50ページほどにわたる大部のものでした。今回法務省が提出した準備書面は、これに対して大きく二点について部分的な反論を加えるにとどまっていますが、その中には見過ごすことのできない問題点が含まれています。 (1)法務省と日本の司法は「モラル・ハザード」? 前回の書面でシェイダさん側は、国際人権条約の一つである難民条約については、誰を難民として認定するか、その手続などについて締約国が勝手に解釈するのでなく、国際に統一された解釈基準が用いられるべきであると主張しました。その上で、その解釈基準として用いられるべきものとして、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の「ハンドブック」やUNHCR執行委員会の「結論」、諸外国における判例などがあることを挙げ、日本の難民認定が、これらの文書で示されている難民条約の解釈基準から著しく逸脱する形で行われてはならないことを指摘しました。 今回、法務省側が最も力を入れて反論してきたのはこの点です。法務省側の反論の趣旨は、おおむね次のようなものです。 ア.難民条約は、難民の認定手続について何も定めていないのだから、どのような難民認定手続を定めようと各国の勝手である。 イ.また、これらの文書は条約加盟国に対して法的拘束力をもっているわけでもないので、日本は難民条約の解釈にあたってこれらを参照する必要はない。 ウ.東京高等裁判所は、難民認定に当たってこれらの文書を参照する必要はないという判決を出している。 すなわち法務省の主張とは、「わが国は、UNHCRや諸外国において国際的に積み重ねられてきた難民条約の統一的解釈を無視して、『われわれ式』で難民認定をやればいいのだ、裁判所からもそういうお墨付きをもらっている」というものです。 法律上の正当性うんぬん以前に、その暴論ぶりに目を疑います。この主張からは、国際社会の一員として、国際条約を責任を持って遂行する者がもつべき理念や責任感といったものがまったく感じられないのです。 欧米やオーストラリア・ニュージーランドなどの先進国は、様々な紆余曲折はあれ、難民申請者の増大に応じて適切な制度改革を行い、年間数百〜数千人の難民を受け入れ、難民条約の誠実な遂行につとめることで国際社会への責任を果たしてきました。このような国際社会の現状に照らして、上の法務省の主張は、国際社会に対する国家の責任を恥も外聞もなく放り出す、権力の「モラル・ハザード」としかいいようがありません。このような暴論を、さも当然であるかのように展開する法務省の破廉恥さには、まさに赤面を禁じ得ません。 この点については裁判所も同じです。この判決は、中国の民主化運動の活動家に対して出されたものですが、裁判所はこれによって、日本が難民認定においてUNHCRなどのつくっている国際的基準を無視してよいという法務省の主張にお墨付きを与えたのです。行政に追随する日本の司法の最悪の側面があらわになっています。 (2)イランの同性愛者迫害については「つまみ食い」に終始 一方、シェイダさん側が準備書面(2)の前半で述べた、イランにおける同性愛者迫害の実態については、法務省は今回の書面では、根底的な批判を加えていません。 前回シェイダさん側は、イランでの同性愛者の処刑状況について整理し、83年のゲイ・パートナーと思われる二名の男性が銃殺刑に処された事例、90年に「同性愛に固執する者は処刑する」との政府コメントとともに斬首刑に処された3名のゲイと2名のレズビアンの事例など、豊富な事例を提出して、イラン政府が実際に数多くの同性愛者を処刑しており、カミングアウトした同性愛者であるシェイダさんもその対象にされかねないことを立証しました。 法務省はそれに対して、「イランにおいて同性愛的性行為を理由とした処刑が全く存在しない旨主張しているわけではない」などと譲歩のポーズを取りつつ、二点についてだけ、なんくせを付けています。ひとつは、1992年に同性間性行為を理由の一つとして処刑されたイスラム教スンナ派の指導者アリー・モザファリアン氏のケース。法務省は「これは宗教弾圧であるから、同性愛者の事情とは関係がない」といいます。 たしかに、モザファリアン氏が同性愛者であった可能性は低いと思われますが、モザファリアン氏は拷問によって、おそらく行っていないと思われる同性間性行為を4回にわたって無理矢理自白させられた挙げ句、殺害されたのです。法務省は「イラン刑法のソドミー条項は4名の目撃か4回の告白を要件とし、立証要件が厳しいので運用されていない」と主張していたのですが、シェイダさん側は、イランで同性愛者の処刑について「立証要件の厳格さ」など現実的に問題になっていないということを立証する趣旨をもって、この証拠を提出しているのであって、法務省側の「モザファリアン氏への弾圧は同性愛者の状況と関係ない」という主張は反論になっていません。 もう一点は、イランの警察から迫害を受けてスウェーデンに逃亡したイラン人ゲイのケース。スウェーデン政府は、当初はこの人物の難民認定を拒否しますが、彼が新聞紙上で実名でカミングアウトしたため、カミングアウトした同性愛者がイランで迫害を加えられる危険性は否定できないとして当初の決定を翻意、1999年になって、永住権を与えたのです。 法務省はこれについて、「これは新聞記事によって個別的に判断したということなのであって、同性愛者であるから永住権が与えられたわけではない」などと反論してきました。しかし、スウェーデン政府は実際には、カミングアウトした同性愛者への迫害の危険性を考慮して永住権を与えたということなのであって、法務省の主張は強弁に過ぎません。 このように、イランでの同性愛者弾圧の実態についての法務省の反論はつまみ食いの域を出ず、あまり積極的なものではありません。 (3)無責任な開き直りで逃げ切りをはかる法務省 イランの同性愛者弾圧の現実には目をつむりつつ、「難民認定は『われわれ式』で構わない」という判決に開き直って、裁判所を言いくるめて逃げ切りを図る……今回の書面を見るに、現状の法務省の法廷戦術は、概ねこのように推測されます。 もし、この推測が的中しているとするなら、問題は裁判所ということになります。今回も行政に追随して、法務省の開き直りに「お墨付き」を与えるのか、それとも、日本の難民行政のあり方をただすべく、画期的な判決を下すのか。それは、一つには、裁判官に、こんな判決を出したら世論がだまっていないのではないか、後世の歴史を汚すのではないか、という「背面の恐怖」(中坊公平)を感じさせていけるかどうかにかかっています。 これまでにもまして、裁判傍聴が重要になっています。法廷を凝視する多くの人々の目……裁判官にとって、これ以上に恐いものはありません。多くの皆さんの傍聴参加をお待ちしています。(大塚 重蔵) ******ニュースアップデイト第22号は近日中発行の予定です****** |
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<カナダ> <アメリカ合州国> |
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○日時:10月15日 午後4時30分〜6時 |
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