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       ○エグテダーリ氏:証言台に立つまでの経緯 
          
      大橋(主任弁護士:以下「大」) 革命時はどこに住んでいましたか。また、革命後出国までの間はどこに住んでいましたか。 
        エグテダーリ(以下「エ」) 1974年からテヘラン大学の学生でした。1988年までテヘランに住んでいて、1988年にアメリカに移住しました。 
        大:イランの人権状況の調査に専門的に携わっていますね。その調査の範囲を教えて下さい。 
        エ:はい。イランの人権状況、特に死刑廃止について調査をしています。その中に、婚外性交渉の問題と同性愛の問題も含まれます。これは、罪と罰のバランスが取れていないということが大きな問題です。 
        大その調査は人権NGOの活動として行っているのですか。 
        エ:はい。イラン人権グループという団体に所属して調査をしています。 
        大:その団体は、イラン反体制派の政治的団体ではないのですか。 
        エ:違います。NGOとして、これはセイフと協力関係にはないということですが、人権活動をしています。反体制や政権交代を目的としてはいません。私たちの団体は、イランも批准している世界人権宣言の履行を政府に求めることを目的としています。そのため、ハータミー師やハーメネイ師に、法の一部を変更することを求めて手紙を書くことなどもしています。 
        大:あなた自身は同性愛者ですか。また、イランにおける同性愛や婚外性交渉の問題が研究対象に含まれているのはどうしてですか。 
        エ:私自身は同性愛者ではありません。2つの問題は、死刑廃止のための調査・研究の一環であり、罪と罰の間にあまりにバランスを欠いているということが問題なのです。 
         
      ○人権に関してどんな研究をしてきたか 
          
      大:イラン人権グループ以外に学会や調査団体に属していますか。 
        エ:イランの人権分野に関しては、イラン調査研究センター、ガルフ2000に所属しています。もう一つ自分の専門分野である工学の分野では、ポートランド州立大学で工学を教えています。 
        大:イラン調査研究センターとはどのような組織ですか。 
        エ:イランの地政、経済、社会の研究をする人たちの学会です。「イラン研究分析」という学会誌を年に4回発行しています。 
        大:あなたがイランの人権気状況について調査した結果はどのように利用したり発表したりしていますか。 
        エ:学会誌やジャーナルに発表しています。また、私はラジオ番組(中東の声)のコメンテーターをしているので、そこで話をすることもあります。 
        大:イランの同性愛者の人権状況についての調査結果はどのように利用したり発表したりしていますか。 
        エ:イラン調査研究センターで報告をした時にその内容が紙に書かれていますが、それ以外に紙媒体で発表はされていません。そのかわり、インターネットのホームページで読むことができます。 
        大:イランの人権状況についての調査方法、情報源を教えて下さい。 
        エ:アムネスティ・インターナショナル、ヒューマン・ライツ・ウォッチ、IGLHRC(国際ゲイ/レズビアン人権委員会)アメリカ国防省の国別レポートなどの資料を利用します。 
        大:あなたが使う資料の中で触れられている情報についてはオリジナル(一次情報)をもっていますか。 
        エ:いいえ。アムネスティ・インターナショナル、ヒューマン・ライツ・ウォッチなどの情報も(イランの新聞などの)報道を元にしています。 
        大:イランの人権状況や同性愛者の処罰に関する一般的な情報をイラン人から聞くということはしていますか。 
        エ:はい。私には多くの(イラン人の)友人や同僚がおり、イラン(とアメリカを)行き来していますので、その人たちから情報を得ることができます。 
         
      ○完全に抑圧された集団:イランの「同性愛者」 
          
      大:イランにおける同性愛者の人権状況を調査するということは難しいことなのでしょうか。 
        エ:はい。例えば、女性の人権についてということであれば、資料や会議も豊富にありますし、当事者にインタビューをすることも可能ですし、外国のメディアはそうした放送をすることができます。また、人権活動家もいます。ところが、同性愛者の場合は抑圧が厳しいため、そのことを語れる当事者はいません。イラン人の亡命者から話を聞いても、イランにおける同性愛者の状況についての情報は全くえられません。 
        大:あなたが得た一般的な情報の中で、最近の同性愛者の状況が分かるものがありましたか。 
        エ:イランにおいて同性愛者の(人権擁護)活動が行われているのは全く見たことがないということが分かります。(外国の)ジャーナリストの報道によっても同性愛者のことが外部に見えるようなものもありません。ただ、私は最近、シアトルの移民局に難民申請をしているゲイ男性のケースに接する機会がありました。彼の弁護士から、依頼人の名前を出さないようにと言われているので、名前は申し上げられませんが、事情を説明するとこのようなことです。彼はテヘラン大学の学生で、友人に「自分はゲイのような感情を抱くのだけれども」と話したところ、その友人が大学の宗教組織にそのことを密告?してしまいました。翌日?彼(ゲイ男性)は誘拐され、48時間も暴行を受けた上放置されるという体験をしました。その後、彼はアメリカに亡命をしました。 
        エ:私は、この難民申請のために、イランの同性愛者の人権状況について意見書を提出する予定です。その内容については、申請者の名前を伏せた上でこの裁判所にも証拠として提出することが可能です。申請者が名前を出すことができないのは、まだ、彼が難民としての地位を獲得していないからであり、もし、難民として認められなかった場合にはイランに強制送還され同性愛者として特定されてしまう恐れがあるからです。 
        大:イランにおいて同性愛者を処罰する刑法規定は実際に適用されていますか。エ:エ:はい。この20年以上の間明らかに同性愛行為を行った者に対する死刑が行われています。これはイランの国営通信や新聞報道などからも明らかなことです。 
         
      ○同性愛者への処刑は「公正の概念に反する」 
          
      大:あなたは、同性愛行為を行った者に対する死刑がバランスを欠くと言っていましたが、その意味を説明してください。 
        エ:世界人権宣言のフェア(公正)の概念に反するということです。性行為をしただけで犯罪とされ、死刑に処されるということはフェア(公正)とはいえません。 
        シャリーア法は1400年も前に作られた法体系で市民法の体系とは異なっています。革命前はイランにおいても立法府が市民法(的体系の法)を作っていましたが、革命後は全てシャリーア方が優先され、石打刑のような刑罰もシャリーア法によって定められています。1991年に刑法ができましたが、これはシャリーア法の法典化でもあります。裁判官はどのような刑罰を下すことが適当かということについて、とても大きな自由裁量を行使できます。 
        大:イランのハータミー大統領は改革派と言われていますが、そのことで、同性愛者が処罰される危険性は減少するのでしょうか。 
        エ:いいえ。それには二つの理由があります。一つは、大統領は司法制度に関するなんらの権限を持っていないことによります。むしろ、司法当局が大統領を貶めるために司法制度を利用することがあります。もちろん、大統領は、様々な手段を取りそうした行為に対抗しますが、その方法は中立的な方法が選ばれます。二つ目は、ハータミー師自身がイスラム法学者であり、同性愛が罪であるということを変えることはできません。イスラーム体制が変わらない限り状況は変化しないでしょう。 
        大:それはイランの改革派の主張の中には同性愛者の待遇を改善するということは含まれていないと理解していいですか。 
        エ:そのとおりです。 
         
      ○法務省が提出した証拠は「同性愛についての正確な理解がない」 
          
      大:ここに、イランでは男性同士でキスをしたり手を二握り合ったりする光景が一般的にみられるので同性愛者を識別することができないという報告がありますが、これについてはどう考えますか。 
        エ:まず、この報告は同性愛とペドファイル(小児性愛)を混同しています。また、男性同士でキスをすると言っても、挨拶として頬にキスをしたり握手をするということであって、恋人同士がキスをしたり何時間も手を握り合ったりしているということとは違います。 
        大:イラン当局は同性愛者の摘発に熱心ではないという意見いついてはどうでしょうか。 
        エ:宗教政権は個人生活に影響力をもつことを当然と考えています。ですから、道徳的問題を取り締まるための特殊部隊もあります。2002年?に新しくできた特殊部隊は、道徳規範の徹底のために作られたもので、不道徳な行いを行って警察に逮捕された人は特殊部隊に引き渡されます。 
        大:イランのソドミー法は既に死文化しており、1995年以降ソドミーを理由とした死刑の例はないと言う意見についてはどうでしょうか。 
        エ:1998年や2001年に同性愛行為だけを理由として死刑が行われています。1998年の事例はイランの新聞で報道されロイターが配信しアメリカの国務省のレポートにも引用されています。イギリスのレポートは最新版においても情報を更新していません。なぜこのような違いが起きているのかということについては、次のように考えることもできます。イギリス政府はイランとの関係を悪くしないように配慮をする必要があるのかもしれませんが、アメリカ政府はイランとの関係においてそのようなことを全く配慮する必要がないと考えているのかもしれません。 
         
      ○イラン刑法=裁判官に認められるフリーハンド 
          
      大:イラン刑法第117条には同性愛行為の処罰には、4人の証人の証言が必要という規定がありますが、これによって同性愛行為に対する恣意的な処罰を防ぐという効果はないのでしょうか。 
        エ:ありません。第一の理由は、通常、4人の証人の見ている前でセックスが行われると言うことはありえないからです。これは証人が必要ではないということを示しています。第二の理由は、そのような主張をする人はイラン刑法第120条の規定を忘れているのではないでしょうか。そこには、裁判官は慣習的に正しいとされる別な方法、例えばビデオであったり、裁判官自身が特に信用する人であれば一人の証人の証言でも有罪を宣告することができます。つまり、4人の証言はソドミーに関する唯一の証明方法では内ということです。 
        大:イランの裁判においては、弁護人の保証などのような適正手続きの保障があるのでしょうか。 
        エ:イランの裁判においても弁護人をつけることはできます。しかし、政治犯の弁護をしたために逮捕された弁護士を3人知っています。同性愛の弁護についてはとても難しいと思います。被告人が同性愛行為をしていないと主張しているなら弁護士がつくこともあるでしょうが、被告人が同性愛者の権利の擁護を主張しているような場合は、その弁護をしようという弁護士はでてこないのではないでしょうか。 
        大:あなたの陳述書に述べられているハーメネイ師の公式命令による影響としてどのようなことが予想されますか。 
        エ:この命令は、西洋文化の影響を排しようとするもので、文化的侵略への対抗を命令したものです。 
        大:このような命令は法執行機関の活動に影響力があるのでしょうか。 
        エ:保安部隊や諜報機関をはじめとする組織は、ハーメネイ師の支配下にあります。そこではハーメネイ師の命令は絶対のものなのです。 
        大:先ほどのシアトルでの難民申請事件のように、私人による同性愛者の迫害ということは一般的に起こることなのでしょうか。 
        エ:イランでは、同性愛は不道徳な行為とされています。従って、本人が嫌がらせを受けないためと家族の恥とならないために、性的指向は隠さなければならないものです。イスラム圏には、名誉犯罪という考え方があります。一家の恥になるような行為をした者を家族が殺してしまっても、それは、家族の名誉を守る行為として罰されることがありません。 
        大:それは、イランにおいては私人による同性愛者を処罰する行為が起こりうるということでしょうか。 
        エ:そうです。 
        大:そのような私人による処罰が行われたときに、警察は同性愛者を守ってくれるのでしょうか。 
        エ:犯罪者が罰せられているところに警察が介入して辞めさせるということはありえません。なぜならば、そこでは、シャリーア法が実行されているのですから。 
        大:ある人が同性愛者であることを理由に私人によって殺傷された場合に、その殺傷をした人は処罰されるのでしょうか。 
        エ:シャリーア法においては、宗教的に不道徳な行為を行った人を私人が罰することを認めています。それは「神の召使」としての行為になるからです。また、シャリーア法は人々の日常生活に大きな影響力をもっています。特に、都市を離れ地方に行けば行くほどその傾向は強く、家族によって当局に密告される可能性すらあります。 
         
      ○同性愛者の団体にかかる政治的弾圧の危険性 
          
      大:同性愛者の政治的な活動をしているグループに属しているイラン人が、イラン国内にいた場合、ソドミー法違反だけではなく、反体制派としても処罰される可能性がるでしょうか。 
        エ:私の考えでは、ホーマンというグループは憲法改正を求めており反政府組織として認識されていると思われます。そのような団体に所属していた場合、イランに帰ると同性愛だけではなく反体制派として処罰される可能性があります。 
        大:同性愛者を死刑にする場合、石打刑による死刑が行われる可能性があるでしょうか。 
        エ:はい。更に、イラン政府は二つのかをを使い分けることを理解しておく必要があります。例えば、EUがイランとの貿易の拡大にあたり石打刑の廃止を求めています。それに対してイラン政府は二つの報道を行いました。英語での報道では、石打刑に換わる刑罰を考える余地があると発表しましたが、国内向けの放送では石打刑に変わる刑罰はありえない、という発表をしました。 
        エ:私は、今回の来日にあたり、実際の石打刑がどのようなものであるかを理解してもらうためにビデオを持ってきていますので、それを証拠として提出することができます。 
        大:石打刑のビデオの入手経路を教えて下さい。 
        エ:モントリオールのイラン女性協会が作成したもので、イラン調査研究センターにおいて公開されたものです。 
         
      ○「人権活動家」と「技術者」の両立? 
          
      小澤(被告側代理人:以下「小」)1988年にイランからアメリカに移住したということですか。 
        エ:はい。 
        小:アメリカに移住した理由は何ですか。 
        エ:当時はイラン・イラク戦争の最中でした。私の全妻の母がアメリカの市民権を取り、移民として家族を呼び寄せることになったのです。 
        小:難民としてアメリカに行ったわけではないのですね。 
        エ:合法的な移民として移住しました。 
        小:1988年以降イランに行ったことはありますか。 
        エ:1992年に1回行きました。 
        小:その目的は何ですか。 
        エ:8歳の娘に自分の国を見せることと、自分の母はイランに住んでいますので、彼女たちに会うことも目的でした。 
        小:滞在期間はどのくらいですか。 
        エ:5週間です。 
        小:あなたはポートランド州立大学の客員教授ということですか。 
        エ:はい。 
        小:フェニックス大学でも講義しているのですか。 
        エ:今は、していません。経歴書の提出時にはしていました。 
        小:情報工学とはどのような学問ですか。 
        エ:? 
        小:あなたはイラン人権グループの議長ということですか。 
        エ:イラン人権グループには国際執行部と国内の支部があり、私は、アメリカ支部の議長でした。 
        小:本部はどこにあるのですか。 
        エ:アメリカではオレゴン州に支部がある(本部はない?)。 
        小:執行委員もやっているのですか。 
        エ:国際執行部の指向委員を2期務めました。 
        小:イラン人権グループとイラン人権ワーキング・グループというのは別組織なのですか。 
        エ:地域組織と国際組織という性格付けができます。 
        小:工学のほかにイラン刑法と人権問題の研究をしていると認識していいですか。 
        エ:そうです。(後者は)イラン社会では禁じられている行為であり?公的な立場で研究をすることがそもそも不可能な分野なのです。 
         
      ○どうやって「情報の信頼性」を確認しているか 
          
      小:証人が同性愛者についての研究報告をしたのは甲29号証として提出されているものだけですか。 
        エ:そうです。 
        小:甲93号証(書面による証言)で指摘されている事実の情報源は何ですか。 
        エ:アムネスティー・インターナショナル、ヒューマン・ライツ・ウォッチ、等々の報告書です。 
        小:実地調査はしないということだが、ここで引用されている記事や調査が間違いないということはどのように確認しているのか。 
        エ:国際的機関が集めた情報を集めている。例えば、アムネスティーの調査については、一般に信用性が高いものとして評価されている。 
        小:甲91号証にあるような新聞報道があればそれは正確な報道であると考えていということですか。 
        エ:私は、その記事の個別の内容を問題にするわけではなく、イランの新聞によって報道されるような事件が起こったという一つの数字としてとらえている。つまり、公的機関の影響を免れない新聞が報道をしたという事実としてとらえるということです。 
        小:報道内容について公的機関に確認するということはないのですか。 
        エ:私自身は、同性愛者の権利獲得のためのものとして研究をしているわけではないので、そこまで確認する必要性を感じていない。むしろ、日本政府からイラン大使館に情報の確認をしてみてはどうですか。 
        小:甲70号証のケイハーン・ロンドンの記事は確かな情報ですか。 
        エ:イランの新聞報道によるものと理解しています。 
        小:引用もとの新聞記事を確認しましたか。 
        エ:東京についてからコピーを見ただけなので確認はしていない。 
        小:証拠の信用性を争うものとして乙29号証を提出します。外務省に調査を依頼したところ、甲70号証のもとになった記事は存在しないということが分かりました。 
        小:イギリス移民局レポートは(アメリカ国務省のレポートに比べ?)信用できないということですか。 
        エ:イギリスのレポートとアメリカのレポートに食い違いがあるということについて、私の考えを述べたに過ぎません。 
        小:甲93号証の原文の6)4ではイギリス移民局のレポートの引用もしているが。 
        エ:そのとおりです。 
        小:引用部分されたイギリス移民局5-130、5-132の後の、5-133では今のところ同性愛のみを理由とした処刑事例については確証がないとなっているが、これについてあなたの件はどうですか。 
        エ:なぜ、そのような報告になっているかはイギリス移民局に問い合わせてみたらいかがですか。 
        小:当局は、同性愛行為の摘発のために家宅捜査などもするのですか。 
        エ:当局は、私人の生活全般について介入しようとするので、お酒を飲んでいないか、パーティーなどをしていないかというようなことも摘発しようとしています。そのような中で、パーティーの摘発をされ同性愛者だと分かる場合もあります。 
        小:甲93号証では、同性愛者であることを隠している限りはかつての欧米諸国並には安全である、と書いてあるが、かつての欧米諸国とはどこを指していますか。 
        エ:例えば50年代のアメリカです。同性愛者が公的な場に出てこない限りは身の危険にさらされることはなかったという意味においてであり、イランにおいては同性愛者として公的に生活をするということは考えられません。 
        小:それは、原告がイランに帰ると迫害を受ける恐れがあるということですか。 
        エ:そのとおりです。彼は、法的手続きの場に既についています。 
        小:法的手続きを取ることがなぜ迫害の危険につながるのですか。 
        エ:裁判という正式の手続きの場において彼は同性愛者であることを明らかにしています(これは動かぬ証拠になります)。また、裁判は公開のものであり、また、報道もされているでしょう。イラン大使館も当然このことを把握しているでしょうし、イランイスラーム共和国にとって既に十分過ぎる証拠がそろっているのです。 
        小:オレゴン州ではソドミー行為は違法ですか。 
        エ:私の研究対象は同性愛に関することではないので分からない。 
        小:イラン調査研究センターでのあなたの発表によれば違法だとなっているが。 
        エ:覚えていないが、そう書いてあるとすれば当時はそうだったのだろう。 
         
      ○道徳犯罪への摘発強化は本当か 
          
      小:(イランでは)売春は姦通にあたりますか。 
        エ:あたります。 
        小:(イランでは)飲酒は禁止されていますか。 
        エ:はい。 
        小:先ほどの証言にあった(新しい)特殊部隊はいつ頃できたのですか。 
        エ:(新しい)特殊部隊は、当局が道徳強化のためにつくった部隊で、いつからできたのかは分からない。(しかし、不道徳な行為を取り締まるための機関は革命後ずからずっとあった?。) 
        小:乙28号証の毎日新聞2002年9月8日付の記事によれば、イランでは、売春が蔓延しており、お酒も簡単に手にはいると書いてあるが、法律による規制と現実には大きな隔たりがあるのではないですか。 
        エ:売春ができたりお酒が手に入るということは本当だろう。事実、私もイラン在住中にお酒を手に入れたことがあります。毎日新聞は何か情報をもっているのかもしれませんが、同性愛者についてはそのような報道がされていません。又、このようなことがあるからといって、当局が売春や飲酒を見過ごしているということではありません。それらの罪によって処罰を受けた人たちは沢山います。 
        小:乙17号証(オタワ移民難民局の報告書)が間違っているというのはなぜですか。 
        エ:間違っているというよりは実証のない社会学的見解に過ぎないということであり、私はその見解に同意しないということです。男性同士で挨拶としてキスをするをする人が沢山いたとしても、それは、同性愛者同士がキスをするということとは意味が違いますし、この報告者は、ペドファイル(小児性愛)と同性愛についての混乱がみられるということは既に述べました。 
         
      ○シェイダさんが祖国で迫害される危険性は大きい 
          
      裁判官1(以下「裁1:」):シアトルのケース以外にも、同性愛者であることを理由として、アメリカで難民申請が認められたを知っていますか。 
        エ:はい。資料をもっているので、後で、(原告)代理人を通じて提出します。 
        裁1:その中には、イラン人のケースも含まれていますか。 
        エ:私がもっている資料は、全てイラン人に関するものです。 
        裁1:2001年の支配に関する情報源は何ですか。 
        エ:アサトルーズというイランの新聞報道を下にしたケイハンというロンドン発行の新聞です。 
        裁判官2(以下「裁2」):イスラム法判事になるための資格はどのようなものですか。 
        エ:宗教学校に通い資格を取る場合と、大学のロー・スクールに通い資格を取る場合があります。 
        裁2:イスラム法判事というのは、宗教学校に通って資格を取った人たちのことではないのですか。 
        エ:宗教学校に通って資格を取った人たちは、宗教者であり、大学のロー・スクールに通った人たちはそこで宗教法についての勉強をします。どちらも、シャリーア法の解釈をする判事になれます。 
        裁2:甲第71号証の不法な性的傾向による処罰というのはソドミーのことですか。 
        エ:この言葉は、婚外性交渉、レイプ、同性愛行為などを含んでいます。この事例では、7人の人が処罰された事例であることに注意をする必要があります。 
        裁2:シェイダさんは、イランに帰ると証拠がなくても訴追される可能性がありますか。 
        エ:はい。 
        裁2:訴追される理由は、過去の行為によるのですか、それとも、性的傾向によるのですか。 
        エ:この裁判においても、彼がソドミー行為を行ったと言っているので、それがどの時点の行為であれ、訴追される可能性があります。 
        裁判長:イラン以外のイスラム諸国での同性愛行為の扱いについて教えて下さい。 
        エ:国によって違います。例えば、トルコでは認められていますが、サウジアラビアでは禁止されています。面白いことに、タリバーンが支配していたアフガニスタンでは、カンダハール周辺で、同性愛行為がみられたという報告があります。 
        裁判長:イスラム諸国の中でも、イランの同性愛者に対する処遇は厳しいと言えますか。 
        エ:サウジアラビアを除けばそういえると思います。 
         
      以上 
        
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