お母さんのための
日経新聞入門講座
VOL037-退職給付2 1999/MAY/1 朝刊1面「年金・退職金積立不足 富士通、前倒し償却」
やっぱり(そういう企業が)出たか、というのが感想です。「前倒し償却が明らかになったのは上場企業では初めて」とありますが、これからもそういう企業が出てくるのではないか、と私は思っているのですけれど、どうでしょうか。
前回、新しい退職給付会計の仕組みについて大まかに説明しましたが、今回はこの会計基準の変更にかかわる会計処理のお話です。
「企業は退職給付に関する新会計基準に基づいて、2001年3月期から年金・退職金の積立必要額を公表し、不足分を15年以内に償却する必要がある」のです。
トヨタ自動車がこの退職給付に関する積立額が3千億円不足しているという記事を前回ご紹介しました。この金額が会計処理の変更に伴う影響額ということになります。今回の記事では、富士通は連結ベースで4千億円ほど不足しているとあります。
償却とは、費用として計上するということです。つまり、例えば3千億円足りない企業が15年で償却するという場合、毎年2百億円ずつ費用化されますから、毎年その分だけ利益が少なくなることになります。
会計基準では15年以内とありますから、15年で償却すれば会計基準に従った処理として認められます。しかし、何故、富士通はそれを10年で償却しようと考えたのでしょうか?15年なら1年当たり270億円(4千億円/15年)の費用で済むのに、10年だと1年当たり400億円となります。この130億円(400億円−270億円)は、富士通と言えども、大きな金額です。
記事には「財務内容の健全化を急ぐ」とだけありますが、お母さんは何故だとお考えですか?その目的は何だとお考えですか?
依然、苦しい状況が続く日本経済です。上場企業とか、老舗企業とか、そういう従来の看板だけでは生き残っていけない時代になりました。経営者が何を考え、どのように環境の変化に対応していくのか、過去の負の遺産(退職給付の積立不足額、巨額の借入金、過剰な設備、含み損の生じている資産など)とどのように決別するか、市場は厳しい目で見つめています。
日本経済新聞社 http://www.nikkei.co.jp/