『ジャンポール・ゴルチエの世界: 変身体験 ― あなたを展示する』 _The World Of Jean-Paul Gaultier_ 上野の森美術館, 台東区上野公園1-2, tel.03-3272-8600, http://www.ueno-mori.org/ 2000/9/21-11/19 (月休); 12:00-20:00 (土日祝11:00-20:00) 1970年代末にフランスから出てきたファッション・デザイナー Jean-Paul Gaultier の展覧会が開催されている。Gaultier の服は正直に言って趣味ではないけれど、 革小物や鞄は好きで持っていたものもあったので、行ってきた。 去年くらいから、ファッションに関する展覧会が多く開催されてきているように 思うのだけれど、この展覧会はかなり異色。展示を観ても、Gaultier が今まで デザインしてきた服や、関係する広告のデザインなどはほとんど判らないし、 そういうことをそもそも展示で伝えようとしていない、という点で見事に開き直った 展覧会だった。 確かに、1999年秋冬や2000年春夏のコレクションの服もいくつか展示してあるし、 そのファッションショーの様子のビデオも観ることはできる。それは、あくまで、 会場の雰囲気を作り出す程度のもの。展覧会のカタログには、その手の資料の 図版が載っているが、展示されていない。そういうのは、カタログで読んでもらば よい、とでもいう割り切り方は潔いように思う。実際、Gaulier のデザインは、 服飾の造形の革新、というのとはいささか違う志向性を持っているし、これで 良いのかもしれない。 この展覧会の展示のメインは、"あなたを展示する"ワークショップ。用意された 白いサテンのエプロンドレスに、マスク型ヴィッグ、ハンドバッグ、白手袋、 メガネ、リップシールといったアイテムを身に付けて、サテンドレスに Gaultier デザインの服の画像を投影して、「変身」したものを写真撮影するというもの。 アイテムは蛍光の4色、いくつかの形のバリエーションはあるものの、パターン化 されたものだし。形を模しているのではなく、絵を書いただけ、という感じの テイストが、実に書割っぽい。デジタル写真を用いていたので、人物と服の画像の 合成はコンピュータ上でも可能だろうに、白いサテンドレスにプロジェクタで 投影するというアナログなやり方も、書割感を増してたと思う。その薄っぺらさ、 というか馬鹿馬鹿しさが、面白かったのだが。Gaultier の服や革小物のデザイン センスと関連性はあまり感じられるものでもない。1,500円という入場料に見合って いるかというと、Gaultier ファンでもない人には、ちょっと高く感じるかもしれない。 僕は、それなりに楽しめたけれど、ファッションに対して新たに知るところがあった とかそういうことは無かった。そういうファッション展も悪くないと思うが。 特設のショップでは、展覧会限定品も売られている。限定品の中では、携帯電話の ネックストラップとか、普段のショップでは売られそうもないアイテムだけに、 なかなか良さそうな感じだったが。 2000/10/21 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕