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    島3日目

    砂山の猿

    9・12(金)
     洗濯をした。民宿の裏庭に干した。下着は部屋にこっそり干した。扇風機を当ててブーンと。なんだか、もうずっとここに住んでいるような気がする。
    なにもないのに、何も不自由じゃない生活。本当に必要なものって案外少ない。
    便利と自由はものすごく違うことなんだと思う。ここに来てからお金を全然使ってない(星空観測センターは別にして)。喉が乾いたら、水をゴクゴクと飲むし、朝ごはんは異様にたくさんでるから、夜までもつ。
     Tシャツが風にさらさらとなびいている。もう帰るのよしてもいいか…なんて。
    東京が遠い。こうしてる間にも渋谷の駅前の交差点では何千もの人々が、うごめいてるんだ。座れない電車にのって、すれ違うだけの人と小さい車両でギュウギュウ詰めになって。あの世界とここはつながってるのだろうか。奇妙な感覚。この青い海が東京湾にもつながってるように、それは確かなことなんだけど。

    今日は少し気の抜けたようになり、昼寝しまくる。

    そして夕方になって、浜に夕日を見にいく。
    福岡から来たタカユキ君という人が「サトウキビをもらおう」といいだし、サトウキビを刈り取っていたおばあちゃんにもらっていた。そしてみんなに分けてくれた。
    ガシガシと食べながらアスファルトの道を行く。小学生のように。

    そして、帰ってきてたらふくご飯を食べる。サトウキビをかじったせいか、あまり食べられなかった。泡盛をのみ、ほろよい加減で今夜も浜辺に星を見にいく。
    浜辺に大きい砂山(たぶん工事中の)があり、「登らなければ!」と私の中の野性が目を覚ました。

    登ったら! 世界がぐわんと迫ってきたみたいだった。超得意気。海を支配する王のような気分と言えよう。
    とにかく気持ち良かった。ほろ酔いで高いところにのぼるのって自信過剰にさせる。後で、その様子を見てた他の人々に「砂山の猿」と言われたけど、私のなかではまぎれもなく「海の王」さ。いいの、それで。
     大人になるって、もしかしてまたどんどんピュアになることかもしれない。純粋なババアになろう、と思った。

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