甘い生活苦タイトル画
タイトル画:武川雅寛・白井良明(ムーンライダーズ)

 2003年7月 第17回

 敏いとうとハッピーアンドブルーの曲が、鳴り響くホールに隔離された私。周りには一般のおばちゃん軍団。彼女たちに混じり地団駄を踏んでいた。この理解し難い世界に対しては、身を委ね、少しでも早く同化してしまうのが得策だと思えた。でないと、この異種(異臭)な雰囲気の中、馴染めないばかりに、開放されるまで、もがき苦しむ事となるのだから。

 ここ香川、琴平。入学したら最後、うどんを捏ねさせられ食べねばならない、「中野うどん学校」がある。入学から卒業まで六十分間。限定人数の一貫教育である。講師は、自称「松っちゃん」。うどんにたとえれば、「たぬき」以外思いつかない、これまたおばちゃん先生である。

 まず、空気を入れながら、小麦と水を混ぜ「ネタ」とよばれるダンゴをつくる。次にそのダンゴを、足で踏み弾力をつけていく。自然に噴き出す汗を拭いながら、足踏みをしていると、トランシーな気分になってくる。テクノをバックに、全員足踏みでうどんをつくるイベント・・・いいかもしれない。その名も「グルテン・ナイト」。

 曲は一転して、ムード歌謡からジルバへ。さすが、同じく足踏みしているおばちゃん軍団、空気を読むのが早い。ジルバのパートナーとして、私自身、射程範囲の中に入っているようである。この後、思い出から消去したいアプローチ攻撃を受ける事となる。

 「はぁーい、みなさぁーん。おいしいうどんに、欠かせないもの。小麦と水と塩の他に、何かわかりますか?」松っちゃんの大声がジルバにかぶさる。「愛!」、とオールトゥゲザーセイおばちゃん軍団。その答え待ってました、とばかりに笑みを浮かべた、松っちゃんが続く。「はい、その通り。うどん、愛は共通して、コシ(腰)は必要ですね。」、とカクカク腰を、動かせている。
松っちゃんのカクカクに対し、ホール内大爆笑。いままで開校されてから、何千、何万回と繰返されたであろう、この予定調和なやりとりに対し、単に冷房のせいではない、後味悪い寒さを感じた。

 気がつけば、ほろ酔い気分で、京の繁華街、夜の河原町を歩いていた。琴平から本日まで、数日間。色々あったが、全て「中野うどん学校」のエグさに、掻き消されていた。思い出す事ができないのである。横に、シュワルツネッガーのポスターが貼られている。タイトルを、逆さに読んでも、本編を思い出せるのは、この「ターネミータ」と「ロエピいがちき」ぐらいなものである。「エイリアン」シリーズが、違う方向に行ってしまった現在、ゼヒこれはマンネリでもいい、あの「トラック野郎」シリーズの様に、オリジナルのスピリッツを、いつまでも継承してもらいたい、と思った。


←先の21日。子供たちが昼寝している横で、このうどんを書き上げる。手打ちのつもりである。連休の昼下がり、ヒジョーに平和で幸せな気がした。

葛城より:来週28日から沖縄へいってきます。ゴーヤのマラカスをはじめ、1年分の買い物をしてくるつもりサー。

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※「シネマックスモナムール」(全12回)は、2001年に葛城さんに連載していただいた、熱く濃ゆ〜い、日本映画コラムです。読みたい方は下記バナ−をクリックして、ご覧ください。


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