星たちの楽しみ


その夜の出来事を、僕はいったい
 どう語ればいいのだろう

いつもと同じ道を、いつもと同じように帰ってきた僕は
 でも、いつもとは違う道を歩いていた

その夜はとても月が明るかった
 明るく、でも全てを優しくつつむ月の明りに
ちょっと軽くあいさつをしたんだ
 「こんばんは、いい夜だね」

一瞬月がまたたいた
 それはまるで返事のようだった

しばらく歩いた後
 いつもと違う道を歩いている事に気がついた

見慣れぬ道を歩いていくと
 ひときわ明るいパーティー会場が現われた

やさしく楽しげな光のさざめきに心ひかれ
 そのまま歩き近づいて行くと

タキシードを着た猫が僕を迎えてくれた
 「いらっしゃいませ 月光のパーティーにようこそ」

パーティー会場に入って行くと、一つの思い違いに気がついた

会場の明りと思ったものは
 地上に降りた星たちの明りだった

ベガ、アルタイルにカノープス
 知っている星たちがパーティーを楽しんでいる

猫たちが星の間を歩き周り
 ドレスを着た星が、タキシードの星とステップを踏んでいる

何人かの星たちとダンスを楽しみ
 猫たちと星の秘密を語り合った後に
気がつくと自分のベッドで目を覚ました

いつもと同じ自分の部屋には
 何故かさわやかなはっかの匂いと
月や星たちのにおいが残っていた

机の上をふとみると
 次のパーティーの招待状が置いてあった


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Word by 睡魔


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