デス:冬物語:私を悩ませたもの
Vertigo:Winter's Edge 2より
ライター Neil Gaiman アーティスト&レタラー Jeff Jones
絵の説明
雪山の中をデスがさまよい、いろんな動物の死に立ち会う
ストーリーはデスの独白の形で進められる
(P1)
私が若かった頃、うーん、今でも充分若いけど、言いたいことわかるでしょ?
とにかく、とてつもなく昔のことよ。私は兄弟の中でも一番きつい仕事をしてると思ってた。
最初の頃は良かったわ。宇宙が出来たての頃は。生きることや死ぬことは新鮮なことで、生死がもたらす未知なるものを、皆、熱心に見つめていた。
(P2)
生まれる時と死ぬ時に人々は喜んで私に会った。彼らはよく私に話してくれたものよ。知ってるでしょ、彼らの一生についてよ。
ちょっと時が経ったら、難しくなったわ
私に喜んで会う人は、人生の困難から逃げ出してきた人ばっかり。
他の人は私がどっかへ行っちゃって欲しいと願っていたわ。まるで、死が敗者の世界みたいな扱いよ。
悲しかったわ、とても悲しかった。止めちゃおうか、私の仕事止めちゃおうかと思った。
ある日、私は仕事を止めた。大昔に、今の世界のずっと前に。
(P3)
これ以上は耐えられなかった。私は命を取るのを止めた。人々や動物、鳥やバクテリア、魚など、全て死ななくなったわ。
混沌や苦痛がさ迷い始め、いっそうひどい世界が広がった。でも、何も死ななかったわ。
人々は若い男を使いに出した。長い道中の後、彼はとうとう私を見つけた。彼は懇願し、私は自分のやったことを見に行った。
それで、私は自分の仕事に戻ったの。わかる?それが私の定めなのよ。辛かったわ。
それから後も、人々が自分達だけで生まれたように喜んでいる時、私は耐え難くなり、冷酷になり、情緒不安定を覚えたわ。彼らはほとんど何もしていないのよ。
それから、彼らは死ぬ時は狼狽し、傷つき、動揺する。これも自分達だけで死んだかのよう。ときどきはそうだけど。
(P4)
ある日、ちっちゃな女の子を連れて往く時、彼女は私を見上げて、虚ろに、冷たく、よそよそしく言った、「面白い?」って。彼女はそれしか言わなかったけど、私は傷つき、考え込んだわ。
そして、私は百年に一度、生を持ってみようと決めたの。どのくらいこの仕事が好きか、何が学べるのかを知るために。
生まれて一日経って、迎えに来た私に言ってやったわ、あなたは冷酷で、生意気な奴で、不感症!てね。あちこちで言いふらさなかったのが救いね。
それで、私は気づいたの。
(P5)
人は死ぬ時、動揺し、傷つき、怒り、気分が悪くなるわ。彼らに必要なのはやさしい顔、思いやりのある言葉。
人々は私の執務執行に準備が出来ていなくても、受け入れるしかないでしょ。
陽のささない国は遠く、その道のりは険しい。そこへ友達として手助けしてあげれば喜んでくれる。
終わりの日には皆、裸で還るから。
終わりの日には皆、ひとりぼっちだから
そう思いついてから、この仕事も悪くないと言えるようになったわ。たいした考えじゃないけど、私には思いつくまですごく長い時間がかかった。
いろんな世界や人々や場面に遭遇して、多くのものを学んだわ。
ほとんどの人は自分の仕事が好きじゃないみたい。そうじゃない?
私はその点、本当に幸せね。
あっ、行かなくちゃ。
そうそう、またお会いしましょうね。
END