静電気 (工事中)

A.D.ムーア著「静電気の話」( 原題: Electrostatics )の紹介を中心に、 誘導型静電発電機について書く予定。
とりあえず「玉振り発電機」の紹介でお茶を濁します。

玉振り発電機


「ケルビン発電機」や「ウィムスハースト発電機」に代表される
誘導型静電発電機の中で、恐らくもっとも簡単な、A.D.ムーアの
「玉振り発電機」を紹介します。

                  鋼球(9mmφ)×2
    ┌──────────┐  │アクリルパイプ(10mmφ×22cm)
    │          │  ││
 ┏━━┷    ━━    ┷━ ↓↓ ━━━┓
 ┃──────────────────────┃
■■■   ○   ■■■■■■  ○    ■■■ ←アルミ棒
 ┃──────────────────────┃   (8mmφ)×3
 ┗━━━    ━┯    ━━    ┯━━┛
          │          │ ↑
          └──────────┘ │
                    ↑  │
                   アルミ線(3.2mmφ)

上記は自分で作った物のデータです。(固定幅フォントを正しく
設定してごらんください)
左右にカチャカチャ振ることで発電します。
2〜30回振って手を近づけると火花が飛びます。

実際にはこれだけでは扱いにくいので、「取っ手」を付けます。
細長いアクリル版と、こんな形 _/\_ に熱で曲げた短い
アクリル版との間に発電機の中央部を挟み込み、プラスチック
製のボルト・ナットで留めました。(パイプを痛めないように
ゴムなどを挟んだほうがいいでしょう。私はサボってますが…)

[材料]
主に東急ハンズで揃えました。

---- 本体用
◆アクリルパイプ
  内径10mmのもの。(元の長さは1mぐらい)
  ヒビは大敵なので加工注意。
◆アルミ棒
  直径8mm。(元の長さは1mぐらい)
◆鋼球(スチールボール)
  直径9mm。
  アクリルやアルミはハンズでなくとも、たぶん模型屋やホーム
  センターでも入手できるでしょうが、鋼球の入手はちょっと難
  しいかも知れません。ベアリング用ボールやパチンコ玉(11mm
  径)でも可。
◆アルミ線
  「自遊自在」という商品名。アルミ線にビニル被服を施した物
  で、3.2mm径。手で簡単に加工できます。「電線として使うな」
  という注意書きがありますが、流す電流は微弱なので気にする
  必要はありません。
  屋内配線工事用の単芯の銅線でも可。

---- 取っ手用
◆アクリル板
  厚さ2mmぐらいのもの。
◆プラスチック製ボルト・ナット
  ポリカーボネート製。太めのもの。

---- 保守用
◆絶縁塗料
  放電による電荷の漏れ対策としてサンハヤトの「高周波ワニス」
  を買ってきましたが、実はまだ使っていません。
  高周波用なので、高圧静電気に効くかどうか、わかりません。

---- 「光りモノ化」用
◆ネオンランプ
  LEDに押されて、あまり見かけなくなりました。特に裸のネオン
  ランプは置いてある店が少ないですが、秋葉原・ラジオデパー
  ト内の鈴喜デンキで入手しました。
◆ユニバーサル基板、ミノムシクリップ、銅線
部品の一部:
アクリルパイプ(切断済み) / 「自遊自在」 / アルミ棒(切断&加工済み)

アクリルパイプにアルミ棒と鋼球を入れてみる。

[工具]
◆アクリルカッター
◆棒ヤスリ、紙ヤスリ
◆ドリル
  アクリルの穴あけは難しい…。
◆万力
  アクリルパイプに使うのはやめましょう。
◆プラスチック板曲げ加工用ヒーター
  取っ手の加工用。なくても取っ手などどうにでもなりますが、
  アクリル板がきれいに曲がるのでうれしくなります。

[構造について]
両端のアルミ棒が電極となります。
配線やパイプを取り囲む部分はアルミ線をグルグル巻き付けただけ
の簡単なものです。
両端のアルミ棒の回りには被服をはがして2〜3回巻きつけてあり、
ついでに蓑虫クリップを取り付けられるように小さなループを作っ
てあります。
両端のアルミ棒はアルミ線につながっており、中央のアルミ棒はど
こにもつながっていません。

[加工上の注意]
アクリルパイプにヒビが入ると放電経路になってしまうので、慎重
に加工します。
金属の尖った部分を徹底的に無くすこと。1箇所でも尖っていると
コロナ放電や火花放電を起こして電圧があがらなくなります。
アルミ棒はていねいにヤスリがけして丸っこく仕上げます。
アルミ線などの配線材料は太目のものを使います。
アルミ線の末端のように丸く仕上げるのが難しいところは、「の」
の字形に丸め込む・導体のキャップをかぶせる・絶縁物を塗布する・
などします。

[失敗談]
失敗その1:
アルミ棒を固定するために、ヤスリで溝を掘ってから、パイプを熱
で柔らかくして絞り込みました。いいアイデアだと思ったのですが、
これは駄目です。アクリルに目に見えない穴やヒビができてしまっ
たらしく、中央付近から火花放電が起こり、電圧が上がりません。
改良版では、中央のアルミ棒の回りにストローで接着剤を流し込ん
で固定しました。接着剤はセメダインスーパーXという、溶剤を使
わない化学反応形の接着剤で、エポキシとも違って弾力があります。
これでいくぶん電圧が上がるようになりましたが、まだどこか放電
しているようです。

失敗その2:
使っているうちに金属粉がパイプ内部に付着します。
ところが密閉してしまったために掃除ができないのです。
改良版では、両端のアルミ棒を短い針金でピン止めするようにして
着脱可能にしました。

ちなみに一番上の写真は改良前のものです。

[光りモノ化計画]
手にビリッとくるばかりでは芸がないので、光らせましょう。
豆電球を点灯させるほどのエネルギーはありませんが、ネオンラン
プなら点灯できます。
ネオンランプを3〜4個直列に繋ぎ、ギャップをあけて電極に繋ぎ
ます。発電機を振ると周期的に光ります。
ギャップは左右両方に付けます。

[動作原理]
図を簡略化してあります。
ボールが左右対称に動くと考えたほうが理解しやすいでしょう。

(1)初期状態。両電極間の電位差が完全にゼロということはなく、
   わずかに電荷があります。これが種となります。
   この電荷は誘導電極にも現れ、中央の中性の棒とこれに接触する
   ボールに逆極性の電荷を誘導します。
   ┌─────────────┐
   │             │
 ┏━┷━           ━┷━    ━━━┓
 ┃               −        ┃
 ┃               +        ┃
−┃        ○■■■■■■○        ┃+
 ┃        −  中性棒          ┃
 ┃        +               ┃
 ┗━━━    ━┯━           ┯━━┛
 コレクタ   誘導│            │
  電極    電極└────────────┘

(2)ボールが移動して電荷を運びます。
   ┌─────────────┐
   │             │
 ┏━┷━           ━┷━    ━━━┓
 ┃               −        ┃
 ┃                   +    ┃
−┃    ○    ■■■■■■    ○    ┃+
 ┃    −                   ┃
 ┃        +               ┃
 ┗━━━    ━┯━           ┯━━┛
          │            │
          └────────────┘

(3)ボールがコレクタ電極に触れると、電荷はただちにコレクタ電
   極の表面に移動します。コレクタが凹形をしているために、内
   側には電荷がほとんどとり着けないためです。
   (正確にはコレクタに接触する前から、誘導された電荷がコレ
    クタ表面に現れます)
   この結果、誘導電極に現れる電荷も増えます。
   ┌─────────────┐
   │             │
 ┏━┷━           ━┷━    ━━━┓
 ┃               −−       ┃
−┃                        ┃+
−┃○        ■■■■■■        ○┃+
 ┃                        ┃
 ┃       ++               ┃
 ┗━━━    ━┯━           ┯━━┛
          │            │
          └────────────┘

(1)ボールが戻り、最初と同じ形です。
   ただ電荷が増えています。
   この繰り返しで、複利計算で電荷が増えていきます。
   ┌─────────────┐
   │             │
 ┏━┷━           ━┷━    ━━━┓
 ┃               −−       ┃
−┃               +        ┃+
−┃       −○■■■■■■○+       ┃+
 ┃        −               ┃
 ┃       ++               ┃
 ┗━━━    ━┯━           ┯━━┛
          │            │
          └────────────┘