== GHIBLI==
宮崎駿氏の講演の内容

1986年10月10日 兵庫県明石市立 明石市民会館での講演会の内容

えーと、忘れました(^_^;)
何しろ10年前のことですから。それに当時私は、かなり興奮して舞い上がっていましたし。
断片的に覚えていることといえば、 これくらいです。


1997年7月3日 金沢テレビ「じゃんけんぽん」でのインタビューの内容

※「じゃんけんぽん」というのは金沢のローカル情報番組の番組名です。


アナ:私達の心に残る数々のアニメを作り続けてくれる宮崎駿監督。今日は監督を迎えて宮崎アニメの魅力について、そして来週末に公開が迫る、新作『もののけ姫』について伺います。
早速ご紹介しましょう。宮崎駿監督です、こんにちは。

宮崎:こんにちは。

アナ:今日はよろしくお願いします。そして後ろに控えておりますけど、新作『もののけ姫』で登場するシシ神のもう一つの姿ですね、デイタラボッチも来てくれました。今日は、あの、おとなしくしていて下さいね。よろしくお願いします(笑)
さて、宮崎さんは、石川、特に金沢にはよく来られるんですか?

宮崎:いや、そんなことないですけど、えー、37年前に、えーと、学生の時に、貧乏旅行で来たことがありますね。

アナ:貧乏旅行で!?

宮崎:あのー、テント担いで(笑)、あのー、あちこちに泊り歩いてたんですけどね。

アナ:そんなことされてたんですか!?

宮崎:寺町ってところありますよね、あそこでお寺さんに泊めていただいたことがあります。

アナ:あははっ、そうですか(笑) えー、もう少し金沢の話しも聞きたいんですけど、まずもっと聞きたいのが『もののけ姫』についてなんです。その物語をまず簡単に紹介させて頂きます。
舞台はまだ森が神々の聖域であった室町時代。青年アシタカは、タタリ神によって右腕にかけられた死の呪いを解くために、シシ神の森を目指して旅立ちます。
旅の途中、アシタカはある少女に出会います。犬神に育てられたもののけ姫、サン。サンは森を侵す人間たちを激しく憎んでいたんです。タタラ集団の村に着いたアシタカは、サンと村の指導者エボシ御前の対立を知ります。エボシ御前は人々の暮らしのために森を切り開き、神々とその頂点に立つシシ神を追い詰めて行きます。森を守るものと開拓するもの。その狭間でアシタカはどんな決断をするのか。そしてもののけ姫は。人と森の争いの行方は。
(アシタカ:)森と人が争わずにすむ道はないのか。本当にもう止められないのか。

アナ:宮崎さん、今回特に問題になっていますのがね、話題になっていますのが、製作費20億円、そして世界展開するという。これに関してはどんなふうに思ってらっしゃいます?

宮崎:いやー、ま、時間かかりましたから、え、あの、作るのにですね。20億円ていうのは使ってみると大したお金じゃ無いですね。

アナ:そうですか?

宮崎:回収するのは大変なお金なんですけど。
ま、去年、一昨年の7月から絵を描き始めて、今年の7月まで描いてましたけど、だから、むしろそのスタッフがですね、例えば女性がですね、とてもよくやってくれた子なんだけど、「2つ年取っちゃった」って言ったんですよね。終わった時に。

アナ:そうですか。

宮崎:そういう方が重いですね。

アナ:そんなに精魂込めて作ったということですよね。

宮崎:ええ、そうだと思います。あの、その2年間がこの作品に、こう、値するかどうかっていうことの方が実は金額よりも僕にとっては重いんですけど。

アナ:あの、絵を描く仕事だけじゃないですよね。ロケーションをいつもなさるじゃないですか?

宮崎:それはもう、わずかな時間ですからね。

アナ:そうですか

宮崎:楽しみみたいなもんですから。

アナ:楽しみの一つでもあるということですか。今回どちらに?

アナ:いつも大っきなロケーションをされるってことなんですけども。

宮崎:え〜、でも実はあの、映画に入る前にもうそこは出来上がってないといけないんです、頭の中に。それであとスタッフにそれを伝えるためにですね、あそこ行け、ここ行けっていう風にやることはありますけど。

アナ:今回『もののけ姫』ではどちらに行ったんですか?

宮崎:屋久島に行ったスタッフと、それからあの、白神山地に、ブナ林を見に行く班と別れましたけどね。

アナ:やはり自然の豊かなところですよね。ということになりますと、やはり、まあ、宮崎監督の作品でよく出てくるのが、自然と人間のこの、対立というか、共存というかそういうテーマだと思うんですけど。ずーっとこのテーマにこだわってこられて、その理由は何なんでしょうか?

宮崎:いや〜、そういうこと聞かれられると困りますけど(笑) もっと能天気なものも作りたいと思うんですけどねぇ。でもやっぱり今僕らが一番この時代に生きていて、一番こう、底流に流れている、その、自分たちの最大のテーマっていうのが、どうしても人間と自然という、関係だと思うもんですから。あの、能天気なものやってても、そこから離れられないっていう、そういう部分をどうしても持っていると思いますね。

アナ:そうですか。
私も業務試写会で一足先に拝見させていただいて、あのー、自分がもしその、エボシ御前であり、地走りの立場だったらどうするかなと思うんですよ。やはり人を守るために、あるいはアシタカの立場にしても、命を守るために、街を守るために森を傷つけるってことは有り得ると思うんですけど。そうするとすごく切なくなるんですけどねぇ。

宮崎:いや、人間っていうのはまさにそうやって来たんですよね。悪い人が木を切って来たんじゃなくて、人間の幸せになりたいっていうね、当然の願望の結果、森林を破壊してきたんです。ですからそれをはっきりさせないと、あの、”木を切る人悪い人、木を守る人良い人”っていう風な、そういう形では自分たちがぶつかっている自然との関係の問題はね、解決の糸口さえ見つからないと僕は思うもんですから。ですからこの映画は、そういう意味では簡単に答えが出てくるような映画じゃありません。

アナ:アシタカがしかし、あの、エボシ御前に対して山道の途中で言うじゃないですか。人と森が争わずにすむ道はないのかと。見てる人みんなに、あの、聞かれているような気がしまいましてね。

宮崎:でも、あの、モロが嘲笑してますよね、同時にね。それは、我々と一緒に人間と戦うのか、お前はってね。言ってますよね。そうはいかないんですよね、簡単にはね。

アナ:どっちに立つか判らないというアシタカの気持ち…

宮崎:彼は両方に立ちたかったんでしょうね。両方に立つ道があるんではないかと思っていると思うんです。それは非常に困難な道だけれど、実は21世紀には、発表しなければ、たぶん、人間はもっとひどいことになるだろうっていう風に。ええ。本当にそういう道があるのかどうかっていうことも、実は、ちゃんと探してないんじゃないかと思いますけどね。始めから、頭からね、無理だって決めてるだけで。

アナ:何かこの映画にヒントになるものがあればいいなと思ったんですけど、私はわかりませんでした。

宮崎:ええ、私もわかりませんから。

アナ:そうなんですか。

宮崎:でも子供達がですね、今の時代に生きていて一番奥底の深いところで感じている不安ていうのは、この地球がもうおしまいだっていう、その不安だと思うんですね。それについて、僕らはあの、明るく健やかに元気にという映画を作ってきましたけど、でもその不安が存在していることは、出来るだけ隠していたほうがいいと思うんです。それはあの、それを扱うとちょっとアニメーションでは処理しきれないから。でも、その扉を開けないといけない時期が来た。で、それは簡単に答えがあるから、それを子供たちに教えようと、そういうことじゃなくてね、子供たちも困っているように、実は一番我々も困っているんだ、それはその、みんなと一緒に同じ問題を抱えて実はこの時代に生きてるんだっていう風にね。そういう形の映画しか作れなかったんです、僕は。

アナ:あの宮崎さん、非常に私、気になる噂といいますかね、それを聞いたんですけど。こういった形での超大作は今回が最後になると?

宮崎:超大作に限らず、もう、ちょっと体力的に無理ですね。

アナ:そうなんですか?

宮崎:ええ、無理だと思います。ですからあの、実は年をとりますとね、まだまだできると思いたくなるんですよ。で、これをやりながらでもですね、あれもできる、これもできる、これはやったら面白いって風に、いくらでも思い浮かぶんですけど、実は自分の腕とか眼とか頭とかね、そういうものがますます衰えてて、現実の自分と、やりたいものの間がどんどん開いて来るんですね。

アナ:ちょっと待ってください。そうすると宮崎アニメはもう、見られなくなるんでしょうか?

宮崎:いや、ですから、第一線でいつも自分がトップだっていう風に思わないで、二線か予備役か、そこにこう退こうってことだけです。

アナ:ああ、そうですか。

宮崎:まー、だからなんかのめぐり合わせで、もう散々いろいろなこと言ってたくせに、またヨロヨロ出て来るかもしれないし、あの、それからそのままどっかにこう消えてしまうかもしれないし。それはそれでもう決めないでフリーにしたいって。だからスタジオジブリもこれで、とにかく抜けるって風に、したいと思っています。

アナ:しかし、どこかで宮崎さんのね、気持ちを受け継いだアニメがこれからも見られることを私たちは祈っています。今日はどうもありがとうございました。

えーと、ご意見をどんどんご紹介、え?あ?ご意見の時間がもう無くなりましたね。残念ですね。ではコマーシャルにまいりましょう。

宮崎:(時間が無いんですか?)

アナ:(すみません)

宮崎:(そうですか(笑))

アナ:(短い時間で申し訳ないです。)





宮崎駿氏のサイン
[宮崎駿氏のサイン] [宮崎駿氏のサイン]
(明石市 市民会舘にて)(金沢テレビ前にて)

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