〜W杯開幕直前編〜


6月2日
 おお、何ということだ。ガスコインが代表から外れてしまった。ホドルのバカ。
 わが日本代表のほうは、カズが落選。とりあえず、気の毒なことだと言っておきたい。いまになって外すならば、なぜスイスまで連れていったのか。25人の候補選手を発表したとき岡田監督は、チームのために戦える彼が必要だとコメントしていた。そして今回は、予選リーグの対戦相手を考えると使う場面が考えられないという。これは明らかに一貫性を欠いた言動だ。ここ数試合、彼には出場のチャンスさえ与えられていないわけで、だったら25人のメンバーに加えた意味はまるでないんじゃないだろうか。実力主義の厳しい世界だなんてことは百も承知で言えば、あれほどの選手に対して、練習試合でハットトリックを決めた後に強制送還というのは、いくら何でも失礼な仕打ちだと思う。
 案の定、久米宏が「情より勝負を取ったということですね」という間抜けなコメントを発していて、それが「常識的」な見方になってしまいそうな雲行きだが、問題はその「情」が勝負に不要なのか否か、である。少なくとも、「チームのために戦える彼が必要」という監督のコメントは、広い意味でカズにまつわる「情」(彼の実績や貢献度に対するノスタルジーやセンチメンタリズムだけでなく、その経験や根性、気迫、純粋なナショナリズムなどを含めたもの。技術や戦術といったプラグマティックな発想の対極にある、存在感のようなものだと言ってもいい)が勝つために不可欠だという意味に解釈できる。ところが今回は一転して、きわめてプラグマティックな理由によって彼をチームから外した。勝つためにカズが必要かどうかという議論は別として、そこに矛盾があるのは間違いない。代表から外したこと自体が失礼なのではなく、そういうちぐはぐな扱い方が失礼だと言いたいのである。いま外すなら、スイスに連れていくべきではなかった。
 2002年を見据えてベテランより若手を、というステレオタイプが幅をきかせているようで、そう主張する人々はカズ落選を歓迎するのだろうが、もっと長期的な視野に立てば、彼がフランスのピッチを踏むことには決して小さくない意味があるのではないだろうか。選手としての終わりが近いとしても、サッカー人としてのカズが終わるわけではない。将来、彼が代表チームやサッカー協会の中で有形無形の存在感を示していくべき人物だとしたら、彼がW杯を経験しておくことは、日本サッカー界にとってきわめて有意義だと言うこともできよう。 …ま、あまりに心情的すぎる同情論であるのはわかっているが、監督のフィロソフィが不明確なのが気に入らないんで、文句が言いたくなっただけです。間違ってたら、たしなめてください。
 ガッザ、カズに続いて、ブラジルではロマーリオも代表落ち。ベテラン受難の一日であった。この風潮のなかで生き延びたクリンスマンとバッジオはしぶといと言えよう(優勝経験国の監督がこの2人を選んだことを考えても、やはり「経験」は無視できないファクターなのではないか。もっとも、カズには本大会の経験などないのだが)。

 ところで、昨夜はオランダ-パラグアイ戦を生中継で観戦(CSの醍醐味)。さすがにオランダは楽しいサッカーを見せてくれる。開始当初はシードルフに欧州リーグの疲れが見え、クライファートの自信なさげなプレイが目についたが、前半早々に先制点を許して目を覚ましたようだ。オフェルマルスの強引な個人技で同点にした後、6分後には3-1にしていた。とくに、シードルフのスルーパスからクライファートがシュートを放ち、そのこぼれ球をオフェルマルスが押し込んだ2点目のシーンは、見事の一語。3点目はオフェルマルスのマイナスの折り返しをクライファートがゲットしたもので、セリエAでの迷いが吹っ切れたように見える。後半はシードルフにかわってダヴィッツが入り、華麗さに力強さが加わった(結局、5-1でオランダの勝ち。しかもベルカンプ抜きで)。よくわからんが、シードルフとダヴィッツは同時に出ることがないのだろうか。一緒にプレイしてるところを見たいぞ。ともかく、オランダは赤丸急上昇だ。人種間の対立が懸念されているが、努めて白人選手と仲良くしようとしているシードルフの姿にも好感が持てる。けなげである。それにしても、パラグアイは先制すると守りに入るチームだな。日本とのドローはご愛嬌としても、その戦い方はD組では通用しないと見た。

6月1日
 朝刊の報ずるところによると、最終的な試合結果はわからないものの、日本-メキシコのテストマッチ(非公開)は、前半を1-1で折り返したとのこと。また試合開始直後(前半1分)に失点したらしい。開始直後と終了間際に点を取られるクセは何とかならんのかね。いちばん、取られちゃいけない時間帯じゃないのか(夕刊で、後半にPKを与えて2-1で負けたことが判明。「失点はミスと余計なファウルによるもので、システムの問題ではない」というニュアンスの楽観的なコメントが散見されたが、そういう問題なんだろうか。豪州合宿の頃ならともかく、いまの目標はシステムを確立することではなく、負けないリアルな戦い方を徹底することだと思うんだけど。たとえばプロ野球だって、オープン戦も終盤になれば、選手には「勝負強さ」が要求され、チームとしては「勝ちパターン」の確立が急がれるものだ。この時期につまらんミスやファウルを犯す選手を叩かずに、いつ叩くというんだろう)。
 そんなことより、問題はアズーリの正GKペルッツィの負傷だ(彼も木梨とPK戦をやってた。あれが遠因となったとしたら、あまりにバカバカしい)。本大会絶望とのことだが、カテナチオに綻びは生じないんだろうか。予選リーグ2位で、いきなり1回戦でブラジルに粉砕されるという、最悪のシナリオが現実味を帯びてきたような気もする。そこでアメリカの借りを返すことができれば、災い転じて福、なのだけれど。頼むぜ、バッジオ(ロベルトもディノも)。

5月31日
 イングランドがベルギーに、フランスがモロッコに、それぞれPK負けしたとのこと(なんで親善試合でPK合戦なんかやってんだ。本番の予行演習かな)。ベルギーとモロッコが予想以上に強いのか、それともイングランドとフランスが手を抜いた(メンバーを試した)のか。いずれにしても、イングランドの無得点というのが心配だ。相変わらずPKも弱いってことだし。そんなことじゃ、ドイツに復讐できないじゃないか。
 ユーゴとナイジェリアは、3-0でユーゴ(さぞやミルチノビッチは傷ついたことだろう)。やはりナイジェリアの人気は過大評価か。さらにイタリアは何故かアマチュアと試合してラグビーなみの得点。ラバネッリが爆発したらしいが、何やってんだよ。

5月30日
 監督がジャージを着ようがスーツを着ようが、どうでもいい。スイスでの合宿直前にそんなこと質問する記者も記者だが、その部分ばかり繰り返し放送するテレビもテレビだ。このファックなメディアの体質を何とかせにゃ、この国のサッカーに未来はないんじゃないのか。過去をろくに知らん俺が未来を云々するのも何だが。
 だいたい、初出場だから無理もない面もあるとはいえ、テレビ(いまどきは、"地上波"と言ったほうが正確か)が日本及びH組がらみの情報ばかりで、他の国の情報が少なすぎるのが頭に来る。W杯における最大の関心事は、「どこが優勝するのか」に決まってるじゃねーか。
 さっきも生島ヒロシが「この様子だと2勝1分もある」とか寝ぼけたコメントしてたけど、ボクシッチが本大会絶望になったぐらいで、大騒ぎしてんじゃないよ。キリン杯では、クロアチアの主力が7〜8人欠けた状態で、やっと勝てたぐらいなんだからさ。そもそも、ボクシッチの負傷自体が眉唾モンだ。

5月27日
 先日、初めてMLSなるものを見た。3-0の試合が20分後には6-2になっているというすさまじい展開だったが、そんなことより驚かされたのは、試合時間のことである。普通サッカー中継の時間表示は数字が増えていく(経過した時間を表示する)ものだが、なぜかMLSでは時間が刻々と減っていく(残り時間を表示する)。ロスタイムになったらマイナスになるのかなーと思って見ていたら、とんでもない。最後にアナウンサーが「スリー、ツー、ワン、ゼロ!」と叫んだかと思うと、90分ジャストでゲームが終わってしまったのだ。バスケットやアメフトやアイスホッケーと同様、ロスタイムって概念が存在しないらしい。おそるべし、アメリカ人。
 きょうはテレビで木梨がデル・ピエーロとPK合戦をやっていた。なんと14本目までもつれこむ激戦。途中でデル・ピエーロが太股をさすっていたが、このせいで調子を崩したんじゃあるまいな。それにしても、神経質かつ尊大なイメージとは裏腹に、笑顔の素敵なナイスガイだった。めっちゃモテるんだろーなー。

5月22日
 祝、バッジオ復帰。チェーザレから「デル・ピエーロの控えだよん」と電話があったらしいが、そのデル・ピエーロが昨日みたいなていたらくでは、意外に早く出番が回ってくるのでは。インザーギも大舞台に弱そうだし。
 それより気になるのはガスコインである。ホドルがガッザの代表入りについて「100%とはいえない」とコメントしたというが、それも祈祷師(正確にはセラピストみたいなもんらしいけど)のご託宣なのか。インスだって「ガッザはイングランドに不可欠」と言ってるんだから、ちゃんとフランスまで連れてってくれよな。

5月21日
 昨夜(今朝)のチャンピオンズリーグ決勝の観戦で寝不足。戦術や技術のことはよくわからんが、明らかにレアルのほうが執念で上回っていたように見えた。いったいデル・ピエーロはどこで何やってたんだ。それから、ディ・リーヴィオを前半だけで引っ込めたのは采配ミスではないのか。彼がいればダヴィッツの負担も軽くなって、もっと決定的な仕事ができたような気がする。たしかにディ・リーヴィオはバテバテだったが、45分しか走れないんなら、後半から使って欲しかった。
 それにしても、ダヴィッツとシードルフは似てるな。かたや「黒いジミー大西」、かたや「黒い武田鉄矢」といった風情だが。この試合を見ると、やはりオランダの評価を高めたくなる。黒人選手のモチベーションが維持できれば、ベスト4まであるかもしれない。

5月18日
 真っ昼間から、DirecTVでアフリカ選手権(ザンビア-エジプト戦)なんか見てしまった。解説は、宮澤ミッシェル。なるほど、こんなところで小銭を稼いでいるわけか。昨夜のフランスカップは柱谷兄が喋っていたような気がする(兄の声は聞いたことないけど、弟に口調まで似ていたから)。
 アフリカ選手権の前にやってたW杯の情報番組は、オランダの特集。ベルカンプが、「少し内部に問題を抱えているほうが、うちのチームはいいんだ」みたいなことを言っていた。そうでも思わないと、やってられないに違いない。チリのサモラーノもインタビューに答えていたが、図々しそうな顔とプレイスタイルに似合わぬ謙虚なコメントに好感を持った。サラスとあわせて楽しみな選手の一人である。

5月17日
 DirecTVを導入した。無論、サッカーが見たいからである。一昨年のEURO96にハマって以来、イタリア人やイングランド人やオランダ人やフランス人やドイツ人やポルトガル人がやってるサッカーを見たくて見たくてしょうがない人間になっていたのだ。
 で、DirecTVである。さっそく、5月2日に行われたフランスカップ決勝(パリSG-ランス)なるゲームを観戦。ランスというチームはこれまで弱小だったのが急に強くなって決勝までコマを進めたと何かで聞いていたので応援していたのだが、2-1で負けてしまった。それにしても、トリッキーなパスが多く、スピードもあるので、実に面白い。これが勝敗を度外視するというシャンパンサッカーの醍醐味なのか。昼間、バカげたパスミスが繰り返される日本代表の試合(パラグアイ戦。「日本選手にもマリーシアが身についてきた」なんてはしゃいでる場合じゃねーぞ。昨日の「あのIRLなら …云々」は撤回しよう)に溜息をついていただけに、余計、目の保養になったのであった。

5月16日
 BSでARG-IRL戦とKOR-JAM戦を見る。やっぱ、オルテガは巧いな。早いな。凄いな。大丈夫なのか、服部。でも、あのIRL相手なら日本でも2点ぐらい取れそうな気がするのは、気がするだけか。関係ないけど、ダブリンの空は暗かった。
 JAMはいかにもフィジカルコンディションが悪そうで、参考にならず。しかし、ホン・ミョンボのいないKORに負けたというのは、どこかホッとさせるものがある。


付録・FRANCE 98 W杯の試合結果と寸評

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