人事異動とモチベーション

 今年も異動シーズンがやってきました。私のところにも、電子メールでいろいろな方から異動のお知らせが届きます。順当だな、と思う報告もあれば、えっ!?っ と思う発表もあります。フリーランスの私はもう部署の変わりようもないので(笑)、何はともあれ、環境が変化するとういうのは、ちょっぴりうらやましかったりします。
 
 実は私にも3年間ほど会社員時代があるのですが、残念ながら人事異動というものをまったく経験したことがありません。部署が変わるというのは、学生が新学年を迎えるときのようにワクワクするものなのでしょうか。それとも、“すまじきものは宮仕え”を実感するときなのでしょうか。ただただ想像の翼をふくらませるばかりです。

 IT業界では、技術者の異動希望はどれだけ尊重されるものなのでしょう? 割と本人の意志にかかわらず、“あなたは今年、このプロジェクトね。よろしく!”といった具合にアサインされているのでしょうか? いや、こうお伺いするのものも、やりたい仕事は手を挙げたもの勝ちという情報サービス企業を見てきたからなのです。

 その会社はある汎用的なコンテンツをクライアント/サーバ型システムからインターネット、モバイルに至るまでさまざまなメディアで配信しています。100人近い技術者がいて、新しい技術への取り組みに関しては、基本的に申告ベースでプロジェクトが組まれるというのです。

 たとえば、Palmコンピュータ向けにコンテンツ配信のエンジンを開発すると決まったら、システム開発部門内で公募がかけられます。やりたい人が手を挙げて、集まった人間でプロジェクトチームを組織して、ゴールに向かってつきすすむのだそうです。新しいプロジェクトへの参加を上司に相談する必要はありません。このスタイルのいいことは、やりたいといって集まった人間ばかりだからモチベーションが高く、結果的に速くよいものができるということです。すでに自分で興味を持って勉強し、開発ツールなども自分が使いやすいものを選んでくるので、会社が教育の機会を設けなくてもいいくらいなのだそうです。希望者を募るあまり、技術者がある技術のまわりに集中して、誰もやりたがたらない分野ができてしまうのではないかと尋ねてみると、そこはうまくしたもので、人とは違う道を行くという技術者も必ずいるのだそうです。

 どこでも採用できる人事制度ではないかもしれませんが、技術者にとっては明らかに快適な環境ですよね。IT専門職の人材難が叫ばれる今、これからはこうした彼らのモチベーション維持に心をくだく会社が人気を集めていくのかもしれません。

(この文章は日経ソフトウエアメールニュースに掲載されたものを再録しました)

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