皮蛋

 たまには“和”を離れましょう。中国料理名物「皮蛋」(ピーダン)です。皮蛋は便利な食材です。ああ、おかずが在庫切れ〜、というようなときに、切るだけでごはんの友になってくれるので、できるだけたくさん備蓄しておくようにしています。大きいスーパーへ行けば1個150円ぐらいで売っていますが、私は上野のアメ横センタービルの「むら珍」へ行って箱単位で買います。1箱20個入り(笑)。でも、それで900円なんですよ。さあ、どっちが得かようく考えてみよう。

 皮蛋は、あひるの卵に紅茶、石灰、粘土、もみ殻などを厚く塗って、1ヶ月から数ヶ月間漬けこんだもの。その結果、卵白の部分がぷるんぷるんの紅茶ゼリーのようになり、卵黄はねっとりしたくせのあるチーズのようになります。お粥や豆腐などあっさりした料理や素材に、アクセントを添えてくれます。

 実をいうと、私と皮蛋との出会いは惨憺たるものでした。大学生だったんですが、そのころから珍しいものが大好きだった私は神戸の中華街で皮蛋を買い求めました。ところが、残念なことにそれが腐っていたんです。私は初めて食べたので、気づくことができません。そのとき口にいれた皮蛋はただただ苦くて、変な匂いがして、うえー、よくこんなものを食べるなー、と思いました。さしもの私も“皮蛋はまずい”と断じて、それきり食べることはありませんでした。

 考えを変えたのは、社会人になって本格的な中華粥を食べてからです。つけあわせに出てきたそれは、私が以前食べたものとはまったく味が違っていて、ようやく最初に食べた皮蛋が“まちがっていた”ことに気づいたのでした。 

 扱うときの注意事項は、もみ殻を流し台で剥かないということです。泥土がシンクにこびりつくため、あとで掃除するのがタイヘンです。この撮影に使った皮蛋は、流し台の角で殻を割るとき、“クエッ”と鳴きました。えー、もしかして孵化しちゃったのー、と思ってちょっと恐かったです(笑)。

 上の写真は皮蛋豆腐。水きりをした木綿豆腐の上に刻んだ皮蛋としょうがのせん切りを載せます。しょうゆとごま油と酢と塩を混ぜたたれを食べるときにかけてあえます。しょうがのせん切りの代わりにしそを刻んだり、松の実を入れたりすることもあります。腹の立つことがあった日は、豆腐と皮蛋をグッチャグチャにあえてウサをはらします(笑)。これがまた、その方がおいしかったりするので中国料理とは不思議なものです。

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