自家製豆腐

 生まれて初めて豆腐を作りました。前からニガリの買い置きはあって、ミキサーもあって、あとは大豆があればできるまでになっていました。専用の型流し箱がないのをどうしようかと思っていたのですが、ある日思い出したのです。うちには卓上漬けもの容器があるじゃないか。あれで押し加減を調整しながらかためればできるはず、と。実際に作ってみて思ったのは工程が結構複雑だということ。先人はよく大豆から豆腐という加工品を発明したものだと感心します。でも、手間さえ惜しまなければ家庭でも意外と簡単に作れるのも確かです。

 乾燥大豆を、冬なので一昼夜水につけ、ひたひたの水とともにミキサーにかけます。それを熱湯で煮て、フキンで絞ります。絞った結果が豆乳、フキンに残ったものがおからです。この作業が半端じゃなく熱いんですよ。手が熱くてなかなかぎゅっと絞れません。これは市販のフキンが小さいからというのもあります。2カップの大豆で約2丁分の豆腐ができるんですが、絞る段階では容量が2リットルぐらいありますもので。どこかで特大木綿フキンを調達しなくては。

 なんとか絞った豆乳を湯煎にかけてニガリを打ちます。そう、ニガリは打つっていうんだそうです。なんかプロっぽくていいでしょう(笑)? この瞬間がいちばん緊張しました。ちゃんと豆腐と水に分離するかどうかの分かれ目ですからね。…分離しない。えー、どうして? ちょっと悲壮感が漂います。ようやくここまで来たのになあ。温度が低かったかなあ。えーい、ままよ、火をぐっと強くしてみよう。すると! 表面が黄色い水と固形物に分かれてきました。感動の一瞬。

 ちなみに、この固形物がおぼろ豆腐です。豆腐やさんで売られているおぼろ豆腐はかなり固形化が進んでいますが、できたてのおぼろ豆腐はほんとうにぽろぽろしています。沖縄には、このぽろぽろのおぼろ豆腐にだし汁をはった「ゆし豆腐」というおいしい郷土料理があります。これまでは沖縄料理の店でしか食べられないと思っていたけれど、やったー、これからは自分で作ればいいんだわ。

 しかし、今回はおぼろ豆腐にしないで、かためることにしました。それも木綿よりかたいお豆腐に。ざるですくってフキンを敷いた漬物容器に入れます。包んで、押しをして待つこと30分。がんがん黄色い水があがって、晴れて自家製豆腐のできあがりです。さて、私はこのお豆腐で何を作ったでしょう? 湯豆腐? 田楽? 残念でした。一品豆腐です。豆腐に片栗粉をまぶして焼き、トウバンジャンとしょうゆと水でいため煮する中国料理。かなり水切りしないと日本の木綿豆腐ではやわらかすぎてうまくできないので、一度ちゃんとかたい豆腐で作ってみたかったのでした。結果は大成功。豆腐の弾力が違います。大豆の味と香りが濃厚です。かなり美味なり。2時間、2時間早起きしたら、毎日できるな自家製豆腐。…それはさすがに無理だろうな(笑)。

 2丁のお豆腐を作ると、同時におからが丼に山盛り一杯できます。これを炒り卯の花にすると丼2杯分になります。おからはいたむのが早いので、毎日せっせと食べなくてはいけません。捨てるにはしのびませんからね。お金がないときのお助け料理としては最高ですが。お豆腐づくりに精出すなら、おから料理も開眼しなくちゃなあ。撮影写真、あったほうがよかったですね。すみません、食べ終わってから気がつきました(笑)。

 次に挑戦したいのは、油條という中国粥用の揚げパンです。中国粥はよく作るので、そこに揚げたての油條を入れたいのです。材料の中力粉と重曹はすでに買ってあって、これもあとは作るだけ。ただ、これは時間的に半日ぐらいかかるので、“今日は一日ほんとうにオフ!”というときに試してみることにします。

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