アカデミー賞願望的予想

 さすがにこの時期になると、どのメディアもアカデミー賞予想企画で大賑わいです。“今年の作品賞はどれ?”“主演男優賞はだれ?” 私も、この映画界最大のお祭りは大好きなので、ひそかに盛り上がっております。そろそろこの辺で主要部門の受賞予想をエントリーしておくことにしました。

 予想を決定するには2つのファクターがあります。1つは誰が(何が)取るかをノミネート状況やアカデミー会員の心情を勘案しながら当てるというもの。そしてもう1つは個人的願望です。名のある映画評論家でもこの2つはごっちゃになる傾向があって、完全分離して考えるのは難しい側面があります。ですが、私は今回個人的願望だけで予想を組むことにしました。つまり、私がアカデミー会員なら、これに投票するというスタンスです。

 簡単なものから行きましょう。助演男優賞。これはもう、私のベニチオ・デル・トロです(笑)。ノミネート作は見てないけど、この人はほんとうに演技のうまい人ですからね。安心して票を投じることができる。ただ、もし、ベニチオがこの中にいなかったら、私はホアキン・フェニックスに入れたでしょう。「Gladiater」で最も光っていたのは、ラッセル・クロウでも、ベン・ハー的な戦車シーンでもなくて、敵役のホアキン・フェニックスでした。主役ラッセル・クロウのキャラがたったのは、ホアキンがほんとうに憎たらしい、狂気的な王を演じることに成功したからです。勧善懲悪ストーリーで最も重要なのは敵役。「Die Hard」が大ヒットしたのも、半分はアラン・リックマンのおかげと私は思っています。

 では助演つながりで助演女優賞。この部門はどれも見てないんですけど、ケイト・ハドソンだと思います。ノミネート作の「Almost Famous」予告編を見たかぎりでは、若いのに達者な演技をしていました。お母さんがアカデミー賞をとったゴールディー・ホーンで血統もいいし、ここはアカデミー会員も“新しい血を入れる”ってことで彼女を選ぶのではないでしょうか。

 はい、そして主演男優賞です。下馬評では圧倒的にラッセル・クロウなんですが、私はトム・ハンクスにします。だってやっぱり「Cast Away」でのあの減量はすごかったんですもの。あの年でも、一年がんばればあれだけ美しいスレンダーな体を作れるという実例は、中年近づく私に希望を与えてくれましたよ。ラッセル・クロウのあの役は、それだけでとてもヒロイックだから、彼でなくてもあのレベルはいったと思います。トム・ハンクスはすでに主演男優賞を2度とっていて、それがアカデミー会員の嫉妬を呼ぶかもしれないんですけど、うまいものはうまいんだからしょうがないじゃないという感じですね。

 次は主演女優賞ですが、私はジュリア・ロバーツには投票しません。ジョアン・アレンを選びます。ジュリアは人気はあるかもしれないけど、演技にあまり幅がないんですもの。どんな役をやっても、“私はジュリア・ロバーツです”って顔に書いてあって、その意味では性格俳優に近いと思います。その点、ジョアン・アレンは演技派女優。同じ母を演じても、「Pleasantville」と「The Ice Storm」での落差といったら。ノミネート作「The Contender」でもやってくれているに違いないという期待をこめて、彼女に賭けることにします。

 監督賞は難しいんです。私の心がいまだに揺れている部門です。リドリー・スコット、アン・リー、スティーブン・ソダーバーグ。みんないい監督。リドリー・スコットは「Blade Runner」が私のエバーグリーン・フェイバリットなので肩を持ちたいのですが、「Gladiater」はスケールだけでひっぱってる映画って気がしてましてねえ。スティーブン・ソダーバーグは同部門へのダブルノミネートですが、「Erin Brockovich」では受賞の可能性はないと思います。だから選ぶとしたら「Traffic」の監督としてのスティーブン・ソダーバーグか、アン・リーか。前者は見てないからなあ。ここは個人的願望のすべてをこめてアン・リーにします。

 そして、そして、作品賞! これも監督賞と同じ考え方で「Traffic」か「Crouching Tiger,Hidden Dragon」か。やっぱり私情をはさみまくって後者ですね。いろいろな部門で一番ノミネートが多いのは「Gladiater」で、ハリウッドでの受けがいいのは複雑な群像劇をわずか54日で取った「Traffic」だったりするのですが、私はアジア人の矜持を持って「Crouching…」に肩入れします。そして、この作品は外国語映画賞も取る、と。「Crouching…」、アジア映画のニュー・ホライズンを開いてくれ!

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