新しい趣味

 日本刺繍を始めました。インドア人間の面目躍如たる趣味でしょう(笑)? 資生堂のCMに“後半戦を美しく”というコピーがありますが、人生後半戦のテーマを見つけた気分。正直、ハマってます。

 日本刺繍との出会いはもちろん、きものから。刺繍の施されたきものや帯はとにかく綺麗なので、買える買えないは別にしてとても好きでした。日本刺繍の本は美術書としても最高で、仕事に疲れて“何でもいいから美しいものが見たい!”という気持ちになったときは、これらの本をながめたり、刺繍の展示会に足を運んで心を癒したものでした。

 始めは見るだけで、自分にはとてもできないと思っていたんです。日本刺繍の世界を一言で表すなら精緻。1mm以下の正確さが問われることも多いので、基本的には不器用が服着て歩いているような人間に手に負えるものではないのです。でも、仕事に追われる毎日を過ごすうちに、これでいいのかって思うようになりましてねえ。なにか純粋にクリエイティブなものを作り出してみたくなったんです。原稿書きも創造といえば創造ですけど、私の中では“アート”ではなくて。じゃあ、ほんとにアートといえるものが作れるようになるのかというとそれはわからないんですけどね(笑)。まあ、やりたいと思うなら、やってみればいいか、と。

 日本刺繍をするというと、まわりは「一日PCに向かって、それでまた細かい作業をする刺繍? よっぽど根を詰めるのが好きなのね」という反応が返ってきました。どちらも根を詰めている気なんてさらさらなく(笑)。自分のペースで進められる、一人の作業というのがどうも好きなんでしょうな。綺麗だし、もしはからずも上手になれたなら、自分で模様を挿したきものや帯が作れるようになるし。

 写真の作品は、通っている教室で作成した最初の作品。細かい部分にはあらがいーーっぱいあるので、今のところこの大きさでしかお見せできません(笑)。でも、少しずつでも完成に近づいていくのはうれしいし、一作仕上げる達成感はことのほか。ここの日本刺繍教室はなかなか厳しくて、挿し方が綺麗じゃないとすぐ「やり直してもらえます?」といわれます。仕事が忙しかったり、気分が萎えているときは、「えーっ、またあ?」という気分になるのですが、結果的にはやり直してよかったなということになります。教室にはいろいろな世代の女性14人が机を並べているのですが、これまでいろいろ刺繍をしてきたという人や和裁をしている人などがいて、みんな私よりうんと上手。思わずめげちゃいそうになる気持ちを、“競争じゃないんだし、自分の尺度で上達していけばいいじゃない”と自分で抑えています。

 どんどん難しく、どんどん細かくなっていっていますが、「とにかく脱落しないこと!」を合言葉に、必死についていっております。たぶん20年ぐらい経ったら個展が開けると思いますので、そのときは見にきてくださいね(笑)。

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