解決してしまった

 長い間、消化不良に悩まされてきました。私の場合、不都合は胃より腸で起きます。未消化物がここで異常醗酵して、下腹がパンパンに張るのです。元来、腸が非力なんですね。痛くはありません。でも、一日中おなかがゴロゴロいい続け、おへその下の皮膚がつっぱらかります。その気持ち悪さったらありません。こういう醗酵臭って体の外にもしみだすんですよね。いちばんショックだったのは、私のひざで遊んでいた甥が「おばちゃん、へんなにおいがする」といって逃げていったこと。もうポリデントの世界(笑)。

 起きぬけに冷たい水を飲むとか、ヨーグルトを食べるとか、整腸剤や腹部膨満感対策の薬を飲むとか、使いきりカイロをおなかに貼るとか、そんなことはとっくに試しました。でも、まったく効き目なし。もう胃腸病の専門病院に行くしかないと思い、インターネットで病院探しを始めたのですが、それと同時に胃腸病に関する本を二冊読みました。「新訂胃・腸病退治百科」(志賀貢監修 みずうみ書房)「汚れた腸が病気をつくる 腸をクリーンにする究極的方法」(バーナード・ジェンセン著、月村澄枝訳、ダイナミックセラーズ出版)がそれらです。
 
 わかったことは、積極的に食べていた食物繊維の多い野菜が、私の弱い腸の中では消化不良を促進していること、玄米や生の貝など私の好物がことごとく消化の悪い食べ物であったことでした。つまり、自分で消化不良の原因を作り出していたのです。じゃあ、これらを食べなければ治るのでしょうね。でも、それはちょっと悲しすぎる。
 
 やっぱり読むべきものは本ですね。二冊の本の中には原因だけでなく、解決法もちゃんと記されていました。
“消化は口から始まる”
 そうなんです。消化は自力でコントロール可能なんです。目からウロコが落ちました。よく噛めばいいんだ! それで腸を助けてやれる! あのときはほんとに目の前が明るくなった気がしましたねえ。そういえば、私は食べ物を、あまり噛まずにほとんどのみこんでいました。これが諸悪の根源だったというわけです。
 
 さっそくやってみました。食べ物を口に入れたら、形がなくなるまで咀嚼しないとのみこまないというルールを作り、厳格にそれを守ったのです。(よく、30回噛んで食べるという言い伝えがありますが、あれはダメです。数を数えることに気がとられて食事が楽しくない)。そうしたらどうでしょう、口の中を噛みまくるじゃありませんか(笑)。唇の内側や頬の裏肉がたちまち傷だらけになりました。いかに噛むことに習熟していないかを物語る現象であります。噛むことにも鍛錬がいるのです。

 しかし、食事は格段においしくなりました。ごはんも、イワシの塩焼きも、ほうれん草のおひたしも、噛むほどにそれはもーお、甘くなるんです。大発見! 何を食べても、どんな調理をしてもおいしい。ごちそうなんかいりません。ただし、食事時間は今までの15分から一気に一時間になりました。最後の方は噛むのに疲れてくるので、お茶碗一杯のごはんなのに、おひつを相手にしている気分になります。これはダイエットしたい人にも最適だと思いますよ。今日からすぐできるので、ぜひ一度トライしてみてください。

 果たして消化不良問題は? 霧散しました。イッツ・ゴーン! うそみたい。
 
 でも、食事時間がのびたことによって、少々困ったことも起きています。人と食事するのが大変になっちゃったんです。これまではあまり気にしたこともなかったんですが、皆さん、食べるのがむちゃくちゃ早い。まあ“早食い、早なんとかは芸のうち”ということわざがある国ですからね。ただでさえ食べるのは遅かったので、もう食事のスピードが全然合いません。残念なことに、人と食事するときは仕事の合間を縫ってということが多くて、おうおうにして急いでいます。しかたなく半分残すんですが、申し訳ないと思っています。もったいない、もったいないです。それはじゅうじゅうわかっているんですが、私のかよわい腸を守るため背に腹は変えられません。お仕事仲間の皆さま、私が食事を残しても、決して口がおごっているからではないので、どうかどうかお目こぼしを。

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