北京に行きたい

「夏になったら北京に行こう」
中国製の自転車をゆっくり漕ぎながら、椎名桔平はそういった。

 まっ、私にいったんじゃないですけどね(笑)。「発熱天使」という映画の中でのお話。「GONIN」ですごい新人が出てきたなあと思っていたけど、最近うまい役者であることを再確認して、過去の作品を漁ってマス。
 
 全然関係ないけど、歌人の俵万智さんも椎名桔平さんがお好きなようで、こんな歌を詠んでおられます。
「木曜のドラマが終わったそののちは、生きずともよい椎名桔平」
…勝てません(笑)。
 
「発熱天使」は北京を舞台にした半分ドキュメンタリーのようなヘンな作品で、いわゆる“感動した!”とか“おもしろかった!”というリストには入れてあげられません。でも、私が未知なる食材を探しに行きたいと思っていた北京に、今注目している椎名サンが行って主演した。それだけで私には大変興味深い映画でした。

 椎名サンは椎名サンのまま出ていて、失踪した友人を探している設定になっています。その過程で、北京在住の画家やミュージシャンや映像作家や舞踊家に出会い、政府の弾圧の強い中国で芸術活動をすることへの複雑な思いを聞かされることになります。作品のテーマはずばりそれ。椎名サンはいわば狂言まわしですな。出演した中国人アーティストたちはそれぞれに本音を語っています。“へえ、中国の人も今はこんなことを考えているんだ”という発見があって、それなりに新鮮ではありました。
 
 この映画での椎名サンはあんまり演技力を発揮しているとはいえないけれど、彼の食べていた料理はどれもおいしそうでした。旅館で食べていたテイクアウトの弁当でさえも。丸のままの唐辛子がびっしり表面をおおっていたあの麺はなんていうんだろう。彼は汗まみれで食べて、「絶品」とペーパーナプキンに書きました。あれはぜひに食べてみたい。
 
 なんてったって北京には六必居(りうびじゅー、と読むらしい)という何百年も続いたお漬物屋さんがあります。子供の頭ほどある根野菜の味噌漬や、マリリン・モンローよりくびれた姿態を持つ木の実のしょうゆ漬けがあるらしい。それはやっぱり見たいでしょう。朝、街角に立つお粥やさんにも行きたいし、犬から猫から何でもありの生鮮市場ものぞかなくっちゃ。
   
 夏になったら北京に行こう。椎名サンがそういったから、この夏私は北京に行きたい。誰か北京語わかる人(笑)?

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