逃亡者2

 また、追われる夢を見ました。しかし、今度の場面は無事逃げ切った後の話です。私は仲間と別れ、名前を変えて縁もゆかりもない土地で静かに暮らしています。あれから2年の月日が経っていました。
 
 ある日、昔の仲間で夫婦ものになっている二人が“会おう”と連絡してきました。そろそろほとぼりも覚めたころだろうとその提案に同意し、新宿新都心の高層ビルの上にあるレストランで食事をすることになりました。
 
 再会は楽しいものでした。よく食べ、よく飲み、よく笑いました。このところの暮らしはまことにひっそりとしたものだったので、事情のわかっている昔の仲間と忌憚なく話せることが心からうれしく、いっそこの時間が終わらなければいいのにと思いました。
 
 帰り際、二人はエレベーターのところまで送ってくれました。“楽しかったわ、また会いましょうね”と彼らは握手を求めてきました。私はそれに応えます。そして、エレベーターの奥の方に乗り込んで向き直り、彼らに満面の笑みを返しました。しかし、ドアがしまる瞬間、私はこれが罠だったことを悟りました。1cmのすきまからのぞく彼らの笑顔がわずかばかり変容していることに気づいたのです。心のどこかで“やっぱり”と思っている私がいました。
 
 逃げなければなりません。このエレベーターは57階下のロビー階まで直通です。そこに着いてドアが開いたら、まわりの乗客とともにその場で殺されてしまうでしょう。彼らは非情なのです。私に与えられた時間は5分。さあ、どうやってこの危機を脱出するか?
 
 というところで目が覚めました。以来、エレベーターから消えるトリックを考え続けています(笑)。顔を変える、衣裳を変えるというのは一つのアイデアかな。実は整形して別人になっていたのだけれど、この日だけ前の顔をマスクでつけていた、とか。天井から出て行くというのもあるけど、それを下にいる敵に気づかれないよう音もなくやるというのは難しいかも。第一、それでは乗客が騒いでしまう。じゃ、いっそその乗客を味方に引き込むか。一階に着いたらこのエレベーターは爆発しますから非難しましょう、とか? 下降を止めない状態じゃ無理だなー。わかった、乗客はみんな私の雇ったエキストラだった、だ。一人が用意していた特大スーツケースに私が入って運んでもらう。あるいは私と乗客の一人がすり替わる、あるいは全員私に変装する(どこかで見たな(笑))。
 
 なんかいいアイデアあります? 乗客がみんな敵の雇ったエキストラだった、というのはなしね。話が終わってしまうから(笑)。  

戻る このサブジェクトについてメールを書く