ダーリンに再会

 今回は映画「The Hunted」のお話です。よく見てるじゃないかって? でも、まあ月2本ですからねえ。それが多いといえるかどうか。待ちに待ったBenicio Del Toroの新作だし、これだけは見逃すわけにはいかなかったのです(笑)。(この原稿に限りネタバレが激しいので、これから見る予定の方は読まない方がいいかもしれません)
 
 ほんとはこの映画、2002年に封切られる予定だったのですが、撮影中にBenicioが手を骨折して中断。その回復を待って撮影されたためにここまで公開が延びてしまいました。前作「The Pledge」はほんのチョイ役だというので見送っていて、「Traffic」から数えると足掛け3年、文字どおり首を長くして彼に再会できるのを待っていたのです。
 
 相手役はTommy Lee Jones。といえば、大体映画の中身は想像できるのではないでしょうか。そう、ほとんどHarrison Ford主演の「The Fugitive」と一緒なのです(笑)。違うのは、Harrison Fordは無実の罪で追われたけど、Benicioはほんとうにサイコキラーだったということぐらい。
 
 もともと軍隊でBenicioを殺人者に仕立てたのがTommy Lee Jonesで、Benicioが殺人の苦しさから父親のように慕っていたTommyに助けを求めたのに、ちゃんと答えなかったからBenicioがサイコキラーになった、というところにストーリーの新規性を求めたみたいです。でも、TommyとBenicioの仲のよかった時代の関係があんまりよく描かれていないから、現在の葛藤が今いち浮き上がってこないときたもんだ。
 
 ジャングル→大都会→急流と場面がくるくる変わる中での追いつ追われつのチェイスシーンは今までにない新鮮さがあって、見ていておもしろかったです。ただ、どんなにTommyが幾多の映画で追跡のプロ&ベテランをやっていても(笑)、Benicioとがっぷり四つに組むのには無理がありましたねえ。だって年とガタイが違いすぎるんですもの。かたや35歳で、身長が190cm近くある人ですよ。かたやお腹が出てる56歳ですよ。Benicioは一生懸命腰を折ってTommyが小さく見えないように気を使っていたし、格闘シーンはTommyが有利なように振り付けされていたけれど、潜在的な力の差は歴然としていました。なんであれでTommyが勝つかなあ。
 
 このように文句はタラタラあるのですが、それを差し引いても、やはりBenicioはよかった。あの、狂気をはらみながらも、シャープさを感じさせる目。子どもを抱きしめるときのやさしい笑顔。まあ、SWATを演じるにはちょっと体が大きすぎる気はしますがね(笑)。今度もまた声を変えるところから役作りをしていて、あいかわらず芸達者ぶりを発揮していました。
 
 来年、またRobert De Niroと共演するんですよ。それがなんと日本版「Memento」といえる中田秀夫監督の「カオス」のリメイクらしい。Benicioが萩原聖人のやったさえない便利屋をやるんだろうけど、De Niroは誰をやるんだろう? 妻を誘拐される会社社長 光石研の役なのか? それとも刑事の國村準か? しかし、「カオス」って一種の恋愛映画だと思うんですが、主要な男優が先に決まってしまうところにハリウッドの男社会を感じます。でも、まあ、私はBenicioが次々新しい映画でスクリーンに現れてくれさえすれば、それでいいんですけどね(笑)。

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