怒りの管理

 一人で働いて、一人で暮らすことのやっかいな点の一つは、何かあったときに感情の処理に困ることです。特に喜怒哀楽のうちの「怒」は、一度噴き出させてしまうと、それを収拾するのに苦労します。私はまた人一倍怒りやすくて冷めにくい性格のようなので、正直自分でも持て余しています。私は英語でいうところのa short-tempered oneなのです。
 
 どうやらこれは母譲りです。長い間、私は母が優しくて世話好きな人だと思ってきました。それはまあ実際そのとおりなのですが、その一方で、とんでもなく勝気でけんかっ早い人なのだということが最近わかってきました。前者は表層で後者が本質って感じ。私はどうもその血をストレートに受け継いだようです。だから、私を柔和だとか温厚だとか思っている方がおられたら、それは大きな間違いです。私は怒りやすくて、怒ると手がつけられくなってしまうタイプなんですよ(笑)。

 いったん怒ってしまったら、もう仕事どころではなくなってしまうんです。さっさと気持ちを切り替えたいとは思うんですけど、有効な解決策はいまだ見つかっていません。散歩に行く、本屋に行く、飲みに行く、おいしいものを食べる。ショッピングをする。さっさと寝てしまう(昼間でも)。どれも部分的には効果はあるんですが、怒りが霧散するというわけではありません。何も考えずに電話か何かで誰かにぶちまけてしまえばいいのかもしれませんが、怒りを招いた前提の話をするのがまどろっこしいんですよね。それに相手としても、喜びならともかくいきなり怒りに対処させられても迷惑というものでしょう。怒りに我を忘れても、その辺のところは気がまわるんですよ、なんとか。
 
 以前からその傾向があるのは気づいていたんですが、ようやく解決に乗り出してみるかという気になって本を読んでいます。「怒りのセルフコントロール」というんですが。ほんとうは「怒りに効くクスリ」という本が欲しかったんですけど、売り切れで。待ってでも手に入れたほうがよかったかなあ。「怒りのセルフ――」は米国で書かれた本の翻訳で、アメリカ人を対象にしているからか、どうも違和感があります。まあとりあえず最後まで読んでみますか。
  
 ハリウッド映画に「Anger Management」という作品がありまして。邦題は「NY.式ハッピーセラピー」といって、原題とは似ても似つかないタイトルなんですが、これが怒りをテーマにしたコメディなんです。Adam Sandlerがふだんはいい人なんだけど、ひとたび怒るとキレて暴力をふるってしまう青年、Jack Nicholsonが怒りっぽい人を心理療法で治療するセラピストを演じていて、ドタバタ騒動を起こすというお話。
 
 この中でグループセラピーが出てくるんですよ。怒りっぽい人ばかり何人も集まってきて、自分の体験を話すんです。それについて先生や参加している仲間がコメントするんですね。映画では変人大集合で笑わせるシーンなんですが、こういう取り組みの真面目バージョンが日本にあればいいな。もしかしてもうあるのかしら? 人のリアルな体験をいっぱい聞けば、怒るなんてバカみたいと思えるようになるのかもしれないと、ひそかに期待しているところであります。 

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