理不尽はある

この世は何が起こるかわからないという言葉がありますでしょ。先日、それをつくづく実感した事件がありました。

 2人ずつ向かい合わせに座る東海道線に乗ってたんですよ。結構混んでいて、私の席を含めて4つともふさがっていました。途中の駅で私の前の人が降り、かわりに誰かが急ぎ足で座りにきました。私は本を読んでいたので、視界に入ったのは、その人が手にコーラのペットボトルを持っていることだけでした。その人は乗っている間じゅうコーラをチビチビ飲んでいたのですが、新橋に着く寸前で、それは起こりました。

 その人が突然ブフッとむせて、当たり一面に口の中のコーラを撒き散らしたのです。噴水みたいに。当然のことながら正面にいた私は、顔から、胸から、しぶきを浴びました。もう、キモノも、道行きコートもしぶきだらけ。あまりの出来事に呆然として顔をあげると、目の前にいたのは、そう若くもない小柄な男性でした。

「すみませんです。申し訳ないです」と殊勝に謝るのですが、その言葉にはどうも外国人がしゃべる日本語のようなへんなたどたどしさと、、前から計画していたような妙な落ち着きがあって、なによりその目がまったく動揺してないんですよね。“ああ、この人は正常ではない”と私は観念しました。

 それが証拠に、新橋に着いたら何事もなかったように降りようとするのです。私の隣の男性は「彼が降りる前に賠償請求したら」といってくれたのですが、狂人にかみついても仕方がない気がしてそのままにしました。前に座ったときから、なんかおかしいなという感じはしてたんですけどね。キモノも、コートも、奇跡的にシミにもならなくて助かりましたが、災難ってああいうことをいうんだなと思いましたね。家へ着くやいなや、顔を洗いまくりましたよ。

教訓:電車の中では、ビンやカンやペットボトルを持った人のそばにいてはいけない。

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