たった一つのこの身を捨てて

 「Kill Bill Vol.2」か、「CASSHERN」か。かなり迷ったんですけど、「イノセンス」つながりでもう少し幻想を観ようかなと思ったのと、予告編で観た宮迫博之の狂気の表情が気になっていたので「CASSHERN」にしました。ちなみにタツノコプロダクションの原作は見ていません。
 
 平日の昼間だというのに満席。若い人が多いです。でも、まあ、この劇場は客席数105だから、指標としてはあまり当てになりませんけど(笑)。
 
 おもしろかったか。よかったか。うーん、映画的には実写とCGがああいう風に融合するのは今までなかったと思ったんですけど、どうも宇多田ヒカルのプロモーションビデオで観たような世界という既視感があって、特に斬新さは感じられませんでした。逆にいえばそれだけ紀里谷和明の世界観が確立されているということでしょうが。テーマ的には非常に今日的なものを扱っていたと思います。もうちょっと感受性の豊かな世代に見ていたら、もうちょっと感動したかもしれない。私も年を取りました(笑)。 
 
 役者的には唐沢寿明の映画ですね。彼が非常によくやっていた。彼がブライキング・ボスだったからこそ、リアリティを持つことができたと思います。この作品で助演男優賞にノミネートされるのではないでしょうか。私は唐沢版白い巨塔を観ていないのですが、あれもよかったんだそうですね。もはや押しも押されぬ中核俳優。これからの作品オファーが楽しみですな。でも、日本ではペ・ヨンジュンをヨン様と呼んでも、彼をトシ様とはいわないんだろうなあ。そうそう、蛇足ながら、私のベニチオ・デル・トロも、最近トロ様と呼ばれているそうです。呼ぶならベニ様とお呼び(笑)。
 
 鑑賞のきっかけとなった宮迫博之もよかったですよ。私が想像していた狂気とはちょっと種類が違っていたけど。彼とか、山口智充とか、器用なコメディアンは一体どこまで仕事の幅を広げていくんでしょうね。やがてお笑いをやらなくなるときが来るのか。それでもいいけど、テレビ番組のホストなどは上がりにしてほしくはないなあ。

 作品に戻って、難をいいいますとCASSHERNの誕生までに時間取りすぎ。とっとと変身して、もっとジャンジャン戦ってほしかった。やっぱりジャンルとしてはエンターテインメントなんですから。ついでにいえば、バックの音楽がスコア的にもボリューム的にも大仰すぎ。現場はきわめて静かな芝居をしていただろうに、あんなにでかいB.G.M.ではその魅力を相殺しているという気がしました。

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