ラブストーリーじゃつまんない

 すべては「Kill Bill Vol.2」がつまらなかったことに端を発するのです。Vol.1を見たといういきがかり上、やっぱりVol.2も見てあげるかと仏心を起こしたのがまちがいでした。

 Bill役のデビッド・キャラダインが殺し屋の頂点に立つキャラクターに見えない! The BrideがBillを愛していたように見えない! Vol.1の青葉屋のような迫力あるシーンがない! 映画会社がラブストーリーだって宣伝していたけど、それは映画のスジをねじまげてあおる彼らの手口だと思っていたのに、ほんとうにラブストーリーだったのでがっかりしてしまいました。アクション映画に愛はいらない(笑)! とにかくデビッド・キャラダインのおかげですべてが台無し。ときどきクェンティン・タランティーノは思い入れが強すぎて、大事なキャスティングを失敗するんですよね。パム・グリアーとかね。ここに宣言します。私にとってKill BillとはVol.1であり、Vol.1のみを指し、その中にVol.2は入っていません。

 というわけで、Vol.2が壊滅的におもしろくなかったおかげで、どこかで心のバランスを取らねばと次々と作品を渡り歩くことになってしまいました。ほとんどはビデオなんですけどね。

「化粧師」・・・椎名桔平が目的で見ました。劇場で見なくてよかったと思いました。化粧がテーマなのに、化粧シーンを省略しすぎ。
「リボルバー ―青い春―」・・・森山未来くんに期待してみたけど、一週間で撮っただけあってそれなりの仕上がり。そもそも松本大洋の原作はおもしろかったんだろうか?
「猟奇的な彼女」・・・めちゃくちゃおもしろかったのでございます。役者というよりストーリーテリングに大感心。テーマと脚本がすばらしい。頭一つ飛びぬけた韓国映画。セルDVDを買ってもいいな。
「ピアニスト」・・・打ちのめされました。少し盛りをすぎた音大のピアノの先生と彼女を慕う青年の残酷な愛情物語。ものすごくきつい話だけど、単なる絵空事とは思えないリアリティが。若いブノワ・マジメルがベテラン女優 イザベル・ユペールに食われることなく、対等に演技してたのがすごい。カンヌの主演男優賞を取ったのもむべなるかな。惚れました。フィルモグラフィーを追いかけるぞ。
「人生は長く静かな河」・・・というわけで、ブノワ・マジメルのデビュー作。12歳にして主役ですよ。何という幸運なスタートを切った人なんだ。柳楽優弥くんみたい。18年も前の映画で彼もまだ子供だけど、顔の根幹と歩き方が今とまったく変わらないので、ほほえましく思いました。ストーリー的には赤ちゃん取り替えもの。貧乏なうちでしたたかに育った少年が実はお金持ちのおぼっちゃんで、そっちへ移動するんだけど、一度身につけたしたたかさは健在でしたというお話。

 そして、仕上げというわけじゃないんですけど、やっぱり見てしまいました「スキャンダル」。ヨン様狙いの女性ばっかりかと思ったんですが、意外と男性もいました。R指定が効いたのか(笑)?

 でも、R指定の割には(別にR指定シーンを期待していったわけじゃないんですけど)、露出は少なく、あんなの体を張ったうちに入らないぜって感じでした。確かにヨン様のガタイは目をみはるものがありましたが、映ったのは一瞬、いや二瞬だけでしたもんね。

 ラクロ原作の「危険な関係」を韓国の歴史ものとして翻案したストーリー。ヨン様が演じるのは希代のプレイボーイの領主さまなんですが、がんばっているけど、まだもうちょっとワルっぽさが足りないな。この男は難攻不落の淑女をようやく落として賭けに勝ったものの、自分が本気になってしまうんです。そういう場面での葛藤や哀れさの表現みたいなものも要努力って感じですね。でも、アクションのできそうな気配が見えたのは収穫だったかも。

 しかし、この映画は見てよかった。衣装がすばらしかったのでございます。あのハリがあって透明感のある生地は麻かしら。ヨン様の着る白の韓服は地模様も凝っていて、お金がかかっていることを思わせるものでした。そして、刺繍が出てくるんですよ。衣装にも入っているし、趣味としても語られる。花の刺繍の入った赤いストールが重要な小道具として使われていました。技術そのものは日本刺繍の方が勝っている気がするけど(笑)、刺繍ってやっぱり絵になるわと自分の趣味を誇りたい気持ちで家路についたのでした。

 そうそう、これから「スキャンダル」をごらんになる皆さま、エンドクレジットをパスして帰っちゃダメですよ。お楽しみはその先にもありますから。

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