血沸き肉踊る知的冒険活劇なり!

 ウワサの「ダ・ヴィンチ・コード」、読みました! ちゃんと英書で。日本語訳が出る前に絶対読了しようと思って、集中しました。489ページ、一週間。でも、すごくおもしろかったから、ちっとも苦行ではなかったです。

 展示会の制作に追われて、読書もずっと禁欲していました。本を読まないと、心がひからびてしまうものですなあ。つらかった。こんな状態で一生いなきゃならないのなら、生きていくことに何の意味があるんだろうと思うくらいでした。しかし、いざ展示会が終わって時間に余裕ができても、すぐには本に帰れませんでした。すっかり心がかたまっちゃってて、何をどう読んでいいかわからなくなってしまっていたのです。しかたないので、染織関係者や日本画家の伝記や、作家の食文化エッセイなどのノンフィクションでリハビリをして、少しずつ物語を受けつける体に戻していきました。

 その本格復帰第一弾が「ダ・ヴィンチ・コード」でした。おもしろいと聞いていたんですが、正直いって読みきれるかどうかは不安に思っていました。でも、杞憂でしたねえ。

 舞台はパリ。ある夜、ルーブル美術館のトップキューレーター(館長といっていいのかな?)が殺されます。彼は死ぬ間際に謎を秘めたメッセージを残すんですが、その中になぜかハーバード大学の紋章学教授の名前が。その謎を解くために彼が呼ばれ、パリ警察の暗号解読部門の女性担当者がやってきます。この女性担当者はひそかに教授と接触し、「警察はあなたが犯人だと思っているから逃げたほうがいい」とたたみかけます。教授はわけのわからぬまま、彼女と二人、長い長い逃避行の夜に飛び込んでいくのでした・・・。

 なんといったらいいか、アクションと謎解きが合体したストーリーなんですよね。追われているから登場人物は動かざるを得ず、その途中で暗号を解読していくんだけど、解いた端からまた新しい暗号が出現する。その暗号解読にはヨーロッパの歴史や宗教の秘密が深く関わっていて、読者の知的好奇心をくすぐってくれます。これをいったら、この作品をほめたことになるのかどうかわからないんですけど、大人のドラゴンクエスト、大人のファイナルファンタジーって感じ。読み始めたら最後、ラストにたどりつくまでyou can't stop.

 出てくるキャラクターがもう、みんなひとクセもふたクセもあって怪しくて(笑)。489ページもあるのに、物語的にはたった一日の話というのもすごい。すでにロン・ハワード監督による映画化が決定しているんですが、キャストはまだこれからみたい。大学教授、誰がやるんだろうなあ。ひと昔前ならハリソン・フォードで決まりって感じなんですが、ハリソン・フォードは作品の中に名前が出てきちゃうんですよねえ。そうそう、ビル・ゲイツの名前も出てきます。フィクションなんだけど、歴史と現代をうまく結びつけていて、え? これってもしかしてほんとのこと??? と思わせる巧みさがあります。ううう、キャスティング楽しみだなあ。

 聖書をまったく読んだことのない人には、ちょっと理解の難しいところがあるかもしれませんが、そういう場合でもレオナルド・ダ・ヴィンチの絵をまじまじと見直したくなることまちがいなし。エンターテインメントとして最良の一冊。つくづくこれが本格復帰第一作でよかったと思いました。読書は楽しい!

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