絵画層修復 (Restauro pittorico)
 
 
充填整形
  (Stuccatura e imitazione della superficie)
支持体の欠損部や絵具の剥落部分などに石膏を膠などのメディウムで溶いたものを充填し、オリジナル周辺部と同じ高さまで削ります。その後、周囲の筆致やマチエールに合わせて表面を整形することで欠損部分とオリジナル部分の連続性を再構築します。
 
補彩 
  (Reintegrazione pittorica)
  
 
  絵画や彫刻にとって、欠損部分や充填された部分をそのままの状態にしておくと鑑賞性が損なわれます。そのため、鑑賞性を妨げず、かつ可逆性のある素材を使用して後の修復の為に補彩箇所が判別できるようにする処置のことを補彩といいます。

イタリアの補彩の特徴として、色を混ぜ合わせず単色同士を細かな線で並置するtratteggio(トラテッジョ)と呼ばれる補彩方法があります。修復部分はオリジナル部分と区別がつかなければばならないという修復の原則にのっとった方法です。このtratteggioを用いた場合、遠目では線が識別できず色が混じり合って見えるため補彩箇所が分かりませんが、近づくと線の集積が見えてオリジナルと補彩箇所が判別できます。色を混ぜないのは単色の彩度を最大限に生かすため、また顔料同士の科学反応によって発色が不安定になることを避けるためです。

オリジナルを完全に模倣する補彩方法(mimetico=模倣)では、オリジナルと補彩部分との見分けは難しく近くで見ても補彩箇所はわかりません。本来の修復の原則とは異なりますが、しばしばこの方法も用いられます。

 
  Tratteggio技法には selezione cromatica astrazione cromatica が挙げられます。
 
  Selezione cromatica(色彩の選択)
    絵具欠損部分など中断されたモチーフが再構築可能なとき、各部分を色同士の平行な線を使って繋げる方法です。
様々な単色の線を並置させることで、人間の目には色同士が混ざり合って形を構築しているように見えます。
色彩の選択ということは色彩を単色の組み合わせに分析して選びなおすということです。
     
 
Selezione cromatica
   
拡大
 
       
  Astrazione cromatica(色彩の抽象化)
  中断されたいくつかの形が想像力なしには再構築不可能なときに使われます。原則として欠損部分が広範囲にわたっている場合などに用いられます。

色彩の繋がりだけのために、作品の中にあるいくつかの色を利用し、隣り合わせた色の中間となるような色同士を交互に組み合わせ均一に繋げていきます。それらの色は別々に知覚され目の中で混ざり合って見えます。

 
 
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