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1975年8月25日発表BAL-1003

「萬花鏡」は全曲佐井好子の作詞作曲になるものだが、テイチクのディレクター・春名勇はエンジニアに伊豫部富治、プロデュースとアレンジャーに大野雄二を指名する。(余談だが伊豫部と大野は1973年に梶芽衣子のシングル盤の録音で出会った後、この「萬花鏡」で再会し、その後長くコンビを組んで名作を多数リリースしている。)音楽的な知識には乏しかった佐井好子が、大野に曲の構想を伝える中で作品を完成させてゆく手法は、伊豫部のミキシングによって、ブルージーなサウンドにダークなイメージと豊穣な感性を融合させたアルバムを彩ることになる。

佐井好子の魅力の核である歌詞は、このファースト作でその奥の深さをまざまざと見せつける。「青ざめた夜の精」「逢魔ヶ時」「したたりおちる空の赤み」「揺れる血の海」「サーカス団」「魔性の女」「死の淵」「血まみれの緑いろ」...。この一見残酷な言葉を巧みに歌詞に用いながら、その言葉通りの意味に拘束されることなく、まるで夢幻の世界を想像させる歌唱スタイルは、当時も今も比類なき存在だろう。

佐井好子自身によれば、当時は日本人であること、女性であることから感じる自分の居場所の根元的な不安感、不信感が、こういった歌詞を書かせたのだろうと語るが、そういった内省的な思索を一種の幻想詩として完成させ、鮮烈な音楽曲へと高めた彼女の才能にはひたすら感服せざるをえない。唯一「紅い花」は、つげ義春の同名漫画作品から影響を受けて書かれた作品で、「二十才になれば」のシングルカット時にはB面に収録された。

サウンド面では当時森田童子のバッキングも務めた石川鷹彦がギターを担当。加えて琵琶、鼓、尺八といった邦楽器が曲の陰影を深めている。表ジャケットは奈良公園の奥地で、裏ジャケットは琵琶湖の桟橋で撮影された。
(CD版解説より抜粋/JOJO広重筆)



1 夜の精
2 冬の地下道
3 逢魔ヶ時
4 恋した人へ
5 椿は落ちたかや
6 酔ひどれ芝居
7 紅い花
8 二十才になれば
9 雪女
10 見果てぬ夢

全作詞作曲佐井好子
全編曲大野雄二



keyboard:大野雄二
A.Guitar:石川鷹彦
A.Guitar,E.Guitar:松元恒秀
E.Bass:岡沢章
Percussion:ラリー寿永
Drums:田中清司
Strings:新音楽協会
琵琶:平山万佐子
鼓:堅田喜作
尺八:村岡実

Producer:大野雄二
Director:春名勇
Engineer:伊豫部富治

Recorded At Mouri St.,Akasaka Music St.,Onkio Haus & Teichiku Suginami St. from May to June 1975.

Art Director:S.Saito
Cover design:H.Kawabata
Photography:Studio ELLE

Greatful Thanks to H.yamamoto,T.Nakamura & M.Masuda.
We would like to thanks all the creative people who helped in the making of this album.

原盤:テイチク株式会社