レオナール・フジタ展を見て
関西日仏学館から、レオナール・フジタ展の券をいただいたので、2010年1月28日(最終日)に大丸ミュージアムKOBEに見に行って来ました。
← これが展覧会の入口にあった「花の洗礼」(1959年)です。
↓ ボッティチェリの「プリマヴェーラ」に似ています。
今までフジタは特に好きな作家というわけではなかったのですが、今回まとめて作品を見て、これぞ日本が生んだ天才!とすっかり感激しました。
現・東京芸大に学び、若い頃から大変高い技術とセンスを磨いた人であることがわかります。しかし本格的に評価されるようになったのは、パリに渡ってからです。
かなり興味を持った私は、ミュージアムショップにて青幻社「ちいさな美術館」ポストカードセットを購入。1枚あたり約40円で超お得なシリーズです!
そこに収録された作品群を見ますと、フジタがいろいろな画家のエレメントを採り入れて、独自の世界を創り上げて行ったのだなあという感じがします。以下では、ボッティチェリ以外にも、私が個人的に「似てる?」と思った作品や、同時代の別の作家の作品との比較を試みたいと思います〜
まずベタなものから行ってみましょー ↓「寝室の裸婦キキ」(1922年)です。
↓誰でもわかる、マネ「オランピア」。
↓もうちょっといろいろ比べてみましょう。「私の夢」(1947年)……題からしてダリっぽいんですが、ここではとりあえず↓ゴヤ「裸のマハ」で。
マネもゴヤをマネしたと言われています。↓フジタの友人、モディリアニの作品もついでに載せときます。
次は、フジタが影響を受けたというよりは与えたかも?の、同時代の作家と比べます。
←「5人の裸婦」
↓ ローランサン「お城の生活」
←「舞踏会の前」(1925年)と↓デルヴォーの作品。ローランサンともども、乳白色の肌の女性像が印象的です。
フジタの絵の下にカーニバルの仮面があるのに注目です。
デルヴォーと同じベルギーの作家、アンソールと、フジタの、カーニバルの作品を見てみましょう。「リオのカーニバル」、「カーナバルの後」(1932年)と、アンソール「陰謀」です。アンソールのはベルギーのカーニバルであろうと思われます。
どんどん行きます。「タピスリーの裸婦」(1923年)と、マチスの2作品。あんまり似てないですかね〜 すみません(雰囲気だけ……)。
カーテンの柄が似てるかも〜
「調教師とライオン」(1930年)と、ルソー「夢」。ライオンと女性の組み合わせです。
← 題がよくわかんないんですがフジタ「Four Horseman」。
曼陀羅風にゴチャゴチャしとります。
こっちもよくわかりません、モロー「ユピテルとセメレ」。→
モローは19世紀のパリの作家はんどす。
だんだん比較がキッチュになってきましたので、ここでいったん真面目に戻ります。
フジタは50代でカトリックの洗礼を受け、キリスト教に関する作品も多く残しています。そんな晩年の作品の1つ「イヴ」(1959年)です(左端)。
16世紀初めのイヴ像と比べます。2番目は北方ルネサンスの巨匠クラナッハ父、3番目が子、4番目がデューラーの作品です。
クラナッハ父子の女性像は吊り目とデフォルメされた身体の線が特徴なんですが、同時代のデューラーの作品は写実的で、体つきがフジタ作品と似ています。なお現在、京都の国立博物館「THE・ハプスブルク展」にはクラナッハ父のサロメ像が来ているようです(私はブダペストで見ました)。
デューラーといえば、こんなのはどうでしょうか??
元祖イケメン自画像(1493年)。
そして「鳩と少女」(1955年)です。
ギャハハハ! まるで兄妹。
デューラーの絵はルーブルにあります。フジタはルーブルに通い、名画を模写して勉強していたそうですから、この絵のことをよく知っていたはずです。
それにしても、デューラーの自画像は本当に、見る人を惹き付けてやみません。奈良に集結した「アシュラー」のみなさんも、ぜひ一度この絵をじかに見てください!
それでは最後に。
フジタの描く女性の顔、誰かに似ていると思いませんか?
冒頭の「花の洗礼」の中央の女性を見てください。。。
フジタは、自分の本名を「Léonard」に変えてしまうくらい、ダヴィンチの大ファンでした。(2010.2.4.記)
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