awk言語の進化

このマニュアルではawkのGNUでの、POSIX に従った処理系の説明がされている。 多くのawkユーザーは、Version 7 Unix上のオリジナル awk(Berkeley Unix (through 4.3--Reno)上のものの基礎となった) 処理系 しか知らないだろう。この章ではawk言語の進化をかいつまん で説明する。

V7とS5R3.1との間の大きな変化

awk言語はVersion 7 Unix (1978)と、System V Release 3.1 (1987)で最初に 作られた新しいバージョンとの間で相当に進化した。このセクションでは変更と、 それについてのクロスリファレンスを要約する。

• 一行にある複数のルールの区切りに`;'を要求 (セクション awkの文と行を参照).
• ユーザー定義の関数と、リターン文 (セクション ユーザー定義関数を参照).
• delete 文(セクション delete文を参照).
• do-while 文 (セクション do-while文を参照).
• 組み込み関数のatan2, cos, sin, rand, srand (セクション 組込みの数値関数を参照).
• 組み込み関数のgsub, sub, match (セクション 組込みの文字列操作関数を参照).
• オープンしたファイルをクローズするための組み込み関数closeと、ユーザー がオペレーティングシステムのコマンドを実行するための組み込み関数system (セクション 入出力の組込み関数を参照).
• 組み込み変数のARGC, ARGV, FNR, RLENGTH, RSTART, SUBSEP(セクション 組込み変数を参照).
• `?'演算子と`:'演算子を使った条件式 (セクション 条件式を参照).
• 算術演算子`^' (セクション 算術演算子を参照) とその代入演算子`^=' (セクション 代入式を参照).
• 一部の古いawkプログラムで破られていた演算子の優先順位を Cと同じにした(セクション 演算子の優先順位(演算子のネストの仕方)を参照).
• FSにセットする値 (セクション フィールド分割の指定を参照)と、 split関数の三番目の引数として正規表現を許す (セクション 組込みの文字列操作関数を参照).
• `~'演算子と`!~'演算子に対するオペランドとしての動的正規表現 (セクション 正規表現の使い方を参照).
• 正規表現中のエスケープシーケンス (セクション 定数式を参照).
• `\b', `\f', `\r'というエスケープシーケンス (セクション 定数式を参照).
• getline関数に対する入力のリダイレクト (セクション getlineを使った入力を参照).
• 複数のBEGINルールとENDルール (セクション スペシャルパターンBEGINとENDを参照).
• 多次元配列のシミュレート (セクション 多次元配列を参照).

S5R3.1とS5R4との間での変更

UNIX System V Release 4 versionのawkでは次のような機能が追加されて いる(このうちの幾つかはgawkがオリジナルである)

• 変数 ENVIRON(セクション 組込み変数を参照).
• コマンドラインでの`-f' オプションの複数指定 (セクション awkの起動を参照).
• プログラム実行前に変数への代入を行うための`-v'オプション (セクション awkの起動を参照).
• コマンドラインオプションの終了をあらわすための`--'オプション。
• `\a', `\v', `\x' というエスケープシーケンス (セクション 定数式を参照).
• 組み込み関数srandが返す値の定義 (セクション 組込みの数値関数を参照).
• 大小文字変換のための組み込みの文字列操作関数toupper と tolower (セクション 組込みの文字列操作関数を参照).
• printf関数の書式指定文字`%c'の詳述 (セクション printf文を使った Fancier Printingを参照).
• printf関数の引数リスト中で("%*.*d")の様にフィールド幅や、精度 を動的に与える機能 (セクション printf文を使った Fancier Printingを参照).
• $0 ~/foo/の様に、マッチングオペレータを使用したときと等価な /foo/の様な固定正規表現(セクション 定数式を参照).

S5R4とPOSIX awkとの間での変更

POSIX のコマンド言語とユーティリティの標準は、awkに次のような言語の 変更を導入した。

• 処理系特有のオプション指定に`-W'を使用。
• 数値から文字列への変換を制御する為のCONVFMT (セクション 文字列と数値の変換を参照).
• 数値文字列の概念と、それが期待通りに動作するためのきちんとした比較ルール (セクション 比較式を参照).
• 以前にはドキュメント化されていなかった言語の機能の、より完全なドキュメント化。

POSIX awkにはないgawkの機能

GNUでの実装によるgawkではさらに次の機能が追加されている。

• `-f'オプションでサーチするパスを特定するための環境変数AWKPATH (セクション awkの起動を参照).
• `-W'オプションで指定されることにより使用できる様々なgawk特有の機 能 (セクション awkの起動を参照).
• FILENAMEがあるARGVの要素への添字を保持する変数ARGIND (セクション 組込み変数を参照).
• getline が -1を返したときやcloseが失敗したときの システムエラーメッセージが格納される変数ERRNO (セクション 組込み変数を参照).
• 変数IGNORECASE と、その効果 (セクション 大小文字を意識した照合を参照).
• 変数FIELDWIDTHS と、その効果 (セクション 固定長データの読み込みを参照).
• 次の入力ファイルへスキップするためのnext file文 (セクション next file文を参照).
• タイムスタンプを取得、出力するための組み込み関数systime と strftime (セクション タイムスタンプを扱う関数を参照).
• The `/dev/stdin', `/dev/stdout', `/dev/stderr', `/dev/fd/n' をファイル名として解釈する (セクション 標準入出力ストリームを参照).
• 拡張機能を無効とする`-W compat'オプション (セクション awkの起動を参照).
• POSIX に完全に準拠するための`-W posix'オプション (セクション awkの起動を参照).