甘辛コラム


vol.22  2002/5/15
5/15/2002 0:00 update

=灰色の決勝戦=


  5/11に武道館で行われたK-1 WORLD MAXの決勝戦(クラウス vs ガオラン) について、ムエタイマニアから現役キックボクサーまで、多くの人々から 疑惑の声 が上がっています。
 回りくどい言い方をせず、はっきりと言ってしまえば (K-1 WORLD MAXの 決勝戦は)「八百長ではないか」 ということです。

 『八百長』

 この言葉は、勝負の世界、特にお金や名声など、 様々な利権が絡む世界では 常について回る言葉 です。
 双方打ち合わせ済みのモノだけでなく、当事者の一方が全く知る由もない 所で行われているものもあります。
 そして実際、どう考えても「あれは八百長である」としか思えないような 試合が存在していることもまた事実です。
   注:八百長の本来の意味は 「双方で打ち合わせ済みの試合」です。
 ただ疑惑から邪推を膨らませるのは容易い半面、それを立証する事は 極めて困難な事です。

 それは「常に内在し得る問題であると 同時に、無闇に連呼してよい言葉でもない」のです。

 それを踏まえた上で、まず「あの 試合の流れが合理的に説明できるかどうか」 について検証してみることにしました。



 @ ガオランのK-1ルールでの 実力

 初戦のジャポー戦を見てもわかるとおり、K-1ルールではそこまで 『強い』という印象は感じられません。

 準決勝で敗れた小比類巻が「ケガさえなければガオランに勝てた」という 言葉も、あながち『負け惜しみ』ではないと筆者は考えます。

 チャップマンにしてもそうですが 『巧い』ムエタイの選手では打ち合いを要求されるK-1でその真価を発揮するのは 難しい ということです。


 A 決勝でのガオランのコンディション

 これはジャポー戦、小比類巻戦と通して見て思うのですが、 ガオランは首相撲に対するブレイクの 早さに苛立ちを感じていた のではないでしょうか。

 首相撲や肘を得意とするガオランが、その両方を封じられて戦わざるを 得なくなってしまったとしたら、その胸中は穏やかではないでしょう。

 しかもこの日は1日3試合。

 彼の精神状態はマイナスにこそなれ、プラスになることはありません。


 B TBSの煽り過ぎ

 ちょっといつものコラムらしくなってきましたが(笑)、TBSの 誇大広告に、見る側がノセられてしまった部分も作用しているでしょう。

 まあ 借金にマミレた元相撲取りで すらヒーローにできるTBS ならムエタイの雄を伝説の超人に 仕立てるくらい、訳のないことでしょう( ̄ω ̄)

 余談になりますが、決勝戦を前に渡辺いっけいがガオランを「ルンピニー王者」 と紹介していたのも 立派な 煽り 経歴詐称 です。 ガオラン本人が偽っている ワケじゃないんですけどねっ(´ω`)

 結局、ムエタイの中量級ではトップクラスに違いないものの、キックや K-1ルールでの実力となると、疑問符を付けざるを得ないのが実際の所でしょう。


 C 決勝で受けたガオランのダメージ

 これが今回の疑惑の焦点です。

 多くの目の肥えた観戦者が疑惑を抱くのには、それなりの訳があります。

 確かにガオランの反応は鈍く、KOされたシーンをVTRで確認しても ノックアウトされる程、ダメージは受けていないようにも見受けられます。

 とはいえ、一見浅そうに見える攻撃や、かすった程度にしか見えない 打撃が、実は大きなダメージを相手に与えいて、KOに繋ったという事も、 この格闘技の世界ではそう珍しい事ではありません。

 具体的に今回のKOシーンをなぞると、 ガオランの右ミドルの戻りにクラウスが左フックを当て、 少し足が止まったところに左フック ⇒ 右ボディー ⇒ 左ボディーを決め、更に 左フックを頭部に当てて右フックでガオランの顎を捕らえているということになり、 長くなりましたがあのKO劇を合理的 (合法的? ^_^;) に説明することができるという一つの結論を導き出す事ができるのです。





 「どの材料を切り取って 根拠にするかで、導き出される結論は異なる」 ので、絶対的な答えを導き出す事はできません。
 しかし、今回の決勝戦が 限りなく黒に近い灰色の試合 と呼ばれたにせよ、 『きっく入門』では上記の4点の考察より 今回の試合はセーフ と判定します( ̄ω ̄)


 まだそれでも納得できないという方もおられるかとは思いますが、 そういった方は初代K-1中量級王者のクラウス君に、一つ課題を課してはみませんか?

 「ムエタイ王者を1分でKOしたのはフロックではない」ということを、 今後の試合で証明してもらうという課題です。

 王者は勝ち続けてこそ、その価値を周囲に認められるもの、いや 『認めさせるもの』 だと筆者は考えています。

 クラウス君が来年もK-1 WORLD MAXを制覇したら、或いはガオランや 魔裟斗のリベンジを跳ね除けたら、その時は改めて祝福してあげましょうよ(^ω^)

 これでまた一つ、K-1中量級戦線に見所が増えました。