2005年11月30日

栃木県知事  福田富一様

社団法人 日本建築家協会(JIA)
関東甲信越支部    支部長 松原忠策
同 保存問題委員会  委員長 川上恵一
同 栃木地域会     代 表 藤原宏史

「栃木県庁舎議会議事堂」の保存活用に関する要望書

拝啓 時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
 貴県におかれましては、日頃より建築文化の継承に理解を示され、又、本協会の活動に格別のご理解とご支援を賜り、厚く御礼申し上げます。

 さて、新県庁舎の工事も平成19年度竣工を目処に進展しているとのことでございますが、現在使用されております現議会議事堂は、新議会議事堂が完成の暁には解体の予定になっていると聞き及んでおります。
 しかしながら、現議会議事堂は、建築家大高正人の設計により1969(昭和44)年に竣工した建築で、昭和44年度芸術選奨文部大臣賞(美術部門)を受賞しております。また、この建築は、工場生産によるPC部材にポストテンションを掛け巧みに用い、PCの架構をそのまま見せることにより、独自な内外空間を創り出しており、日本におけるPC部材を用いたモダニズム建築の金字塔と言うべきもので建築文化、建築技術史の面から極めて重要な作品であります。
 貴県により公表された計画によりますと、新議会議事堂完成後も現議会議事堂の場所は緑地公園として利用され、新たに建物を建てる予定はないと拝察されます。しかしながら、現議会議事堂は、築後36年しか経ておらず、その内部空間構成から、県民が必要とする中規模のホールや展示スペースなどを持つ多目的な文化施設として有効に活用可能なスペースを備えております。
 21世紀は環境の世紀といわれています。特に公共建築の持続的活用は今や行政の課題と申せます。省資源、省エネルギーの面からも、使用可能な優れた建物は無理に解体せず、必要な改修を行い存続させるべきと考えられます。屋上からの漏水等やポストテンション部材の劣化の問題があり、耐震診断の結果が危惧されていると聞き及んでおりますが、現在の技術によれば、充分解決可能と思われます。 特に、同じ設計者による類似した構造を持つ日本大学生産工学部図書館が耐震補強され活用されていることは、この建物の耐震補強が現実的なものとして十分可能であることを示しております。
 現位置に現議会議事堂が保存されれば、曳き家により保存された旧庁舎本館の中央部分と向かい合い、新庁舎本館へのアプローチとして、文化的、歴史的空間が生まれることになると確信致し、ここに現議会議事堂の活用保存を願って要望書を提出させていただきます。

 尚、私たち社団法人日本建築家協会関東甲信越支部、同保存問題委員会ならびに同栃木地域会は、上記実現のため、できる限りのご協力をさせていただくことを申し添えます。

敬 具