2005年12月16日

中銀カプセルタワー管理組合 理事長
山下 清兵衛 様

社団法人 日本建築家協会(JIA)
会 長 小倉善明
関東甲信越支部    支部長 松原忠策
同 保存問題委員会  委員長 川上恵一

「中銀カプセルタワー」保存再生に関する要望書

拝啓 時下益々ご清祥のこととお喜び申し上げます。

 さて、このたび、貴「中銀カプセルタワー」(東京都中央区銀座八丁目所在)の建て替えが検討されているとお聞きしました。
 申すまでもなく「中銀カプセルタワー」は、1972年に建築家黒川紀章の設計、大成建設株式会社の施工により竣工した、1970年代の日本を代表する建築として、日本の建築界・社会のみならず、世界の建築界に大きな刺激を与えた記念碑的な現代建築です。
 都心部という立地に、工場で製作されたビジネスの場とセカンドハウス的機能を付与した個室カプセルを、エレベーターや階段などの垂直動線を収めた鉄骨鉄筋コンクリート造の二本のインフラストラクチュアとしての塔に、ボルトで取り付けるという工法で建てられました。また塔の外部に露出設置された設備配管に個々のカプセルの配管が接続される仕組みになっており、当時建築や都市のあり方の一つとして主張されたメタボリズム(新陳代謝)理論と云う建築思潮を実現した建築として注目されました。
 このメタボリズム理論は、現在の都市の構造や社会のあり方を考える上で大切な「サスティーナブル」つまり持続可能なシステムにも相通じる部分があり、この建築もそのような構造を有しているとも考えられます。
 メカニカルで特徴のあるデザイン形態を持つこの建築も誕生してから33年を経て、東京の景観を語る際に欠かす事の出来ない「大切な建築」になりました。今では時を経て銀座に在住する人々だけでなく、この建築の姿は日本や世界の人々の記憶に焼きついております。
 建築は状況に応じて適切なメンテナンスをしていかないと持続していけませんが、貴「中銀カプセルタワー」は様々な事情によってそれがなし得なかったと伺っております。また、社会に伝えられているアスベスト問題は建築界全体で取り組むべき大変重要な課題であり、生命に関わる問題であるだけに、慎重な上にも慎重な対応が必要であることは言うまでもありません。安全に留意した十分な改修検討を踏まえ、カプセル部分についてはメタボリズムの理論に基づいて取り替えるという事により、機能更新とアスベスト問題の解決、記憶の継承を共に図ることも可能ではないかと思われます。

 戦後に建てられた建築は、歴史的な評価が定まっていない建築として取り壊されていくことが多いのですが、この建築の果たしてきた社会的・文化的な役割をご理解いただき、是非存続に向けご検討くださいますようお願い申し上げる次第です。

敬  具

2005年12月16日

中銀マンション株式会社 取締役社長
平岡 繁行 様

社団法人 日本建築家協会(JIA)
会 長 小倉善明
関東甲信越支部    支部長 松原忠策
同 保存問題委員会  委員長 川上恵一

「中銀カプセルタワー」保存再生に関する要望書

拝啓 時下益々ご清祥のこととお喜び申し上げます。

 さて、このたび、貴「中銀カプセルタワー」(東京都中央区銀座八丁目所在)の建て替えが検討されているとお聞きしました。
 申すまでもなく「中銀カプセルタワー」は、1972年に建築家黒川紀章の設計、大成建設株式会社の施工により竣工した、1970年代の日本を代表する建築として、日本の建築界・社会のみならず、世界の建築界に大きな刺激を与えた記念碑的な現代建築です。
 都心部という立地に、工場で製作されたビジネスの場とセカンドハウス的機能を付与した個室カプセルを、エレベーターや階段などの垂直動線を収めた鉄骨鉄筋コンクリート造の二本のインフラストラクチュアとしての塔に、ボルトで取り付けるという工法で建てられました。また塔の外部に露出設置された設備配管に個々のカプセルの配管が接続される仕組みになっており、当時建築や都市のあり方の一つとして主張されたメタボリズム(新陳代謝)理論と云う建築思潮を実現した建築として注目されました。
 このメタボリズム理論は、現在の都市の構造や社会のあり方を考える上で大切な「サスティーナブル」つまり持続可能なシステムにも相通じる部分があり、この建築もそのような構造を有しているとも考えられます。
 メカニカルで特徴のあるデザイン形態を持つこの建築も誕生してから33年を経て、東京の景観を語る際に欠かす事の出来ない「大切な建築」になりました。今では時を経て銀座に在住する人々だけでなく、この建築の姿は日本や世界の人々の記憶に焼きついております。
 建築は状況に応じて適切なメンテナンスをしていかないと持続していけませんが、貴「中銀カプセルタワー」は様々な事情によってそれがなし得なかったと伺っております。また、社会に伝えられているアスベスト問題は建築界全体で取り組むべき大変重要な課題であり、生命に関わる問題であるだけに、慎重な上にも慎重な対応が必要であることは言うまでもありません。安全に留意した十分な改修検討を踏まえ、カプセル部分についてはメタボリズムの理論に基づいて取り替えるという事により、機能更新とアスベスト問題の解決、記憶の継承を共に図ることも可能ではないかと思われます。

 戦後に建てられた建築は、歴史的な評価が定まっていない建築として取り壊されていくことが多いのですが、この建築の果たしてきた社会的・文化的な役割をご理解いただき、是非存続に向けご検討くださいますようお願い申し上げる次第です。

敬  具