2007年3月23日
東京都知事
石原 慎太郎 様

社団法人 日本建築家協会(JIA)
      関東甲信越支部 支部長  伊 平 則 夫
同 保存問題委員会 委員長  川 上 恵 一
千代田地域会  代 表 中山 信二

三信ビルディングの保存・活用に関する要望書

拝啓 時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
 東京都におかれましては、日頃より建築文化の継承に理解を示され、又、本協会の活動に格別のご理解とご支援を賜り、深く感謝致します。

 さて、一昨年、東京都千代田区有楽町1丁目に所在する「三信ビルディング」の解体が所有者である三井不動産株式会社から発表され、建築界のみならず、幅広い層に大きな驚きを与えました。「三信ビルディング」は、1929年に横河工務所(担当:松井貴太郎)の設計、大林組の施工により建設され、独創性の高い自由な意匠、アーケードによる都市公共空間の創出などのすぐれた価値を持つ、昭和初期の日本を代表するオフィスビル建築です。また、日比谷公園や、同公園内の日比谷公会堂・市政資料館などとともに日比谷地区の魅力的な都市景観を形成するのみならず、高さ100尺のラインを意識した意匠により、日比谷通り沿いに丸の内へと連続したスカイラインを構成する、都市景観上もきわめて重要な位置を占める歴史的建造物です。このような建築的・都市景観的価値が「三信ビルディング」の魅力として広く人々に親しまれていることは、解体に関し多数の新聞報道が行われ、また、保存を願う市民団体による提案がインターネットで公開され、多数の賛同を集めたこと、そして当会主催の本建築に関するシンポジウムがその専門的な内容にも拘わらず多くの市民の参加を得たことなどから、十分に窺うことができます。これは正に稀有な事例と言えましょう。
 現代都市に於いて、生活の質や都市デザインの質の向上、サスティナビリティの改善等により都市の魅力を向上させることは、もとより重要なことと考えられます。日本の首都として、東京が多様な魅力を持った国際都市としてのアイデンティティーを確立するために、時間の積み重ねの中で培われた資産である歴史的建造物の果たす役割は、新しいものによっては替え難い、非常に大きなものがあると考えます。このような認識の下、開発と保存を両立し、豊な都市景観の形成に向けて歴史的建造物の保存・活用を進めるためには所有者の理解が欠かせませんが、御高承のように、近年、都市計画行政・文化財保存行政の面においてもさまざまな制度・方法が考案、運用されており、その成果が各地で注目されているところです。貴自治体におかれましても、所有者にこれらの制度を活用すること等による「三信ビルディング」の保存・活用を積極的に促し、現在の都市景観のさらなる維持・発展に向けてご尽力されるよう、お願い申し上げます。
 
 なお、(社)日本建築家協会 関東甲信越支部、同千代田地域会並びに同保存問題委員会は、「三信ビルディング」の保存・活用に関し可能な限りの協力をさせて頂く所存であることを申し添えます。


敬  具

2007年3月23日
千代田区長
石川 雅己 様

社団法人 日本建築家協会(JIA)
関東甲信越支部 支部長  伊 平 則 夫
同 保存問題委員会 委員長  川 上 恵 一
千代田地域会  代 表 中山 信二

三信ビルディングの保存・活用に関する要望書

拝啓 時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
 千代田区におかれましては、日頃より建築文化の継承に理解を示され、又、本協会の活動に格別のご理解とご支援を賜り、深く感謝致します。

 さて、一昨年、東京都千代田区有楽町1丁目に所在する「三信ビルディング」の解体が所有者である三井不動産株式会社から発表され、建築界のみならず、幅広い層に大きな驚きを与えました。「三信ビルディング」は、1929年に横河工務所(担当:松井貴太郎)の設計、大林組の施工により建設され、独創性の高い自由な意匠、アーケードによる都市公共空間の創出などのすぐれた価値を持つ、昭和初期の日本を代表するオフィスビル建築です。また、日比谷公園や、同公園内の日比谷公会堂・市政資料館などとともに日比谷地区の魅力的な都市景観を形成するのみならず、高さ100尺のラインを意識した意匠により、日比谷通り沿いに丸の内へと連続したスカイラインを構成する、都市景観上もきわめて重要な位置を占める歴史的建造物です。このような建築的・都市景観的価値が「三信ビルディング」の魅力として広く人々に親しまれていることは、解体に関し多数の新聞報道が行われ、また、保存を願う市民団体による提案がインターネットで公開され、多数の賛同を集めたこと、そして当会主催の本建築に関するシンポジウムがその専門的な内容にも拘わらず多くの市民の参加を得たことなどから、十分に窺うことができます。これは正に稀有な事例と言えましょう。
 現代都市に於いて、生活の質や都市デザインの質の向上、サスティナビリティの改善等により都市の魅力を向上させることは、もとより重要なことと考えられます。日本の首都として、東京が多様な魅力を持った国際都市としてのアイデンティティーを確立するために、時間の積み重ねの中で培われた資産である歴史的建造物の果たす役割は、新しいものによっては替え難い、非常に大きなものがあると考えます。このような認識の下、開発と保存を両立し、豊な都市景観の形成に向けて歴史的建造物の保存・活用を進めるためには所有者の理解が欠かせませんが、御高承のように、近年、都市計画行政・文化財保存行政の面においてもさまざまな制度・方法が考案、運用されており、その成果が各地で注目されているところです。貴自治体におかれましても、所有者にこれらの制度を活用すること等による「三信ビルディング」の保存・活用を積極的に促し、現在の都市景観のさらなる維持・発展に向けてご尽力されるよう、お願い申し上げます。
 
 なお、(社)日本建築家協会 関東甲信越支部、同千代田地域会並びに同保存問題委員会は、「三信ビルディング」の保存・活用に関し可能な限りの協力をさせて頂く所存であることを申し添えます。


敬  具

2007年3月23日
三井不動産株式会社
代表取締役社長 岩沙 弘道 様

社団法人 日本建築家協会(JIA)
関東甲信越支部 支部長  伊 平 則 夫
同 保存問題委員会 委員長  川 上 恵 一
千代田地域会  代 表 中山 信二

三信ビルディングの保存・活用に関する要望書

拝啓 時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
 貴社におかれましては、日ごろより建築文化の継承に深く理解をお示しになり、また、当会の活動にご支援を賜り、厚く感謝致します。

 さて、一昨年、貴社所有になる「三信ビルディング」(千代田区有楽町1丁目所在)の解体が発表され、建築界のみならず、幅広い層に大きな驚きを与えました。「三信ビルディング」がその魅力により広く人々に親しまれていることは、解体に関し多数の新聞報道が行われ、また、保存を願う市民団体による提案がインターネットで公開され、多数の賛同を集めたこと、そして当会主催の本建築に関するシンポジウムがその専門的な内容にも拘わらず多くの市民の参加を得たことなどからも十分に窺うことができます。

 先の要望書でも申し述べましたとおり、多様な相を持った魅力ある都市を創り、国際的競争力を保持することは極めて重要であり、その中で歴史的建造物の果たす役割には非常に大きいと確信しております。御高承のように、近年、都市計画行政・文化財保存行政の面において、歴史的建造物の保存活用に向けたさまざまな制度・方法が考案、運用されており、貴社におかれましても日本橋地区などにおいて素晴らしい成果をあげられております。本「三信ビルディング」におきましても、単体の建築物の老朽化といった問題を超えた視点を持つことにより、貴社と行政との協働の中から保存・活用の道を探り、それを実現されることによって日比谷地区の都市景観の維持・発展、さらには国際都市・東京の魅力の向上に寄与され、また、建築の持続的活用の可能性についての確たる視点を示されますよう、重ねてお願い申し上げる次第です。
 
 なお、東京都知事ならびに千代田区長にも同趣旨の要望を行ったことを申し添えます。


敬  具