タイ国コロニー便り 

タイ国のハンセン病対策は在宅治療を中心としてきましたが、1950年代に、差別の強い故郷の村に帰る場所を持たない人々が生活していけるようにと、政府の方針で村落(コロニー)が作られました。このコロニーは保健省の管轄で、現在タイ全国に12ヶ所あり、数年前から一般村落への移行が始まっています。ほかにただ一つの国立のハンセン病センターがバンコクの近くにあります。タイ国のNGOハンセン病を病んだ人々に関わるチャンタミット社は、ハンセン病を病んだ人々とその家族の真の友となることを目的に、1987年からこれらの施設へ働き人を送り活動をしています。






 
第一回 ドンタップ・コロニー(ジャンタブリー県)

ドンタップ・コロニーはバンコクから東部へ約200キロ離れた、果物で有名なジャンタブリー県内にある小さなコロニーです。創立は1955年(昭和30年)、病気だった人43名(60歳以上が半数)が家族等130名と一緒に住む、48家屋数の集落です。
 1996年にハンセン病センター内にあるプラプラデェーン伝道所の会員が移り住み伝道を始めたのが、ドンタップ教会の始まりです。現在の会員は20名、日曜日の礼拝には10数名が集います。チャンタミット社が、1999年よりグソーン伝道師とソムピットさん夫妻を当コロニーに派遣し、翌年から所内の子どもたちのために保育所を始めましたが、子どもの減少と周囲の保育所が充実してきたために2005年3月で閉鎖しました。それ以後、ソムピットさんは30キロ離れたプレーンカーヤン・コロニーの保育所に協力をし、グソーン伝道師は昨年6月からバンコクの聖書学校で学んでいます。2005年から始まったチャンタミット社の青少年育成を目指したワークキャンプは、第1回、第2回そして2009年この8月に第5回がここドンタップで開催されました。好善社は毎回10数名の青年たちを日本で募り、このワークキャンプに参加してきました。


   
ドンタップ・コロニーでの出来事  


                   グソーン・ブラーンロム伝道師
   
 1999年チャンタミット社は私たち夫婦をドンタップ・コロニーへ派遣しました。そこで私が目にしたのは、コロニーの人々が自分の周囲に関心を持たず、それぞれが孤立している姿でした。新しくそこへ入り込んでいった私たちにさえ関心がなく、「どこから来たのか」と訊ねる人もいませんでした。そこで私は、お互いのことを考える何かを始めなければと考えました。そしてハンセン病だった彼らと話し合う機会を持ち、彼らの考えていることや希望を集めることにしました。その当時の彼らが希望したのは、共同購買店でした。そしてこの共同購買店が実現しました。それから、小さな貯蓄グループができました。最初は14名だったグループが、今では80人になっています。
その後、チャンタミット社が彼らの家計が良くなることを願って、職業支援の開発事業を始めました。はじめはアヒルの飼育でしたが、飼育の経験不足と成長したアヒルを販売する市場に制限があり成功しませんでした。次は、有機飼育の養豚でしたが、豚肉の値段が下がりこれもうまくいきません。行き着いたところは、飼育を止めることでした。
その後したもう一つのことは、『足る農業』というプロジェクトを彼らが始めることの支援でした。自分の家族の食用にナマズを養殖し、卵を得るために鶏を飼い、野菜を植えて家計の支出を少なくするものです。これも十分に良い結果を得たとは言えないかもしれません。理由は、プロジェクト支援が終了したことにありますが、彼らが養殖を継続するために稚魚をどうするか、或いは野菜をどうしたら植え続けることができるかと考えを発展させなかったことでしょう。
私はこの状況を見て、まず私たちがやってみることで、彼らが同じようにしたくなるような見本を示すべきではないかと考えました。この時期にちょうど、ワークキャンプ1回目2005年にドラゴンフルーツを植え、2回目2006年に周囲の柵張りをしました。そしてライムの木を植え、食用カエルとナマズの養殖をし、自分たちが食べる野菜を植えました。もちろん、病院へ連れて行くとか国民証を作る連絡をするとか、家の建て増しを自分にできる範囲で手伝うとか、時には事実を知らせるために警察へ連れて行くなど、彼らの手助けをしていることは言うまでもありません。
 現在は、以前から一緒にしてきた妻がこれらの働きをしてくれています。それは、私が今バンコクの聖書学校で学ぶ機会を与えられ、コロニーを離れているからです。これらの働きを続けてくれる人が自分の妻であることは、神様のお恵みです。神様が私たち家族を愛してくださることで、ドンタップ・コロニーでの生活ができることに感謝しています。多くの人が神様に出会いました。多くの人がチャンタミット社の活動を知りました。彼らの子どもたちが
奨学金活動(注1)を通して神様の愛を受けています。この子どもたちは学ぶ機会が与えられています。子どもキャンプへも参加します。ワークキャンプでは他のコロニーに新しい友ができます。子どもたちの勉学のために奨学金を捧げてくださる皆様に、子どもたちに代わってお礼を申し上げます。どうぞ神様が皆様に百倍・千倍の祝福を与えてくださいますように。最後に、皆様の上に神様の祝福が豊かにありますようにと心からお祈りいたします。

注1:チャンタミット社がハンセン病を病んだ人々の子弟に教育の機会を与えることを目的として、2001年から各コロニーの子どもたちを対象に始めたもので、財源は日本からの教育基金を主としている。





グソーン(写真右)ソムピット(写真左)伝道師ご家族

キャンプで植樹したドラゴンフルーツ畑

ドラゴンフルーツの実

ドンタップ教会兼家族住居

礼拝風景