地球防衛企業ダイ・ガード
第9話「炸裂! ノットバスター!!」


【『ダイ・ガード』は、『ナデシコ』や『女神候補生』のプロデューサーである佐藤徹さんから声をかけていただき、初めてSF設定抜きで各話ライター(という言い方をするのだ)として参加した作品。アニメでは珍しいサラリーマンものの側面があり、元サラリーマン(一応、まるまる7年間勤めていた)の私は喜々として会社員生活のしょうもないディティールを盛り込もうとした。いろいろ、けっこう実話だったりして(笑)。とはいえ、やはり男女の混浴はTVアニメとしては画期的というか問題だったらしく、「おもしろいし」と言って、通してくださった水島精二監督にはいくら感謝してもしたりない。ちなみに、私はあまり作品のキャラに感情移入したりしないタイプなのだが、谷川ちゃんだけは偏愛しているのだった】

第4稿

【登場人物】

赤木駿介
桃井いぶき
青山圭一郎

大杉課長
大山(最年長OL)
谷川(日焼け娘OL)
中原(純情メガネっ子OL)
入江(無表情OL)
石塚(デブ1号)
伊集院(デブ2号)
田口(デブ3号)
横沢
城田
墨田
百目鬼理香

武上権蔵(武上重機社長)

整備員1,2,3
戦闘機パイロット
AWACSパイロット
AWACSレーダー士


○ 武上重機の工場
   巨大な工作機器がいたるところに置かれた、だだっ広い工場の中。何か巨大な機械の影を見上げている武上社長と百目鬼。
百目鬼「きゃー、これよ、これ。ご苦労様、権蔵ちゃん」
武上「苦労しましたよ、百目鬼さん。なんせ、ウチにとっちゃ何から何まで初めてづくしだったんですから」
   機械(新兵器)の影が、機械音と共になにやら稼動してみせる。
   見つめる百目鬼のメガネがきらりと光り(お約束)、口元には大きな笑み。
百目鬼「ふふふ……。これならいける。いけるわ」

○ 広報二課(朝)
   電話があちこちで鳴り、話し声が絶えない感じで、一見忙しそうに見えるいつもの広報二課。
   席についている赤木と、その横に立っている城田。二人でなにやら熱心に話し込んでいる。
城田「前回の出動に関する君の報告書だ」
赤木「ま、真っ赤……」
城田「あいもかわらず要点が不明瞭だな。不明点をすべて指摘しておいた。今後のためだ。書き直して再提出したまえ」
赤木「いつもすいません」
   とか。
   同じく自分の席で書類を見ているいぶきと、その横に立っている青山。
   席に座って、山積みになった書類に目を通してはハンコを押している大杉課長。その課長にお茶を出している大山。
   中原、入江は魔法瓶を使って、課員のコップにお茶を入れている。石塚と田口は、かかってきた電話を受けつつ、パソコンで書類を作成中。
   谷川、伊集院、横沢、墨田の姿はない。
   赤木と城田の様子を見ている青山といぶき。
青山「なんだ、あいつら」
いぶき「最近、あの二人仲いいのよ」
青山「まあ、赤木はもともと会社より軍隊向きだよな。根っから体育会系だし」
   盆を持ってきた大山、いぶきにコーヒーの入ったカップを渡しつつ、横から口を挟む。
大山「あ、青山くん、へんけーん」
青山「大山さん、なんかやってたの?」
大山「(にっこり笑って)剣道三段、合気道二段」
   そのままお茶を載せた盆を持って、すっと赤木の机に向かう大山。
大山「はい、赤木くん、玄米茶ね。城田さんもコーヒーいかがですか」
   呆然とその後ろ姿を見る青山といぶき。
青山・いぶき「ウソ……」
   一方、パソコンのキーボードを叩きつつ電話に出ていた石塚、ついにその手を止め、電話に集中する。
石塚「うちは二十日締めの翌月末日払いなのはオタクも知ってるでしょう。それを、今日納入だからすぐ払えって言われたって、はいそうですかって払えるわけないでしょ。だいたい技術部で発注したブツの払いが、なんで広報二課に来るのよ。…………そりゃダイ・ガードは二課の管轄ですけど、…………だーかーらー、請求書もらったって困るんですよ。その額じゃ社長の決裁がないと……それに契約書だってないんでしょ……」
   困り切っている様子の石塚。横に座っている田口に、寄ってきた中原が小声で聞く。
中原「どうかしたんですか?」
田口「武上重機から、すっげー請求書が来たんだと」
中原「武上重機って、ダイ・ガードの部品とか卸してくれてる会社ですよね」
田口「そそそ。なんか技術部がダイ・ガード用にとんでもないモノ発注して、その請求書、こっちにまわしたらしいんだわ」
中原「何買ったんです?」
田口「わかんない。ただ、値段が……」
   田口、中原の耳元に手を当ててささやく。すっと、横に現れて聞く入江。
田口「…………」
   中原、びっくりして目が点に。
中原「それって……ゼロが何桁並ぶんでしたっけ?」
   大杉課長、課長席の前に立って、手を叩き、みんなの注目を求める。
大杉「はいはい、ちょっと、みんな、聞いてください」
   全員が顔を課長の方に向ける。
大杉「えー、最近、有給休暇の届け出が、きちんと出ていません。突然の病気の時などはしかたありませんが、そうでない場合は、規定通り三日前までに私に届けを出してください」
   OL組やデブたちから、「えー」、「結局おんなじでしょー」、「課長、席にいないこと多いんだもーん」などとブーイングがおこる。
大杉「頼むよ。部長、カンカンなんだから……。それと赤木くん」
赤木「はい?」
大杉「前も言ったけど、キミ、まだ全然有休取ってないでしょ。年間二十日のうち、せめて五日は消化してよ」
赤木「いえ。オレ、全然休みなんかいりませんから。正義を守るのに休日はないっす」
いぶき「(小声で)アホ」
大杉「それじゃ私が組合に怒られるんだってば。とにかく今年中に三日でいいから有休とること。課長命令だからね」
赤木「はあ……」
大杉「キミ以外はちゃんとみんな有休とってるんだから。今日だって二人いないでしょ。頼むよ」
赤木「あ、そういや、伊集院さんと谷川さんの姿が……」
青山・いぶき「気づいとらったんかいっ」
石塚「伊集院のヤツ、何で休んでんだっけ」
田口「なんか温泉に骨休めに行くって言ってたぞ。平日の方が空いてていいんだと」
入江「オジンくさー……と谷川さんがいたら言うところね」
   いきなり言われてのけぞる石塚、田口、中原。
   どこからともなく現れる大山。
大山「あんた、また一瞬だけキャラ変わったわよ」
中原「そういや谷川さんも休んでますけど、もしかして二人でデートだったりして」
   中原の言葉に、課長席に座った大杉、飲もうとしていたお茶をふく。一瞬室内の動きが止まって静まりかえる。
全員(城田のぞく)「まっさかー!」
青山「ナイス・ギャグ、中原ちゃん」
石塚・田口「それはない。断じてないっ」
中原「はは、そうですよね。ははは」
   城田以外大笑いする。

○ 温泉の露天風呂
   二人っきりで風呂に入っている伊集院と谷川。谷川、カメラ目線で画面に向かって、
谷川「そのまさかだったりして」
伊集院「なに?」
谷川「ううん。なんでもない。……はーー、極楽極楽。やっぱ朝風呂は格別よね」
伊集院「ほんとほんと」
   にっこり笑って空を見上げた伊集院、いきなり笑いがこわばる。
谷川「どったの?」
   やはり、空を見上げた谷川、顔色が変わる。
   頭上にオーロラのような光が広がっていく。
伊集院「レゾネーションだ!」
   あわてて、湯船のそばに置いてあった袋の中から携帯を取り出す谷川。
伊集院「ちょっと、なにしてんだよ」
谷川「会社に連絡!」
伊集院「観測所から通報が入るって」
谷川「現場にいて無視はまずいでしょ」
伊集院「一緒にいるのがバレちゃう……」
   谷川、伊集院に背を向け、電話をかける。
谷川「もしもし……あ、赤木ちゃん。谷川だけど……」
   谷川の携帯を取り上げようとする伊集院。
伊集院「ダメだってば……」
谷川「(小声で)ちょ、やめてよ、もう」
   頭上が暗くなり、二人の動きが止まる。
   空間に空いた黒い穴から、ヘテロダインが姿を現す。
   伊集院、谷川、それを見上げている。
伊集院・谷川「出た……」
赤木(オフ)「谷川さん、どうしたんですか。もしもーし……」

○ 山の中
   ふわふわと浮きながら移動するヘテロダイン。ゆっくりではあるが谷も尾根も関係なく越えていく。
   ただし、浮いている高度が低いので、真下の木々や尾根沿いにひかれた高圧送電線などをなぎ倒していく。

○ その上空
   ヘテロダインの上空を大きく旋回する戦闘機二機。
戦闘機パイロット(オフ)「ヘテロダインは、北北東に向かってまっすぐに進行中。時速約五キロ。くり返す。ヘテロダインは……」
   そこへ、音をかぶせるようにプロペラ音を響かせて姿を見せる大型ヘリ7機(今回は飛行艇じゃないです)。
   各ヘリにはそれぞれダイ・ガードのアセンブリトレーラーがつり下げられている。

○ 一号機トレーラー運転席
   運転席には墨田、助手席には大杉が座っている。ヘリの爆音が響く中、大杉は無線を手に持って大声で指示中。
大杉「……ヘテロダインの進行方向、約四十キロ先に水力発電所があります。ヤツの狙いはそれだと軍は見ています……」

○ 三号機コクピット
   大杉の指示を聞いている赤木。スクリーンには付近の地図(ヘテロダインの進行方向、発電所の記号、ダムやまわりの山などが描かれている)が映し出されている。
大杉(オフ)「発電所自体より、ダムが問題です。これがもし決壊するようなことがあれば、下流にどれくらいの被害が出るか、想像もつきません……」

○ 二号機コクピット
   同じく指示を聞くいぶき。
大杉(オフ)「谷川君が先乗りして、ヘテロダインの進行先にトレーラーを動かせる場所を見つけてくれてます。皆さんは合体してヘテロダインを正面から叩いてください……」

○ 一号機コクピット
   同じく赤木。
大杉(オフ)「絶対にダムに近づけないようにとのことです。いいですね」
赤木「了解!」
いぶき(オフ)「はいっ」
青山(オフ)「わかりました」

○ 山間の平地
   ヘテロダインの進行方向にある、木々の生えていない小さな窪地。
   4WDで先乗りしている伊集院と谷川、車から降りて、近づいてくるヘリに手を振っている(当然、二人とも私服)。
   谷川は片手に携帯を持ち、電話で指示をしている。
谷川「ここです、ここー!」
   各ヘリ、次々にトレーラーを下ろし、飛び去っていく。
   一号機トレーラーのケージの下で装置を動かす整備員1。ケージが立ち上がり、一号機がケージ上部に固定される。
整備員1「上、スタンバイよーし!」
   二号機トレーラーがケージの中に入る。
   旗を振って誘導している整備員2。
整備員2「オーライ、オーライ!」
   ケージ内で別の装置を動かす整備員3。
   二号機が上昇して一号機と合体する。
整備員3「真ん中、スタンバイよーし!」
   続いて三号機トレーラーがケージの中へ入る。
整備員2「オーライ、オーライ、オーライ」
   三号機も二号機と合体。
整備員3「下スタンバイよーし、連結完了」
   目が光り、起動するダイ・ガード。

○ 一号機コクピット
   気合い充分の赤木。
赤木「よっしゃ、いくぞお」
   そこへ二号機コクピットから無線でいぶきの声が。
いぶき「ちょっとちょっとちょっと。谷川さんの隣にいるの、伊集院さんじゃない?」
赤木「この非常時に何言ってんです。谷川さんが誰とデートしようとかまわないじゃないすか。それが伊集院さんだろうと……伊集院さんーーー?!」
   慌てて、カメラを操作、モニタに足下の谷川たちを映す赤木。
赤木「あ、ほんとだ」
   しばし固まる赤木。
青山(オフ)「おい、非常時なんだろ、非常時。二人とも何固まってんだよ」

○ 一号機コクピット
赤木「よりによって青山に諭されるとは」
青山(オフ)「なんか言ったか?」
赤木「いや、おまえが正しい。いくぞ。ダイ・ガード発進!」

○ 山間の平地
   ゆっくりと迫ってくるヘテロダインに向かって、歩き出すダイ・ガード。

○ 二号機コクピット
いぶき「狙いは体内のフラクタル・ノットのみ。いいわね」

○ 一号機コクピット
赤木「わかってますって。一撃必殺といきましょう!」

○ 山間の平地
   正面のヘテロダインに殴りかかるダイ・ガード。だが、その動きに押されるように、ヘテロダインはふわふわと向きを変え、ダイ・ガードの横をすり抜けていこうとする。
赤木(オフ)「あ、待て、この野郎!」
   横を通るヘテロダインをつかもうとするダイ・ガード。だが、再びヘテロダインはダイ・ガードの腕のあいだからするりと抜け出していく。
いぶき(オフ)「何やってんのよもう」

○ 一号機コクピット
   かんかんになっている赤木。
赤木「てめえ、ぬらりひょんかっ?!」
青山(オフ)「子どもか、おまえは」

○ 山間の平地
赤木(オフ)「待ちやがれっ」
   尾根の方へと登っていくヘテロダイン。
   ダイ・ガードもあとを追おうとするが、傾斜が急で登れない。
   しがみついてよじ登ろうとするが、木々を倒しながら、ずるずると傾斜を滑り落ちてしまう。

○ 山間の平地に停車中のトレーラー脇
   伊集院と谷川、ダイ・ガードの無様な姿に顔をしかめつつ眺めている。その手前では、無線機を持った大杉課長が冷静に指示を出している。
大杉「ダイ・ガードに山間の移動はムリです。一旦分離して尾根の向こう側で待ち伏せましょう」

○ 山間の平地
   尻餅をついて座り込んでいるダイ・ガード。
赤木・いぶき・青山(オフ)「(なさけなさそうに)了解でーす」

○ 山間の平地
   (テープの早送り調で)合体を解き、再びトレーラーに積まれたダイ・ガード、ヘリに吊られて移動再開。
   尾根を越え、再び山間部の窪地でヘリから降ろされ、合体して、ヘテロダインを待ち受ける。(早送り終わり)
   ゆっくり近づいてくるヘテロダイン。

○ 一号機コクピット
   気合い充分の赤木。
赤木「この野郎。今度こそぉ!」

○ 山間の平地
   正面のヘテロダインにとびかかるダイ・ガード。だが、その動きに押されるように、ヘテロダインはふわふわと向きを変え、ダイ・ガードの横をすり抜けていく。
   つんのめって地面に激突するダイ・ガード。ものすごい地響きと土煙。

○ 一号機コクピット
   シートから落ちそうになり、かろうじてシートベルトでぶらさがっている赤木。顔が真っ赤。
赤木「ち、ちくしょおお」
青山(オフ)「早く起こせ。く、くるしい」
いぶき(オフ)「頭に……血が……」

○ 城田の部屋
   席に座り、机の上のコンピュータ(24インチくらいの平面スクリーンとキーボードのみ、机の上に見える感じ?)に向かっている城田。
   CRT上にはいくつもウインドウが開いており、その中には偵察機からの現場映像やダイ・ガードの各コクピット内映像なども映っている。
   と、そこへ電子メイルの到着を示すチャイム音。メイルを開ける城田。
城田「ダイ・ガード用新型装備請求書? なんだ?」

<中CM>

○ 山間の平地
   前の繰り返し。(また早送りで)合体を解き、再びトレーラーに積まれたダイ・ガード、ヘリに吊られて移動再開。
   尾根を越え、再び山間部の窪地でヘリから降ろされ、合体して、ヘテロダインを待ち受ける。
   正面のヘテロダインにとびかかるダイ・ガード。だが、その動きに押されるように、ヘテロダインはふわふわと向きを変え、ダイ・ガードの横をすり抜けていく。
   横を通るヘテロダインをつかもうとするダイ・ガード。だが、再びヘテロダインはダイ・ガードの腕のあいだからするりと抜け出していく。(早送り終了)
   またも勢い余って倒れるダイ・ガード。
   再びものすごい地響きと土煙。

○ トレーラー脇
   座り込んでいる墨田ら整備員たち。疲れてボロボロである。「おい、またかよー」とか、ぼやいてる者もいる。
   立ってダイ・ガードを見ている伊集院と谷川も、うんざりして疲れた表情。
   無線を手にその手前に立つ大杉だけは、険しい表情。
谷川「(ぽつりと)おなか空いたね」
   腕時計を見る伊集院。
伊集院「(ため息)だってもう二時だもん」
墨田「そういや、補給はどうなってんだよ」
   大杉も時計に目をやる。
大杉「あと三時間。このままでは……」

○ 技術部内 百目鬼の部屋
   机の前の椅子に座り、卓上のパソコン・モニタに映し出されたダイ・ガードの姿に歯がみしている百目鬼。
百目鬼「あー、もうなにやってんのよお。百目鬼ちゃんがせっかく作ったノットバスターはどうしたのよーー」

○ ダイ・ガード格納庫
   横沢、整備員たちに大声で指示している。そのすぐそばには、大山、中原、入江。さらにその背後には石塚、田口。
横沢「早く積み込みを終わらせろ。念のためだ、ダイナモも持ってくぞ……(大山たちに)って君たちはなんなの、いったい?」
大山「あ、いや、あたしたちも何かお手伝いをと……」
石塚「そそそ」
中原「現場に連れてってくださいー」
横沢「何言ってんの。危ないからダメに決まってんでしょ。どーしたんだよ」
入江「あたしたち、谷川さんのことが心配で心配でー」
大山「(ひきつりつつ小声で)今度は何のキャラよ、それ」
横沢「谷川さんって……もしかして伊集院くんとのこと詮索しに行きたいの?」
入江「(元に戻って)端的に言えばそう」
   大山、中原、入江の口をふさぐ。
田口「そ、そんな。同僚として純粋にですね……」
横沢「ダメ。ぜーったい、ダメ」
大山、中原、入江、石塚、田口「そんなー」
   と、みんなでもみあっているところへ、外から声がかかる。
武上(オフ)「すいませーん」
   動きを止めて声の方を見る横沢ら。
   そこには、申し訳なさそうに武上社長が立っている。
   そして、その背後には、巨大なトレーラーに積まれた何やらでかいメカのシルエットが見える。
横沢、大山、中原、入江、石塚、田口「はい?」

○ 一号機コクピット
   情けない顔になっている赤木。
赤木「二足歩行メカは凸凹道だって平気だとか、昔のアニメで言ってなかったか? これじゃ戦車の方がまだマシじゃん」
いぶき・青山(オフ)「現実を見つめろっつーの」
   突然、無線で城田が割り込んでくる。
城田(オフ)「いつまで遊んでる」
赤木「(ふくれて)こっちゃこれでも一生懸命なんです! ただ相手がつかみどころがなくて……」

○ 山間の平地
   トレーラー脇に着陸しつつある小型の軍用ヘリ。開いたままの後部ドアから、携帯を手にした城田が降りてくる。
城田「そんな足場の悪いところじゃ、鬼ごっこもできんだろう。今、許可が下りた。発電所の運転を止め、AWACSで電磁波を出してヘテロダインをダムの東南に位置する牧場に誘導する。そこで思う存分追いかけっこするんだな」

○ 一号機コクピット
   嬉しそうな表情になる赤木。
赤木「了解っ」

○ 山間部
   あいかわらずゆっくりと移動中のヘテロダイン。その上空を飛行機雲をひきながら、AWACS機三機が通っていく。

○ 上空
   並んで飛ぶAWACS機三機。そのレドームがゆっくりと回転しているのがわかる。

○ AWACSのコクピット
パイロット「どうだ?」
レーダー士「ダメです。派手に電波を流してるんですが」
パイロット「(無線に向かって)こちらルアー1。ターゲットは進路を変更せず。繰り返す。こちらルアー1。ターゲットは元の進路を維持」

○ トレーラー脇
   折り畳みのテーブル(上には地図が置いてある)の横の折り畳み椅子に座っている大山と城田。
   携帯を聞きながら思わず腰を浮かす城田。
城田「なんだとっ」
   テーブル上の地図には、ヘテロダインの現在位置とその予想進路(あいかわらずダムに一直線)、そしてAWACS機の現在位置が書き込まれている。

○ 山の中
   ふわふわと浮きながら移動するヘテロダイン。

○ 山間部の平地
   再び分離してトレーラーに積み込み作業中のダイ・ガード。
   作業を監督中の大杉と城田に話しかけている赤木。青山といぶきは地面に座り込み、谷川から魔法瓶のお茶をもらって飲んでいる。
赤木「どういうことっすか!」
城田「わからん。とにかく、今回のヘテロダインは電磁波に反応してるわけじゃないようだ」
赤木「そんなっ!」
大杉「(厳しく)おちつきなさい。とにかくコクピットで待機。いいね!」
   歯を食いしばり、くるりと振り向いてトレーラーの方へ歩いていく赤木。
   そのうしろ姿を見ながらいぶきに聞く青山。
青山「うまくいかないもんだな」
谷川「ほんとほんと」
いぶき「しょせん経験則に頼っててもダメってことよ。ヘテロダインの行動原理を解明しないことにはね」
青山「言うねえ」

○ トレーラー脇
   立ち上がって机に手をつき、地図を見つめつつ電話で話している城田。
城田「はい。……しかし……いえ、了解しました」
   その横では、大杉が椅子に座って目を閉じている。

○ 山間部
   依然、ゆっくりまっすぐに進んでいるヘテロダイン。

○ 一号機コクピット
   座っている赤木。
   そこへ城田からの連絡が入る。
城田(オフ)「よく聞いてくれ。軍はヘテロダインの誘導を断念、山向こうの盆地で迎え撃つことを決定した。すでに機甲部隊二個大隊が集結中だ。ダイ・ガードの諸君も、至急そちらに合流してもらいたい」
   驚いてかっと目を開く赤木。
赤木「ちょっと待ってくださいよ。それじゃダムはどうするんですか?」

○ トレーラー脇
   テーブルのそば、立っている城田。椅子に座る大杉。
   城田、冷静に赤木を説得しようとゆっくりしゃべる。
城田「いいか、赤木君。このままそこで迎撃しようとしても、同じことの繰り返しだ。下手をすればダイ・ガードが破損するかもしれん。そうなったら、誰がヘテロダインを叩くんだ。今はまだダイ・ガードだけが有効な兵器なんだぞ」
赤木(オフ)「じゃあ、下流に住んでる人たちは見殺しにするっていうんですか!」
城田「ダムのことは残念だが、下流部の避難は順調に進んでいる。ここは一旦後退して体勢を立て直せ。(横の大杉課長に向かって)いいですね、大杉さん」
   腕組みして目をつぶったまま唸る大杉。
大杉「……むう…………」
赤木(オフ)「いいわけねえだろうっ!」

○ 一号機コクピット
   赤木、目がすわっている。
赤木「城田さん。あんた、わかってないよ。ヘテロダインを倒せばいい、死者が出なきゃいいってもんじゃないんだ」
城田(オフ)「なに?」

○ 二号機コクピット
   はっとなるいぶき。

○ 災害現場モンタージュ
   音はナシで、赤木の台詞がかぶる。
   学校の体育館に寝る人々。校庭でのみそ汁やおにぎりの炊き出し。バラックの仮設集合住宅が建ち並ぶ焼け跡の町。
   等々、点描で。
赤木(オフ)「焼け出されて、帰る家がなくなったら、どれだけ不安か。何日も電気も水道も通わない町に住むのがどんな気持ちか。城田さん、あんた、わかってますか」

○ 城田居室
   じっと目を閉じ、赤木の声を聞く城田。
赤木(オフ)「死ななきゃいいって問題じゃない。銭金の問題でもない。家をなくすってことは、普通の生活を、大事な想い出ごとなくすってことなんだ!」

○ 一号機コクピット
赤木(オフ)「行きましょう、課長! 軍がやらないっていうなら、オレたちがやるしかないじゃないですか!」

○ 各機のコクピット、各トレーラーの格納庫など(画面分割でよろしく)
   皆それぞれ、赤木の声を聞きながら、大杉の決断を待っている。

○ トレーラー脇
   おもむろに目を開く大杉。
大杉「どうでしょう、城田さん。うちの熱血坊やの好きにやらせてはもらえませんか」

○ 一号機コクピット
赤木「課長っ」

○ トレーラー脇
   城田、意を決して話し始める。
城田「いいでしょう。……最終防衛線をダムの手前300メートルの地点に敷け。そこならトレーラーを下ろせるはずだ。いいか、そこまで大口を叩いたからには、一撃でフラクタル・ノットをつかめ。左手に高台があるはずだ。そこにヘテロダインを押しつけて離すな」

○ 一号機コクピット
赤木「了解っ! いぶきさん、青山、いいよねっ」
青山(オフ)「おまえにゃ負けたよ」
いぶき(オフ)「今度こそ決めなさいよね」
赤木「まかせてくださいっ。今度こそしとめてみせますっ!」
入江(オフ)「よく言った、赤木駿介! 勝利の女神があなたの熱血に応えて来てあげたわよー」
   赤木、毒気を抜かれて、
赤木「え?」

○ 上空を飛ぶ輸送ヘリ
   夕陽を背に飛んでくる新たな輸送ヘリ。

○ 輸送ヘリコクピット
横沢「すまん。技術部の新兵器とやらを積んでて遅くなった」
赤木(オフ)「横沢さん!」
大山・中原・入江「あたしたちもいるよーん」
石塚、田口「オレもオレもー」

○ 一号機コクピット
   赤木、呆れて、
赤木「なにやってんすか、みんな」
城田(オフ)「赤木、その兵器を使え!」
赤木「は?」

○ トレーラー脇
城田「それならヘテロダインを固定できるはずだ。横沢さん、すぐ使えますね」
横沢「もちろんです!」

○ ダムの手前の川原(夕方)
   いつのまにやら、すっかり夕陽が西の空に暮れようとしている。
   ダムの手前、再び川が流れだしている沢の手前が少し広がった川原となっている。
   そこに次々に着地するアッセンブリ・トレーラー。すぐさま、合体が始まる。
   ダムを背に、夕陽を浴びてそそり立つダイ・ガードの勇姿!

○ 上空の輸送ヘリ
   ヘリから投下されるノット・バスター。
   バスターの数カ所に取り付けられていたパラシュートが開き、ゆっくりとダイ・ガードめがけて落ちていく。
   ダイ・ガードが右腕を出して受けとめると、自動的に腕に接続する。

○ 技術部内 百目鬼の部屋
百目鬼「よおし、いけー。ノットバスター・あたーっくっ!」

○ 一号機コクピット
   操縦用のCRTに大きく映る「KNOT BUSTER set-up completed」の文字。
赤木「ノットなんだって? まあいいや。ドリルアームみたいなもんだろ」

○ 三号機コクピット
青山「適当なこと言ってんな。きちんと操作法読めよ」

○ 二号機コクピット
いぶき「そんな暇はないみたいよ。目標、正面!」

○ 正面の尾根
   ゆっくりと姿を現すヘテロダイン。そのまま尾根を降りて、まっすぐ向かってくる。

○ 一号機コクピット
青山(オフ)「ぶっつけでいくしかねえな。はずすんじゃないぞ、赤木」
赤木「おう! ノットバスター起動!」

○ ダムの手前の川原
   ダイ・ガードの右手に装着されたノットバスターの先端部の取っ手が開く。
   ヘテロダインめがけて、ノットバスターをつき出すダイ・ガード。
赤木・青山・いぶき(オフ)「いけーー!」
   ヘテロダインの身体に突き刺さるノットバスター。取っ手が閉じて、がっちりとヘテロダインに固定される。
赤木(オフ)「てめえをこっから先へは進ませねえ。すすませねえぞ!」
   操縦桿の引き金を絞る赤木。
   ノットバスターの先端が突き出され、ノットを粉砕していく。
   ノットが粉々に砕けたとたん、霧のように気化していくヘテロダイン。
   その向こう側に仁王立ちのダイ・ガード。

○ トレーラー脇
   川原の端に停車しているトレーラーの前で見ている大杉たち。
全員(大杉以外)「やった!」

○ 技術部内 百目鬼の部屋
百目鬼「(嬉しい悲鳴)きゃーーー!」

○ トレーラー脇
城田「(つぶやくように)これなら……使える」
   いきなり携帯でどこかに連絡を取り始める城田。

○ ダムの手前の川原(夜)
   すっかり日も暮れた川原に照明を焚き、整備員たちが撤収作業をしている。
   その手前では他のOLたちとデブ二人が、谷川と伊集院を囲んでいる。
大山「ねえねえ。谷川ちゃん、伊集院さんみたいな人がタイプだったの?」
中原「で、ど、どこまで進んでるんですか、おつきあい」
石塚「どーやって口説いたんだよ」
田口「ほんとほんと」
伊集院「いやあ、困ったなあ。どうしよお」
   顔をゆるめる伊集院だが、彼がなにか答えようとしたとたん、じっと黙っていた谷川が怒りを爆発させる。
谷川「あんたね、人が会社と連絡取ろうとしたときは、あんなに嫌がったくせして。……あんまりしつこいから一度だけつきあってあげただけなんだから! むりやりこんな山の中に連れてこられていい迷惑よ!」
   それだけ言って憤然とヘリに向かって歩み去る。
伊集院「え、あ、そんなあ……」
   泣きそうな伊集院と、しらける一同。
   それを遠目に見ているパイロットたち。
赤木「うわ……」
青山「きっつー……」
いぶき「女心のわからないヤツ……」
   そこへ墨田が走ってくる。
墨田「おい、大変だぞっ」
赤木「どしたの?」
墨田「軍の連中が来て、新兵器よこせって」
赤木、いぶき、青山「なにーーー!」
   ダイ・ガードのそばに駆け寄る赤木たち。軍人が大勢ダイ・ガードを取り囲み、ノット・バスターの取り外しを始めている。
   警護の軍人に阻まれ、そのそばに近づけない赤木たち。
赤木「どけ、どけよっ」
   見守っていた大杉、赤木に、
大杉「城田くんの指示だそうだ」
赤木「なんですって! なんでそんな!」
青山「ウチの社に納品されたんなら、ダイ・ガード同様、軍には徴集できないはずじゃ!」
   そこへやって来る城田。
城田「代金どころか仮契約も結ばないまま開発させてたんだそうじゃないか。下請けの扱いがあまりに日本的だな。だが、それではキミのところにも所有権は発生しない」
大杉「軍が正式に契約を結んで、支払も現金で済ませちゃったんだって」
いぶき「そんな……」
   城田に詰め寄る赤木。
赤木「アレだけ持ってってもダイガードがなきゃ、使いものにならないだろ。あんただって、今はダイガードしかないって言ってたじゃないか」
城田「…………」
赤木「何とか言ってくれよ、城田さん!」
   城田、無言のまま、くるりと向きを変えて作業中の軍人たちの方へ歩み去る。
   呆然とその後ろ姿を見送る赤木。
赤木「なんだよ。……ちょっとはオレたちの気持ち、わかってくれてたんじゃないのかよ…………なんなんだよーー!」

   画面暗転

○ 真っ黒い画面
   画面の中央に小さな円ができて、その中に百目鬼の泣き顔が出てくる。
百目鬼「仮契約ってなに? 所有権ってなにー? 百目鬼ちゃん、わかんなーい!」

<二〇〇字詰め八六枚>


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