第三稿
[登場人物]
ジーン・スターウインド
ジム・ホーキング
メルフィナ
エイシャ
鈴鹿
ギリアム
クラッカージャック(爆弾魔)
その他
<OP>
□アウトロースター号のブリッジ
非常灯の赤い灯りとコンソールの光だけに照らされた薄暗い室内。ジーン、ジムは自分の席に、メルフィナはいつもは鈴鹿の座っている席に、それぞれ座っている。ジーンは汗を流しながらグラップラー・アームを操っており、操船の方はジムが自席の操縦桿で行っている。メルフィナは自席のコンソールを見ながらなにやらキー操作をしている。
ジム「あ、あにきぃ。どおすんだよぉ」
ジーン「落ち着け。どっちかを切ればいいんだろがよ」
メインスクリーンには、グラップラー・アームの先端が写っている。その先から、先がハサミになったさらに小さいマジックハンドが伸びている。その向こうに見えているのは、小さな起爆装置(信管)と、そこから伸びている二本の線(片方は赤、片方は青)。
ジム「ダミーの方を切ったら、途端にドカンなんだからね」
メルフィナ「(冷静に)確率は1/2というわけですね」
ジーン「まかせろって。こう見えてもギャンブルはお手のもんよ」
ジム「うそつけーーーー!」
□サブタイトル
□宇宙空間に浮かぶアウトロースター号
背後にはヘイフォン周回軌道上の巨大な宇宙ステーションの一つ(宇宙港)が浮かんでおり、無数の宇宙船が行き来している。
□アウトロースター号のブリッジ
乗っているのはジーン、ジム、メルフィナの3人(メルフィナはシリンダーに入っている)。
ジーン「まったく、何が悲しくて宇宙港のタグボートなんてしけた仕事せにゃいかんの」
ギリアム(当然ながらオフ)「まったくです。最新鋭グラップラー・シップのすることではありませんな」
突然、ビープ音がして、
エイシャ(オフ)「にゃに、うだうだ言ってるぞな」
□ジーン&ジム商会の事務所
エイシャが無線機に向かっている。鈴鹿は我関せずとお茶をすすっている。
エイシャ「人間、日々、地道に働く事が大事にゃんぞなもし。CMシップのキャッチ&リリースの依頼が入ったから、さっさと港に曳航するぞな」
□アウトロースター号のブリッジ
ジーン「ジム。通信、切っちまえ」
ジム「まあまあ。こうやってステーションの仕事手伝ってりゃ、下の港の駐機代だって割引いてもらえんだし」
ギリアム「しかし、仮にも先日のレースでプライベート1位の船がタグボートとは……」
メルフィナ(オフ)「(無邪気に)そういえば、けっこうアレが宣伝になってるみたいですよ」
ジーン「笑いモノになってんだよ、そりゃ……。にしても、なんでこんなに港が込み合ってんだ?」
ジム「ステーションの中の宝石屋が改装記念とかって、派手な展示会やるんだってさ。……っと、エイシャの言ってたCMシップが接近中」
ジーン「やれやれ、っと。メルフィナ、ランデブー・コースを算出しろ」
メルフィナ(オフ)「はーい」
□CMシップとアウトロースター号
CMシップは、アウトロースターの5倍はある大きな風船のような船体のいたるところに、華やかな飾りをゴテゴテとつけたもの(祭りの山車みたい)。後方に小さなロケットが申し訳程度についている。船の前後左右に向けて立体映像を投射、広告や宣伝を流している(ただし宇宙なので音はナシ)。
□アウトロースター号のブリッジ
メルフィナ(オフ)「おっきいですねーー」
ジム「でかすぎだよ。確かに目立つだろうけど、これじゃ小回りが利かないから、港につけるのは大変だ」
ジーン「だから、タグボートの出番ってわけだろうが。無駄口たたいてんな」
メルフィナ、ジム「はーい」
□CMシップとアウトロースター号
アウトロースター号は、いったんCMシップをやり過ごしてからUターンし、相対速度を合わせて併走、牽引用のアンカーを撃ちだし、CMシップの取っ手(?)に接続する。
□アウトロースター号のブリッジ
ジム「ほい、ロック完了っと」
ジーン「よし、減速かけて入港コースにいれっぞ」」
□CMシップとアウトロースター号
アウトロースター、まず大きく逆噴射をかけて動きを止め、1,2度、細かく噴射して軌道修正を行う。
□CMシップの表面
いきなり数本のアンカーが飛び出し、アウトロースターに絡みついたり、突き刺さったりする。シェルの立体映像が「GOTCHA!(つかまえた!)」という文字を光り輝かせ、背後の船殻が開いて、中に入っていた大きな隠しロケットが噴射を始める。
□アウトロースター号のブリッジ
シェルのロケット噴射のせいで揺れている。
ジーン「な、なんだ?!」
ギリアム(オフ)「(いつもより機械的に)ウイルス侵入中、ウイルス侵入中! 排除不能。システム・シャット・・ダウン・・・」
がばっとシリンダーが開き、強制的に排出されるメルフィナ。緊急処置なので服も体も濡れたまま。
メルフィナ「ううっ」
ジム「アンカーからウイルスがシステムに侵入。ギリアムは完全にダウンしてる!」
端から消えていく照明。非常灯の赤い明かりに切り替わる(以後、ずっとこのまま)。と、突然すべてのスクリーンに明るいファンファーレとともに「CONGRATULATION!(おめでとう)」というメッセージが表示される。
コンピュータ・ボイス(オフ)「おめでとう。あなたたちは天国行きツアーに参加できることになりました。この船に積まれた爆弾は5時間後に爆発します。短いスリリングな余生を存分に楽しんでください」
ジーン「んだとぉ……」
□CMシップの表面
立体映像がデジタル時計表示に切り替わり、爆発までの残り時間を刻み始める。
突然、ビープ音が鳴る。
ジーン、めんどくさげに無線のスイッチを入れて
ジーン「エイシャ、今取り込んでんだ。あとにしろ、あとに……」
クラッカージャック(オフ)「5時間の余生しかない人間に「あと」はあまりないと思うのだがね」
ジーン「誰だ、てめえ!」
□宇宙ステーション内のホテルの1室
清潔だが簡素なビジネスホテル風の室内。窓からは宇宙空間(下にはヘイフォンが見えている)が見える。ベッドに座り、パソコン端末みたいなもの(爆弾のモニター)を見ながら無線機(トランシーバー風)に向かって話しているクラッカージャック。背後にはもう一つ端末があり、覆面姿の男がなにやらしゃべっている。
クラッカージャック「私の名は、とりあえずクラッカージャックとでもしておこう」
ジーン(オフ)「とりあえず、だあ!」
クラッカージャック「落ち着きたまえ。今は私の名前より重要な問題があるだろう。君の船に先ほど接続されたのは高性能な爆弾だ。下手にケーブルを切り離したり爆弾を解体したりしようとしたら、すぐさま爆発するから、馬鹿なことは考えないようにしたまえ」
ジーン(オフ)「てめえの目的はなんだ?」
クラッカージャック「海賊と結託して民衆から搾取している腐敗した政治家たちの退陣だ。声明はちょうど今、全周波数で流しているところだよ」
クラッカージャックの背後の端末、覆面姿の男が犯行声明を読み上げている。
男「繰り返す。我々、人民解放戦線は、腐敗した現政権の即時解散と……」
クラッカージャック「私個人としては、君に何の恨みもないが、これも大儀のためだ。君らには人質になってもらう。ヘイフォン政府が私の要求を呑めば、君は船ごと解放してあげるよ」
通信機を切り、荷物をまとめて立ち上がるクラッカージャック。アタッシュケースを持って部屋を出てから時計を見る。時計が13:00時ちょうどを指した途端、廊下沿いの部屋のドアがすべて開き、中からアタッシュケースを持った黒服・黒眼鏡の男たちが一斉に出てくる。
クラッカージャック「作戦開始だ」
そう言ってクラッカージャックが廊下を歩き出し、男たちが後に続く。
□アウトロースター号のブリッジ
ジーン「バカ言ってんじゃねえ! おい! ちっ、切っちまいやがった。ジム、船の被害状況は?」
ジム「ウィルスは除去できたけど、かなりメモリをやられちゃって、ギリアムはダウンしたまんま。酸素循環装置はなんとか生きてるけど、温度調節はダメ。武装はもちろん、操船関係もほとんどいかれてて、姿勢制御ができるくらい。エアロックも開かないや」
ジーン「じゃあ、最悪、船を捨てて脱出するのも無理ってことか。なんか動くもんはねえのかよ」
ジム「動かせるのはグラップラー・アームくらい。あれはシステムがコックピットに直結してるからね」
ジーン「くそっ」
メルフィナ「ジーン、これを見てください」
ジーン「ん?」
メルフィナ「さっきの加速で変わった軌道を計算したらこれが」
スクリーンにアウトロースターの軌道が出る。ヘイフォンの周りをぐるぐる周回しながらだんだん高度が下がっていき、宇宙港のある宇宙ステーションに衝突するのがわかる。
メルフィナ「このままだと、たとえ爆弾の時限装置が働かなくても5時間後には……」
ジーン「爆弾抱えてステーションに激突、ってか」
□ジーン&ジム商会の事務所
無線機にしがみつくようにして怒鳴っているエイシャ。
エイシャ「ジーン、ジーン、どうしたぞな。爆弾って何ぞなーー!」
鈴鹿、すっと立ち上がり腰に刀をさす。
エイシャ「にゃ?」
鈴鹿「ここで怒鳴っていても何も解決しませんよ」
エイシャ「だったらどーするちゅーぞな」
鈴鹿「爆弾を作った本人なら解体方法だって知ってるはずです」
すたすたと出ていく鈴鹿。一瞬、ぽかーんとしてから、あわてて後を追うエイシャ。
エイシャ「待つぞな。どうやって犯人探すつもりぞなーー」
□宇宙ステーション内の広場
我先に宇宙港の宇宙船乗り込み口に向かって走る人々。
アナウンスの声(オフ)「みなさん、慌てず落ち着いて避難して下さい。船の座席には充分余裕があります。……」
□ステーション内の宝石店
展示フロアに様々な王冠や首飾り、宝石類の陳列棚が置かれている。そのケースにシャッターが降りたり、周囲に柵が降りてきたりしていく。警告音がうるさく鳴るなか、客も店員も我先に出口に走っている。
店長(女性)「わたしの宝石が〜〜」
店員「店長、今は逃げるのが先です。どうせ保険かかってるんでしょ」
店長「だって〜〜」
□宇宙ステーションの外観
(このステーションはヘイフォン赤道上の静止衛星軌道上に静止しており、地表と軌道エレベーターで結ばれている)
ステーション外壁の宇宙港に接舷していた宇宙船が、次々にドッキングを解除して離れていく。
□ヘイフォン中央警察署内
大勢の職員が慌ただしく電話や無線に対応したり、状況を示すスクリーンを操作したりしている。
署員A「ステーションからの避難は順調に始まりました。なんとか予告時間までには完了できるかと」
署員B「しかし、ステーションが爆発に巻き込まれた場合、軌道エレベータが地表に落下、その被害はすさまじいものに……」
署長「万一の場合は、人質になっているタグボートの乗員たちはかわいそうだが、船ごと爆破するしかないか」
署員A「いや、犯行声明が大々的に通告されて、状況が一般に漏れている以上、それは非人道的すぎるかと。それに、犯人によれば、あの船には爆弾の他に放射性物質が大量に積まれているそうです。下手に爆発させてそんなものが地表に降り注いだら……」
署長「なんとしても爆発はさせられんというわけか。爆弾処理班の派遣はどうなってる」
署員A「それも、犯人から、他の船が接近すれば自動的に爆発すると警告されており、うかつに近づけない状態でして……」
署長「くそっ! 何か手はないのか?!」
□アウトロースター号のブリッジ
ジム「あにきー、ほんとにやるのーー?」
ジーン、操縦桿から手を離し、スイッチを入れる。
ジーン「他になんかいい手があんのか。ユー・ハブ・コントロール」
ジム、自席の操縦桿を握る。
ジム「アイ・ハブ・コントロール。素人が爆弾解体なんて無茶だよぉ」
ジーン、グラップラー・アームの操縦スティックを握る。
ジーン「腹、据えろっての。メル、センシングを頼むぞ」
メルフィナ、鈴鹿の席に座り、モニターをチェックしながらコンソールをいじっている。
メルフィナ(緊張した声で)「はい」
□アウトロースター号の船腹
グラップラー・アームがせりだしてくる。
□アウトロースター号のブリッジ
ジーン「要は信管の電源切っちまやいいんだ。エンジンの点火プラグのコード切るのとおんなじじゃねえか」
ジム「エンジンは切るコード間違えたからって爆発しないって!」
メルフィナ「赤外線スキャン、終了しました。スクリーンに出します」
メインスクリーンにCMシップのサーモグラフが映る。
ジーン「くそ、デコレーションの熱のせいで、何もわかりゃしねえ。メル、重力波はどうだ」
メルフィナ「……スキャン終了。映します」
今度はCMシップ内の質量分布が映る。
ジーン「なんだぁ? 中はほとんどがらんどうかぁ?」
ジム「カモフラージュだね。これで、港への進入コースに入る前の検査をパスしたんじゃないの」
ジーン「ちっ。つまり、開けてみるまで中はさっぱりわかんねえってことか」
メルフィナ「やっぱりやめませんか。ヘイフォン政府が要求を呑めば解放する、って犯人さんも言ってましたし……」
ジーン「あのな。このへんの星系国家がテロに屈するわけないだろ。辺境じゃちょっとでも弱腰だと、悪党どもに足下見られちまうから、どこもコワモテなのさ」
メルフィナ「そういうものなんですか」
ジーン「そういうものなの。……悩んでてもしょうがねえや。とりあえず、ハッチを開けるぞ」
□CMシップのハッチ
アウトロースター号のグラップラー・アームが、ハッチに近づき、その横のマニュアル開閉レバーを右手でひねる。ハッチが開き、内部に通じるエアロックが奥に見えてくるが、そこには「BOOO! NO ENTRANCE(ブー! 入り口じゃないよ)」と書いた紙が貼ってある。
ジーン(オフ)「なにぃっ!」
船内から爆発が起こり、ふっとぶエアロック。爆発で、グラップラー・アームの右手も吹き飛ばされる。
□アウトロースター号のブリッジ
振動するブリッジ。
ジーン、ジム、メルフィナ「(悲鳴)!」
<中CM>
□地表側の宇宙港の管制室
エイシャと鈴鹿が管制官につめよっている。
鈴鹿「あのCMシップの船主登録はどうなっっているのです」
管制官「そ、それは警察にしか、お、お見せでき……」
エイシャ「ぐちゃぐちゃ言ってないで教えるぞな」
エイシャと鈴鹿の背後の窓の外で閃光が走る。驚いて振り返る二人。南の空に光った爆発が消えていく。
□ステーション内のメンテ用通路(この時点では、視聴者にはどこだかわからない)
クラッカージャックと部下たちが歩いている。突然、クラッカージャックの腰にぶら下げてある端末がビープ音をたてる。クラッカージャックは端末を手に取り、画面を眺めると、ため息をつく。
クラッカージャック「やれやれ」
□CMシップとアウトロースター号
CMシップのハッチが吹き飛び、アウトロースター号のあちこちに傷が付いて、右のグラップラー・アームの指がふきとんでいる。
□アウトロースター号のブリッジ
ジーン「くそっ、脅かしやがって」
ジム「だから、やめよーって言ったのにー」
メルフィナ「右グラップラー・アーム、反応なし。全壊した模様です。その他には被害はありません」
受信のビープ音が鳴る。
ジーン「ジム。発信源、逆探」
親指を立てて答えるジム。ジーンは無線のスイッチを入れる。
ジーン「こちら、アウトロースター」
クラッカージャック(オフ)「バカなことはするなと言っただろう」
ジーン「るせえ。ちゃちな脅し、かけやがって。ドカンと大爆発じゃなかったのかよ」
クラッカージャック(オフ)「政府が我々の要求を呑む前に、君みたいなバカに早まったことをされては元も子もないのでね。とはいえ、これ以上くだらん真似をすると、あんな警告ではすまなくなるよ」
ジーン「要は見事解除してみせりゃいいんだろうがよ」
メルフィナ(小声で)「ダメですよ、犯人を刺激しちゃ……」
クラッカージャック(オフ)「……ふはは。おもしろい。いきなりもっとも初歩的なトラップにひっかかった君が、見事に解体してみせると言うのかね。(唐突に怒りをこめて)タグボートのパイロット風情が生意気なことを言うもんじゃない!」
ジーン「(ドスを利かせて)爆弾魔風情がいつまでも偉そうに吹いてんじゃねえ」
クラッカージャック(オフ)「ふ、そこまで言うのなら存分にやってみたまえ。健闘を期待しているよ。ふふふ」
ジーン「言いたい放題言いやがって。ジム、逆探できたか」
ジム「ダメだー。普通の電波なんであんまり指向性がないや。ただ全然タイムラグがなかったから、半径3万キロ以内ってとこかな」
メルフィナ「でも、その範囲内に不審な船はいませんよ。だいたい、みんな避難してしまってますし」
ジム「じゃあ、地上とか」
ジーン「アホ。ステーションが爆発したら軌道エレベータが降ってくるってのに、わざわざそこで待ってるかよ」
メルフィナ「いったい、どこにいるんでしょうねえ」
ジーン「それより、今の会話からすると、ヤツはこっちの状況をモニタできるらしい。無線で爆破コマンドなんぞ入れられたらかなわねえ。妨害電波、出せねえか」
ジム「通信機類は生きてるからなんとかやってみるけど、そんなことして逆にドカーンといかない?」
ジーン「ヤツが言ってたろ。そうそう簡単に爆発させる気はねえって」
ジム「こうなりゃ、ヤケだ。あにきの好きにするさ」
コンソールに向かって操作を行うジム。
□ステーション内のメンテ用通路
クラッカージャックの端末、残り時間の表示以外(CMシップの透視回路図など)が消えてしまう。
クラッカージャック「ほう。少しはものを考えられるようだな」
あざ笑うようにそう言ってから、部下たちに命令。
クラッカージャック「急ぐぞ」
□アウトロースター号
CMシップの船殻のあちこちを、残った左グラップラー・アームでコツコツ叩いているアウトロースター号。
□アウトロースター号のブリッジ
メルフィナ「ありました! この部分だけ、叩いたときの振動が違います」
ジーン「よーし、そいつだ。ジム、レーザーカッター、使えるか」
ジム「動力部につながってるからダメ。丸ノコなら内蔵バッテリーだから使えるよ」
ジーン「げ。あんまり揺らしたくないんですけど」
ジム「やっぱ、やめない?」
メルフィナ「(小声で)さんせーーい」
□アウトロースター号
CMシップの船殻を、グラップラー・アームの先に装備した丸ノコで切り裂いていく。やがて、穴が開き、船内にグラップラー・アームが入っていく。
□アウトロースター号のブリッジ
ジーン「おいおい、いきなりコレかよ」
メインスクリーンには、グラップラー・アームの先端が写っている。その先から、先がハサミになったさらに小さいマジックハンドが伸びている。その向こうに見えているのは、小さな起爆装置(信管)と、そこから伸びている二本の線(片方は赤、片方は青)。
メルフィナ「どうやら、あの小さい筒状のものが起爆装置のようですね。その下に大量の爆薬が見えています」
ジーン「てことは、あそこにつながってる2本の線のどっちかが、起爆用の信号を流すために起爆装置につながってるってわけか」
メルフィナ「じゃあ、もう一本はなんなんでしょう?」
ジーン「昔から爆弾ものの映画でおなじみのヤツさ。切った途端にリレーが作動して、本物の信号線から起爆装置に信号が流れてドッカーンだ」
ジム「あ、あにきぃ。どおすんだよぉ」
ジーン「落ち着け。どっちかを切ればいいんだろがよ」
ジム「ダミーの方を切ったら、途端にドカンなんだからね」
メルフィナ「(冷静に)確率は1/2というわけですね」
ジーン「まかせろって。こう見えてもギャンブルはお手のもんよ」
ジム「うそつけーーーー!」
ジーンの顔のアップ。額に汗が流れている。グラップラー・アームのスティックを持つ手は小刻みにふるえている。
ジーン「赤か。青か。この爆薬の量じゃ、今度こそ間違えたら御陀仏だな」
ジム「冷や汗ダラダラ流しながらかっこつけてんなよーー」
ジーン「こりゃ本物の汗。なんせ空調が効かないもんだから暑くってかなわねえや」
メルフィナ「でも、ジーンの体温、平熱ですよ」
うつむいて笑うジムと、赤くなるジーン。
ジーン「よくこんなときに笑えるね。おまえは大物だよ」
ジム「怖いとよけい……つまんないことが……おかしくって……笑いがとまんないんだよ(泣き笑い)」
メルフィナ、席を立ってジムのそばに行き、操縦桿を握っているジムの手に自分の手を重ねる。
メルフィナ「大丈夫です。きっとうまくいきますよ」
ジム「メル……」
唐突になる受信ビープ音。
ジーン「(びくっとして)なんだ? ジャミングかけてたんじゃないのかよ」
ジム「これ、指向性のレーザー通信だ。ステーションの方からだよ」
ジーン、通信のスイッチを入れる。
エイシャ(オフ)「にゃにやってるぞなー! 無線が通じなくて苦労したぞなもし!」
ジーン「ああ、うるせえ。……今取り込み中なんだよ。勘弁しろよ」
鈴鹿(オフ)「犯人のこと、知りたくないですか」
ジーン「何?」
□最初に爆弾魔がいたホテルの部屋
もぬけの殻の室内に鈴鹿が無線機を持って立っている。エイシャはしゃがんでくんくん匂いをかいでる。
鈴鹿「船主の情報を辿ろうとしたのですが、巧妙なダミーだったので詰まってしまいまして……」
エイシャ「だもんで、フレッド・ローに教えてもらったんぞな」
□フレッド・ローのオフィス(回想)
フレッドに刀をつきつけている鈴鹿。ボディガードをぎったんぎったんにのしているエイシャ。フレッドは冷や汗を流している。
ジーン(オフ)「高くついただろう?」
鈴鹿(オフ)「いえ、ジーンのためならと素直に協力してくれましたよ」
□ホテルの部屋
エイシャ「ローの言うには、海賊が闇で売りさばいた偽造登録にゃんだそうぞな」
ジーン(オフ)「海賊だぁ?」
鈴鹿「それで、さらにその売った相手というのをローに聞き出してもらったのですが」
ジーン(オフ)「思わせぶりはやめて、さっさと結論を言え、結論を」
鈴鹿「(うっすらと笑って)相手は名うての強盗団のボスだったそうです」
□アウトロースター号のブリッジ
ジーン「強盗だぁ? テロリストじゃねえってのかよ」
メルフィナ「強盗さんがなんでこんなことしてるんでしょう?」
ジーン「…………なるほど。わかったぜ、奴らの狙いが」
ジム「え?」
ジーン「この爆弾騒ぎは、警察の注意をひきつけるための猿芝居なんだ。要は宇宙ステーションから人を遠ざけられりゃいいのさ」
ジム「でも、なんのためさ?」
ジーン「ステーションで派手な宝石展やってるって言ったのは、ジム、おまえだろ」
□ステーション内のメンテ用通路
一味、レーザーカッターで壁に穴を開けている。壁に穴があくと、全員、穴を抜けて向こう側へ。そこは、展示会を実施中の宇宙ステーション内の宝石店(当然、今は無人)。
クラッカージャック「ふ、ふは、ふはははははは」
笑うクラッカージャックから、カメラが引き、宝石店の外に出てステーション内の広場へ、そして広場の透明な天蓋から外の宇宙へと画面が変わる。
□アウトロースター号のブリッジ
ジーン「なんとなくヤツの考え方が読めてきたぜ。きっと、この起爆装置もダミーで、どっちのコード切っても爆発するにちがいねえ。ハッチで引っかかったヤツをもう一度引っかけるトリックなんだ」
メルフィナ「じゃあ、本物の起爆装置はどこにあるんです?」
ジーン「さっき爆発したハッチの奥を調べる。俺の勘が正しけりゃ起爆装置はあの奥だ」
ジム「一度調べたところの奥は二度とは調べない、ってかー」
ジーン「そういうこと」
□アウトロースター号
CMシップの吹き飛んだハッチの奥に、グラップラー・アームを入れていくアウトロースター号
□アウトロースター号のブリッジ
メルフィナ「壁があって、その向こうで機械音がします」
ジーン「それだ。ジム、まだ丸ノコ、使えるか?」
ジム「小さい穴を開ける程度ならバッテリーも保つんじゃないかな」
ジーン「よし、今度こそやってやるぜ」
メルフィナ「でも、この向こうに本物の起爆装置があったとして、またコードが2本出てたらどうします?」
ジーン「ヤツはうぬぼれが強いから、もうそんな遊びはしてないと思うけどな。ま、そんときゃ、俺の運と勘を信じろって。それより、もうあんまり時間がねえ。鈴鹿、エイシャ、頼みがあるんだけどな……」
□ステーション内の宝石店
部屋の隅にあるコンピュータになにやら機械を接続してハッキングしているクラッカージャックの部下たち。クラッカージャックは、一人、部屋の中央に立って無線を使っている。
署長(オフ)「人命には換えられん。政府は諸君の要求を受け入れる。これからすぐさま国会を召集して総辞職を採決するということだから、爆発は思いとどまってくれ」
クラッカージャック「我々の要求はあくまで5時間以内の総辞職だ。そのような不誠実な回答には応じられんね」
署長(オフ)「そんな無茶な……、貴様ら、最初から取引をする気など……」
無線を切ってしまうクラッカージャック。
ピンと電子音がしてロックがはずされ、陳列棚を覆っていたシャッターや柵が上がっていく。部下たちは一斉に陳列棚のケースを割り、宝石を次々にスーツケースに詰めていく。クラッカージャックは端末の残り時間表示を見ている。
クラッカージャック「よし、時間だ」
全員、スーツケースのふたを一斉に閉めていく。
クラッカージャック「行くぞ」
侵入してきた壁面の穴に戻ろうとする一味。ところが、穴の向こう側に人影が。鈴鹿とエイシャである。
クラッカージャック「だ、誰だ!」
鈴鹿「それはこちらの台詞ですわ、クラッカージャックさん。テロのふりして宝石強盗だなんて、さぞや名のある泥棒さんなんでしょうね」
エイシャ「おまえらみたいにウジャウジャこまかいこと企む連中は虫が好かんぞな。がるるる」
クラッカージャック「くっ!」
クラッカージャックが手を振って部下に合図すると、数人の部下が鈴鹿たちめがけて突進する。
エイシャ「ふしゃーーーっ」
□宇宙ステーション内の広場
宝石店の窓を破ってクラッカージャックの部下たちが広場に放り出される。さらに、クラッカージャックと残りの部下たちが、ドアから広場へ。それを追って、獣人化したエイシャは窓から、剣を手にした鈴鹿はドアから、やはり外に出てくる。
かかってくる一味を、ずばずば切り捨てる鈴鹿と、ちぎっては投げるエイシャ。もはや、残ったのはクラッカージャックのみ。
クラッカージャック「(声がうわずってる)き、君たち。分け前が欲しいのなら、半分あげようじゃないか。と、とにかく、ここでこんなことをしている時間はないんだ。もうすぐ爆弾を積んだ船が……」
鈴鹿「その点なら」
エイシャ「心配無用ぞな」
クラッカージャック「なに?!」
いつの間にか近づいていたアウトロースター号。広場の天蓋を突き破って突っ込んでくる。下にある店々を押しつぶしつつ、クラッカージャックの手前まで進んでから停止する。いきなり壁に大穴があいたので、空気が流出、激しい風が吹き始める。
アウトロースター上部のハッチ、内側から爆発して吹っ飛ぶ。中から飛び出すジーン。
ジーン「よお。やっと会えたな、クラッカージャック」
クラッカージャック「ま、まさか、貴様」
ジーン「そのまさか、さ。爆弾ならとっくに解体して捨てちまったよ!」
ジーン、にやりと笑みを浮かべる。
クラッカージャック「お、おのれえ」
自ら、懐の銃を抜こうとするクラッカージャック。一瞬早くジーンの銃がクラッカージャックの腕を撃ち抜く。銃を落とすクラッカージャック。
船から飛び降り、クラッカージャックのそばに歩み寄るジーン。
ジーン「5時間楽しかったぜ。カウントダウン終了だ」
クラッカージャックの顔に強烈なパンチをたたき込むジーン。クラッカージャック、吹っ飛んで気絶する。倒れたクラッカージャックの腰にぶら下がった端末、残り時間の表示がゼロになる。
(200字詰め原稿用紙換算74枚)