I.リンク集;日本語の医療情報
今回のタイトルにもなっていることから,インターネットによってアクセスすることができる日本語の医療情報を表1として最初にまとめておく。紹介にあたっては,リンク集を優先してまとめることにした。リンク集は,インターネットのガイドブックとして利用できるからである。
リンク集とは,インターネット上でアクセスできる情報資源(文章,画像,音声,数値等のデータ,データベースの検索サービスなど,コンピュータによって扱うことが可能なあらゆる資源,リソースとも呼ばれる)をURL(「ちょっと教えて」3参照)とともにまとめたものである。インターネット上のリンクは,クリックするだけで該当する情報源にジャンプすることができるのでたいへん便利である。リンク集の考え方を図1に簡単に示した。図1には例として春の行楽に関する情報をまとめたリンク集を示したが,インターネット上の役立ち情報を,その人なりに選んでまとめたガイドブックのようなものであることがおわかりいただけると思う。たとえばかつて本モダンメディア誌上でも,臨床検査領域において有用な情報源が紹介されたことがあった1)。こういったリストをインターネットを通じて提供すれば,それがすなわちリンク集に他ならない。
リンク集の作者は,数多の情報の中から自分なりに有用な情報を選択し,使いやすい形でリンク集としてまとめている。したがって集められた情報源は,一定の評価に耐えるものであるという見方もできよう。たとえば表1の一番上に書いた「立花隆100億年の旅発科学サイトリンク集!」には,NatureやScienceといった著名な科学雑誌の記事をインターネットを利用して見てみたいとお考えの方々に有用な情報が,各サイトとリンクされた状態で盛り込まれている。あるいは「けんちゃん学術研究WWWブラウザへようこそ!」には,文献検索をはじめとする研究に役立つ情報がまとめられているといった具合である。
表1に示したようなリンク集にまとめられているリソースをチェックしていけば,日本語(だけではないが)の医療情報のかなりの部分を体験することができるのではないかと思われる。ある意味では,表1にまとめたリンク集は,私がまとめた「リンク集のリンク集」という言い方もできるだろう。ただこれらのリンク集は,実を言うと今回の記事のためにわざわざ検索エンジン(II.で紹介する)を使って探してきたもので,自分で使い込んだ上で紹介しているものではない。ところで「リンク集のリンク集」という発想は既にインターネット上で実現されている。つまり,リンク集を集めてリストにまとめたホームページが存在している。リンクをたどっていくときには,こういったリンクのリンクを活用するのも一つの手である。リンク集をどのように活用するのかについては,わかりやすいガイダンスがまとめられているし2),あるいは本編に続けて「いろはの"い"3」でも簡単に解説してみたので参考にされたい。
さて,表1では10あまりのリンク集を紹介した。各リンク集はそれぞれの視点で集められたユニークな内容であり,利用者の指向とベクトルが重なればたいへん便利なものである。したがって,何らかの足がかりを基に調査の対象を広げていくような場合には有用だろう。ところで,こうしてリンクを辿ることでいろいろな情報源の間を飛び回る(実際にはマウスをクリックするだけだが)ことを,ネットサーフィンと称している。
他方,基本的には情報収集を他人任せにしていることから,必ずしも自分の必要な情報を得られるとは限らないこと,その情報を集めた人の指向やセンスに成果が大きく左右されることといったような問題点は避けられない。また,どのくらいの頻度で内容が見直されているのかがまちまちであることから,常に最新の状態にあるかどうかも保証できない。インターネット上の情報源の動きはとても激しいので,鮮度は重要な要素である。
さらに,各リンク集がそれぞれ30のリソースに対してリンクを張っていると仮定しても,全部で400以上のリソースをチェックしなければなならないことになる。これではお忙しい読者の方々に申しわけない。そこで検索エンジンが登場する。検索エンジンは,リンク集と並んでインターネット上の目的とする情報にたどり着くための重要な術のひとつである。
II.検索エンジン;インターネット上の情報を探す
検索エンジンとディレクトリサービス
インターネットの上では日々情報が氾濫している。氾濫する情報をデータベース化し,キーワードなどを使ってそれを検索できるようにしたのが検索エンジン(あるいはサーチエンジン)である。エンジンなどと言うといかにも頼もしいが,実際のところこのような仕組み無しではとても効率的な利用を期待できないほど多くの情報がインターネットには存在する。念のため付け加えておくが,ここで言う「情報の検索」とは基本的にインターネット上で公開されているあらゆるリソースの探索を意味している。特定の論文や新聞記事を見つけだすために行う情報検索と違って,実に様々なものを手に入れられる可能性を秘めている。反面,冒頭に述べたように情報の洪水の中で目標を見失ってしまう心配も常に存在する。
検索エンジンは,厳密に言うとデータベースの検索サービスを提供するものを指す。したがってあらかじめ用意された基準に基づいて情報を分類した状態で提供するディレクトリサービスとは本来区別される。前者の代表がたとえばgooであり,後者の代表的なものがYahoo! Japan(ヤフージャパン)である。ただ,ディレクトリサービスでキーワードによる検索ができないかというとそういうわけでもなく,両者の区別は機能の面でも,言葉の使われ方の面でも曖昧なようである。日本語を利用できる検索エンジンのうち代表的なものを表2に示す。ここではディレクトリサービスも併せて紹介することにした。
検索サービスのみを提供するものでは,プログラムが機械的にインターネット上の情報を収集蓄積するものもあり,膨大な情報量をかかえるものも少なくない。一方ディレクトリサービスでは,情報の分析や登録作業が求められることから,蓄積している情報量そのものは制限される傾向にある。両者は単に情報量の点で比較すべきものではなく,利用目的に合わせて使い分けるものだと筆者は考えている。つまり,膨大な情報を自由に検索できる検索エンジンが有れば情報検索要求の全てを満たしてくれるというものではなく,調査の対象となる情報が膨大であればあるほど,それを一定の水準で分類して見せてくれるディレクトリサービスの存在価値も大きくなると思うのである。細かい話はこれくらいにして,検索エンジンの使い方についても紹介することにしよう。
まず表2に紹介した検索エンジンが,いずれも無料で利用できることを最初に書いておく。経済的な面ではどうか安心して試していただきたい。検索エンジンの運営にはコストが求められることは容易に推測できるが,今のところ広告収入や運営側の研究費等という形で負担されており,利用者側に直接コストの負担を求めるような仕組みにはなっていない。
検索エンジンには表2に示したように多くのものがあり,それぞれが特徴を持っている。使い方も少しずつ違っている。しかし基本的には,思い付くキーワードを入れ,検索結果のリストをチェックして,利用者が見たいものがあればそれを画面上でクリックする,という手順で情報探しを進めることは共通している。違うのは,該当件数が多すぎるときに絞り込んでいく操作手順であるとか,キーワードの書き方といったようなことである。
たとえば表1に示した医療情報に関するリンク集を探すとしよう。キーワードの設定画面に「医療情報□リンク集」というようにスペース(□で示した)で区切って2つの単語を並べたとき,gooでは両方の単語を同時に含むものという意味となる。逆にInfoseekでは2つのうちのどちらかを含むものとなってしまい,無関係な情報がたくさん引っかかってくる。Infoseekで「複数の単語を同時に含むもの」という検索を行うには,各単語の前に+をつける必要があるのだ。このように,ちょっとした違いで全く別の検索結果となることがあるので注意が必要である。特に複数の単語の組み合わを検索に使うときには,一応説明を読んでからにした方が効率的かもしれない。検索エンジンの使い方についてはここでは詳しくはふれない。もしも解説書をご覧になりたいのであれば,書店のインターネット関連書籍に混じって,いくつか検索エンジンの使い方に関するものも見つかるはずである。もっとも多くの検索エンジンは,機械的に結果をランキングする。したがっていくらたくさんの結果が出てきても,それなりに関連の深そうな情報から順に並んだリストを見ていくことになる。リストの最初の方に目的の情報を見つけられれば,件数の多少はそれほど大きな問題ではないかもしれない。参考までに,本稿を起こすにあたって筆者が参考にした資料を引用文献として紹介しておく3)。
メタサーチ
さて,慣れないうちは一つの検索エンジンやディレクトリサービスだけで検索を済ませてしまいがちである。しかし先にふれたように,同じような検索方法でも得られる結果には大きな違いを生じるのが検索エンジンの特徴である。また抱えている情報源がもともと違っていることを考慮すると,複数の検索エンジンの併用は多くの場合効果的と言える4)。複数の検索エンジンを使って検索結果を比較するようになると,それぞれの検索エンジンで似たような検索を別々に行うのがわずらわしいと感じる方も多かろう。こういう時に便利なのがメタサーチと呼ばれるサービスである。図2を見ていただきたい。これはメタサーチのひとつであるEasySEARCH(URLは,http://www.nibh.go.jp/EasySEARCH/)のキーワード入力画面である。
EasySEARCHのキーワード入力画面では,表2に示した代表的な検索エンジンが左側に並んでいる。使い方は簡単である。キーワード設定欄に任意のキーワードをタイプし,あとは好きな検索エンジンをクリックするだけである。キーワードの設定は一度でよく,あとは任意の検索エンジンをクリックしていけば,クリックする度にその検索エンジンによる検索結果が表示されるようになっている。
図3として,たとえばgooをクリックした時の検索結果を示した。いったん検索をスタートさせた後は,その検索エンジンの機能を利用する事になる。他の検索エンジンを試すためにEasySEARCHのキーワード入力画面に戻るには,ブラウザの左向きの矢印をクリックして画面を遡ればよい。表1にまとめたリンク集も,実はこのような作業を通じて探し出したものである。
メタサーチにはEasySEARCH以外にもたとえば表3にまとめたようなものがある。読者の皆さんも自分の興味のおもむくまま,いろいろな情報源の探索にチャレンジしてみてはいかがだろう。なお余談だが,EasySEARCHには検索エンジンに関する解説がある。ここで検索エンジンについて一般的な知識を得ることができる。
【表3】
【表4.インターネット上で参照できるインターネット用語集】 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ インターネット用語集 →http://www.sanynet.ne.jp/your-advisor/yougo.shtm ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━