〔医療にやさしいコンピュータ〕第2回
インターネットを通じて得られる日本語の医療情報
モダンメディア,44/4,pp119(15)-126(22),1998

藤谷 誠 /清水国際特許事務所
e-mail makotof@kt.rim.or.jp


はじめに
 インターネットを利用すれば,医療に限らずあらゆる分野の情報に居ながらにしてアクセスすることができる。それは単に種類が多いというだけでなく,物理的な面から見ても膨大な量である。自分の知りたいことをインターネットを利用して得ようとするときに,この情報量の大きさが障害となる。つまり簡単に言うと探しきれないのである。
 そこで今回は,どのような医療情報が利用できるのかを単に紹介するだけでなく,インターネットを利用して医療情報を探すという点にも目を向けてみようと思う。サイトやリンクの紹介にとどまらず,インターネットの中で自分の必要とする情報にたどり着く術についても紹介してみたい。

I.リンク集;日本語の医療情報
 今回のタイトルにもなっていることから,インターネットによってアクセスすることができる日本語の医療情報を表1として最初にまとめておく。紹介にあたっては,リンク集を優先してまとめることにした。リンク集は,インターネットのガイドブックとして利用できるからである。

 リンク集とは,インターネット上でアクセスできる情報資源(文章,画像,音声,数値等のデータ,データベースの検索サービスなど,コンピュータによって扱うことが可能なあらゆる資源,リソースとも呼ばれる)をURL(「ちょっと教えて」3参照)とともにまとめたものである。インターネット上のリンクは,クリックするだけで該当する情報源にジャンプすることができるのでたいへん便利である。リンク集の考え方を図1に簡単に示した。図1には例として春の行楽に関する情報をまとめたリンク集を示したが,インターネット上の役立ち情報を,その人なりに選んでまとめたガイドブックのようなものであることがおわかりいただけると思う。たとえばかつて本モダンメディア誌上でも,臨床検査領域において有用な情報源が紹介されたことがあった1)。こういったリストをインターネットを通じて提供すれば,それがすなわちリンク集に他ならない。


 リンク集の作者は,数多の情報の中から自分なりに有用な情報を選択し,使いやすい形でリンク集としてまとめている。したがって集められた情報源は,一定の評価に耐えるものであるという見方もできよう。たとえば表1の一番上に書いた「立花隆100億年の旅発科学サイトリンク集!」には,NatureやScienceといった著名な科学雑誌の記事をインターネットを利用して見てみたいとお考えの方々に有用な情報が,各サイトとリンクされた状態で盛り込まれている。あるいは「けんちゃん学術研究WWWブラウザへようこそ!」には,文献検索をはじめとする研究に役立つ情報がまとめられているといった具合である。
 表1に示したようなリンク集にまとめられているリソースをチェックしていけば,日本語(だけではないが)の医療情報のかなりの部分を体験することができるのではないかと思われる。ある意味では,表1にまとめたリンク集は,私がまとめた「リンク集のリンク集」という言い方もできるだろう。ただこれらのリンク集は,実を言うと今回の記事のためにわざわざ検索エンジン(II.で紹介する)を使って探してきたもので,自分で使い込んだ上で紹介しているものではない。ところで「リンク集のリンク集」という発想は既にインターネット上で実現されている。つまり,リンク集を集めてリストにまとめたホームページが存在している。リンクをたどっていくときには,こういったリンクのリンクを活用するのも一つの手である。リンク集をどのように活用するのかについては,わかりやすいガイダンスがまとめられているし2),あるいは本編に続けて「いろはの"い"3」でも簡単に解説してみたので参考にされたい。
 さて,表1では10あまりのリンク集を紹介した。各リンク集はそれぞれの視点で集められたユニークな内容であり,利用者の指向とベクトルが重なればたいへん便利なものである。したがって,何らかの足がかりを基に調査の対象を広げていくような場合には有用だろう。ところで,こうしてリンクを辿ることでいろいろな情報源の間を飛び回る(実際にはマウスをクリックするだけだが)ことを,ネットサーフィンと称している。
 他方,基本的には情報収集を他人任せにしていることから,必ずしも自分の必要な情報を得られるとは限らないこと,その情報を集めた人の指向やセンスに成果が大きく左右されることといったような問題点は避けられない。また,どのくらいの頻度で内容が見直されているのかがまちまちであることから,常に最新の状態にあるかどうかも保証できない。インターネット上の情報源の動きはとても激しいので,鮮度は重要な要素である。
 さらに,各リンク集がそれぞれ30のリソースに対してリンクを張っていると仮定しても,全部で400以上のリソースをチェックしなければなならないことになる。これではお忙しい読者の方々に申しわけない。そこで検索エンジンが登場する。検索エンジンは,リンク集と並んでインターネット上の目的とする情報にたどり着くための重要な術のひとつである。

II.検索エンジン;インターネット上の情報を探す
検索エンジンとディレクトリサービス
 インターネットの上では日々情報が氾濫している。氾濫する情報をデータベース化し,キーワードなどを使ってそれを検索できるようにしたのが検索エンジン(あるいはサーチエンジン)である。エンジンなどと言うといかにも頼もしいが,実際のところこのような仕組み無しではとても効率的な利用を期待できないほど多くの情報がインターネットには存在する。念のため付け加えておくが,ここで言う「情報の検索」とは基本的にインターネット上で公開されているあらゆるリソースの探索を意味している。特定の論文や新聞記事を見つけだすために行う情報検索と違って,実に様々なものを手に入れられる可能性を秘めている。反面,冒頭に述べたように情報の洪水の中で目標を見失ってしまう心配も常に存在する。
 検索エンジンは,厳密に言うとデータベースの検索サービスを提供するものを指す。したがってあらかじめ用意された基準に基づいて情報を分類した状態で提供するディレクトリサービスとは本来区別される。前者の代表がたとえばgooであり,後者の代表的なものがYahoo! Japan(ヤフージャパン)である。ただ,ディレクトリサービスでキーワードによる検索ができないかというとそういうわけでもなく,両者の区別は機能の面でも,言葉の使われ方の面でも曖昧なようである。日本語を利用できる検索エンジンのうち代表的なものを表2に示す。ここではディレクトリサービスも併せて紹介することにした。

 検索サービスのみを提供するものでは,プログラムが機械的にインターネット上の情報を収集蓄積するものもあり,膨大な情報量をかかえるものも少なくない。一方ディレクトリサービスでは,情報の分析や登録作業が求められることから,蓄積している情報量そのものは制限される傾向にある。両者は単に情報量の点で比較すべきものではなく,利用目的に合わせて使い分けるものだと筆者は考えている。つまり,膨大な情報を自由に検索できる検索エンジンが有れば情報検索要求の全てを満たしてくれるというものではなく,調査の対象となる情報が膨大であればあるほど,それを一定の水準で分類して見せてくれるディレクトリサービスの存在価値も大きくなると思うのである。細かい話はこれくらいにして,検索エンジンの使い方についても紹介することにしよう。
 まず表2に紹介した検索エンジンが,いずれも無料で利用できることを最初に書いておく。経済的な面ではどうか安心して試していただきたい。検索エンジンの運営にはコストが求められることは容易に推測できるが,今のところ広告収入や運営側の研究費等という形で負担されており,利用者側に直接コストの負担を求めるような仕組みにはなっていない。
 検索エンジンには表2に示したように多くのものがあり,それぞれが特徴を持っている。使い方も少しずつ違っている。しかし基本的には,思い付くキーワードを入れ,検索結果のリストをチェックして,利用者が見たいものがあればそれを画面上でクリックする,という手順で情報探しを進めることは共通している。違うのは,該当件数が多すぎるときに絞り込んでいく操作手順であるとか,キーワードの書き方といったようなことである。
 たとえば表1に示した医療情報に関するリンク集を探すとしよう。キーワードの設定画面に「医療情報□リンク集」というようにスペース(□で示した)で区切って2つの単語を並べたとき,gooでは両方の単語を同時に含むものという意味となる。逆にInfoseekでは2つのうちのどちらかを含むものとなってしまい,無関係な情報がたくさん引っかかってくる。Infoseekで「複数の単語を同時に含むもの」という検索を行うには,各単語の前に+をつける必要があるのだ。このように,ちょっとした違いで全く別の検索結果となることがあるので注意が必要である。特に複数の単語の組み合わを検索に使うときには,一応説明を読んでからにした方が効率的かもしれない。検索エンジンの使い方についてはここでは詳しくはふれない。もしも解説書をご覧になりたいのであれば,書店のインターネット関連書籍に混じって,いくつか検索エンジンの使い方に関するものも見つかるはずである。もっとも多くの検索エンジンは,機械的に結果をランキングする。したがっていくらたくさんの結果が出てきても,それなりに関連の深そうな情報から順に並んだリストを見ていくことになる。リストの最初の方に目的の情報を見つけられれば,件数の多少はそれほど大きな問題ではないかもしれない。参考までに,本稿を起こすにあたって筆者が参考にした資料を引用文献として紹介しておく3)

メタサーチ
 さて,慣れないうちは一つの検索エンジンやディレクトリサービスだけで検索を済ませてしまいがちである。しかし先にふれたように,同じような検索方法でも得られる結果には大きな違いを生じるのが検索エンジンの特徴である。また抱えている情報源がもともと違っていることを考慮すると,複数の検索エンジンの併用は多くの場合効果的と言える4)。複数の検索エンジンを使って検索結果を比較するようになると,それぞれの検索エンジンで似たような検索を別々に行うのがわずらわしいと感じる方も多かろう。こういう時に便利なのがメタサーチと呼ばれるサービスである。図2を見ていただきたい。これはメタサーチのひとつであるEasySEARCH(URLは,http://www.nibh.go.jp/EasySEARCH/)のキーワード入力画面である。

 EasySEARCHのキーワード入力画面では,表2に示した代表的な検索エンジンが左側に並んでいる。使い方は簡単である。キーワード設定欄に任意のキーワードをタイプし,あとは好きな検索エンジンをクリックするだけである。キーワードの設定は一度でよく,あとは任意の検索エンジンをクリックしていけば,クリックする度にその検索エンジンによる検索結果が表示されるようになっている。
 図3として,たとえばgooをクリックした時の検索結果を示した。いったん検索をスタートさせた後は,その検索エンジンの機能を利用する事になる。他の検索エンジンを試すためにEasySEARCHのキーワード入力画面に戻るには,ブラウザの左向きの矢印をクリックして画面を遡ればよい。表1にまとめたリンク集も,実はこのような作業を通じて探し出したものである。

 メタサーチにはEasySEARCH以外にもたとえば表3にまとめたようなものがある。読者の皆さんも自分の興味のおもむくまま,いろいろな情報源の探索にチャレンジしてみてはいかがだろう。なお余談だが,EasySEARCHには検索エンジンに関する解説がある。ここで検索エンジンについて一般的な知識を得ることができる。

【表3】


III. マニュアルコーナー『いろはの“い”』
2.URLの使い方

 URLの使い方
 URLが何であるかは,後の『ちょっと教えて』で述べるとおりである。『いろはの"い"』3では,URLの使い方を紹介してみたい。
 URLはインターネット上に存在する情報のありかを示す住所である。基本的な使い方の一つは,これをブラウザに入力してその情報を利用することである。ブラウザにはNetscape CommunicatorやInternet Explorerがよく利用されている。いずれのブラウザでも画面の上の方にURLの入力窓がある。ここにURLをタイプしてenterキー(Macintoshではreturnキー)を押す。あるいはファイルメニューの中から「ページを開く(O)...」を選んでURLをタイプしても良い。こうして必要な情報を得ることができるはずである。すなわち,自分のコンピュータを使って,画面に表示すべき情報であれば画面に表示させる,あるいは音情報であればスピーカーから流すということである。この説明からわかるように,ブラウザとはURLで特定された情報を読み込んで適切な形で再現するためのアプリケーションソフトウエアということもできる。インターネット上の情報源は全てURLで特定できる。新聞,雑誌,テレビ,ラジオ,あるいはポスターなどで見かけた(耳にした)URLは,原則的にはそれをブラウザに入力することで誰でも情報を得ることが可能である。URLについて書き始めたついでに,ちょっと便利な使い方を紹介しておこう。ブックマークとハイパーリンクである。
 ブックマークは,URLを自分のコンピュータに記録する機能である。たとえば,表1に示したリンク集を渡り歩いているうちに有用なサイトに巡り合えたとする。後日改めてそのページを見るために,URLを鉛筆でメモするというのはいかにもめんどうである。そこでブラウザの付箋のような形をしたアイコンをクリックし(Netscape Communicatorの場合),「ブックマークに追加」というメニューを選ぶ。この簡単な作業で,あなたが見つけた有用なサイトのURLが自動的にブックマークファイルへ記録される。次回からはブックマークファイルの中から必要な項目のタイトルを選ぶだけで,そのサイトにジャンプする事ができる。お気に入りの情報源を見つける度にブックマークに追加していけば,ブックマークファイルには有用な情報がどんどん蓄積されることになる。ブックマークファイルをうまく利用すれば,インターネットを効率的に渡り歩くことができるようになる。
 次に紹介するハイパーリンクも,知っておくと便利な機能である。インターネットでは,リンク集をクリックするだけで目的の情報にジャンプできることは先に述べた。リンク集にリストアップされたサイトは実は単なるリストではない。通常はブラウザの画面ではURLを見られないが,タイトルをポイントする(マウスの矢印をアイコンなどに重ねること)と,画面の下にURLが表示されるのが見える。これはポイントしたタイトルが,オリジナルの情報源にリンクされていることを示している。この状態でマウスをクリックすれば,URLを読み取ってリンクされた情報へのアクセスが実行されるわけである。この機能をハイパーリンクと呼んでいる。そしてハイパーリンクは電子メールの上でも利用できるようになっている。
 電子メールの送受信に使うメーラーには,ハイパーリンクを実現しているものがある。たとえばNetscape Messengerでは,電子メールの文章中に埋め込まれたURLを自動的に認識し,そのURLをブラウザで開くという処理を行ってくれる。たとえば友人から「こんな情報があったよ」と,URLを書いた電子メールを受け取ったとしよう。あなたはそのURLをクリックするだけで良い。いちいちブラウザにタイプする手間を省くことができる点で,ハイパーリンクは便利な機能である。こうして内容をチェックしたサイトが気に入ってしまったらどうすれば良いのだろうか?。自分のブックマークファイルに追加しておくのである。次回からは,ブックマークファイルを基にすぐにジャンプできるようになる。ハイパーリンクを利用すれば,一度もキーボードをタイプすることなく,お気に入りのサイトのURLが集められるのである。


IV.解説コーナー『ちょっと教えて』
3.URLとホームページ

 URLとホームページ
 表1などに,http:で始まるアルファベットと記号の連続が登場しているが,これがURL(Uniform Resource Locator)である。URLはインターネット上に存在するリソースを特定するための住所表示で,特定すべきリソースの場所やアクセス方法に関する情報を表している。
 URLを記述する記号には見慣れないものがある。たとえば"~"という記号などがそうである。これは,チルダーと呼ばれる記号である。この他に"_"(アンダーバー)などもURLの中によく登場する。こうした見慣れない記号や数字,大文字小文字が入り混じるURLは,手で書き写したり電話で口伝えにするよりも,できればブックマーク機能や電子メールなどを活用して電子的な手段で記録するようにしたい。1文字違っていても目的とする情報にたどり着けなくなってしまうので,注意が必要である。
 更にURLには鮮度が大切なことを忘れてはいけない。URLは情報発信者の都合で変わるものである。大げさに言えば,昨日有効だったURLが今日も同じように利用できるのかどうかは確かめてみないとわからない。鮮度にもじゅうぶんに注意を配るようにしたい。たとえば表1などに示したURLについては,原稿をまとめている段階(1998年3月)ではひととおりアクセス可能なことを確認している。しかし厳密に言うと,この号が発行されるころに存在しているかどうかを保証できないわけである。
 一方ホームページは,インターネット上でWWW(ウエッブ)を通じて情報発信をする時の拠点となる画面を指す。印刷物で言えば表紙や目次に相当する。一般にホームページにはそのサイトに含まれる情報のリストが階層的に配置されており,クリックするだけで個々の情報へのアクセスが可能である。なおホームページと同じように使われる用語に「サイト」がある。サイトはもともと物理的に独立して運営されているコンピュータや,運営する組織を意味していた。しかし最近では,より広い意味で使われているようである。
 インターネットのリソースの一つであるホームページとURLの関係を見てみよう。ホームページはURLによって特定される。そしてホームページから辿ってアクセスする個々の情報についても,それぞれ個別にユニークなURLが与えられている。したがってある情報を他の人に伝えるには,URLで特定するのが最も合理的であり,同時に一般的なやり方である
 URLの用語解説に合わせてインターネット上で参照できる用語解説のURLを2つほど紹介しておこう(表4)。これらの用語集では,説明の中に登場する用語がそれぞれの用語説明とリンクしている。これが何を意味しているかというと,用語の説明の中に出てきた不明な用語について,それをクリックするだけで更に説明が表示されるのである。用語解説では,解説文に出てくる単語の意味がわからずに困ってしまう場合があるが,ハイパーリンクを利用した用語集では,不明な用語の参照や,もとのページに戻るといった操作がクリック一つで可能となるためたいへん便利である。あちこちのページに指を挟んだり,付箋を付けたりする必要はないのである。なおこれらのサイトも検索エンジンを使って探し出したことは言うまでもない。

【表4.インターネット上で参照できるインターネット用語集】
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インターネット用語集
 →http://www.sanynet.ne.jp/your-advisor/yougo.shtm
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文献
1)西堀 眞弘:臨床検査ひとくちメモ/インターネットは医療や臨床検査の分野でどのように利用されているのでしょうか。,モダンメディア,42巻9号,407-411,1996
2) 小林 邦彦:開いてみようホームページ,医学のあゆみ,181巻,3号,231-236,1997
3) 鈴木 尚志:検索エンジン徹底活用法,日本経済新聞社発行,1998年
4) 浅井 勇夫:サーチエンジンから見たWebの世界,情報の科学と技術,47巻9号,453-458,1997