〔医療にやさしいコンピュータ〕第4回
インターネットを通じて得られる英語の医療情報
モダンメディア,44/6,pp196(18)-201(23),1998

藤谷 誠/清水国際特許事務所
e-mail makotof@kt.rim.or.jp


はじめに
 2回から3回にかけて、インターネット上でアクセスできる日本語の情報について紹介をしてきた。今回は、英語で提供されている情報を紹介する。インターネットでは国境や、物理的な距離というような、日常生活で情報流通の障壁となっている問題がたいへん小さなものになる。隣の机の上にあるコンピュータも、クローン羊が生んだ子羊のニュースを伝えるイギリスのロスリン研究所のページ1)も、インターネットに接続していれば、同じようにアクセスできる。ただし、大部分の情報はインターネットの中でも標準語としての地位を持つ英語で提供されている。したがって,英語の情報を遠ざけるのではなく、積極的に活用することによってインターネットを利用する意義を更に大きくすることができるだろう。
 本稿では、まず英語の医療情報としてどのようなものが存在するのかを紹介する。英語の壁を乗り越えれば、ユニークな情報源が存在していることをお伝えできれば幸いである。更に、英語はどうも苦手とお思いの読者に、パソコンを味方にして英語に親しむ方法を紹介する。実は、筆者も英語には泣かされている日本人の一人である。英語を読むための道具として活用するのも、パソコンの使い道の一つだということをお伝えしたい。

I.英語の医療情報
 前回は日本語の医療情報について、リンク集を紹介することでどのような情報がインターネットを通じて提供されているのかを示し、更にサーチエンジンを使って必要な情報を探し出す方法について,簡単なガイダンスを試みた。今回も英語の情報について、同じようにリンク集とサーチエンジンを紹介する。リンク集やサーチエンジンがどのようなものなのかについては、前回を参照願いたい。まず表1にライフサイエンスに関連するリンク集をいくつか示した。一般的なものに加えて少々専門的なものも混ぜてみた。英語による情報発信に目を向けると、そこには筆者のような一個人がチェックするのはとうてい不可能なほどの情報源がある。したがってここに挙げたリンク集は、あくまでも一例にすぎない。表2に示すようなサーチエンジン等も活用して、自分なりに役に立つ情報源を集めていただければと思う。

表1.英語による情報源を集めたリンク集
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http://mdi.ucsf.edu/BioMed_WEB_Sites.html          バイオサイエンスに関する幅広い情報源
http://www.who.ch/home/othersites/                 WHOによる世界の公衆衛生関連サイト
http://www.medical-tribune.co.jp/saibaa/saibaa.htm 日本語の解説がある
http://www.sigma.sial.com/                         試薬メーカーのカタログをオンラインで検索
http://www.antibodyresource.com/                   抗体に関するさまざまな情報、探し方
http://nucleus.cshl.org/CSHLlib/external/exter.htm 分子生物学系リソース中心のリンク集
http://www.hbuk.co.uk/jmb/                         Academic Press提供。分子生物学系リンク集
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 前回のサーチエンジンに関する紹介内容をご覧になった方の中には、表2を見て日本語の検索エンジンと同じなのでは?という感想を持たれる方もおられるだろう。実際、日本語でサービスを行っているサーチエンジンには、infoseekやyahooのようにアメリカ(というよりは「英語で」、というのが正確だろう)での成功が最初に有って、その後に日本語で類似のサービスを開始している。そのため、同じ名称のサービスが日本語版と英語版とに分かれて存在しているケースが出てくる。言語に関わらず、何でも引き受けてくれるサーチエンジンというのがあれば便利である。しかし現状では、独立した形で多国語への対応を進めることが多いようである。
表2.英語を利用できる検索エンジン
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          URL                     名称
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http://altavista.digital.com/   altavista
http://www.infoseek.com/        infoseek
http://www.hotbot.com/?         hotbot
http://search.yahoo.com/        yahoo
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 最後に付け加えるが、連載第1回でも触れたように、原則として、海外のサイトへアクセスするからという理由で特別な料金が発生することはない。もしも付加的な課金を求められるとすれば、それがもともと有料の情報源であるためであって、国境を越えていることや距離が長いという理由によるものではない。そんなわけなので、どうか安心して海外へのアクセスを試みていただきたいのである。

II.英語の壁を乗り越えるための助っ人たち
 先に述べたとおり、正直なところ、筆者は英語が苦手である。しかし、それでもインターネットを通じてアクセスできる多くの英語による情報は、仕事においてたいへん魅力的な情報源である。もちろん趣味の領域でも興味深い情報源は多いが、趣味については別の機会に譲るとして,まずは仕事の話である。いずれにせよ、英語は苦手と感じながらも英語の情報源の必要性を感じた時点で、苦手なりにも英語情報を読み取るテクニックや道具が欲しくなる。基本的に個人の英語の読解能力に依存することは避け難い事実だが、それでも知っておくとある程度は語学力の不足を補えるやり方があることも経験的に確かである。本稿では、英語の情報の紹介に合わせて、英語の情報を利用するに当たって知っておくと便利な使い方をいくつかまとめてみる。ここでは、検索機能、電子辞書、そして翻訳ソフトの3つについて触れることにする。

1. ページ内を検索
 まず、ブラウザがもともと持っている "ページ内を検索"という機能を紹介する。これは、現在表示されているページの中を対象として、ユーザーが入力した文字列を探してジャンプし、該当する文字列を反転表示してくれる機能である。画面いっぱいに英語が出てきても、たじろぐ必要はない。自分がチェックしたい表現を "ページ内を検索" 機能で追いかけていくと、意外に内容を把握する際の助けとなることがある。斜め読みを機械に助けてもらっているようなものだと、個人的には考えている。斜め読みをするには、ほんとうはその言語に堪能であることが求められる。ページ内検索機能は、その能力の無い者にとって擬似的な斜め読みの手助けとなる。
 なおこの検索機能は、大文字小文字を識別する/しない、現在カーソルがある位置を基準として上下どちらの向きに検索を進めるのか、といった条件設定が可能である。大文字小文字を区別しない、として検索すれば、"JAPAN" と "Japan" をどちらも検索する事ができるし、逆に識別すると指示すれば "p53"を "P53" と区別して検索することができる。
 ここで一つ注意しなければならないことがある。我々が日本語を扱っているパソコンの上では2種類のアルファベットがある。2バイト文字(全角)と1バイト文字(半角)の2種類である。これに対して英語の情報は、全て1バイト文字で表現されているので、検索文字の設定にあたっても、1バイト文字で指定する必要がある。ことに最近のパソコンの画面では、さまざまな大きさの文字を画面上に表示できるため、「大きいから全角、小さいのが半角」といった、単純な判断は難しくなっている。ここで、全角・半角という表現をカッコ書きの中に入れたのは、実際の画面で両者の判別を付けづらいことがあるためである。インターネット上で英語の情報を利用するときには、日本語変換機能をアルファベット入力に固定しておくのが良いかもしれない。
 2バイト文字は、ブラウザの画面内の検索のみならずサーチエンジンの利用にあたっても問題を生じる。英語を処理の対象とするサーチエンジンでは、2バイト文字を正しく認識できないのである。具体的には、スペルは間違えていないのに1件も該当が無いとか、英語圏の検索エンジンを使っているのにもかかわらず日本語の情報が検索されるといった状況に陥る。英語情報の探索を進めるときには、やはり基本的に日本語変換機能をアルファベット入力に固定しておくのが得策だろう。表2に示したような、英語を対象とした検索エンジンを使うときには注意が必要である。
 なお検索機能は、ブラウザに限らず、ワープロソフトも必ず搭載している。長い文章の中に自分が目的とするセンテンスが有るのかどうかを調べるのに、非常に便利な機能なので、他の場面でも同じように使ってみてはいかがだろう。

2. 電子辞書
 続いて、電子辞書を紹介する。印刷物として利用されている辞書の内容を、そのまま検索可能な状態でパソコンに収めてしまったのが電子辞書である。和英、英和はもちろん、広辞苑や漢和辞典等もパソコンの上で検索できるようになっている。中には、単なる検索だけでなく、発音データを持っていて実際に音声が出たり、あるいは辞書の中の鳥の声が流れたりするものもある。
 さて、インターネットの利用に当たって、電子辞書がどのように便利なのかを見てみよう。ブラウザで画面を見ていて意味のわからない単語が出てくる。筆者などは、中学・高校の不勉強が祟ってわからない単語だらけである。そんなとき、意味を確認したい単語をダブルクリックして反転させ、そのまま電子辞書のアイコンをポンとクリックすると、これだけの操作でたちまち単語の意味が画面に表示される。単語をタイプする必要も無いのだから、たいへん簡単である。最近では、パソコンの記憶容量が飛躍的に大きくなってきたのにともない、市販の辞書の内容がほぼそのまま収録されているものもある。表示の仕方も工夫されている。たとえば最初は単語の意味だけが表示され、「用例」アイコンをクリックすると、必要な分だけ用例を確認できるようになっているものがある。無用な用例が出てこないので、自分の確認したい表現をすぐに見つけ出すことができる。辞書の情報は画面の片隅に表示させるように設定できるので、自分の読んでいる英語の画面をじゃまされる心配も少ない。こんな便利なソフトウエアが一万円前後で手に入るのだから、印刷された通常の辞書そのものの値段を考えてみても、安い買い物だと筆者は感じるのだがいかがだろうか。更に最近では、購入時に既に電子辞書を搭載した(通常は「プレインストールされている」と言う)パソコンも販売されている。
 電子辞書の難点は、一覧性に欠けることだが、インターネットを利用するときに必要な情報だけをスピーディーに見つけ出せる点においては、むしろ長所なのではないかと筆者は考えている。
 電子辞書の宣伝をするわけではないが、蛇足を承知で筆者の考える電子辞書のメリットをもうひとつ紹介させていただく。それは、物理的な軽さ(コンパクトさ)である。印刷物の辞書を何冊かまとめると、かなりのボリュームである。しかしパソコンに入った辞書には、重さも大きさも無い。たとえば筆者がこの原稿を書くのに利用しているパソコンは、重さ2kg弱、一世代昔のノートパソコンである。この中に英和と和英の電子辞書が入っているのだから、辞書を2冊もかばんの中に入れることを思えば、多少の重さも仕方が無いと思っている。

3. 翻訳ソフト
 最後に、究極の英語対策が翻訳ソフトである。外国語を機械的に翻訳しようとする試みは古くからある。最近では、パソコンの性能向上に技術的な発展も加わって、安価で、しかも実用的な水準の翻訳を提供してくれるソフトウエアが登場するようになった。もっとも,使う人によって「実用的」の水準はまちまちだと思われるので、もしも購入を検討されるのであれば、店頭で実際に機能を確かめることをお勧めする。また翻訳ソフトの比較記事2)などもあるので,興味のある方は参考にされるとよいだろう。文献として引用した記事は、インターネットを通じて自由に見ることができ3)ので、合わせて紹介しておく。こうした情報を思い付くままに探し出すことができる点は、インターネットの便利なところだといえよう。
 翻訳ソフトの機能としては、指定した英文を翻訳するものや、画面に表示される英語のホームページの内容をほとんど全て日本語に置き換えるといったものが主流のようである。また,処理速度は、主にコンピュータの処理能力に依存する。全ての英語を日本語に翻訳させる、といった使い方をするのなら、高いスペックを持ったコンピュータで処理させないと、なかなか翻訳文が現れなくてストレスを感じることになろう。
 いずれにせよ,翻訳された日本語にこなれた文体を求めるのでなければ、筆者のような英語の苦手な人間にとってはこれだけ力強い味方がポケットマネーで手に入るのなら決して高くはないように思える。筆者自身に翻訳ソフトの使用経験が無いので、これ以上の具体的な評価はひかえるが、基本的には、翻訳というよりも英語を読むことの支援というとらえかたをした方が翻訳性能の現実に近いという評価も聞かれる。


III. マニュアルコーナー『いろはの“い”』
5.知っていると便利な、コピー、カット(切り取り)、ペースト(貼り付け)

 パソコンを使った文章や図表の編集にあたって、もっとも多用する機能がコピー、カット(切り取り)、そしてペースト(貼り付け)の3つであろう。この機能を自在に使えるようになると、コンピュータがたいへん身近なものになると思われる。もちろん、インターネットを利用するときにも、知っていればさまざまな利用方法がある。
 さて、これらの機能をご存知の方は多いと思うが、どのような操作で実行されているだろうか。たとえば、文字列のコピーを例に取ると、第一に編集メニューを使う方法が思い浮かぶ。つまり、コピーしたい文字列をドラッグして反転させ、編集メニューから「コピー(C)」を選ぶ。続いて、コピーした文字列の複写先をクリックし,再び編集メニューをクリックして「貼り付け(P)」を選べば操作完了である。この操作は、編集メニューをクリックするだけで操作できるので覚え易いかもしれないが、画面上を行ったり来たりしなければならないので少々めんどうではある。特にマウスの操作に不慣れなうちは、マウスポインタを見失ってしまうこともあるので、必ずしも初心者向きとは言えないかもしれない。
 Windows95のユーザーであれば、マウスの右クリックを使われている読者も多いだろう。つまり、コピーしたい部分をドラッグし、反転している部分にマウスのポインタを置いた状態でマウスの右ボタンをクリック、ここに編集メニューと同じように「コピー(C)」と「貼り付け(P)」が見える。右クリックで出てくるメニューを選んでも、先ほどの編集メニューから選択したときと同じ操作が可能である。この操作なら、マウスの動きは最小限にできる。しかし、右クリックと左クリックを使い分けるのには、多少の慣れが必要かもしれない。

 今回、3つめの操作として紹介したいのは、ショートカットキーである。先ほどからメニューの項目を何度か繰り返し書いているが、編集メニューを表示したときに、コピーの横に "Ctrl+C" が、貼り付けメニューの横には "Ctrl+V" が付いているのにお気づきだろうか。実は、このアルファベットがショートカットキーなのである。実際に操作してみよう。コピーしたい部分をドラッグして反転させる、ここまでは同じである。反転した状態で、"Ctrl" キー(コントロールキー)を押しながらCのキーを押す、このときマウスポインタはどこにあっても良い。続いて文字列の複写先をクリックして、今度は同じく "Ctrl" キーを押しながらVのキーを押すと、コピー操作が完了する。"Ctrl" キーを押しながらCやVのキーを押すのは、手の小さな人でも左手だけで操作できると思われるので、マウスを右手で操作しながら一連の操作を行うと、スピーディーな作業ができそうなことはおわかりいただけると思う。ただし、左手でマウスを操作される方にとっては、少し不自然な作業になりそうである。ショートカットキーの割り当てを利用者が任意に変更すること(こういった変更を一般に“カスタマイズ”と表現する)は、多くの場合可能なのだが、ここではカスタマイズの可能性について触れるだけにする。カスタマイズは、自分専用の使いやすい環境(たとえば左利き用)が手に入る反面、マニュアルなどの記述をいちいち読み替えなければならないなどの弊害もともなうことには注意する必要がある。
 標準的なショートカットキーの機能は、ワープロ、ブラウザ、あるいは表計算といったさまざまなソフトウエアの間で、概ね統一されている。つまり、"Ctrl+C" は、その対象が文字であれ、画像のような文字以外の情報であれ、あるいはファイルのアイコンそのものであれ、通常は「コピー」機能にあてられている。そして、コピーしたものを貼り付ける機能(ペースト)は、通常 "Ctrl+V" である。この2つの機能を覚えているだけでもコンピュータを実に便利に使えるようになる。

 実際この原稿を書くのにあたっても、コピーとぺースト機能にはたいへん助けられている。たとえば表1や表2に紹介したURLは、全てブラウザの画面からコピーしたものである。URLは人間が見ると意味不明の記号の羅列である。これをタイプし直すと間違いを生じやすいし、何よりもめんどうな作業である。しかしブラウザに表示されたURLをそのままコピー・ペーストできるのであれば,これほど簡単なことはない。具体的には、ブラウザの画面にURLが表示されているところで、それをドラッグしてコピー、次いで表作成用のワープロ等の入力画面に移って,コピーした内容をペーストすれば良いだけである。これなら、時間はかからないし、意味不明の記号をタイプミスすることも無いだろう。
 連載の第1回で電子メールの書き方に触れたときに、文章は自分の慣れたもので作ればよい、と表現した。これを可能にしているのは、ひとえにコピーとペーストの機能のおかげである。つまり、自分が使い慣れたワープロなりなんなりで文章を作り、それをメーラーの新規な手紙の作成機能の中にペーストして送り出すのだ。このように、コピー・ペーストは、異なるアプリケーションソフトの間でデータを橋渡しする場面でも有効に機能する。
 コピー・ペーストでは,コピーのもとになった情報がそのまま残されるのに対して、元の情報を消してコピー先にだけ挿入する操作がカット・ペーストである。コピー操作が "Ctrl+C" で実行できるように、カット操作にはショートカットキーとして "Ctrl+X" が当てられている。挿入するときには、コピー・ペーストのときと同じ "Ctrl+V" を使う。もとの情報を残す(コピー)のか、消す(カット)のかにかかわらず、ペーストするときには "Ctrl+V" なのである。最後にMacintosh利用者へのアドバイスを付け加えておく。コピー・ペーストにしろ、カット・ペーストにしろ、Windows95における "Ctrl" キーをコマンドキーに置き換えると、Macintoshでも同じようなショートカットキーが利用できる。つまり、"コマンド+C" → "コマンド+V"、あるいは "コマンド+X" → "コマンド+V" である。


IV.解説コーナー『ちょっと教えて』
5.ファイルとフォルダとアイコン

 Windows95にしろ、Macintoshにしろ、コンピュータで利用する情報は、ディスクに記録されている。ディスクに記録するときの情報単位がファイルである。このファイルを、まとめて入れておくことができる器の役割を持つのがフォルダである。両者の関係を、仮にフォルダ "Work1" から始まる一連の階層構造を例として図1に簡単にまとめてみた。図1からわかるように、フォルダの中には更に別のフォルダをしまうことができる。パソコンの中のディスクには、こういった階層構造に基づいて、データやソフトウエアが記録されている。もう少し詳しく見てみよう。
 Cドライブ(コンピュータが持っているディスク装置にはそれぞれ名前が付けられるが、Windows95ではCドライブが中心になることが多い)の中には、"Work1" というフォルダがある。実際にはこの他にも多くのファイルやフォルダが並んでいるはずだが、ここでは便宜的に "Work1" のみを取り上げることにする。"Work1" というフォルダの中には、"Fax" や "report"というフォルダと並んで、savedat.htmとdraft.txtという2つのファイルが入っている。これらをまとめて4つのオブジェクトとなっている。"Fax" や "report" というフォルダには何がいくつ入っているという情報とは無関係に、フォルダ "Work1" に入っているオブジェクトは4つである。このオブジェクトの中の "report" の中身をのぞいてみよう。こんどは "backup" というフォルダが1つ、そしてmeeting.docとdaily.txtという2つのファイルが見られる。このようにして、入れ子式にフォルダを自由に階層化することができるのである。一方、階層化された各フォルダの中には、自由にファイルを置くことができる。こうして見てみると、フォルダは共通の形を持ったアイコンで示されており、他方ファイルのアイコンはまちまちなことに気づかれるだろう。ファイルを探す必要があれば、フォルダのアイコンに惑わされることなく目的とするアイコンが見えるかどうかだけをチェックしていくと、たくさんのファイルも手早くチェックすることができる。
 なお、今回例に取り上げた2段階のフォルダ構成を、図1の中(右上)にいっしょに図示した。図1中の系統図のような表示は、階層構造の理解を助けるために示したもので、実際の画面でこのような表示が並ぶことはない。
 階層構造を文字で表現するときには、¥(または\)を区切りに使って表記する(図1の中に例示した)。階層構造の表記は、ソフトウエアのインストールのときに確認を求められるし、あるいは「ファイルを開く」といった操作のときにも応用できるので知っておくと便利なことがある。

 一方、アイコンとはなんだろう。「ディスクトップのショートカットアイコンをクリックして下さい」というような説明を目にした方は多いと思う。Windows95やMacintoshのように、画像上でマウスのカーソルを動かしてファイルを操作する方法が、GUI(Graphical User Interface)と呼ばれていることは前回も述べた。この、GUIにおいて、実際にクリックしたり、動かしたりする対象がアイコンと呼ばれるものである。アイコンは、視覚的にその特徴をつかむことができるように工夫されている。たとえば、フォルダのアイコンは共通して現実のフォルダのイメージがデザインされていて、ファイルとは一目で区別できるようになっている。ファイルの方も、たとえばマイクロソフトワードというワープロの文書ファイルには、いつも決まったデザインのアイコンが表示され、一目でそれとわかるようになっている。あるいは、ショートカットであれば、常にもとのアイコンの左下に矢印が付くので、ショートカットである事が一目でわかる。
 ところでショートカットとは、わかりやすく言うと、影武者とか代理といった性格を持つアイコンの総称である。たとえば作業中の文書ファイルを思い浮かべて欲しい。多くの場合、文書ファイルは適当なフォルダの中に保存されているものと思う。このファイルを開くには、フォルダを順に開いていって目的とするファイルがあるところまでたどり着かなければならない。こういうとき、目的のファイルのショートカットを作って、たとえばディスクトップに置いておくと、フォルダを順に開くというめんどうな操作を省いて(つまりショートカットして)、ショートカットアイコンをクリックすれば、ちゃんともとのファイルが開く。文書ファイルだけではなく、アプリケーションソフトでもフォルダでも、ショートカットは自由に作ることができるので、上手に使うとたいへん便利なものである。このような、アイコンの基本的な知識を持っていると、たくさんのファイルやフォルダの中から目的とするものを探し易くなる。なおここでいうショートカットと、『いろはの“い”』で取り上げたショートカットキーとは意味が少し違うので混同しないように注意していただきたい。

文献
1) http://www2.ri.bbsrc.ac.uk/library/press/pn98/02.html
2) 塩田紳二:「パソコン機械翻訳でどこまでできるか?」,スーパーアスキー,9号,122,152,1997.
3) http://www.ascii.co.jp/80/pb/superascii/dsa/9709/rv/index4.html