ESTに対する三極のプラクティス比較結果について、その概要を紹介してみます。

結論部分をかいつまんで紹介すると、およそ次のようにまとめられます。このように書くと、三極はDNA断片Claimに対して、否定的なスタンスで強調しているように見えます。しかし、日経バイオインテリジェンスでも触れられていたように、USPTOには柔軟な対応をうかがわせる部分もあるようです。
 たとえば、JPOやEPOが進歩性や新規性で拒絶としているケースを、USPTOは産業上の有用性の欠如を理由として拒絶しています。そして、明細書において有用性が主張されていれば特許性ありとする場合も有るえるとコメントしています(ケースB)。
 USPTOは、DNA断片に特許を与えることは、バイオ分野における産業振興にとってプラスとなる、という考え方を持っているようです。たとえばESTやSTSのような断片的な塩基配列は、全長cDNAの単離やゲノム解析における重要な情報であり、その積極的な開示を誘導しなければならない。特許による保護を活用できないとしたら、誰も情報公開しなくなる....という考え方が明らかにされています(SCIENCE 280,689-690,1998)。このスタンスを示した USPTOの John J. Doll (director, Biotechnology Examnation)は、後で見つかってくる全長cDNAの塩基配列が先に権利化されたESTを含むとしても、その権利化を妨げるものではないという見方をしています。だから、断片配列に対する特許は、産業政策上、研究開発を後押しすることになり、足を引っ張るものではないというところでしょうか。
  1. 機能や特定の有用性を伴わない単なるDNAフラグメントは、特許性の無い発明である。
  2. DNAにフラグメントに、特定の有用性、たとえばある疾患の診断用プローブのような用途が開示されている場合、他に拒絶の理由が無いかぎり特許性のある発明である。
  3. DNAフラグメントに、予想外の効果がなく、通常の方法で得られたものであって、機能が明らかなタンパク質をコードする公知のDNAのホモロジーサーチに基づいて、それがある構造遺伝子の一部であると推定したとき、特許性はない(EPO、JPO)
    明細書中で有用性を主張できていないとき、このDNAフラグメントには特許性はない(USPTO)。
  4. DNAフラグメントが同じ由来であるという単なる事実だけでは、発明の単一性の要件を満たさない。

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