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「 あれ?あれ?TV番組 」


 ( 最新更新日 2010年 1月26日 )


 イントロ 


どうも最近TV番組が変だ。美容を扱う番組が増えてきて良い傾向と喜びたいが、
じっくり見ると、「えっ! 本当なのか?」と突っ込みを入れたくなる場合が多いのです。
取り上げればきりがないほど多いのですが、特に目に余るものを取り上げて検証して
みようと思いました。あくまでも私の見解なので、異論があれば、もちろん受け付けます。


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・ その 18

「あなたのシミ消します!冬の美肌復活大作戦」
(ためしてガッテン NHK 2009年 12月 9日放送について)


 久々にやってくれました「ためしてガッテン」の「あれ?あれ?TV番組」です。まずタイトルがあまりにも 大胆だったのですが、私は本放送も再放送も未チェックでした。では、何故この番組に気づいたかという 発端も問題だったのです。それは私の友人が経営している化粧品専門店からの問い合わせから始まり ました。「NHKの番組を見たお客様が、私達の化粧方法が間違っていると指摘してこられました」という ことです。その化粧方法は、ほとんどの化粧品メーカーが指導している、極一般的な使用法で、特殊な 方法ではない、ほとんどの人々が毎日行っている、あたりまえの使い方なのにです。番組のタイトルから 想像もできない内容に、この問い合わせには、きちんと番組を見ないと答えられないと判断しました。 また、この番組の間違っている点については、やはり私の友人である皮膚科医がブログに丁寧に指定をしていますので参考にして下さい。

 さて、実際に録画を観てみましたところ、信頼度が高くなくては困るNHKとしては、あまりにも化粧品に 対する見識が欠けている番組制作陣にあきれてしまいました。そして司会も含めて番組出演者も、こんなに たくさんの情報が溢れている現在、いとも簡単に「がってんボタン」を押すとは、メディアリテラシーもあった ものではないと、観てがっかりしました。とにかく、この番組を観てしまうと、普段の化粧品の使い方がことごとく 間違っており、そのまま使っていると必ずシミになるから、番組で紹介された洗顔方法と化粧品の使用方法に 変えなければならないと思ってしまうことです。もし、この番組の通りに行ったら、手が荒れる人が増え、 洗顔のすすぎが不十分となり顔が荒れてしまう人が増えるのではないかと心配になります。それほど、問題の 大きい内容で、指摘すべき点はたくさんあるのですが、大きい問題を2点だけ取りあげて、解説をします。
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 まず最初は、「一般的な化粧品の使い方を全てダメだと言い切ったこと」です。上の映像キャプチャーを 参考にして下さい。ただ化粧水やクリームを普通に化粧品を顔にぬることをダメだと言っているのです。肌が 赤くなるほど擦るのは、確かに摩擦の刺激でメラニン色素の合成を誘発しますので、シミになる可能性が 大きいのですが、適度な摩擦で、炎症を起こす可能性がほとんど無いと思われるぬりかたでもダメだと 思える表現だったのです。これにはホント、あれ?あれ?です。番組では、この番組の担当ディレクターが 洗顔をゴシゴシと洗い続けて、肌の血管拡張の部位をマクロスコープで指摘され、これを「赤いシミ」と診断 されて、シミの原因だと断定されていたことも問題です。この番組で責任あるコメントを入れていた医師が 田中早苗氏で、経歴は北里大学医学部形成外科・美容外科学教授とありました。彼女はコメントの中で 「肝斑はシミの形状が肝臓に似ているからそう呼ばれている」としていましたが、皮膚科医の多くの見識では 形状ではなく色が肝臓に似ているとされていますので、このあたりもかなりのズレがあるのではないかと 私は思いました。

 さて、もう一点あるのですが、番組が奨める洗顔方法です。洗顔方法はタップリ泡を立てて、泡で顔を 包みポンピングさせながら時間をかけて丁寧に洗う方法です。番組のHPでは注釈付きで2〜3分と時間が 書いてありました。決して指が顔に触れてはいけないということです。このタップリと泡立てするのに番組の ようにすれば時間もかかり、泡立てから洗顔して落とすまでの長い時間、手に洗顔料の泡を付けっぱなし である点に問題を感じました。不必要に手から保湿成分を落とし過ぎて手が荒れてしまいそうです。もっと 問題なのは、忙しい生活の中で、この方法を奨める意味が本当に生活向上につながるとは思えないこと です。いや、本当に問題なのは安全設計に力を注いでいる多くの化粧品メーカーの立場を完全に無視 して、この医師の私見を現代の常識であるかのように思わせた番組制作者と放送を許可した責任者が 問題です。私は放送倫理基本綱領から逸脱した番組であると思っています。ただ幸いなことに、この番組が 放送された後の動向を静観していましたが、番組で推奨した方法をとっている人は私の身の回りにほとんど いないことでした。果たして、番組出演者も含めて、この番組の推奨した化粧品の使い方をやり続けている 人はどのくらいいるのでしょう?ここにあまり関心を番組関係者が持っていないとすれば、番組は単なる 使い捨て情報に過ぎず、社会的責任もあまり持ってはいないのではないかと思います。本当に ガッカリしたガッテン番組でした。

( 2010年  1月26日 登録 )

次回は何が取り上げられるか、ご期待を・・・。






・ その 17

「肌年齢が若返る!?」
(わかるテレビ フジテレビ 2009年 2月13日放送について)


 番組紹介に「肌年齢が若返る!?」とあったので、とりあえず録画をしていたのですが、この「わかるテレビ」を 企画した責任者、まるで「わかって無い」ことに唖然としました。捏造ややらせはないのですが、短時間で日常の 疑問をスパッと解らせるのに、ただその道の専門家一人に説明させることに、そもそも無理があるように思え ます。しかも、その道の専門家として本当にふさわしいのか、その点に大いなる疑問を持ちましたし、たった一人の 見解を、あたかも正解のように見せ、番組に登場しているゲストの芸能人にうなずかせている内容は、メディア リテラシーのカケラもないひどいものでした。

 さて本論の「肌年齢が若返る!?」ですが、なんと3日間で肌年齢を若返らせるという荒っぽい入り方でした。 まあ肌年齢の意味づけをしていたのは一応良心的かも知れませんが、登場した皮膚科医の説明では、肌年齢は 肌の健康状態を表すバロメーターと行っていました。まず、最初に、肌の健康度に肌年齢を使ったことに、医師と しての常識を疑います。だったら肌の健康度とか言えば良いのに、何故肌年齢なのか。そして肌年齢は肌の 加齢のバロメーターならまだ解るのですが、何故年齢以外の要因が強い健康度としたのか大いに疑問でした。 もっと驚くのは肌年齢に影響するのは肌の水分量と言ったことです。ものすごくマクロ的にみれば確かに加齢と ともに肌の水分量は減るというデーターがあるのですが、一歳区切りで肌年齢を推定することは不可能なのに 平然と説明されていたことに、あきれかえるばかりでした。これらは全て説明とテロップと両方されていたので よほど確信があったのでしょう。

 次にこのテーマの本論ですが、これまた仰天の内容でした。肌年齢を3人の生活者で測ったのですが、24歳と 一番若くて肌も健康に見える人が43歳という肌年齢となったことです。これは番組をキャプチャーして参考資料と して載せます。さらに、肌の健康を損なうのは日常の洗顔方法にあるということですが、これは洗い過ぎが原因で あるということで、この点は賛成します。しかし、この皮膚科医の推奨する洗顔方法が仰天ものでした。冷たい水で おわん状に凹ませた手のひらを顔に軽く押し当てて擦らずに押したり引いたりして時間をかけて洗うのです。この方法は 以前、思いっきりテレビで宇津木先生が紹介した方法に近いものでした。今回登場した女医さんは本当にこのような洗顔 方法をしているのでしょうか? 忙しい生活で、しかも冬に冷たい水で洗うことを進める医師は、実生活たるものを何も 考えていないガチガチの頭ではないですか。まあそれはそれとして3日間の結果は32歳で肌年齢が37歳だと 診断された女性が34歳と若返っていたというものでした。3歳若返ってヨシヨシな訳ですが、その肌測定データーでは 水分が27.3から37.3へ高くなり、油分が0.0%から0.3%になっていましたが、メラニンが56から85に高まって くすんでいたという説明はもちろんありませんでしたが、堂々と証拠としてTV画面に出していましたので、これも キャプチャーしておきます。そもそもこの医師は1回の測定だけで判断していることや、肌測定器の計算結果を 何の疑問ももたずに鵜呑みにしていたことに皮膚科学常識があるとは思えないことも問題として指摘しておきましょう。 しかも丁寧にこの肌年齢測定器、小数点2桁まで出ている。そこまで表示する意味は無いだろうし、機械への盲信状態を 示す良い事例ですね。まあ社会的な常識があればこのような作り方に賛成はしないでしょう。

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 わずか4分程度の内容に、これほど突っ込み処があるとはあきれかえってしまいます。非実用的なら良いのですが、 この洗顔方法、気持ちが良いとは言えず、しかも面倒ですすぎが不十分になり、その害の方が心配されます。 どうみても良心的な内容では無いと私は思っています。この番組の制作責任者の無責任姿勢と、この内容を通して しまったチェック機構は「あるある大事件」の反省を全く生かしていないことに腹立たしい思いしながら録画をみました。 その他の内容についてもおそらくこのくらいのずさんさが合ったのではないでしょうか。いずれにしてもたった一人の 専門家に結論をゆだねるのには慎重さが要求されます。メディアリテラシーに大いに問題ありの特番でした。

( 2009年 2月17日 登録 )

次回は何が取り上げられるか、ご期待を・・・。






・ その 16

「田中徹 新たなアミノ酸で明るい未来を作って行きたい」
(夢の扉 TBS 2009年 1月25日放送について)


 番組案内で「若返り、育毛、医療にも、魔法の物質ALA・・・」とあったので早速録画して、一日おいて からゆっくりと観ました。ネットで調べると、ALA配合の化粧品が早速この番組の影響で話題になって いました。コスモ石油関連会社のコスモ誠和アグリカルチャ株式会社が開発した成分です。ALAは アミノレブリン酸という生体成分ですが、生命活動には欠かせない成分だといういうことでした。でも そのような成分はたくさんあり、これだけがあれば良いわけではないことは生物学を学んでいれば すぐ解るのですが、この番組では、この成分が鍵を握っていると断言しているかのようでした。確かに、この 成分の開発に長年の研究をしている田中氏には敬意をはらう意味はあるのですが、ちょっと冷静に 考えてみると、どのくらいの貢献度か、果たして人類を救うほどの画期性があるのか疑問になります。 むしろ、ある意図で作り込まれた番組、いや宣伝番組ではないかと勘ぐりたくなります。

 とにかく番組をチェックしてみると、結論ありきの流れに強引になっています。一番解りやすい若返り効果の検証場面ですが、 以前から「あるある」でよく利用されていた肌年齢でALA配合クリームの効果検証をしています。「あるある」ほど 露骨な結果ではありませんが、対象群との比較ではなく、いきなり5名のモニターに、意味のよく解らない10日間の 使用テストです。生活上の制約もなさそうで、とにかく10日後の結果で、全員、肌年齢が若返ったので効果ありとと 番組では表現しています。5才若返ったモニターの使用前と使用後の写真は、この手の番組ではよく使われた 方法で演出しているように思えました。使用前は髪が乱れてノーメイクで、使用後は髪がきちんとセットしてあり、はっきりと 解るメイクアップできれいに仕上げてあるように見えます。判断の参考として写真をキャプチャーしアップしておきます。
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 5人のモニターは、10日間の肌年齢測定で、−1、−4、−5、−6、−8歳と全員若返ったという結果でした。 何も使わない対象もいなければ、ALAを配合していないクリームでの対象もない、科学的には全く意味をなさない モニター試験を堂々と恥も外聞もなく放送したこの番組制作者は「あるある大事件」と全く同じ質のひどさでした。 また、この肌年齢測定値には誤差もあるわけで、たった1回測定値を用いたのも問題があるでしょう。また肌年齢が 肌の若さを測りうる有効な手段かどうかも疑問なのに、この測定値だけを用いているところにも問題があります。 科学的な検証をしているようにみせて、まったく非科学的なことを堂々と見せているところが、無知なのか無謀なのか、 理解を超えていました。せめて肌年齢の測定原理や意味性を少しでも説明してあれば誠意を感じたかも知れません。 さすがにフジテレビは反省しているのでしょう、このところひどい番組は見あたりませんが、TBSは、やってしまい ました。この番組では、その他にもドキュメントとして問題もあったのですが、もっとも目につくところを指摘しました。 やはりALA配合化粧品をなんとか話題にするべくして作られた意図が見え見えで、ドキュメンタリー番組として 問題を感じました。それならハッキリと宣伝番組として放映するべきではないでしょうか?「夢の扉」という番組タイトルの夢を 壊すような番組だったので、後味が悪く、このコーナーで取り上げたわけです。メディアリテラシーさえあれば この番組の問題点はすぐにわかるでしょう。良いものを研究し、製品化して世の為になりたいという気持ちは 充分に解るので、この様な情報伝達は避けてもらいたいものです。

( 2009年 1月27日 登録 )

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・ その 15

「夏のスキンケア」
(カラダのキモチ TBS 2008年 7月27日放送について)


 またまた久しぶりにこのページを埋めることになりましたが、「カラダのキモチ」は常連になりそうな 雰囲気ですね。もともと健康全体を取り扱っているので、美容以外では「あれ?あれ?度」が高いのか よくわかりませんが、美容に関しては高いようです。おそらくプロデューサーがこの分野については 不得意なのかも知れません。

 テーマはタイミング良く夏のスキンケアで、勘違いをしている盲点を4つ取り上げ、夏の肌を健康に 保つということなので、意図は充分に解ります。しかし、ここはテレビ番組故に意外性と面白さを 演出する必要が会ったのでしょうが、ムリのある4つの項目を取り上げてしまいました。今回はここに 大いなる「あれ?あれ?度」を感じてしまいました。コメンテーターは皮膚の専門家と言うことで 皮膚科専門医の女医さんが登場して、ズバズバとコメントしていました。良く言うのですが、皮膚の 専門家でも、美容の専門家とは限りませんので、ここはメディアリテラシーの観点から注意するべき 点でしょう。

 さて、この番組で取り上げた「夏のスキンケア4つの大ウソ」とは、(1)「夏は冬より肌は潤っている、は、ウソ」、 (2)「レモンをたくさん摂ればシミは予防できる、は、ウソ」、(3)「美肌のゴールデンタイムは午後10時から午前 2時、は、ウソ」、(4)「太っている人の肌は痩せている人よりも潤っている、は、ウソ」と4つほどとりあげています。 この内、ゴールデンタイムについては時間帯ではなく、入眠後の時間で決まりますので賛成です。また、4番目の 肥満と痩せで潤い度が決まるって思われているのか、ちょっと疑問です。太っている人は汗っかきだから潤って いると思うのは、そうかも知れませんが、統計的にどうかは私は知りません。

 問題にしたいのは(1)と(2)の項目です。客観的に見て肌は環境とスキンケア、体調などにより潤い度は変化します。 傾向としては夏の肌は潤っているのは間違いありませんが、きついエアコンの室内環境では乾燥しがちなことも ありえます。また、この番組では汗による肌トラブルが肌のバリヤーを破壊し、乾燥するとありますが、顔面では そのようなことはあまり見たことがありません。場面中では、顔の汗はこまめにふきなさいというアドバイスだった ので、体の汗をかきやすくトラブルを起こしやすい部位とは違うでしょうと突っ込みたくなりました。また、今時、 レモンのビタミンCをたくさん摂ってシミを予防するという人はそんなに多くは無いと思います。しかし、どうしても 光感作物質のソラレンという成分と結びつけたいが為に無理矢理組み込んだ感じがします。しかもこのソラレンと いう成分はレモンの皮に含まれています。ビタミンCは果汁なので、苦い皮をバクバク食べる人は、そんなに いないでしょう。この番組は、取り上げた内容についての事実関係は合っていますが、現実的な生活を考えると こじつけとしか思えないことに大いなる「あれ?あれ?度」を感じました。結論ですが、この内容は面白そうで 意外そうですが、実生活においてはほとんど無益無害であると思いました。番組制作のムダかなと思った次第 です。

( 2008年 8月 5日 登録 )

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・ その 14

「保湿の考え方と方法、それであっている?」
(カラダのキモチ TBS 2008年 2月17日放送について)


 いやー、久々にあれあれ度の高い番組へと成長した感のある「カラダのキモチ」です。やはり一年も経つと さすがの「あるある大事件」のやったことが風化し始めて来たようです。医療関係企業のスポンサーの番組 だけにチェックはしっかりとしているかのように見えたのですが、チェックには科学者はいないのでしょうか? 番組の内容もかなり強引な構成となっており、コメントもデータも、そして提案も問題が多いと最近は思って 見ていました。(と言っても、この時間帯ではリアルタイムではなく録画チェックになります)

 さて、ここで取り上げたい内容は2月17日の番組です。タイトルが「かゆ〜いお肌とサヨウナラ!冬の乾燥 トラブル撃退法」と、一見では医学要素の高い番組と思いましたが、日常のスキンケアの問題についての 内容でした。突っ込みと問題点はたくさんあったのですが、ここでは3点ほど気になるところを取り上げてみ ます。

 まず最初は、若い人に乾燥肌の傾向が多いという結論ですが、確かにその傾向があるのは認めますし、 きちんとデータを取ればそのような説明はできます。しかし、何とこの番組では統計学上ではあり得ないデータを 堂々と出してきました。これは、この番組だけではありませんが、データの相関性について統計学上では全く 無意味(有意差なし)のデータを根拠にしていることです。この番組では、肌の水分量と年齢との相関性をみて いますが、グラフをみて解るように年齢との相関性が全くないデータを根拠に「若い人の方が乾燥している」と していました。相関直線、つまり図では赤い直線ですが、年齢との関係を暗示していますが、その線を消すと グラフからは何も読み取れないほど無関係の散布図になります。ただ、番組としては無理矢理に若い人が 乾燥していると言いたいが為にこのグラフを使ったのでしょうが、これは偏向的で問題であると思います。また 肌の乾燥を水分値や水分蒸散量だけで結論づけるのは疑問です。

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 次の点は医者である順天堂大学浦安病院皮膚科名誉教授の医学博士高森建二さんのテロップコメントですが、 皮膚の保湿成分のアミノ酸に関するコメントがいいかげんでした。日本酒には保湿成分のアミノ酸を含んでおり、 そのアミノ酸としてプロリンを言っていることです。これは生化学を勉強したことがある人ならすぐにわかることで すが、プロリンは疎水性といって水に溶けにくいアミノ酸です。だから化粧品の研究者はプロリンを保湿性効果の あるアミノ酸とは言いません。きっと高森先生はそこまで確認してのコメントではないでしょうが、こうコメントが 使われるとは予想外のことでしょう。ちなみに化粧品科学では皮膚に存在して一番保湿効果のあるアミノ酸はセリン とされています。また、熱いお湯は肌から保湿成分を溶かすので、熱い風呂に入ることや10分以上の長風呂は NGだとか、洗うのに石鹸を使わず手でこするだけで良いとか極端なアドバイスもよけいなお世話です。こすり 過ぎは良くないが、風呂上がりの保湿ケアをしっかりすれば問題はないはずです。

 3点目は保湿方法としてこの番組の美味しいノウハウの部分ですが、あまりにもウケを狙い過ぎて、やっては 行けない方法を紹介したことです。達人達の乾燥肌対策として手作りでパックをつくって使うことを奨めたことです。 原料にはヨーグルトや卵を含んでおり、中にはこれで肌をカブレさせる可能性もあります。やはりこれにはきちんと した保湿化粧品の使用を奨めて欲しいと思います。番組の面白さを出すための方法を提示するのに奇をてらうのは 大問題でしょう。今後は大いに慎重な態度を望みたいものです。医療関係の会社がスポンサーなので、やはり正しい 生活をアドバイスできるような番組つくりになるよう気をつけて欲しいものです。

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( 2008年 2月 26日 登録 )

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・ その 13

「過剰演出、強引な誘導はあたりまえ?」
(ワールドサテライト・ニュース テレビ東京 2007年 9月27日放送について)


 このところこのコーナーに取り上げるほどの「あれあれ?」度が高い番組にお目にかかっていないことは 科学番組、情報番組がまともになってきたのでしょう。ただし、私も小さな過剰演出や捏造疑惑に関して、 あまり目くじらは立てないことにしています。どうしても気になることや、これはきちんと指摘しておいた方が 良いものを取り上げるつもりで日々テレビを流し観ています。

 そして久々にこのコーナーに取り上げたくなった番組に出会いました。丁度食に関して、とあるブログに コメントを書くようになり、食に関するニュースや特集番組を以前に増して観ていたのです。すると9月27日 のワールドサテライト・ニュース(テレビ東京)で美味しさを科学的に分析する特集があることを番組表で 見つけましたので録画チェックをしました。予測としては味覚センサーを使うのではないかと思っていましたが、 実際にはテクスチャーや様々な食品の物理的な特性を測定して美味しさとの関係を研究し、美味しい食品 づくりに応用するというものでした。

 ここまではいいのですが、見逃せないことがひとつあったのです。スーパーの安価なプリンとスィーツ店で 販売されている高価で美味しいプリンを科学的な分析によりその秘密を探るということでした。それで、とある 味覚の研究機関に取材をしていました。科学的な分析方法はプリンの脂肪分がどのように混ざっているのか、 赤外線を使って二次元的に分析する方法です。この方法自体には何ら問題は無いのですが、美味しさの 要素をこの方法だけで結論付けようと言う番組制作者の意図が見え見え過ぎたことに目くじらが立ちました。 美味しさはそんなに単純ではないのに、どうしても美味しいプリンに訳ありを見つけることが強要されている 脚本があるように感じられたのです。結果は美味しいプリンには脂肪が不均質に混ざっていることがコクの ある味になるのだということが証明されたというのです。下にその時の番組画像をキャプチャーして載せますが、 問題はテロップで強引に結論を誘導していることと、決め手になる画像は脂肪の不均質性を強調する為な のか、美味しいプリンの分析画像を少し拡大して載せていることでした。これは客観的な態度ではなく、明ら かに視聴者に結論を強引に印象付ける為の意図的な演出ではないかと疑った訳です。
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 この画像分析写真は赤い部分が脂肪の塊を表しているのですが、スーパーのプリンに比べてスィーツ店の プリンの方が赤い塊が大きいということを見せようとしている映像です。画像解析に慣れている研究者からみると 1枚目の画像からだけでは資料の取り方によるバラツキも考慮して差があるとは言い切れませんが、番組制作者 からするとどうしても差があるとしなければ番組が成立しないという必然性があったのでしょう。さらに2枚目の画像 は、それをよりハッキリ見せようとしてスィーツ店の分析画像を少し拡大して赤い部分が多いように見せています。 これはどう考えても意図的です。この強引な分析結果の誘導は過剰演出であると私は判断しました。救われたのは メインキャスターの二人が、この結論に賛成せず、「美味しい味の感じ方は十人十色である」、「私はコッテリより、 サッパリが好き」と明確にコメントされたことです。

 おそらくこの程度の過剰演出は番組制作者の立場からすれば許される演出だとされているのでしょう。しかし私は、 かつてのあるある大事典などの科学検証番組で行われていた制作態度と同根だと感じました。このような体質、態度が 修正されない限り、また「あれあれ?」度の高い、行き過ぎた過剰演出や捏造番組が作られてしまうのではないかと 危惧します。科学検証を訴求している番組には科学を盾にとった強引な誘導が今でも起こっている訳です。ということで 鵜呑みは止めましょう。

( 2007年 10月 2日 登録 )

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・ その 12

「むくみ解消法の参考にはなりますが・・・」
(ためしてガッテン NHK 2007年 2月 7日放送について)


 このコーナーで取り上げていた「あれ?あれ?」度100%の番組だった「あるある大辞典U」が惜しい ことに中止となってしまいました。事件の方は私の予測を超えて科学検証どころか捏造が次々に指摘され、 他の健康や美容番組まで飛び火しそうな雰囲気です。いくら面白く衝撃的な内容にしなければならないとは 言え、多くの人に影響を与えるTV番組としてやってはいけないことが起こったことは大いに考えさせられ ます。とにかく捏造することは論外です。

 さて、この事件は比較的良心的に作られているNHKの「ためしてガッテン」にも影響がみられ、番組の 至る所で注釈がついていました。でも私がこのコーナーで指摘しているのは捏造データーの有無ではなく、 検証実験の条件の曖昧さや得られたデーターの解析などの強引さです。というか恣意的な解釈、あるいは 便利的な利用が問題だと思っています。これは制作者側に科学的な思考をする人がいないのか、又は 口出ししないのか、口出しできないのか、そう思わざるを得ません。ということはこのような番組を見る方にも 鵜呑みにするのではなく、よく考えて内容を受け止める必要性があるということです。今回は2月7日に放送 された「ためしてガッテン」の「血管の赤信号!むくみ根本改善術」について幾つか気になった内容があり ましたので取り上げてみます。

 まず最初に立ち仕事でむくみに悩まされている看護師のむくみを測定するのに、水槽に足を入れて溢れ 出た水の量でむくみを計ります。この方法はよく使う方法です。私も昔、足のむくみを解消する化粧品の開発をして いた時にこの方法を用いました。今回の場合は朝の状態と仕事が終わってからの状態の差を見るのですが、 この方法で最大のむくみがあった人は198mlだったわけです。そしてこの番組で推奨するガッテン流解消法を すると45mlに減ってメデタシ目出度しとなったわけです。またもう一人のむくみのひどかった人も130mlが 6mlと劇的に減ってタイトル通り根本解決になったわけですが、ちょっとここに重大な問題点が隠れてい たのです。私もかつてこの方法をつかって実験をしましたが、足のつけ方を同じようにしてもらっても溢れ出る 水の量はばらつきます。それに日によって体調も仕事の量も違うでしょうからむくみ方も違うのではないで しょうか?今回はたまたま良い条件に恵まれたのかも知れません。たった1回の実験で決めつけるのは 科学的な検証とは言えません。今回は10名の方にむくみ度合いを測定していましたが、残りの8名については 検証はされていません。ひょっとしたら逆に溢れ出た水が増えた人も出る可能性は充分にあります。

 その他にも気になることがたくさんあったのですが、いずれも検証データの数値がたったの1回測定である ことや、効果の出方がその程度のわずかの差で有効だと言い切れるのか、等の疑問な箇所もあと2カ所ほどあり ました。この点はたとえNHKの番組であっても気を付けた方が良いでしょう。ただし、足のむくみを解消する 方法として足首をゆっくりと上下させる方法は良さそうです。また腹筋を使って足の静脈血をよく流す方法と して、椅子に座って反り返る、イナバウワー運動も良さそうなのですが、これは番組でも注意していましたが 腰を痛めかねないのと、どこでも出来る方法ではなさそうなのでちょっと「あれ?あれ?」でした。何だか受け 狙いの企画とも思いたくなりました。

 私の考えとしては番組のタイトルである「血管の赤信号!むくみ根本改善術」の根本改善術は過大な表現 ではないかと思います。このように考えてメディアリテラシー「情報を評価、識別する能力」を付けていきましょう。

( 2007年  2月13日 登録 )

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・ その 11

「乾燥肌撃退する食材コンニャク」
(カラダのキモチ TBS 2007年 1月14日放送について)


 このところちょっとおとなしくなった感のある「あるある大辞典U」ですが、やってしまいました。 1月7日放送の納豆でダイエットという特集をやった後、市場での納豆品切れ事件が起こった のです。このような健康・美容番組の影響で商品の品切れ事件が起こるのはココア以来久しぶり のように思います。残念ながらこの時は他の番組を見ておりチェックしておりませんでした。そういう 訳でこのコーナーで取り上げることが出来ませんでした。ただしこの納豆とダイエットをとりあげた 「あるある大辞典U」の番組に関する問題点は、インターネットの検索で「納豆」「あるある」の キーワードを使えばたくさんのブログやHPで取り上げられていますので確認できます。これほどの 大きな影響があるとは関係者は予測できなかったのではないでしょうか。ここにもメディアリテラシーに ついて考える重要な事件だと私は考えています。

 さて今回のテーマは(その10)「フィトケミカルとコンニャク」で取り上げた食材のコンニャクと 乾燥肌の話題です。番組は日曜日の早朝に放送されている「カラダのキモチ」という健康テーマの ものです。「あるある大辞典U」と内容的にはかなり重なりますが、「フィトケミカル」という用語は 一切出ず、「セラミド」という肌の保湿成分がキーポイントとなっています。このこと自体は問題では なく、実際に生コンニャク芋からセラミド関連の原料や商品が作られていますので良いでしょう。

 問題として気になったことは、コンニャクを食べて乾燥肌を撃退しようという番組の狙いと、更に 代用の食材としてジャガイモ、しかも皮付きを奨励したことです。しかも肌チェックとして、かなり雑な 方法での肌年齢チェックを採用したことです。

 まずコンニャクですが、通常市販されているコンニャクにはセラミドはほとんど含まれていず、セラミドが 含まれている生芋コンニャクを食べると肌年齢が若いという下りに問題ありです。ここには生芋コンニャクを 食べて、肌のセラミド量を増やすことが出来るかどうかについての検証が全くありません。そもそも肌の セラミドはセラミドそのものを食品から取らなくとも様々な栄養素から生体内で合成される成分です。また、 コンニャクは栄養素というより美味しく食事を摂るための食材であり、消化されない多糖類マンナンが 食材の吸収をスムーズにすると考えられているものです。そこにわざわざ栄養素的な意味性を持ってくる 強引な必要性に強い疑問を感じます。

 次に、生芋コンニャクは通常入手しにくい食材ですから代用となるセラミド食材を紹介するのですが、 そこにジャガイモ、しかも皮付きのジャガイモを採用することにも問題を感じました。もちろん、皮付きの ジャガイモを美味しく食べるレシピ自体に問題はありませんが、皮付きにセラミドの為にそこまでこだわる 必要性があるのかという問題点です。ジャガイモはデンプンやビタミンC等のビタミン類をとる優れた食材 というわけで良いのではないでしょうか。皮を剥いて食べた方が美味しい料理もたくさんあります。乾燥撃退の為に 皮付きジャガイモを強引に奨める姿勢に違和感を強く持ちました。

 更に肌チェックなのですが、私が今までも主張していたように肌年齢そのもので乾燥や加齢に対して 効果検証することは問題が数多くあるのです。しかも今回は肌のキメをマクロ撮影した画像だけで肌年齢を 1歳刻みで判定していたことです。生芋コンニャクを食べている原産地の人々は実年齢より肌年齢が若いと 証明しているのですが、これはかなりの強引な検証だと思いました。このときは頬のキメを見ていたのですが、 スタジオでは皮膚科の先生が司会者やゲストの首のキメで肌年齢を判定していました。肌年齢はどこの皮膚を みるのか同じ番組ないで食い違いを堂々と見せている大胆さに驚いた訳です。この番組は医療器具メーカーが スポンサーです。もう少し番組内容をチェックして欲しいと強く感じました。

 私がこのコーナーで各話題を取り上げている目的は、番組制作者はもっと科学的に意味のある公益的な 情報を流して欲しいからです。単に意外性や面白さ、或いは何らかのマーケティング的な背景だけにこだわって 欲しくないのです。私達が健康で美容によい生活を豊かに送れる為の情報をわかりやすく提供して欲しいと願って います。

( 2007年  1月16日 登録 )

次回は何が取り上げられるか、ご期待を・・・。






・ その 10

「フィトケミカルとコンニャク」
(あるある大辞典U フジテレビ 2006年11月5日放送について)


 現在科学的なTV番組としてはこの「あるある大辞典U」と「ためしてガッテン」の2つに なってしまいましたが、最近の「あるある大辞典U」の迷走ぶりは気になります。今回は 「食材選びで肌が若返る」ということで、肌が若返るとはまた怪しい指数の肌年齢が登場 するのではないかとワクワクしました。いずれにしても肌の若さに怪しい指数の肌年齢を 測定して検証するなんて、このような番組はいくらでも意図通りに作ろうと思えば作れるな と感じました。

 冒頭から肌が1時間の環境で衰えてしまうと脅す実験から始まりました。冬の環境下に 設定された冷蔵倉庫に1時間入るとシワとタルミが生じて老けてしまうと前後の写真を 提示し、冬の環境が肌を衰えさせるのだという導入になりました。冬の肌乾燥が肌を 衰えさせるので、その原因と対策が今回のポイントなのです。原因としては肌のセラミド という天然の潤い保持成分が角質層から不足するという訳ですが、これはその通りだと 言うのは化粧品業界の常識なので問題はないでしょう。ところがセラミドを増やす方法と いうところから疑問の「あれ?あれ?」が多発するのです。

 その乾燥肌を救う食材が、アメリカを中心に研究が盛んとなっている「第7の栄養素」とも 呼ばれているフィトケミカルという成分らしいのです。いつかのボディエンザイムと同様に また新たな英語成分名です。フィトは植物を表し、ケミカルは化学物質なので、意味としては 植物が作り出す化学物質となるそうです。別に作り出さなくとも含まれている化学物質も あるだろうにと疑問を持つのですが。これからが仰天の強引な理屈で、このフィトケミカルが 体に良い成分だと言うのです。「チョットチョット!」と入れたくなるのですが、番組はどんどんと 進んでいってあるある天国になっていくのです。ちなみにタンパク質、脂肪、炭水化物、ビタ ミン、ミネラルのいわゆる五大栄養に続いて第6の栄養素は繊維成分だそうです。そこに 新しい要素としてフィトケミカルを登場させたのです。フィトケミカルはカロテノイドやポリフェ ノールなどだそうですが、アレルギーや毒になるフィトケミカルもあるのに体に良いものだけと 言い切る強引さに怪しさを感じます。

 また、そのフィトケミカルは7色の食材をとることでバランス良く摂れるそうで、第7の栄養素に 7色とここでも強引な語呂合わせ的要素がみられます。何で7色なのか、何でこの食材がこの 色なのかつっこみどころ満載なのですが、おかまいなく番組は進み、究極の食材にたどり着き ました。それが黒色食材のコンニャクな訳です。コンニャクにはセラミドの原料となる成分が 含まれておりコンニャクを食べると乾燥が防げて、肌が1ヶ月で若返るという訳だそうです。 コンニャクの原料の芋は黒い色という意味はわかるのですが、レシピの中では漂白したシラタキも 登場するので理論はしっちゃかめっちゃかです。そして検証ですが、何と今回は8人もの多数の 被験者を用意して毎日コンニャクを食べてもらうわけです。この大変さも番組の見せ所ですが、 結論は被験者全てが肌年齢が驚異的に若返るという結末になるのです。実験前と後で肌年齢が 最大30歳若返ったという盛り上がりでシャンシャンとなる訳です。冷静に考えれば、1ヶ月で30歳 若返れば、ちょっと手を抜くと1ヶ月で30歳老ける訳ですが、1歳とは1年の加齢を表すべきなのに 1ヶ月で30年の変化が現れるなんて、こんな指標が科学的、生理学的に意味があるとはとても 思えません。詳しくはこの番組のバックナンバーを 覧てください。

 今回は、後でフィトケミカルをネットで検索してみましたが、案の定、また健康食品のサイトが 大いなる活用をしていました。いったいこの番組はどんな社会責任をとるつもりなんでしょうか? この番組に登場する医師や専門家は大いに気を付けるべきだと私は思っています。ちなみに コンニャクとセラミドの関係についてはユニチカ株式会社が研究をしてコンニャク芋からセラミドで あるスフィンゴ糖脂質を含む原料を開発したことは既にニュースなどで報告されています。しかし 通常の食材であるコンニャクを食べて同様にセラミドが増えるとの実験は一切見あたりません。 というより、食材のコンニャクにそのような効果があるとはどう考えても無理だと普通の科学者なら思う はずですけど。

( 2006年  11月14日 登録 )





・ その 9

「ボディ・エンザイムって何?」
(あるある大辞典U フジテレビ 2006年10月1日放送について)


 ひさしぶりにあれあれの本命である「あるある大事典U」でやってくれました。番組表を見て 「何だこりゃ?」と好奇心の虫が騒ぎ出しました。ということで番組を録画予約して1週間後に ゆっくり見た訳です。そして「何だこりゃ?」ともう一度。私も聞き慣れないボディ・エンザイムと いう用語が良く理解できませんでしたが、番組の内容をよく考えてみると、どうやら腸内細菌が 作ってくれる酵素のことらしいのです。驚いたことに、腸内細菌が作り出す酵素が腸から吸収 されて血液に入り、体を巡って体内のあちこちで働くのだそうです。「ひゃー! 知らなかった!」 これが本当なら生物学の教科書は大刷新の新事実なのです。

 こんな大それたことを言っても、これは序の口、一番大事なのはたったの一週間のプログラム でボディ・エンザイムを育てて若返るという驚異の方法論なのです。これを全国民が行えば これからの健康保険料が大幅に節約できる、まさに救国の大政策なのです。まあそのプログラムの 内容は最初の2日間で腸の汚れを出して、最後の2日間で腸に良い菌を定着させて育てていく ことなのだそうです。このわずか一週間のリセットにより若返りの切り札であるボディ・エンザイム が体内で働き若々しい体を作るのだそうです。腸をきれいにする食材がヨーグルトと粉寒天で、 そのほか一日三食摂れ、脂肪の少ない鳥のササミなどの肉、酒は控えめ、間食を摂るなと完全に ダイエットモードです。更にパワーヨガを取り入れるのですから、体重は減って当然です。番組 ではモニター全員がウエストが数センチ細くなってシャンシャンですが、数ヶ月後にもう一度ウエストを 測ってみて欲しいところです。

 まあ、このようないい加減な検証は今回だけの話ではないのでどうでも良いことですが、ボディ・ エンザイムがキーワードにされたことが「あれあれ?」のポイントです。このキーワードが健康先進国 アメリカ合衆国で一大ブームを巻き起こしていると冒頭に流したことが大いなる疑問です。早速、 ネット検索を「Body Enzyme」で調べたのですが、何件かは「Body Enzyme Treatments」で出てくる のですが、一大ブームを起こしているとは思えないことです。また、専門書にも書かれていると 紹介された画面にはテロップに反して「Enzyme」(酵素)は本のタイトルで出ているのですが、 「Body Enzyme」(ボディ・エンザイム)の文字など出ていないではないですか。これは視聴者が英語を 読めないことを前提にして嘘の報道をしているのでしょうか? 本の中を読んではいなのでどのくらい ボディ・エンザイムが触れられているのか判りませんが、センセーショナルに取り上げるほどでは ないのではないでしょうか。過剰演出気味に見えて、今回は特にこのあたりが気になったので、 証拠画面のキャプチャーを参考として取り上げました。

 AREBODYE1S

 そして日本語で「ボディ・エンザイム」を調べると、ネット通販でダイエット健康食品で粉寒天が 販売されている訳です。これってメディアリテラシィのかっこうの題材と思い、今回取り上げました。

( 2006年  10月10日 登録 )





・ その 8

「新説?珍説?皮脂汗の話題」
(ぴーかんバディ! TBS 2006年6月24日放送について)


 いやー、この「あれ?あれ?TV番組」のコーナーに強力な話題提供番組が登場しました。 番組名も「ぴーかんバディ!」という、なにか懐かしい響きがたまりません。まさにナイス・バディ の女性達がコメントをして盛り上げる内容となっています。最近では「白インゲン豆」のダイエット レシピで社会を騒がせたことでも着目度が高まりますね。この事件で少し放送内容がより正しい 方向へ修正されるかと思いましたが、相変わらずウケ狙いの番組は益々その過激度を増す 勢いとなっているようです。まあバラエティ番組と考えればやむおえないのでしょうが、もう少し 内容を吟味して欲しいと思います。

 さて今回取り上げざるを得なかった放送は「毛穴スッキリ!美肌のカギは皮脂汗」という6月 24日放送の内容です。どうやら毛穴のトラブルは皮脂汗にありということですが、皮脂汗という 言葉は美容科学に最近登場し始めた用語のようです。インターネットで調べてみますと、どうやら 岩盤浴のサイトにおいて使われているようです。美容科学的には、汗腺から分泌された汗が 皮脂腺から分泌された皮脂をクリームのように乳化してお肌をまんべんなく行き渡り保護しますと 言われていたものです。実際には皮脂と汗は乳化することはありませんが、汗によって皮脂が 肌表面を広がっていくことは事実です。しかし、皮脂腺から皮脂汗という状態で分泌されることは 私は事実確認をしていません。ということで今回はこの「皮脂汗」という新事実にグラリときた 訳なのです。

 なんと番組では皮膚の専門家ではない医師によって堂々と皮脂腺の新しい事実を図で説明 されるという驚愕のシーンまで飛び出ました。毛穴に皮脂腺が開いていることは事実として広く 認知されているのですが、なんと毛穴の中に汗腺も開いている図が登場しました。今回はこの図が 鍵になりますので番組画面をキャプチャーして参考として載せることにしました。

SEBASWEAT

 毛穴のトラブルは毛穴に溜まった皮脂に含まれるヒドロキシラジカルという毒素が原因で、この毒素を 皮脂汗をかいて排出することが美容に良いということが番組主旨なのです。この解説を五味クリニックの 五味常明医師が解説するのですが、五味医師はワキガが専門でどうも一般皮膚についての専門 ではないように見受けられます。ワキガは脇の下に開いているアポクリン汗腺が原因とされている もので、どうやらこの事実と顔などの一般的な毛穴の皮脂腺を混同しているとしか思えません。 もし、顔の毛穴に皮脂腺と汗腺が同時に開いている事実をご存じの方は、お手数ですが何らかの 皮膚組織的な証拠と共に教えて頂ければこのサイトにて訂正をいたしますので、よろしくお願い いたします。

 この番組の流れは皮脂汗の有害性を生け花実験で見せたり、皮脂汗を効果的にかくには、 中温反復浴というちょっと面倒くさい入浴法が解決方法であるという結論に続く訳です。白インゲン豆 事件がこたえたのか、「高血圧・心臓に疾患のある方・高齢の方・血栓予防の薬を飲んでいる方などは やらないでください。」「がんばってのぼせるまで入ったりしないようにしてください。」という注意の テロップがしっかり出ていたことは反省をしているように見えますが、問題は番組内容の科学的な 正確性ではないかと思います。再度繰り返しますが、ウケを狙う前に、もっと内容を吟味して欲しい ものです。ということでこの番組は注目度が高まりますね。番組の内容については公式のHPにて公開されていますので参考にしてください。

( 2006年  7月 10日 登録 )





・ その 7

「ワサビで10歳若返る!」
(発掘!あるある大辞典U フジテレビ 2006年3月26日放送について)


 「あるある」ならぬ「あれ?あれ?」の本命番組が大いに飛ばしてくれました。まあタイトルから 薬事法違反というかすごい訳ですが、現在食材の研究もしているし、ワサビは大好きな薬味 なので録画してしっかり観ました。ところがあまりにもワサビを侮辱しているし、番組の結論も 納得いかないし、科学的姿勢からも問題あるので取り上げざるを得ませんでした。番組の提案 である若返りのために毎日ワサビを5g食べなさいということや、その為にはワサビのツンとした 鼻にくる刺激や辛さを消してまで食る方法を奨めていることに、まあちょっとした怒りを感じた のです。そんなことまでしてワサビを食べなさいとは、アルコール抜きのお酒を飲みなさいと言う くらいの侮辱的行為ではないでしょうか。番組で言う活性酸素を取り除くとか発生を抑える目的 ならば、他にも食べやすい食材は山ほどありますし、そんなことをしてまでわざわざワサビを 食べなくとも良いと思うのです。

 一番気になったのは、この番組の結論を導き出した検証の部分です。ワサビを一日に1グラム、 5グラム、そして10グラムの3通りの実験を各グループ4人で行ったという事です。それを10日間と いう期間で行い、肌年齢と肝臓機能指標のγ−GTPを測定して若返り効果を検証するものでした。まず、 ここでワサビを食べなかった対照群を設定していないことが実験に根本的な落ち度がありますね。それに なぜ各群4人で、区切りの良い5人にしなかったのか? しかも最終的には1グラム群のうち一人ほど γ−GTPが測定されていなかったのですが、その説明はありませんでした。この検証で科学的な 問題点としては、ワサビを食べない対照群を設定しなかったことと、後で詳しく解説しますが、各群の 被験者の状態が均一でなかったことです。人数が少ないのなら少なくとも各群が平等になるように 実験前の肌年齢やγ−GTPを調整しなければなりません。あえてもう一つ取り上げるなら、肌年齢の 定義をどうしたのか、どのようにして計算したのか、その根拠性について触れなければなりません。 肌測定の場面は映像でちらりと映し出されましたがどのように計算されたのか説明がなく、信用に 欠けていました。

 さて、結果について問題を指摘しますと、肌年齢に関しては各群女性のみ3名づつ行われて実験前の 肌年齢と実験後の肌年齢の差をみています。1グラム群は+2歳、−1歳、−2歳とほとんど差がなく、 5グラム群は−5歳、−6歳、−6歳と5歳以上若くなったようにみえ、10グラム群でも−6歳、−5歳、 −4歳と若くなったという結果で、神奈川クリニックの皮膚科田中医師は明らかに5グラムと10グラムの 群は肌質が改善していたと結論を述べています。しかし、問題は、各群の実年齢と実験前の肌年齢の 差です。各群平均値でみますと、1グラム群は実年齢45.7歳で肌年齢46.7歳、その差は+1歳で した。5グラム群では実年齢44.7歳で肌年齢49.3歳、その差はなんと+4.6歳。10グラム群も 実年齢が46.3歳で肌年齢が50.3歳ということで、これまた+4歳。つまり、5グラムと10グラムは 実験前には肌年齢が実年齢より高く、ひょっとしたら効果が出やすい設定になっていたのかも知れま せん。まあ、肌年齢の測定方法について述べられていませんので、測定の誤差も解りませんが、 いずれにしても実験群が平等でなかったということです。

 さてγ−GTPの測定も実験前と後の平均値でみてみます。1グラム群は実験前が14で実験後が 15.3となり平均で+1.3となります。5グラム群では実験前が30.8で実験後が25.5でなんと −5.3と下がっています。10グラム群も実験前が41.8で実験後が36.8と、これまた−5と下がって おり、番組では5グラムと10グラム群で効果有りと結論を出していました。ここで、気づかれたでしょうか?  1グラム群はもともと平均が14と低く、これ以上下がることは考えにくい実験前の測定値です。 これまた実験群が平等でなかったということです。それから1グラム群で一人ほど実験から脱落 していますが、その理由もわかりません。作為的な操作も憶測は出来るのですが、何ら根拠もありま せんので、ここでは述べることはいたしません。

 こんな結果で、この番組は、毎日5グラムのワサビを食べると、タイトル通りに10歳若返るという 結論になったのです。これがエンターテイメント番組だからといって、「アハハ」とか「ソーなんだ」と 笑ってすませればそれで良いのかも知れませんが、私はそうは思いません。皆さんはどう思われ ますか?

 なお、参考までに、堂々とこの結果をHPで公開して いますので、私の指摘を確認してみてください。放送テーマ・インデックスの第100回2006年 3月26日放送「ワサビで10歳若返る!」です。ここに述べなかった問題点も、多く見つかるはずです。 それからインデックスを見て判ったのですが「10歳若返る」ことが多く、この番組を見続けて、実際に 実行していたら、おそらく、100歳以上は若返っているはずですが、トンとニュースで報道された ことはありませんよね・・・。

( 2006年  4月 4日 登録 )





・ その 6

「抜け毛の悩みにマシュマロ・ローション」
(月曜エンタぁテイメント テレビ東京 2006年2月6日放送について)


 またまたこの人の登場番組、みのさんの司会で大げさに現代人の悩みを解決してくれる、 まさにタイトル通りのエンターティメントです。いつも観ているわけではありませんが、 今回は抜け毛にマシュマロ・ローションという、ちょっと意外な感じがしたので観てしまい ました。録画して観たら、期待を上回った「あれ?あれ?度」で、久しぶりにこのコーナーに 更新のチャンスとなったのです。

 権威付けとして埼玉医科大学の高濱素秀名誉教授が登場し、彼の考案である、特性 手作り育毛ローションとしてマシュマロをメインとしたレシピが紹介されたのです。着想は 抜け毛の原因は頭皮の真皮成分であるコラーゲンが減少しているので補給しようとする ことなので、まあ、理論的には悪くないと思います。ところがコラーゲンの原料として、 コラーゲンが変成したゼラチンを元のコラーゲンに戻すという発想と、そのゼラチンを お菓子のマシュマロに求めたところに、何とも言えないユニークさに脱帽したのです。 マシュマロのゼラチンを果物のキウイのタンパク分解酵素で分解し、更にホワイトチョコレート、 生薬のクコ、浅草海苔などを混ぜて作るわけです。詳しい作り方は「月曜エンタぁテイメント」の HPバックナンバーをみれば載っています。私としては、ゼラチンはフレーク状や粉末で食材と して販売されているのに、何故お菓子からつくるというのか、うけ狙いを意識したのかも知れ ないと想像して、そこに何か一抹の悲しさを感じました。それにマシュマロやチョコレートには、 相当な砂糖も入っているので、できたローションはべたついたり、微生物に汚染されやすい のではないかと心配してしまいます。

 まあ、ここまではエンターティメントだから何とか良しとして、科学的に許せないのは、 2名というモニターテストで証明しようとすることも問題でしょうが、方法論がいけません。 シャンプー時の抜け毛本数のチェックと使用前と1週間使用後の頭皮チェックに異議あり なのです。試験方法としての抜け毛チェックはきちんとした方法で、シャンプー時に抜ける 毛髪を布でとります。問題は、テスト前にどのくらいの頻度でシャンプーをしていたのか 説明されていないことと、1日目は抜けた本数は多く、2日以降は本数がへることで、すぐに 効果がでたとしたことです。もし、テスト前に毎日シャンプーしていなければ当然1日目の 抜け毛本数は多いのは当たり前だと考えられます。それに、その日に抜ける毛髪は、 すでに抜ける運命が数週間前に決定しているものなので、マシュマロ・ローションを付けて 2日目から抜け毛防止効果がでるとは非常に考え難いのです。

 そして極めつけは、二人の内一人には、何とたったの1週間で画像的には数ミリほど伸びた 毛髪が生えてきたと言ったのです。しかも映し出された部位には短い毛髪がたくさん生えて いたのですが、ここまで毛髪が新たに生えるには1週間では無理でしょう。たまたまそのような部位が あったとしか考えようがないのですが、これ以上は何も説明できません。TV番組の検証には あらゆる条件がきちんと説明されていませんし、編集で何らかの手が加えられたのかどうなのかも 視聴者には知る余地もありません。エンターティメントとして面白く作られたのでしょうが、私は このような科学的雰囲気の番組は作って欲しくありません。

 美容や健康に関する情報提供番組は相変わらず多く、内容的に、或いは生活への悪影響に 問題を感じるものが多いのですが、今回は、効果検証について、「あれ?あれ?度」が飛び抜けて いたのであえて取り上げてみました。マシュマロ・ローションのレシピですが、これを手作りするのは 大変なので実際に作って抜け毛防止をする方はそんなに多くは無いのではないかと思われるのが、 救いの一つでしょう。参考 までに「月曜エンタぁテイメント」のHPをリンクしておきます。

( 2006年  2月14日 登録 )





・ その 5

「あなたは信じますか? ロシアの超能力医療を」
(世界!超マネー研究所 日本TV 2005年8月13日放送について)


 今回は美容ネタでは無いのですが、とっても気になったので取り上げました。それも丁度今、 菊池勝著の「超常現象をなぜ信じるのか」(講談社 ブルーバックス)を読んでいる最中だった ことと、検証する立場の人間として医師の西川史子先生を登場させていたからです。土曜日の 午後7時から始まる、一見科学的情報番組らしき様相ですが、内容的にはバラエティー番組の ようでもあります。この時間帯にはこの手の仰天情報番組が多く、いちいち気にしていては体が 持たないので、ほとんど見ることはないのですが先ほどの理由で録画して観ました。

 そんなに目くじらを立てて騒ぐほどの番組内容では無かったのですが、もし科学的な思考に あまり縁のない人が見ていたら、広い世の中です、このような超能力で病気が治ることもあっても おかしくないという認識をどこかでするでしょう。実は私も中学生の頃、超能力を報道したTV 番組でいわゆる超能力があってもおかしくないと思っていたのですから。その時の超能力者は かの有名なユリ・ゲラーでしたけど。壊れた時計を動かしたり、スプーンを曲げたりして、映像と して見せられたので、これは確かに超能力が実在すると思ったりしたものでした。もし、その 後も科学的な思考をするような勉強をしていなかったら、現在の私は、ひょっとしたら、超能力で 美容を施術するインチキ美容師になっていたかも知れません。

 今回は、この番組をあれこれつっこみを入れて批判するのではなく、この番組内容がそれらしく 信じ込めるような仕組み、あるいは要素が何なのかを分析してみます。

 一つめの要素は映像で見せるということです。超能力外科医が患者の腫瘍を痛みも感じさせ なく、カッターナイフのようなメスで皮膚を切り指で押して腫瘍を取り出すシーンです。この映像が 事実なのか何らかのトリックが隠されているのか、映像だけでは判断できないのですが、番組では 信じさせる誘導が意図されているように思えました。録画された映像が必ずしも事実を客観的に 撮しているとは限らないのは、これまでも数多くの事例があります。編集作業で意図的に行う 可能性はいくらでもあり得るのです。

 二つめの要素は、場所ですが、ロシアだということです。ロシアは科学的な研究が進んでいると 同時に、時々非常に怪しげな研究も報道される不思議な国です。おまけに同時通訳風に日本語で 吹き替えして放送していますので、翻訳が合っているのかどうかも判りません。ロシア語を聞き取れる 人が少ないと思われますので、ここは番組制作者の心しだいです。そう言えば、この手の超常 現象を映像で流す時は、言葉を聞き取れる人の少ない国が多いような気がします。

 さて三つ目が大事なのですが、科学的に判断できると思われる人を使って検証に立ち会って もらうことです。この番組では、最近TV等のマスコミに登場する機会の多い、美人女医の西川 史子先生を、わざわざロシアまで派遣して、現場に立ち会ってもらい、自らも超能力医療を体験 してもらっていることです。編集された映像では、西川先生は超能力医療を信じるという雰囲気に 見えました。これは演出なのか事実に近いのか本人に聞かなければ判りませんので、いずれ何か 機会があったら聞いておこうと思います。

 このような要素をこの手の番組は共通して持っていると思われます。まあ、娯楽番組なのだから そんなにつっこみを入れなくても良いのではないかという意見もあるでしょうが、現在、この手の 科学検証風番組が多すぎるのではないでしょうか。これは血液型性格判断を信じる、世界でも 珍しい国民性の日本人が生まれる背景に、この手のバラエティ番組が大いに影響していると思う のです。

( 2005年  8月16日 登録 )





・ その 4

「あるある大辞典Uの二重あごに疑惑報道」
(あるある大辞典U フジTV 2004年10月31日放送について)


 「 あれ?あれ?TV番組 」の特集で最初に取り上げた「二重あご」の番組に「やらせ実験」の 疑惑が報道されました。といっても、新聞やTV放送ではなく、週刊誌「アサヒ芸能」の2005年 4月14日号でのことです。たまたま出張中で新聞の広告を見て、気になったので買って読んだ ところ、出演した女性からの告発だったのです。この番組には二重あごの定義から対策、そして 検証実験まで、かなりの部分で気になることがあったのですが、まずは二重あごの定義に問題 ありとして、このコーナーで取り上げた経緯があります。

 さて、「アサヒ芸能」からの引用になりますが、「やらせ」のポイントは大きく3つあります。ひとつ は「12日の実験を10日間の実験と短縮して放送」されたことです。これはわずか10日間のエクサ サイズで効果ありとインパクトをつけるために脚色したかのように受け取ることができます。制作 サイドで行ったのか、放送ディレクターの意図かよくわかりませんが、事実であれば明らかに 演出の行き過ぎだと思います。

 二つ目は、実験に使った器具が放送されなかったことです。放送ではペットボトルを使った2 種類のエクササイズが紹介されたのですが、実際にはこの他に、「あ」「い」「う」発声や「ぱらぴり ぷるぺろぽろ」発声による表情筋のエクササイズ。「パタカラ」という口腔エクササイズ器機の 使用が行われたが、放送では一切紹介されていない点です。これは、二重あごを解消するために ありとあらゆるエクササイズをさせて、結果的には一番意外性のあるペットボトルだけを紹介して 番組のインパクトを強めたと思われてもしかたがありません。

 三つ目は、検証効果の写真において「影があごから離れた画像修正疑惑」です。検証写真の 信憑性は、本来、なかなか難しくて、写真の取り方、画像の明るさ、あとはパソコンの画像処理で 行う修正など、たくさんの方法で客観的な事実かどうか確認できないものです。アサヒ 芸能の記事では、画像処理に詳しい方のコメントを載せてありましたが、「画像をみるかぎり、 被験者のアゴや首の部分に編集で何らかの手を加えているのは間違いありません。」と言い 切っていました。私も、番組のビデオを見た際に、写真を撮る際にあごに力が入らないように しているのか、画像修正しているのかどちらかかなと疑問に思っていました。

 極めつけは、被験者が実験が終わって、何も変わっていないと制作スタッフに言ったにも 関わらず、番組では「若返った」放送されたことです。このような内容が主なアサヒ芸能の告発 記事ですが、この件に関しては、その後何もリアクションが取られていず、「あるある大辞典U」は 放送が続けられています。前回取り上げた「教えて!ウルトラ実験隊」は番組終了に追い込まれ ましたが、ドル箱(?)番組にはそれなりの強さがあるのかなと思った次第です。

 私の主張は、TVが純然とした科学教育番組のみを放送するべきとは思いませんが、娯楽 番組と考えれば、それはそれでかまいません。しかし、科学検証番組とは主張して欲しくあり ませんし、出演する科学者にはもっと自覚を持ってもらいたいだけです。それには、観る立場の 私たちがもっと科学的な観点からもチェックして、意見を主張し、娯楽は娯楽、科学は科学と 明快な番組が増えるようにするしかないと思います。

( 2005年  4月26日 登録 )





・ その 3

「実験自体ねつ造、番組打ち切り」
(教えて!ウルトラ実験隊 テレビ東京 2005年1月25日放送について)


 私はこの番組は気になっていたのですがほとんどチェックしていませんでした。しかし、1月25日に 放送された「花粉症&シワ対策最新情報」のなかで花粉症の治療方法の実験に関して、実験期間を 偽って放送したというニュースが1月29日の新聞に報道されました。このときの報道は事実の「歪曲」 ということでしたが、その後の調査で「ねつ造」という大変大きな問題へと発展しました。やってもいない 実験を、番組のプロデューサーから試写の際に「完成度が低い」と言われ、結果的にノンフィクション からフィクションへと変えて、最新の簡単に自宅でできる花粉症治療法という内容にして放送をしたと いうのです。

 番組のお詫びと訂正については、テレビ東京 のHPで公開されましたが、その内容は粛々と書かれていたのですが、影響度は大変深刻なもの だと思いました。2月1日の放送では、冒頭に大橋アナウンサーがお詫びと問題部分の映像が映し出 され、訂正内容が説明され、その後でテレビ局に抗議した千葉大大学院医学研究院の岡本教授が 録画映像で治療法の正しい説明をしたのです。

 テレビ東京のHPでの訂正内容は以下の通りとなっていました。

1) 放送内容:「被験者が病院で診療を受け、その後2週間治療を継続した」
  ↓
  事実:「病院で治療は受けていない
      スギ抗原液の服用シーンは、イメージ映像」

2) 放送内容:「2週間後に再び病院を訪れ・・・」
  ↓
  事実:「病院を訪れたのは、最初の撮影の4日後」

3) 放送内容:「皮内テストの結果が2週間後に改善した」
  ↓
  事実:皮内テストの撮影は、4日後に反応が自然に縮小した場面を撮影

4) 放送内容:「医師が『鼻内診断の結果は良好』とコメント」
  ↓
  事実:舌下減感作療法の効果についてのコメントではない

 これはとっても悪質なねつ造です。実際に治療実験が医療機関で行われていないのに、 あたかも行われているようにして、しかも治療効果が短期間で表れていると映像で医師の コメント付きで見せているのです。悪質なねつ造の問題点は、撮影したビデオ 映像は事実を映しているにもかかわらず、編集によりいくらでも内容を変えることが出来る と、今回のねつ造事件は証明してしまったからです。今回の事件も、当事者の 一人である取材を受けた教授が抗議をしていないと、ねつ造の事実が視聴者にはわからない ままになっていたでしょう。ひょっとしたら、このようなことは既に何件か起こっていたのかも 知れないと、思わざるを得なくなります。

 この事件はこの番組のみにとどまらず、他の科学もどき番組〜科学的番組までに及び ます。番組で放送されている内容はリアルタイムの中継放送以外では、全て事実の忠実な 報道かどうか証明しきれないことを明らかにしてしてしまったのです。バラエティ番組なら それはそれで許される部分もあるかも知れませんが、健康や美容に役立つ内容を求めている 人々に対して、そのような信頼性の崩れた番組をこのまま放送して良いのでしょうか。

 私の意見としては、科学検証番組は各テレビ局合同で、この事件のもつ意味合いを自覚 して、十分に検討対策した上で、きちんと今後の放送の制作方針を説明する必要があると 考えています。単なる他局の一つのミスとして無視してはならないと思います。

( 2005年  2月 8日 登録 )





・ その 2 

「ニンニク、その食べ方は損している」
(スパスパ人間学! TBS 2004年11月18日放送)


 当初TV番組のガイドブックにあったのはウコンの話だったので録画しておいたのですが、実際に 放送された内容はニンニクでした。ニンニクは料理によく使うし、好きな食材だったので観たのです。 しかし、その内容は、突っ込みどころ満載でした。その中で、今回は、この手の番組でよく使われる、 美容効果の「ビフォー(テスト前)」と「アフター(テスト後)」の写真について取り上げてみます。

 そもそも写真とは必ずしも「真実を写す」ものにはなり得ないものです。それは写す人、利用する 人により、どうにでもなるものです。私も「写真館」を公開していますが、時々手を加えています。 その時に説明していますように、私が写真を撮った時の印象を、しっかり描く為に、トリミングや 背景の処理、明暗、色調など、様々に加工して一番心に刻まれた印象に近いものにしています。 だからありのままを写した写真であるか、手を加えた写真であるか、ちょっと見では解りにくい ものです。

 さて、番組についてお話ししますと、ニンニクの有効成分は「アホエン」というもので、生食、炒めたり 焼いたりして火を通す料理方法では「アホエン」は摂取できないというのが内容でした。この「アホエン」 を含む調理オイルをつくって、料理に使うとドロドロ血液がサラサラ血液になるだけでなく、お肌も 美しくなると言う訳です。血液のドロドロとサラサラについても本当は突っ込みを入れたいのですが、 現在調査中なので今回はパスして、美容効果の証明写真について検証してみます。

 番組では、(写真1)のように映し出されたのですが、パッと見ると、、右側の使用後の写真に見られるように 確かに肌は明るく美しくなっていますので、美容効果があると印象つけられます。TV番組の写真では、背景の 明るさが使用前の写真で暗くなっていますし、写真全体が暗いのです。顔を特定しますと、目の白目の部分が ずいぶんと暗くなっていました。それが使用後ではパッと明るくなるので、当然美しくなったように見えるのです。 この手の写真の使い方は美容効果を証明するTV番組では常套手段のように使われていますので、今後、 よく注意してみると良いでしょう。しかも、TV番組ではさっと流されますので、美しくなったという印象だけ 残り、番組の意図通りに効果を発揮するのです。ほとんどの視聴者は手品の種明かしをするようには 見ていませんので、そこまでは突っ込みません。

 ということで、私の方で、番組のシーンをキャプチャーして、使用前の写真の明るさを、画像処理して 使用後に合わせてみました。これと同じような処理をしたものが(写真2)で、更に使用前の写真を使用後より 明るくしてみたのが(写真3)です。またTV番組では、使用前の写真は髪が乱れていましたが、使用後は髪が きちんと整えてありました。この番組ではしていませんが、良くあるのは、使用前がノーメイクで表情が暗くなる 写真を選び、使用後でバッチリとメイクをして、表情も明るくした写真を使う場合も多く見られます。あれ、あれ? 写真は真実を写すとは限りませんね。今後も、この手の美容検証番組をこのように観ていくと、きっと楽しめると 思いますよ。

SUPA_MAYA

 写真の方は、TV番組のキャプチャーを加工して載せることは著作権上出来ませんので、 私の友人の写真を使って番組に使われたと思われる方法で再現したものです。ただし、実験としては、TV 番組のキャプチャー写真で行い、記載通りの効果を検証したことをお知らせしておきます。

( 2004年 11月23日 登録 )





・ その 1 

「10日間で変わる!顔ヤセの科学:二重アゴ撃退エクササイズ!!」
(フジテレビ あるある大辞典U フジTV 2004年10月31日放送)


 さて最初に取り上げるのは人気の高い科学検証番組の「あるある大辞典U」で放映された、刺激的な タイトルの「顔ヤセの科学」です。化粧品業界で禁句の「顔ヤセ」が、大勢の視聴者が観ることのできる TV番組タイトルで登場するのですから複雑な気分です。

 しかし、今回取り上げたいのは「顔ヤセ」ではなく、「二重アゴ」についてなのです。と、言いましても、 番組中でコメントのあった「二重アゴ保有者、100人中93人」という内容についてです。これはほとんどの 現代人が二重アゴであるというような主張になります。ところで、この衝撃的なコメントの鍵は「二重アゴ」の 定義です。コメントしたのは鹿児島大学 大学院 歯学部 口腔解剖学が専門の島田和幸先生です。 二重アゴを判定するチェック方法は、垂直な壁に背中と後頭部をくっつけて、アゴを引き寄せて観るのです。 皆さんもやってみると実際に二重、いや三重アゴになってしまう人も多いのではないでしょうか。ちなみに、 私も立派な二重アゴとなりました。この二重アゴの判定方法が果たして美容常識から観て妥当なのか どうかが今回取り上げたい内容です。

 まず、二重アゴかどうかは自然な姿勢であるかどうかではないでしょうか。島田先生の方法をとれば かなり不自然な姿勢となり、普段はこんな状況にはならないはずです。無理に二重アゴを作っている ような方法です。あたかもほとんどの人に二重アゴを押しつけているかのようです。確かに衝撃的な事実を TV番組は要求しがちですので、その意味からは都合良いと思われます。また、二重アゴが気になるのは 無理矢理に作ってできたものではなく、お互いに自然と顔を向かい合わせた時ではないでしょうか? このあたりの検討もされず、また、公的な討論もされることもなく独断で番組に都合の良い判定方法が 採用されたことが問題と考えます。口腔解剖学の専門医である島田先生が、たとえ美容に強い関心があり、 美容に詳しいとしても、伝搬力の強いTV番組でコメントするには、事前に広く美容関係者に検討を計るべき だったと私は思います。

 この脅し的なコメントから始まった番組は、その後も突っ込み要素満載で終始しましたが、極めつけは 10日間で劇的に二重アゴを解消するエクササイズの方法論です。番組を観た人は、その方法を実施する することができたでしょうか? まだ番組を見たことのない人は、「あるある大事典UのHP」で、確認をしてみて下さい。おそらく、11月5日前後に掲載 される予定だということですので。

( 2004年 11月 2日 登録 )






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